※この作品はR-18です。

遊戯王のパズルの悪い使い方   作:菓子ラムネ大好き

28 / 41
第28話

 

 

「そろそろ日が暮れて来たわね。っと、そんなにしょんぼりしないの。皆、遊偽の強さにビビッて挑みもしないふにゃちんだらけだったってだけよ。遊偽のせいじゃないから」

 

 

 ぽつぽつとデュエリストたちの間でもデュエルは終わりだとばかりに散り散りになり始めた王国初日の夕刻。結局、遊偽と戦ってくれる参加者はおらず、遊偽はその日デュエルを行えず星を手に入れることのないまま過ごした。一方で、遊偽ほど名前の売れていない舞は適当な参加者から次々と星を巻き上げ、初日にもかかわらず既にスターチップを6つも揃えていた。

 

 

「はぁ、明日も相手にしてくれるデュエリストがいなかったらどうしよ……」

 

「きっと何とかなるって。あっ、でも、もしも本当にダメそうなら私が余った星あげよっか?うふふっ、お姉さんが養ってあげる♡」

 

「……揶揄わないでくれ。まだ他の船の参加者もいるし、初日は様子見してただけかもしれないから可能性はあるはずなんだ」

 

 

 ツンツンと楽し気に頬を突きながら遊偽にべたつく舞を振り払うようにして悩む遊偽。有名になりすぎるのも困りものだ、っと避けてくる参加者を見ながらため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここなんて開けててちょうど良さそうじゃない?ここで今夜過ごすことにしない?」

 

 

 鬱蒼とした木々が連なる山道を歩いて暫くしたころ、傾斜が緩やかとなった開けた場所を見つける遊偽と舞。舞の提案もあり、初日の散策を終えてここをキャンプ地とすることに賛成した遊偽は背負っていた重厚なサバイバルバッグからテント用具を取り出した。

 

 

「へぇ!結構立派なテント持ってきたのね♪2人くらい中に入っても大丈夫そう♪」

 

「学校の上級生に貰ったんだ。値段は知らないし実際に使うのも今日が初めて。説明書通りに作るけど不手際があったら指摘して欲しい」

 

 

 舞と一緒にテントを広げてペグを地面に打ち込んでいく遊偽。広がったテントは詰めれば遊偽と舞の二人が寝れるくらいの広さがあり、材質もよく雨風を防ぐには十分といった感じであった。

 

 

「一応主催者側が食料を供給してきてもいいように簡単な調理器具も持ってきたけど、この分だと使わずに終わりそうだな……。石を並べて焚火を起こそう。食べるのは保存食だけど、まだ夜は寒いしランタンよりは火で暖まりながら食べた方が気分も落ち込まなくていい」

 

「コーヒーの粉なら持ってきたから焚火に翳して作れるわよ。季節的には春って言っても気温はまだまだ冬だもんね。あったまるわよ」

 

 

 遊偽が火をおこし終えると、食事の準備を済ました舞。

 

 

 焚火と熱々のコーヒーで暖を取りながら、遊偽と舞は寒空の下で食事と会話に興じていた。

 

 

「遊偽はさ、賞金手に入れたら何に使いたい?」

 

「んっ、別に賞金については何も考えてないかな。手に入れても使う予定ないし」

 

「え~、そんなの勿体ないわ。お金って使い方が分かると使える額が大きいほど楽しいのよ?それにパーっと浪費するのも楽しいしね♪私が教えたげよっか?」

 

「いや、いいよ。俺は賞金手に入れても全部友達にあげるつもりだからさ。その友達が、妹の病気の手術費と父親の作った借金に悩まされてて、凄いいい奴なのにそんな理不尽に苦しめられてるのが悔しくて、悲しくて助けたいんだ。だからそんな友達を見捨てて自分の為に使うつもりはないよ」

 

 

 親友を想う遊偽の固い意志を感じる口ぶりにはしゃいでた舞も口を閉ざす。一気に重くなった空気に耐えきれなくなったのか、舞は自分をくるんでた毛布を遊偽に広げてかけると体を寄せた。

 

 

「もうっ、そんな重くてシリアスなこと言われると浮かれてた私が馬鹿みたいじゃない……。はぁ、折角明るい話題で盛り上がろうとしてたのに台無しだわ」

 

 

 やれやれとばかりに遊偽の背中に手を回しながら遊偽の温もりを求める舞。遊偽もまたそんな舞の行動を咎めずに受け入れていた。

 

 

「実はね、船で遊偽に接触かけたのも、部屋をかけてデュエルしたのも、こうやって付いてるのも打算ありきなの。遊偽の顔が可愛いなって思ったり、部屋が欲しかったりしたのは本当だけどね。遊偽、知らないだろうけどあなたには懸賞金がかかってるのよ」

 

 

 遊偽の温かさに滔々としながら舞はゆっくりと遊偽に語る。その言葉に衝撃を受けながらも遊偽は黙って舞の言葉に耳を傾けていた。

 

 

「ペガサス、ってよりイリュージョン社からの通知でね。船に同乗する遊偽を倒したら報酬を与えるって。だから最初っから遊偽が同じ船なのは分かってたし、恐らく最初のデュエルボックスが山だったのも私に有利なフィールドを選んだんだと思う。まあ賞金を餌に焚き付けて来ただけだから従う義理はないんだけどさ」

 

「……そっか」

 

 

 暴露した舞を咎めることもなく遊偽は変わらず舞を抱き寄せる。舞も変わらずうっとりとした目で遊偽を見つめていた。

 

 

「なんかさ、遊偽と一緒にいるとそういった打算なしにいたくなっちゃった。勿論、報酬関係なしに予選までは誰かと組んだ方がいいって思ってるけど」

 

「……俺も、舞がいてくれると嬉しい。必死に抑えてるけど仲間たちがいなくて敵地で一人なのは心細いからさ。この大会の先には俺よりもずっと強くて恐ろしい奴が待ち構えている。一緒に戦う仲間はいるけど、皆バラバラになった。まだ俺は奴に勝てる力はない、でもここで逃げることは出来ないんだ。奴から逃げたら、杏子が……」

 

 

 表情を険しく歪めながら大きく顔を下げる遊偽。ほんのりと目尻に浮かべた涙に気づいた舞はそれを人差し指ですくってあげた。

 

 

「……賞金の話以上に重い物抱えてるのね。遊偽、辛くなったらいつでもぶつけな。私も受け止めてあげるから」

 

 

 そっと口元にキスをする舞。舞のキスに応えるように遊偽もまた離しては塞ぐ甘いキスを繰り返しながら舞から漂う女の匂いに酔った。

 

 

 気分が高まった二人はそのままテントに入ると激しく交わった。

 

 

「あっ、あぁぁぁ♡遊偽、深い♡深いの♡遊偽の大きくて硬いオチンチン♡私の子宮に響いてる♡」

 

 

 パンパンッ

 

 

 後背位の体勢で舞の美しく引き締まったヒップに肉棒とともに腰を打ち付ける遊偽。

 

 

 舞の包容力に甘えた遊偽は舞の中に入ることで感じる温かさと性の快感に溺れるかのように舞と深く繋がるのを求めた。舞もまた純粋で真っすぐな遊偽の芯に触れ、ささくれていた心が溶かされたかのようにときめきを隠しきれず遊偽に求められ自分に溺れてくれる嬉しさ、そしてそんな遊偽の容赦のない突きに肉欲から善がり狂う。

 

 

「はぁ、はぁ……舞!舞!もっと強く打ち込むぞ!お前のここでもっと締め付けろ!」

 

「やぁん♡上も下のゴリゴリって擦るの気持ちいい♡びくびくって震えながら私の膣を掻きまわしてくるぅ♡」

 

 

 舞の腰を掴み必死に膣の感触を味わう遊偽。時折、体を起こしてキスを求めてくる舞に応えて愛を交わしながら遊偽は舞の肉壺で性欲を満たしていく。

 

 

 舞の気持ちも性感も昂っていくのに比例して膣の壁も嬉しそうに中に入ってくる遊偽のペニスを扱いていった。

 

 

 容赦のない膣の締まりに遊偽は押しこむように子宮孔まで亀頭を埋めるとそこで限界とばかりに欲望を吐き出す。

 

 

「あああああ♡熱い♡遊偽の熱い精液が私の胎に出てる♡出てる~~♡」

 

 

 舞もまた振動しながら熱い汚液を流し込まれる感触に軽く絶頂した様子で、遊偽の射精を促すように蠕動しながらペニスを刺激した。

 

 

「ううっ、舞の膣が気持ちよすぎて、また……」

 

「あはっ♡また大きくなってる♡ねぇ、遊偽、もっと……♡」

 

 

 舞からのおねだりに我慢も容赦も一切せずに遊偽は再び性欲をぶつけていく。次は正常位で膣からペニスを抜かずに第二ラウンドの開始となった。この日の夜はいっそう燃え上がったようで、3連戦、その後休憩を挟んで2回と計5回と長く激しい情交となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

 

「痛っ、いたた……体の節々が痛むわね。シートがあるとはいえあんな固い地面で無理しすぎたかしら……」

 

「その、ごめん……」

 

「アハハ、いいのよ。あれだけ燃えたの、本当に久々だし加減忘れちゃったのは私もだから。私たち、やっぱり相性いいみたいね♪」

 

 

 ウインクをしながら遊偽に女を感じさせる視線を向けてくる舞。遊偽も軽く照れながらその視線に応えた。自然と歩くときの二人の間の距離も短くなり恋人同士のような距離感で二人は山道を歩いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んっ、どうやらそろそろ山を抜けられそうだな」

 

 

 山道を歩いて暫くして、そろそろ昼に差し掛かろうとする頃、木々の向こうが開けて平地が見え始めた。

 

 

 

「そうね。あらっ、ねえ!見て!あそこに小屋があるわ!」

 

 

 遊偽の肩を叩きながら声をあげる舞。舞が指を刺した方向には確かに山を下りる道のすぐ先に黒い小屋があった。

 

 

「本当だ……行ってみよう!」

 

 

 舞の手を取り小屋へと走る遊偽。山を下りて辿り着いた小屋は遊偽や舞の想像よりもやや大きめの1ルーム程の大きさの黒々とした不気味な小屋であった。

 

 

「なんか、気味が悪いわね」

 

 

 思わず漏れた舞の言葉に無言で同意する遊偽。入るのを躊躇われるほどに異様なデザインの小屋は窓もなく中がどうなっているか外からは全くうかがうことが出来なかった。

 

 

「ふふっ、遂に来たな。武藤遊偽」

 

 

 小屋の外に隠れていたかのように顔を出してきたのは船で参加者へルールを説明した黒服の男。その男は遊偽の姿を見ると獲物がやってきたとばかりに笑う。

 

 

「孔雀舞も一緒か。まあいい。ここは魔術師の小屋。この小屋の中にデュエルボックスがある。フィールドは魔術師の館。魔法使い族のみが地形効果を得られる。そして、ここにいるのは貴様を倒すデュエリストが既に待機している」

 

 

 黒服の説明と同時に小屋の扉が開かれる。現れたのはシルクハットを被りローブを羽織った男であった。黒のマスクを口元に付けたその男は表情こそ伺えないが遊偽を見て暗い笑みを浮かべたのを遊偽は感じ取った。

 

 

「彼こそが魔術師に館のPK。通称「腹話術師」。この大会には隠された裏ルールがあり、参加者はPKとエンカウントした際には強制デュエルとなるのだ!更に、PKとのデュエルでは星を3つ以上賭けなければならない。そう、つまり遊偽、お前は今ある2つ全てを賭けてデュエルしなければならないのだ!」

 

 

 黒服のイリュージョン社の男の説明に舞は絶句する。星を10個集めた上で城に嵌めこまないと予選通過とならないという回りくどいやり方に抱いていた懸念はこれだったのだと舞は思い知った。

 

 

 PKは遊偽について来いとばかりに首を動かす。

 

 

「相手してくれるデュエリストがいなくて困ってたところだ。誰が相手だろうと俺は

構わない」

 

 

 遊偽は何のことはないと小屋の中へと入る。舞もまた不安を感じながら遊偽の後についていった。

 

 

「それで、このフィールドで俺たちは戦うわけか」

 

 

 小屋の中に配置されているデュエルボックス。魔術師の城とその周囲がグリッドマップで再現されているのが分かる。

 

 

「くくくっ、そうだ。だが、戦うのは俺ではない」

 

 

 PKの男の底冷えするような低い声での言葉に「は?」と疑念と抱く遊偽。男はそのまま意地の悪い目つきで遊偽を見つめると小屋の奥から一人の女性を出した。

 

 

「遊偽、私が相手をするわ」

 

「なっ!?」

 

 

 PKの後ろから前に出て来たのは遊偽のよく知る女。最愛の恋人にしてペガサスにより人質にされた杏子であった。

 

 

「杏子!?いや、違う……人形……。貴様ぁ!俺と杏子を愚弄するつもりか!?」

 

 

 出て来たのは杏子ではなく杏子のよく着る私服を着た精巧にできた人形。「腹話術師」という異名の通り、PKの男は杏子の人形を操作しながらデュエルボックスの席へと人形を着かせた。

 

 

「遊偽、早くデュエルをしましょ?私、また遊偽と出来るの楽しみなの」

 

「貴様!杏子と同じ声で、俺を馬鹿にするな!!」

 

 

 PKに掴みかかろうと遊偽は動くが黒服が遊偽の腕を抑える。

 

 

「ここでPKに暴力を働いたら失格にするぞ武藤遊偽。お前に出来るのはこの男とデュエルをすることのみだ」

 

「くっ……」

 

 

 抑えられた遊偽はいまだに激情のままPKに怒りの視線をぶつけるがここで失格になるわけにはいかないと必死に自分の心を抑えて席へとつく。事情は詳しくは知らないが人質となる誰かのために遊偽が王国へと参加したことを昨日の会話で察した舞は、遊偽の知人と思しき女の子の人形を用いて遊偽の心を抉るPKを前に「卑劣なやり口だわ……」と顔を歪ませる。

 

 

「いいだろう。腹話術師、デュエルだ。俺は絶対に許さない。そのふざけた真似を俺が止めてやる」

 

「さあ、正々堂々と勝負と行きましょう。遊偽♪」

 

 

 遊偽を煽るかのように杏子の明るい声で応えるPK。怒りの沸点を早々に越えた遊偽はパズルに手を翳すこともなく闇の空間を作り出すほど感情を爆発させていた。

 

 

「私のターンよ。私は、ホーリー・ドールを召喚。フィールド効果で攻撃力30%アップ。攻撃力2080よ。遊偽のカースオブドラゴンを撃破!」

 

「くっ、俺のカースオブドラゴンが!なら、俺は暗黒騎士ガイアを召喚!バトル!」

 

「やるわね。それなら私はヂェミナイ・エルフを召喚!攻撃力はフィールド効果で2470になるわ。ガイアを粉砕ね!」

 

「なにっ!?まさか、このカード……」

 

 

 遊偽は唖然とする。腹話術師の出してきたカードはどれも杏子のデッキに入っていたカードだ。まさか、っと遊偽が疑い始めた時、PKは再び意地の悪い笑みを浮かべて杏子の人形に答えさせる。

 

 

「そうよ。勿論これは私のカードよ。遊偽と戦えるって思ったらワクワクしちゃって家から持ってきたの」

 

「なんだと……そんなことの為に杏子のデッキを奪ったのか!?ペガサス!」

 

 

 遊偽がわなわなと体を震わせる。

 

 

「攻撃が単調になってるわ!挑発に乗らないで、遊偽!」

 

 

 舞が必死に呼びかけるも遊偽は怒りのあまり声が聞こえずPKに殺意を向けるばかりである。

 

 

「ああっ、ホーリー・ドールがやられちゃったのね。残念だわ。でも、負けちゃったしこうするしかないか」

 

 

 杏子の人形がゆっくりと消滅したモンスターのカードを手に取るとそのカードをびりっと破いた。遊偽はその光景を目にした時、驚きのあまり目を丸くし、その後激しい怒りが沸きあがる。

 

 

「おっ、お前ぇぇぇっぇ!!それは、杏子のカードだぞ!?それを、それを…!!」

 

「何っ?私のカードを私がどうしようと勝手でしょ?だって、なくなってもまた優しい遊偽が私にカードをくれるもんね♪」

 

「殺す、殺してやる!お前を!!」

 

 

 ビキビキと血管をこめかみに浮き上がらせ、拳を握りしめて歯を強く噛み締める遊偽。杏子の人形を使って愚弄するだけに飽き足らず、杏子と自分の関係を馬鹿にし、杏子のカードを破く相手に殺意すら遊偽の中に湧き上がっていた。

 

 

「遊偽……」

 

 

 舞はそんな遊偽の表情に同情をしながらもピリピリと感じられる殺意に怯えの感情を覚える。遊偽からは怒りだけではなく恐怖を感じさせる何かを感じさせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふっ、恐ろしいですね。遊偽ボーイから溢れ出る闇の力がモニター越しに感じられるほどです。このままゲームを続けたらデュエルの勝敗に関わらず対戦相手の男が死んでしまいかねない勢いです」

 

 

 小屋に設置した監視カメラから遊偽のデュエルを覗くペガサス。王国の中央に位置する王城でペガサスはチーズをつまみにワインを嗜みながら遊偽のデュエルの様子を楽しんでいた。

 

 

「強い闇の力を感じる。このまま闇の衝動に負けるようであればそれはまた奴が候補者足り得なかったというだけのこと」

 

 

 ペガサスの隣でターバンを巻いた男が冷たく言い放つ。ペガサスに勧められたワインを断りながら遊偽のデュエルを男はじっと見つめていた。

 

 

「他ならぬあなたの頼みですから協力しますが、私以上にえぐいことを考えるのですねあなたは」

 

「これも試練。真にパズルの候補者なればこの程度の闇を自分の物として扱える器量を見せてもらいたい」

 

 

 感情の籠っていない目で見つめるその男は遊偽が最初に出会った千年アイテムの所有者、シャーディーであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は、ブラックマジシャンガールでヂェミナイ・エルフを撃破!」

 

「あーっ、また負けちゃった♪役に立たない子は残念だけど処分しなきゃ」

 

 

 びりりと今度はヂェミナイ・エルフを破く杏子の人形。遊偽はそれを見る度に殺意の衝動が増していった。

 

 

「さて、それじゃ出すわよ。私の切り札、「バイオレット・ヘカテー」!」

 

「そのカードは……!」

 

 

 遊偽が杏子の為に取り返した思い出のカード。杏子もまた遊偽との思い出に大事にしていたカードである。

 

 

「ブラックマジシャンガールに攻撃!」

 

「くっ、シルクハット!」

 

 

 遊偽は何とか攻撃を交わすとデッキから引いたブラックマジシャンを場に出し対抗する。

 

 

「ああっ、もしかして私のエースを倒しちゃうの!?でも、そうしたら私、この子が許せなくて破いちゃうわ。遊偽ったら酷いのね」

 

「貴様、貴様ぁぁぁぁぁ!」

 

 

 遊偽は攻撃出来ない。そのカードまで破かれたら杏子に顔合わせが出来ない、そう思い遊偽はターンを終えてしまった。

 

 

「アハハ、優しくって好きよ♪ガールに攻撃!」

 

「ぐっ、六芒星の呪縛」

 

「嘘っ!?」

 

 

 遊偽の伏せカード、六芒星の呪縛で動きを止めるバイオレットヘカテー。しかし、攻撃力ア下がったヘカテーに対しいまだ攻撃を躊躇う遊偽。

 

 

「遊偽!何してるの!そのままだとあなたが負けてしまうのよ!大事な子のカードを破かれるのは苦痛でしかないのは分かるわ。でも、でも!ここで負けたら元も子もないでしょ!」

 

 

 舞が必死に呼びかけようやくその声が遊偽に届く。だが、遊偽はその舞の言葉を理解しつつも顔を背けた。

 

 

「舞に何が分かるんだ!俺は、俺は……!」

 

 

 そこで、遊偽ははっと気づく。この殺意のままパズルに手を翳したらあの男を殺せるのではないか、ということに。そうすればデュエルは終わりカードも取り返せる。悪魔の誘惑のようではあったが遊偽にはそれが自分に出来ると確信していた。

 

 

(アクナディン、出来るか?)

 

(ふふっ、お前の闇の力が高まっているのを感じる。今なら奴の意志を無視して奴を精神的に殺すことは可能であろう)

 

 

 アクナディンもまた、直接やれとは囁かないが出来ると答えた。遊偽が深い闇に堕ちるのを歓迎しているかのような口ぶりであった。

 

 

(デュエルなんてどうでもいい。奴を、俺は……)

 

 

 遊偽が殺意を乗せた視線でPKを睨む。既に手はカバンの中のパズルへと延びかけていた。しかし、そんな遊偽を咎めるかのように場にいたブラックマジシャンとガールが遊偽に向き合っていた。

 

 

(ファラオ、それでいいのですか……?)

 

(王子……)

 

 

 遊偽の闇の力により半ば実体化した二人は遊偽を止めるように声をかける。その姿は舞にも見えており、舞は信じられないとばかりに絶句していた。二人の制止に遊偽の手はパズルに触れる直前で止まる。

 

 

(遊偽!何をしている!?このまま大事な女を虚仮にされて黙っているのか!?あのカードが大事なのであろう!?)

 

 

 アクナディンが苛立ちげに煽る。そんなアクナディンを視界に収めながらも遊偽は魔術師の二人の悲しそうな目に心の中に引っ掛かりを覚えて動けずにいた。

 

 

「ほらっ、どうしたの?遊偽、早くプレイしないと遅延行為としてそのまま終わらせるわよ」

 

 

 PKはモンスターの様子に最初は動揺していたものの、ただのシミュレータの故障とばかりに遊偽を煽る。遊偽の動揺を誘うその言葉に遊偽は再び手を動かしかけたがそこで舞が割って入った。

 

 

「遊偽!本当に許せないなら勝ちなさい!勝たないと先へは進めないわ!あなたはデュエリストでしょ!?このままデュエルを終わらせたら遊偽を追い詰めたいあいつらの思うつぼよ!遊偽、あなたの心はそんなに弱かったの!?」

 

 

 舞の言葉が突き刺さる遊偽。このまま怒りのあまりPKを殺してデュエルを終わらせたらペガサスの思い通りなのだ。杏子は取り戻すことは叶わないだろう。わざとらしく自分を怒らせている意図を察し、そのまま流れそうになった自分の弱さに苛立つ遊偽。杏子の為に戦った気持ちを他ならぬ自分のエゴで穢しかけたことに思い至ると遊偽は必至に唇を噛み、その痛みで冷静さを取り戻す。

 

 

(王子……私は信じてました。あなたはお強い方だと)

 

 

 場にいたブラックマジシャンガールが正気を取り戻した遊偽を歓迎するかのように喜ぶ。

 

 

「ブラックマジシャン!ヘカテーを攻撃しろ!」

 

(はっ!)

 

「なっ、嘘だっ、馬鹿な!?」

 

 

 遊偽が杏子との思いでのカードを攻撃したことに動揺する腹話術師。思わず素で声を出してしまうほど狼狽えていた。

 

 

(杏子、ごめん。でも、俺はこうして前に進んでお前を助ける。思い出はまた一緒に作る。だから、許して欲しい)

 

 

「これでヘカテーを撃破!さあ、お前のターンだぜ!腹話術師!!」

 

「くっ、クソーッ!!」

 

 

 杏子のヘカテーを破きながらもはや演技するのもやめて戦う腹話術師。しかし、杏子のデッキを知り尽くした遊偽を相手に逆転の手はなく、元々が杏子の人形を使って遊偽のプレイングミスやサレンダーを誘う作戦であったため冷静さを取り戻した遊偽を相手にまともに戦えずデュエルは遊偽の勝利で幕を閉じた。

 

 

「あっ、あっ、ああっ……」

 

「スターチップは勿論もらうが、お前はこのままで済むと思うなよ。杏子と俺を穢した報いを受けさせてやる。ペガサスの指示だったとしてもな!罰ゲーム!!」

 

「ああああぁぁぁっぁ!?」

 

 

 人形に襲われる幻覚を見る腹話術師。これから先、悪夢を見続けるのは明らかであり、正気に戻った頃にはどうなるかは本人次第であった。

 

 

 闇の空間が解かれ、デュエルボックスから出る遊偽。

 

 

「辛い戦いだったけど、よく耐えて勝てたわね遊偽。嬉しいわ」

 

「ありがとう、舞。舞のおかげで正気に戻れた。俺はやっぱり弱い奴だ。でも、絶対に諦めない。奴らの思い通りにはならない」

 

 

 遊偽の強い意志が伺える言葉に舞は遊偽を抱き寄せながらよしよしっと頭を撫でる。

 

 

 その後、舞は遊偽が王国に参加した本当の理由を聞いた。遊偽の最愛の幼馴染を利用した卑劣な作戦に憤りを覚える舞。そしてそんな遊偽の心を独占する杏子に軽く嫉妬を覚えながらも小さい体に溜め込んで一人で戦う遊偽に抱擁し元気づけた。闘気を抑えきれない遊偽が舞とそのまま人目に付かない場所で再び心と体を交わ士合うセックスに至るのは然程時間がかからなかった。

 

 

 強大な敵と立ちはだかる壁に対する不安。そんな不安からか自分を今支えてくれる舞に溺れる遊偽。そんな遊偽を理解して受け入れる舞。二人の距離は更に縮まっていった。

 

 

 こうして、PKを撃退しスターチップが4個になった遊偽は舞に立ち直らせてもらいながら打倒ペガサスと友人との再会を誓い先へと進んだ。

 

 




書いてたら腹話術師さん原作よりド外道になってました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。