遊偽らが城之内の危機に気づき、王城から洞窟へと向かっていた頃、同じころ城之内とミホは洞窟にて立ち往生していた。
「本田君!聞こえる!?本田君っ、聞こえてたら返事して!!」
「本田ぁ!!チッ、駄目か……それに、くっ、俺だけじゃびくともしねえ!」
押せどびくともしない岩を蹴りながら悪態をつく城之内。キースが捨て台詞で残した通り、入口を塞いだ岩は何か特殊な仕掛けで転がしたようで一人や二人の男の力では動かすことは到底出来なさそうであった。
「無線も通じない……これからどうしよう。もう、遊偽君たちに会えないのかな……ぐすっ」
「ばっ、馬鹿言ってるんじゃねえ!!こんなところで諦めてたまるかよ!まずは一旦デュエルボックスに戻るぞ!もしかしたら何か脱出の手がかりがあるかもしれねえ!俺はここから抜けて遊偽たちに、そして静香に会うんだ。お前だってそうだろ!?」
絶望的な状況に悲観し崩れるミホに必死に声をかける城之内。そんな城之内の熱意に元気づけられたのか、下を向いていたミホもゆっくりと立ち上がる。
「……うんっ、そうだね。ミホも遊偽君に会いたい!城之内君の言う通りやれることはまだ残ってる。泣くのは全部やってダメだった時だよね」
そうして、城之内とミホは再びデュエルボックスの場所へと戻った。
「あっ、見て!この先に道がある。洞窟はまだ奥に続いてるみたい!」
デュエルボックスのある空間を調べるとキースらがいた場所に人が入れそうな道が続いてることにミホは気づいた。
「本当か!?よしっ、道があるなら先へ進むしかねえな」
城之内が先導しミホがそれに続く形で先へと進む二人。初めは暗い洞窟を懐中電灯で照らしながら進んでいた二人だが、洞窟を進むごとに灯りが漏れ始め、壁もごつごつした天然物から整備された敷石へと変わっているのに二人は気づいた。
「これ、明らかに人工物だよね……。もしかしたら本当にこの奥に出口があるのかも!」
「だけどここからいくつかの道に分かれてるな。どっちの道が正解なんだ……?」
光明が見えて来たとはしゃぐミホであったが歩くとすぐに分かれ道が続き焦る城之内。ミホもまた悩みながらしらみつぶしに探ることとなった。
「なあ、野坂。そういえばお前、遊偽とどうやって知り合ってあんな仲良くなったんだ?」
「えっ?ミホと遊偽君のこと?知りたいの?」
「ちょっと気になってな。こんな迷路みたいなところにいるんだ。暇だしいいだろ?」
城之内のそんな言葉にミホも「えへへっ、それじゃ…♪」っと、満更でもなさそうな顔で当時の出会いを振り返る。楽し気に遊偽から助けられた話を美化100%で語るミホに城之内も少し辟易しながら聞いていた。
「そうか。遊偽に助けられて先生もお前も変われてよかったじゃねえか。今はすっかり元気になってよ。まあ、その天然でマイペースな部分を前面に押し出すようになっちまったせいで可憐という幻想が崩れちまった男どもは多そうだが」
「えーっ、ミホにとっては遊偽君だけが気にかけてくれたらそれでいいし~。それに、遊偽君が側にいてくれたら誰に何を言われても自分を曲げなくて済むんだ。あっ、でも、変われたのはミホだけじゃないよね?城之内君も遊偽君と出会ってから変われたと思うよ。勿論、いい意味で。昔の城之内君は、少し拗らせてて斜めに構えてたところがあったもん」
「……確かに、そうだな。俺も遊偽のおかげで変われた口だ。あいつがいなかったら俺は今この場にいねえし、静香に顔合わせることも出来なかった。だからこそ、俺はこうして遊偽に頼らずに自分の足で壁を乗り越えようとしてるんだ!あいつに甘えたらそれだけの人間になっちまう。俺は、俺の手で賞金を手に入れて静香の目を治すんだ!その上で遊偽とは対等な親友になれると思ってる」
城之内の堂々とした宣言にミホは「男の子だなあ……」っと感嘆する。そして、ポンッとその肩に手をやると、
「頑張ったね♪応援してるよミホは♪ミホは、遊偽君の女だから親友でいようとする城之内君のその覚悟、すっごく好き♡一緒にこの迷路、抜け出そうね♪」
っと、眩しい笑顔を見せて発破をかけた。
そんなミホに城之内も照れながら「おう!」っと一言返すと気合を入れなおす。そうして、手さぐりに迷路を探るとようやく扉を見つけることが出来た。
「やった!これ絶対出口に通じてるよ!入ろう、城之内君!」
ミホに促されるままに扉を開ける城之内。そこで二人を待ち受けていたのは、開けた空間とデュエルボックス、そしてその奥にたたずむ二人の男であった。
「ほほぅ、また我らが立ちはだかる迷宮フィールドに客が現れたか」
「ふふっ、だが我らがいる限り出口へと通じる道は絶対に開かれん。この迷宮兄弟を相手に勝てるかな?」
現れたスキンヘッドの男2人組、迷宮兄弟はカンフー映画の登場人物のような服装とポーズを決めて城之内とミホに対峙する。その様相に二人とも面食らっていたが、そんな二人に現状を説明してくれる者が部屋の隅から現れた。
「迷宮兄弟はこの大会が用意したPKや。勝ち上がった参加者からチップを巻き上げる刺客。そして、この迷宮では出口を守る存在なんや。……一昨日ぶりやな、城之内」
「なっ、お前は……竜崎か!?それに、梶木まで!何でここに!?」
声がした方を振り向くとそこには竜崎と梶木がいた。予想外の二人の登場に驚く城之内。そんな城之内に梶木は経緯を説明した。
「俺らは10個集め終わって王城に向かってたんじゃ。だけど、その途中でキースって男とその取り巻きどもに嵌められて森の近くにあった洞穴に閉じ込められたんじゃ。それで奥に進んだらここにたどり着いたわけじゃ」
「キース?もしかしてあの外人のオッサンか!?あいつ、俺たちの他にそんな事までしてやがったのか!くっ、許せねえ!あのオッサン、自分は戦わねえくせに汚え手を使いやがって!何者だかは知らねえが出たら俺がこの手で倒してやる!」
自分以外にも嵌めた奴がいると知って怒りに燃える城之内。そんな城之内に竜崎は驚いたかのような表情をする。
「お前、知らんのかいな。そのキースってのはキース・ハワードっつって全米チャンピオンだった男やぞ。かなり手強い相手や。まあワイらもここを出たらあいつを倒すって思っとったけど、それはもう無理やな……」
落ち込みながらグローブに手をやる竜崎。ふとそのグローブにはスターチップがはめ込まれていないことに城之内は気づいた。
「まさか……負けたのか!?お前が」
「ああっ、ワイらはあの迷宮兄弟に負けてしまったんじゃ。あいつら、タッグデュエルを仕掛けてきて勝ったら出口を通る権利をやるって言うとったから挑んだんやが……この通りや……」
自嘲しながら手を翳す竜崎。同じく俯く梶木もまたそのグローブにはチップは残されていなかった。
「竜崎君、梶木君……」
そんな二人を見てミホも言葉に詰まる。実力者である二人が組んで敗れたことに驚きと悲しみの気持ちがないまぜとなり感傷的な気分となったようだ。
「ふははっ、その二人はこの右側の扉から入ってきたのだ。もっとも、入口は既に塞がれているがな。つまり、今ここにいる全員が外に出たくば我々とデュエルをして勝つ必要がある。さあ、我々とデュエルをするか?」
「……受けるぜ。俺はお前らに勝って、竜崎や梶木とともにここから出る!勝負だ!迷宮兄弟!」
決意を胸に闘志を滾らせた瞳で立ち向かう城之内。
「デュエル方式はタッグデュエルだ。さて、そのお嬢さんもデュエルをするということでよろしいか?」
「うんっ!ミホも戦う!城之内君と一緒にあなたたちを倒して出口を手に入れるんだから!」
ミホもまた城之内に負けじと立ち上がる。竜崎と梶木が破れた相手に物怖じすることなくむしろ二人を救うつもりで意気込んでいた。
「……城之内。待てや!やるんならワイらも協力する。城之内、このカードを受け取るんや!」
「これは……「闇竜族の爪」のカード!?竜崎、お前……」
「ワイらはもう負けてしまったさかい、お前らに出来ることはカードを託すことだけや。情けないが、ワイらの代わりに奴らに勝ってくれ。奴らの迷宮フィールド、そしてゲートガーディアンは相当厳しいがお前なら決して不可能やない。お前の言ってた可能性にワイは賭けるで!」
「そういうことじゃな。俺もお前にカードを託す。この「伝説のフィッシャーマン」はゲートガーディアンの特殊能力相手に役立つはずじゃ。俺の魂のカード、役立ててくれ」
梶木もまた竜崎に続く形で城之内にカードを託した。二人の想いを受け取った城之内は、その重さに身体を震わせながら目頭を熱くし、二人の想いに強く応える。
「おうっ!任せろ!お前らから貰った力、ありがたく使わせてもらうぜ。絶対あいつらを倒してここから抜け出してやる!!」
その言葉に安心したとばかりに顔をほころばせる二人。
城之内は二人の想いを受けてミホとともに迷宮兄弟に対峙した。
「「「「デュエル!!」」」」
ここに脱出のための変則タッグマッチが始まる。
「ここは迷宮フィールド!このフィールドではフィールド効果が発動しないが、モンスターは用意された迷宮の方向に左右されながら動かねばならない。星の数だけマスを移動しながら互いのモンスターを競わせてLPを削りあうのだ。どちらかのプレイヤーのLPが0になった時、勝負は終わる!そして、我らが守る迷宮の二つの扉のどちらが出口かを選ぶ権利を得るのだ」
「なんだとっ!?勝ったら出口に入れるんじゃねえのか!?汚えぞ!」
「ふふっ、出口を開けるだけで選ぶのは貴様らだ。それも勝った上でだがな。どのみち、貴様らには後がないので同じことであろう。我らに勝って道を拓いて見せよ。私のターンからだ!」
迷宮兄弟はモンスターを出し、これが戦い方だとばかりに召喚したモンスターをマスに進ませていく。色々と不満はあったが、兄弟の言葉通り他に手がない城之内らは渋々とデュエルを再開した。
「ミホは響女(攻撃力:1450)を召喚!星の数だけマスを移動させる」
「ふっ、迷宮へと入ったな!ならば私はシャドウグール(攻撃力:1600)を召喚!更に、「迷宮壁-ラビンリス・ウォール-」と融合!ウォール・シャドウとなり、迷宮を自由に動ける!」
「なにっ!?」
迷宮の迷の男はシャドウグールをウォールシャドウへと変化させるとマスを無視して壁を伝って響女の後ろを取る。
「ウォール・シャドウにより響女を撃破!」
「そんな、ミホのモンスターが……。それにマスを無視して攻撃してくるなんて……」
ウォール・シャドウは攻撃を終えると再び壁の中へと姿を消す。通常のモンスターの攻撃は隠れることで躱すことが出来るようであった。
「くっ、それなら俺はアックスレイダーを召喚。こいつなら攻撃力はウォール・シャドウより上だ。攻撃は出来まい!」
「くくくっ、馬鹿め!装備カードで攻撃力を上げれば済むことよ。このカードで攻撃力を1900としてアックスレイダーに攻撃をする!」
ウォール・シャドウの攻撃がアックスレイダーを襲う。アックスレイダーがあわや撃破されるその時、城之内は伏せたカードを発動させた。
「鎖付きブーメラン!こいつでウォール・シャドウを拘束する!」
「何っ!?」
「そして、ウォール・シャドウを迎撃!撃破!どうだ!!」
城之内の罠に嵌められた迷宮兄弟はウォール・シャドウとともにLPを削られた。このコンボにミホも目を丸くした。
「凄い!城之内君、もうそんな攻略法を考えていたんだ。本当に、強くなったんだね……。うんっ、ミホも負けてられない!ミホは「裁きを下す女帝」を召喚!」
城之内の腕を褒めながらミホも負けじと動く。
(このタッグデュエル、迷宮を生かした戦い方と互いのサポートに優れる迷宮兄弟の手強さを感じるのはここからや。城之内、お前は確かに強なったが、相方のミホちゃんと息を合わせて互いにサポートし合えないと厳しいぞ……)
そんな二人のデュエルを竜崎は序盤の城之内のコンボを褒めながらも内心心配しながら応援していた。
「ここだ!ここが月行さんが教えてくれた墓場フィールドの洞窟への入り口だ」
一方、城之内を救出する為に動いた遊偽たちは王城から城之内が閉じ込められた現場へと駆けつけていた。
「遊偽!?お前、随分と早くここまで来れたな……。それに、花咲はともかくお前は影山リサ……!?何でここに」
「その話は後よ。私たちはペガサス側の人間を引き込んでこの場所を教えてもらったの。ここが閉じ込められた場所で間違いないみたいね」
キースに蹴られ顔を赤く腫らした本田が驚いた表情でリサを見たが、当のリサは説明は面倒だとばかりに突き放すと遊偽とともに塞がれた岩を見つめた。
「全員で押せば動くかな……?試してみるか。本田君も手伝って欲しい」
「あっ、ああ。それは勿論。俺も一緒に岩を押すぜ」
遊偽の提案に当然だとばかりに乗る本田。遊偽は仲間とともに岩を押した。
「ぐっ、ぐぐぐっ……くそっ!後少しでどけられそうなのに!」
遊偽、花咲、リサ、本田の4人で押しても岩は僅かに動いたのみで入口を開けることが出来ないまま息を切らして膝をつく遊偽たち。手ごたえは確かにあったが岩をどかすには今一歩いった所であった。
「はぁ、はぁ……誰か、誰かいねえのか!?」
「二度手間になるけど、無線で海馬を呼ぶべきかもしれない。それしか手は……」
本田の荒ぶる声に遊偽は無線を手にかけたその時、不意に遊偽らに近づく人影があった。
「あのっ……お前ら、もしよかったら俺たちも手伝うゾ……」
それは城之内らを閉じ込めた元凶であるキースの取り巻き3人、骨塚、佐竹、高井戸であった。
「お前ら!?お前らのせいで俺たちは!!」
掴みかかる本田に悲鳴をあげる骨塚。その手を遊偽が必死で掴んで解く。
「どういう事情にしろ手を貸してくれるなら助かる。協力して欲しい」
遊偽の言葉で一度落ち着いた本田は、3人を睨みながら再び岩へと手を翳した。
「……キースの兄貴、いやキースに裏切られたんだ。俺らはあいつについていけば本選出場出来るって思って、そのまま何も考えずについていった。そしたら、いつの間にかこんなことまでしてたんだって、裏切られて気づいたんだ」
「後で助けが来るからってんで甘く見てた。このままあいつの好きにさせたくねえ。お前らが中にいる仲間を助けて、キースに一泡吹かせて欲しい」
佐竹と高井戸の口から協力することになった経緯を聞きながら納得する遊偽と少しばかり怒りを収める本田。こうして7人が押すことで岩は嵌っていた入口からゆっくりと動き出し、完全にどかすことに成功した。
「ふぅ……これでもとに戻ったゾ。その、すまなかったゾ……」
骨塚の言葉に遊偽はお礼を返し、本田は目を逸らしながらも一言、言葉を返す。
「ふんっ、キースは必ず痛い目見せてやるから安心しな」
その言葉に骨塚は満足しながら本田と同じく腫れあがった痛々しい顔で僅かに笑みを見せる。そして3人は、キースを倒してくれ、っと言葉を残し、ここからはお別れとばかりに立ち去って行った。
「よしっ!先へ進もう!洞窟の先に城之内君はいる。もしかしたら例の迷宮兄弟と戦っているかもしれない。俺たちが出口は開いたと伝えるんだ」
遊偽らは城之内を救うべく洞窟の中へと入っていった。
その頃、迷宮兄弟と城之内、ミホのデュエルは佳境へと迫っていた。
「「迷宮変化」!これでお前たちのモンスターを分断する!」
「なっ!?俺と野坂のモンスターが分けられた!?」
宮の男のカードにより城之内のアックスレイダー、炎の剣士とミホの裁きを下す女帝、逆転の女神のマスが突然現れた壁によって隔てられる。
「そして、我が迷宮の魔戦車(攻撃力:2400)!炎の剣士を串刺しにしてやれ!」
魔戦車が炎の剣士に攻撃をすべく進撃する。それに対し、ミホが伏せカードを発動させた。
「させない!伏せカード「魔法の筒」を発動!これによって戦車は別の筒に移動して攻撃方向を変える」
「何っ!?俺の戦車が誰もいないマスに動かされ壁を破壊した!?」
ミホのカードにより攻撃は空振り、更に分断された壁を突き破って城之内とミホのモンスターが再び集結する。
「よしっ、よくやったぜ野坂!俺は、炎の剣士に今引いたサラマンドラのカード!これにより魔戦車を撃破!」
「ぐぐっ……馬鹿な!!」
「おおっ!やるやないか!ナイスサポートやミホちゃん」
ミホの機転と城之内の力で魔戦車を打ち破ったことに飛び上がって喜ぶ竜崎。既に迷宮の扉のカード付近はモンスターは動いていた。
「くっ……だが、私のターン。ふっ、フハハっ!遂に、遂に引き当てたぞ!この「雷魔神-サンガ(攻撃力:2600)」のカードを!そして、既に我らの場には「水魔神-スーガ(攻撃力:2500)」と「風魔神-ヒューガ(攻撃力:2400)」が存在する。これにより、我らは「ゲート・ガーディアン」を場に降臨させる!!」
「なっ、ゲート・ガーディアン!?なんだそれは!?」
場に突然現れた3体の魔神が合体し巨大な怪物が生まれる。ゲート・ガーディアンは3体の魔神が組み合わさり、それぞれの効果を使用可能なモンスターであり、迷宮においては絶対の力を持つ魔神であった。
「デュエルの前に言ったやないか!奴らの切り札、ゲート・ガーディアンはそれぞれ雷、風、水の力を使える怪物モンスターや。攻撃は全て風によって弾かれ、水によって足を止められ雷で消滅させられる。奴らが召喚された以上、撃ち崩すのは至難やぞ」
「城之内!俺のシーステルスを打ち破ったお前なら絶対に勝ち目はある。まずは水を何とかするんじゃ」
二人の言葉を聞き、ゲート・ガーディアンに再び対峙する城之内とミホ。竜崎の説明通り、ゲート・ガーディアンは迷宮を伝う濁流で攻めて来た。
「くっ、俺の炎の剣士が飲みこまれた!?それに、モンスターが水で動きが鈍ってやがる」
「ハハハっ!更に、動きの止めたモンスターをダンジョン・ワームが襲う!そして、地獄の魔物使いがこのダンジョン・ワームを操作し、攻撃力を上げるのだ。これによりダンジョン・ワームは攻撃力を2800となる。アックスレイダー、撃破!」
「ぐっ……」
城之内のアックスレイダーがダンジョン・ワームによって飲み込まれる。迷宮兄弟はゲート・ガーディアンにより完全に迷宮をしていた。
「城之内、この水を利用するんじゃ!お前に渡したフィッシャーマンならやれる!」
梶木の言葉にハッとする城之内。この水位の中でも自由に動けるモンスターがあると気づいた城之内は梶木の魂のカードを想い、デッキからカードを引き寄せる。
その想いに応えたのか、城之内は子のドローで伝説のフィッシャーマンをその手に掴んだ。
「梶木、お前の力を借りるぜ。俺は、伝説のフィッシャーマンを召喚!こいつならこの水の中でも動ける!」
フィッシャーマンはマスを無視して水を利用して迷宮を自由に動き回る。そして、城之内の狙いは魔物使いであった。
「バトル!魔物使いを撃破!これにより、ダンジョン・ワームの攻撃力は2200へと戻る!」
「なっ!?」
「ミホは「神剣-フェニックスブレード」を裁きの女帝に装備!攻撃力を2400に強化!動きの止めたダンジョン・ワームを攻撃!撃破!」
城之内とミホのコンボにより迷宮兄弟のモンスターはゲート・ガーディアンを残して消滅した。迷宮兄弟は苛立ちに歯ぎしりをする。
「くっ、だが!ゲート・ガーディアンがいれば問題はない!フィッシャーマンをヒューガの突風により破壊する!」
迷宮兄弟は門に迫っていたフィッシャーマンを破壊し、場を制圧する。いまだに鉄壁の守りを持つゲート・ガーディアンは健在だが、二人に遂に勝機が見えてきていた。
「ゲート・ガーディアン、そいつを突破して道を切り拓く。ドロー!来たぜ、俺の切り札、レッドアイズ!!」
城之内の場にエースモンスターのレッドアイズが召喚される。だが、その攻撃力は2400であり3体の魔神には及ばない。迷宮兄弟はそれが切り札かと鼻で笑ったが城之内はレッドアイズの可能性に賭けていた。
「俺は「融合」のカードを使う。野坂、お前のモンスターの力を借りるぜ」
「うんっ、城之内君にモンスターを託すよ。お願い!あの魔神を打ち取って!」
裁きの女帝の力を取り込んだレッドアイズがその体を大きくして場に姿を現す。
出て来たのは「レッドアイズスラッシュドラゴン(真紅眼の黒刃竜)」。攻撃力は2800の上級モンスターであった。
「ぐぐぐっ、だが「フォース」を発動する!これで攻撃力はお前たちのLPを半分奪って強化される!これにより攻撃力は3400!そして、ヒューガの絶対風壁がある!どうだ!?これで勝てまい!」
「とんでもねえインチキカードだな。だが、悪いが俺にはもう一人、俺に大切なカードを託した奴がいてな。そう、竜崎の「闇竜族の爪」のカードで攻撃力は600アップ!3400になる!」
「だっ、だが!それでも攻撃力は超えない!これで万策尽きたのなら我らの勝ちだ!」
「いいや、こいつはな。今までやられた戦士族のモンスターの無念を取り込むんだ。俺にカードを託してくれた竜崎、そして梶木のようにやられたモンスターが俺たちの力になる!その数は野坂の墓地の合わせて5体!攻撃力は1000ポイントアップで合計4400!」
「なあっ!?」
レッドアイズの攻撃力が4000を超えるほどに膨れ上がり唖然とする迷宮兄弟。そして、レッドアイズはそのまま怒りの咆哮をあげてメガフレアを撃とうと力をためていた。
「行けっ!レッドアイズスラッシュドラゴン!奴のゲート・ガーディアンを打ち破れ!」
「クソっ!ヒューガ、防護壁を!!なっ、何っ!?何故動かん!?」
「あっ、ごめんね?その子、物忘れしちゃったみたい♪ミホもよくあるんだ♪」
ヒューガの風の防御に土壇場でミホが伏せカード「物忘れ」によりその能力を無効化する。この完璧なアシストにより、ヒューガは沈黙し、城之内のレッドアイズの攻撃がゲート・ガーディアンに炸裂した。
「ゲート・ガーディアン撃破!これでお前らのLPも0だ!俺や野坂、そして竜崎や梶木、俺たち4人の勝利だ!」
「あっ、ああああああああ!馬鹿なぁぁぁぁ!!」
レッドアイズの攻撃が決まり、湧き上がるデュエルボックス。竜崎も梶木も、そしてミホまでもが城之内に抱き着きその勝利を祝った。
「やったな!城之内!ワイのカード、役立って嬉しかったで!」
「流石じゃ!俺たちのカードでよくここまで逆転できた!お前は最高じゃ!」
その余韻をひとしきり堪能した後、城之内とミホは迷宮兄弟へと詰め寄る。
「さあ、出口を教えてもらおうか」
「ふっ、ふふっ、それはお前たち次第よ。この迷と宮の扉!そのどちらかが正解か答えよ!!」
迷宮兄弟の言葉に部屋の奥の迷と宮、二つの扉が仰々しく現れる。
このどちらか片方が正解でどちらかが外れというある種のギャンブルじみた状況に城之内は折角の勝利が台無しになるのではと不安に思いながらも迷う。
「ねっ、ねえ!おじさん!ミホたちにヒントちょうだい?せっかく勝ったんだし後がないんだからいいでしょ?」
ミホの必死のおねだりが効いたのかしぶしぶと一つだけヒントを出す兄弟。
「この二つの扉では迷の私が出口をさし、宮の弟が出口ではない方を指そう」
そうして刺したのはどちらも迷の扉。その答えに二人は頭をかしげる。
「どっ、どういうことだ!?それだとその扉は出口であって出口じゃねえじゃねえか!」
「ふふっ、つまりはそういうことだ。この出口とは存在し存在しえないものである。さあ、指すがいい。どちらが本物の出口か!」
迷宮兄弟の言葉に答えが分からず往生する二人。そうして迷っている所で、二人を助けるべく洞窟に踏み入った仲間が現れた。
「城之内君!ミホちゃん!よかった、ここにいたのか!」
「なっ、遊偽!?お前、どうしてここに!?」
「遊偽君!よかったぁ、また会えたぁ♡」
遊偽、花咲、本田、リサが現れて驚く城之内とミホ。遊偽は城之内を助けに来たこと、そして入口は既に開けたことを話した。
「ってことは、この問いが外れても俺たちは出られるってことか!やったぜ」
「ぐぐぐっ……」
問題が解決したことで喜ぶ城之内とそれを悔しそうに眺める兄弟。遊偽が城之内から事情を聞くとリサはすぐに気づいたように答えた。
「なんだ、そういうことね。PKがやりそうな卑劣な手だわ。つまりは、はじめっから出口なんてものはないってことじゃない。どっちを選んでも多分不正解よそれ」
リサの言葉に城之内は唖然としミホも納得が言ったかのような表情をする。
「なるほど、だからあんな回りくどいヒントだったんだ。酷い、せっかく勝ったのに!!」
ミホはべーっと舌を出して兄弟に悪態をついたが、そこで遊偽がふと分かったかのように前へと出た。
「ミホちゃん、それでもあいつらはヒントを出してくれたんだ。そして勝負を挑んだ上で、出口がないなんてことはないはずだ。つまり、出口はあるけども刺したらその出口は閉じてしまうものだったってことになる。城之内君、これで分かるか?」
「……そうか!分かったぜ、遊偽!その答え!」
城之内は遊偽の言葉にようやく気付いたとばかりに前へと乗り出し兄弟へと答えた。
「俺が刺した方とは反対が出口だ。だが、その出口も俺が刺せば反対が出口になる。つまり、どっちの扉も出口であって出口でなくなる!これが答えだ!」
「っ……、もはや致し方ない。正解だ。お前たちは既に出口を手にしている。今更隠すことはなくなったからな。どちらの扉も空けておく。3つの出口から好きな方へと出ていくがよい」
迷宮兄弟は観念したとばかりに二つの出口を開ける。城之内はその出口へと歩いた。
「何よ。折角私たちが開けたのにそっちを通るわけ?」
「へっ、俺たちがつかみ取った出口だ。こっちを使いたいのさ。いいだろ?遊偽」
リサの咎めるような言葉に陽気に返す城之内。ミホとともにPKを破りその成果を確かめた城之内に、遊偽もまた反対する気持ちは起きずその言葉にうなずく。
「ああっ。これは城之内君とミホちゃんが掴んだ勝利だ。俺は止めないさ。一緒に出よう、城之内君」
「遊偽……ありがとよ、助けに来てくれて。お前が来た時、やっぱり嬉しかった。島で一人で勝ちあがるって決めてたのに、野坂や本田、それに新たにできた仲間に、遊偽たち、皆が俺を助けてくれた。信頼できる仲間っていいもんだな」
「……城之内君がここまで頑張ってきたからさ。だからこそ皆助けたがる。一緒に王城へ行こう、城之内君」
「おうよ!」
城之内一行と合流した遊偽らは迷宮の出口を使って王城前へと到達した。そして、王城の門へと到達した城之内とミホはスターチップを嵌めこむことで本選への出場資格を得る。
一方で、竜崎と梶木は既に迷宮兄弟に敗れスターチップを失ったことを受け入れているのか、そのままギャラリーとして遊偽たちに同行した。
こうして、遊偽の仲間たちは合流し王城にて本選を待つこととなった。