※この作品はR-18です。

遊戯王のパズルの悪い使い方   作:菓子ラムネ大好き

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第39話

 デュエリストキングダム本選第二試合。

 

 

 遊偽と舞の第一試合が終わって間もなく、デュエルマシーンを挟んで向かい合うような形で選手である城之内とキースが対峙していた。

 

 

「キース……てめえ、今度は何もしてねえだろうな?また下らねえことしてるようなら許さねえぞ」

 

 

 キースと出会って開口一番に非難めいた口調でにらみつける城之内。そんな城之内にキースもまた苛ついた表情で城之内に鋭い視線を向ける。

 

 

「チッ、うるせえ!俺が何をしようと勝手だろうが!くくっ、勝負の世界ってのはな、そんな甘えもんじゃねえのよ、城之内」

 

 

 睨み合う城之内とキース。二人の間には洞窟でのいざこざに加えて出来た深い溝があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は遡って昨晩。

 

 

 時間は深夜に差し掛かり城にいる殆どの者が寝静まった頃。

 

 

 晩餐会で酒を浴びるほど味わったキースは、元同僚のテッドと別れた後、酒に酔った勢いで思い至ったある妙案の為に廊下をうろつき回っていた。

 

 

(へへっ、参加者どものデッキを盗んじまえばデュエルすることもなく俺の不戦勝となる。奴らは明日に備えて早く就寝してるだろうし、俺の盗みのスキルがあればこっそり拝借するぐらい訳ねえことだ。くくくっ、やっぱり俺様って天才だわ)

 

 

 酔いに流されて参加者のデッキを奪うという直接的な暴挙に出たキースは最初の獲物だと意気込んで城之内の部屋へと忍び込む。

 

 

 当然の如く施錠されていた城之内の部屋の扉だが、電子ロックではなく古城に相応しく旧式の鍵穴なことに目を付けたキースはピッキング道具にて開錠するとそのまま忍び足で部屋へと入った。

 

 

 城之内が寝ているのを確認した上でバッグの中を漁っていたキースであったが、酒で注意が散漫していたためか、偶々目を覚ましていた城之内に気づけずその気配を察知され現場を捉えられる。

 

 

「てめえ!キース!?何してんだコラッ!」

 

 

 私物を荒らしているキースに殴り掛かる城之内。殴られたキースは怒りの衝動のままに城之内と取っ組み合いとなった。

 

 

「ガキが!よくもやりやがったな!舐めんじゃねえぞ!!」

 

「ああっ!?先にやったのはてめえだろうが!?逆ギレかよ!喧嘩なら負けねえぞ!」

 

 

 掴んだ城之内を相手に殴るも逆に腕を掴まれて頭突きを返され痛みのあまり膝をつくキース。

 

 

 痛みと一方的にやられる屈辱からか殺意を滾らせて懐から凶器のナイフをキースは取り出す。

 

 

「死ね!ガキ!!」

 

 

 ナイフを突き出すキース。だが、その突きは酒の酔いのせいかおぼつかなく寝起きとはいえ喧嘩により覚醒し冴え切った城之内の前にあっさりと弾かれ組み伏せられる。

 

 

「糞っ!ガキっ!放しやがれ!!」

 

「煩え。こんなもんまで持ち出してよく言いやがる。それとお前、さっき何してやがった?」

 

 

 喚くキースを抑え込んで侵入の意図を問いただす城之内。しかし、肝心のキースは黙秘を決め込む始末で城之内は黙り込むキースとバッグを漁っていた事実からその意図を推察する。

 

 

「まさか、俺のデッキか参加カードでも盗んでやろうとか思ってたんじゃねえだろうな?どうなんだ!?」

 

 

 尚も黙りこくるキースだが図星を突かれたことで動揺しているのを察した城之内は表情を歪ませながらそんなキースに言葉をぶつける。

 

 

「そうなんだな。どうしてそんな事しやがる!お前、自分が情けなく思わねえのか!?」

 

 

 侮蔑の混ざった怒りをぶつける城之内にキースは歯ぎしりをすると必死に抵抗しその拘束を振り払った。

 

 

「うるせえ!てめえみたいなガキに説教される謂れはねえんだよ!どうして、だ?そんなの決まってる!勝つためさ!勝つ為に一番手っ取り早い方法がこれだっただけのこと!勝負の世界ってのは結局は勝つか負けるか、それだけなんだよ。イカサマだろうが汚い手だろうが勝った奴が正義なんだぜ!」

 

 

 開き直るキースに城之内は怒りの感情を爆発させ掴みかかる。だが、それでもキースはそんな城之内をせせら笑うだけであった。

 

 

「キース!お前、洞窟で俺らを閉じ込めて、そんで慕っていた子分を切り捨てて……そんで本選前に対戦相手のデッキをパクろうだとはどこまで腐ってやがるんだ!勝つためなら何でも許されると思ってんのか!?勝てば正義だ!?冗談じゃねえ!そんな勝ち方があるかよ!!」

 

「くっ、くくっ、くくくくっ、カッハッハッハッハッハ!!やっぱり、お目出たい奴だな、お前は!勝ち方、だと?そんなもんに拘ってる奴は本当の地獄を知らねえんだよ。敗者がどんな扱いされるのか、勝負の世界では勝ちってもんが全てだってことを、その身で味わったことがねえ半端もんだから言えるんだぜ小僧!!」

 

 

 嘲り混じりに哄笑するキースはひとしきり笑い終えた後、城之内を睨みながら自分が味わった地獄を語る。

 

 

 酩酊から覚め気分が良くなったのか自身の黒歴史である全米チャンピオン時代の栄華とそこから転落したペガサスとの対決を語るキース。

 

 

 カード・プロフェッサーとして名を馳せたキースにとってデュエルモンスターズ創始者であり、天才デザイナー兼カード・プロフェッサーの名声を得ていたペガサスとの勝負はキース自身の経歴を新たな高みへと上げるステップの一つにしか過ぎなかったはずであった。

 

 

 だが、そんな思惑で叩きつけたキースの挑戦状はペガサスによって最悪の形で返された。

 

 

 ペガサスはキースが送り付けた挑戦状を5万人もの観客を集めたドームで、スポンサーらを募り100万ドルの賞金をかけたマッチの形で全米での中継放送とした上でその場でキースを晒しものにしたのだ。

 

 

「奴はな、俺の手札を全て把握してやがった。そして、その手札をメタったカードで奴の手ではなくその場の素人のガキの手で倒させたんだ。あの試合、あの放送のせいで俺は素人のガキにやられたプロにあるまじき恥晒しだのペガサスと八百長組んだデュエリストだの散々な評価を受けた。何より、仮にもそこでやり方教わっただけのガキにやられた事実が俺のプライドをずたずたに引き裂いたんだ!」

 

 

 カード・プロフェッサーの座を降ろされ、更にはプライドも傷つけられその失意のまま闇デュエルに身を投じ、危険なギャンブルに嵌り酒に溺れどこまでも堕ちていったキースはその忌まわしい過去を思い出し悲痛な叫びをあげる。

 

 

「っ、だからって人を傷つけていい理由にはならねえよ!それに、そこまで落ちたのも半分は現実逃避してただけだろうが!」

 

 

 半分は自業自得だと突き付ける城之内にキースは表情が強張る。だが、すぐさま湧き出した怒りのままに城之内に再び掴みかかった。

 

 

「だからガキなんだよ!そんなに簡単に割り切れるかってんだ!俺はペガサスを許さねえ!奴を倒して賞金を手に入れる!そのために俺はこの島に来たんだ!途中邪魔する障害は全てぶっ飛ばす!この世にはな、理不尽が溢れてるんだ。その理不尽ってやつを俺様が邪魔な奴らに教えてやるってんだよ!!」

 

 

 キースが城之内を蹴り飛ばすがすかさず城之内はキースの腹に飛び蹴りを喰らわせる。呻くキースに城之内はそのまま掴み上げると顔を自分に合わせた。

 

 

「そうやって俺は不幸だって周りに当たり散らしてるてめえのがよっぽどガキだろうが!キース、お前を見てるとな、昔の俺や現実逃避してやがるクソ親父を思い出して嫌な気分になっちまうぜ!腐ってるんじゃねえよ!仮にも昔は全米チャンプだってんならてめえの実力で素人のこの俺に正々堂々と勝ってみせやがれ!」

 

 

 城之内の言葉に、元全米チャンプのプライドが僅かながらでも刺激されたのか、はたまた子供に説教されて不快に思ったのか、その手を振り払うと城之内から離れるキース。

 

 

「っ、うるせえ!言われなくても素人のガキごときにやられるほど俺は落ちぶれちゃいねえ!確か、城之内とか言ったな。明日のデュエルで俺様の力を思い知らせてやる!震えてその時を待ちやがれ」

 

 

 捨て台詞を吐き終えるとキースはそのまま城之内の部屋から立ち去っていった。

 

 

 そんなキースの後ろ姿を城之内は苦い気持ちで見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして、一夜が過ぎ、時は第二試合開始直前へと戻る。

 

 

「てめえ、また妙な小細工はしてねえだろうな?」

 

「ハッ、そんなんしなくてもお前ごときに負けるわけがないだろうが!いいからデッキを置け、城之内!実力の差ってのをこのキース様が教えてやる」

 

 

 デュエルマシーンのパネルにデッキを置くキース。そんなキースに倣って城之内も自分のデッキをパネルへと置く。

 

 

「キース、お前を慕ってた骨塚たちを裏切り、俺たちにしてきたことを俺は絶対許さねえ!このデュエルでお前を叩き潰す!デュエル!!」

 

 

 城之内の掛け声とともに城之内とキース、二人が対峙する第二試合のデュエルが始まった。

 

 

「俺様のマシーンデッキはモンスターのパワーが桁違いよ!「振り子刃の拷問機械(攻撃力1750)」!召喚だ!」

 

「魔導騎士ギルティア!攻撃だ!」

 

「馬鹿め!俺様のマシーンモンスターに魔法攻撃は効かねえ!更に、俺様は「TM-1ランチャースパイダー(攻撃力2200)」!ギルティアを粉砕!」

 

「ぐっ……」

 

 

 キースの圧倒的な火力を持つマシーンモンスターとキースの戦術により城之内のモンスターは悉く敗れ去り劣勢のままデュエルは展開される。

 

 

「おい城之内!もっと気張らんかい!何やっとんねん!」

 

「流石はキースね。元全米チャンピオンだけあって手強いわ」

 

 

 焦る竜崎と相手の力量に不安を隠さないリサ。対する遊偽もまたこの展開に顔を強張らせる。

 

 

「城之内君……何とかここから挽回出来ればいいけど」

 

「……大丈夫だよ。ミホ、見てきたもん。今まで自分より強い格上の相手に厳しい状況でも諦めずに何度も逆転した城之内君を。ミホや遊偽君が思ってるよりもずっと強いよ、城之内君は」

 

「……そうだね。俺も信じてるよ、静香ちゃんを想う城之内君の強さを」

 

 

 ミホの言葉に納得したのか遊偽は表情を和らげて城之内のデュエルを見つめる。そして、その言葉通り城之内は見事に劣勢を覆した。

 

 

「どっかーんっ!トラップカード発動!「串刺しの落とし穴」!これでてめえのメタルゾアを撃破!更に、その1/4の750ポイントをお前のLPから削るぜ!!」

 

「ぐっ、何っ!?その伏せカード、ハッタリじゃなかったのか!?」

 

「くくっ、どうよ!有利だからって余裕こいてるからこうなるんだぜ!元全米チャンプってのも吹かしか?」

 

「こっ、このガキぃ!」

 

 

 一方的な展開から一転してLPが並び勢いづく城之内。城之内は続けざまにキースの攻撃を裁きモンスターを撃破していった。

 

 

「鎖付きブーメラン!これでガルーザスを強化しランチャースパイダーを撃破!」

 

 

 キースのLPが遂に城之内を下回る。その状況に喜び盛り上がるギャラリーを後目にキースは増々苛立ちを募らせていく。

 

 

「くっ…俺がお前如きに負けてたまるか!どん底を知らねえお前に勝負の世界の絶望ってやつを味わった俺の底力を見せてやる!俺はこの「リボルバー・ドラゴン(攻撃力:2600)」を召喚!!お前にも地獄のギャンブルってやつを味合わせてやるぜ!」

 

 

 リボルバー・ドラゴンの特殊効果により1/2のロシアンルーレットが始まる。これによりガルーザスとアックスレイダーの2体がリボルバー・ドラゴンのガンキャノンの前に沈んだ。

 

 

「何て凶悪なモンスターなの。素の攻撃力が2600な上に3回のロシアンルーレットの当たり回数で攻撃できるなんて……。これは早々に片づけないとモンスターが削られる一方ね」

 

 

 舞が眉を顰めながら独白する。遊偽もまたその能力の強さに舌を巻いていた。

 

 

「ベビードラゴン!そして時の魔術師のコンボだ!こいつなら……」

 

「おっと!「時の機械-タイム・マシーン」だ!こいつで俺のリボルバー・ドラゴンを以前の攻撃力に戻すぜ。返り討ちだ!!」

 

「ぐっ……マジかよ」

 

 

 城之内の戦術を逆に利用した形で覆すキースの手に城之内は更に追い詰められる。キースのこの手腕には観戦していた遊偽たちも思わず息を呑んだ。

 

 

「城之内、どうやら俺様との実力の差がここで分かりやすく現れちまったな。このリボルバー・ドラゴンを倒すモンスターはてめえにいるか?」

 

 

 キースの煽りに表情を歪ませる城之内。だが、城之内はまだ諦めていなかった。

 

 

 竜崎、梶木、そして骨塚やPKである迷宮兄弟。どの相手も自分より強く手強い相手であったが城之内は何度も折れかけては仲間たち、そして静香への想いで勝利をつかみ取りここまできたのだ。今自分のデュエルを眺めてる恩人であり親友の遊偽に対する想いもまた城之内を奮い立たせていた。そして、最後にもう一つ、目の前の相手のキースが自分の屑親父にだぶって見えたこともこの相手には負けたくないという意地となっていた。

 

 

「俺は、諦めない。俺にはまだこの状況を切り拓くカードがある。頼む、俺に道を示してくれ!ドロー!!」

 

 

 城之内を勝利に導いた未来を示すカード、レッドアイズが城之内のもとへと到る。

 

 

「俺は、レッドアイズ・ブラックドラゴン!こいつが俺のエースだ!」

 

「出やがったな!だが、そのカードじゃ俺のリボルバー・ドラゴンは倒せねえぞ!城之内」

 

 

 切り札の登場に城之内に対抗するように威圧するキース。だが、既に城之内の手にはこの状況を打破するカードが手札にあった。

 

 

「俺は闇竜族の爪のカード!これで攻撃力を600ポイントアップ!ダークメガフレア!!」

 

「馬鹿なっ!?ぐうっ……」

 

 

 城之内のレッドアイズによりリボルバー・ドラゴンが破壊される。キースは苦虫を嚙み潰したように表情を歪めた。

 

 

「おっ、あれは竜崎、お前のカードじゃないか?あれを城之内に譲ったんか?」

 

「ああっ、落ちた以上はこの大会でワイが持っててもしゃーないやろ。それに、ワイを倒した男がチャンピオンになったら誇らしいやないか。餞別ついでに大会で活用してくれと渡したんや」

 

 

 観戦場で梶木の問いに誇らしげに鼻を啜りながら答える竜崎。そんな竜崎に「お前、いい奴じゃ!」っと梶木は嬉しそうに組み付いていた。

 

 

「ふふっ、面白いデュエルです」

 

 

 一方で特等席でデュエルを眺めていたペガサスは付き人の初老の黒服の前でそう呟く。

 

 

(闇から抜け出し希望の光を求めている者といまだ闇に囚われたままでいる者。千年眼で見える二人のマインドはまるで光と闇の対比の様。さて、どちらが勝つのか……)

 

 

 ワインを傾けながらペガサスは楽しそうにそのデュエルの展開を観戦していた。

 

 

 そんなペガサスの思いは知らず、二人のデュエルは更に白熱した展開へと移る。

 

 

「俺は「スロットマシーンAM-7(攻撃力2000、守備力2300)」を召喚!更に、「バンデット」!こいつでてめえのカードを奪わせてもらうぜ!」

 

「何っ!?俺のカードを!」

 

「へへっ、この「右手に盾を左手に剣を」のカード、確か骨塚もこれでやられたよな。こいつでスロットマシーンは攻撃力2300となり、逆にレッドアイズは攻撃力を1600になる。バトルだ!これで俺の勝ちだぜ!」

 

 

 キースのモンスターの攻撃力がレッドアイズを上回り城之内は絶対絶命となる。観衆も固唾をのんでそのバトルを見つめたが城之内は咄嗟に伏せカードを発動させた。

 

 

「「モンスターBOX」!これで攻撃をかく乱する!」

 

「チッ……悪運の強え奴だ。だが、状況は俺が有利だ!どうだ!」

 

 

 間一髪でキースの攻撃を防ぐ城之内。しかし城之内の手札にはこの状況を打開するカードは残っていなかった。

 

 

(……レッドアイズ、お前がまだ可能性を秘めてるなら俺にその力を貸してくれ!)

 

 

 城之内はレッドアイズに秘めたる力を信じカードを引く。静香を一瞬思い浮かべながら勝利を願って引いたカードはその想いに応えるものだった。

 

 

(融合!?まさか…いや、そうだ!)

 

 

 城之内は手札に揃ったカードを見て確信する。ここは挑戦に出るべき状況だと。レッドアイズは自分の心を試しているのだと。

 

 

「俺は伝説のフィッシャーマンを召喚!」

 

「なっ!?伝説のフィッシャーマン!?あれはお前のカードやないか!梶木、お前もあれを城之内に譲ったんか!?」

 

 

 城之内の場にフィッシャーマンが現れたことに動揺し問いかける竜崎。それに対し梶木は反論するかのように顔を寄せる。

 

 

「違う!あいつに貸しただけじゃ!俺はあいつに気づかされた。ずっと親父のカードに対して甘えがあったってことを。だから、俺があのカードに頼らずに城之内や遊偽を倒した時、初めて親父のカードを胸にしまえる。そう思ったからあいつに渡したんじゃ!それと、あいつを応援する気持ちを込みでな!城之内!負けるんじゃねえぜよ!」

 

 

 竜崎には自戒の言葉を吐いた後に城之内が使ったことに嬉しそうな顔をしながら応援する梶木。そんな梶木に気づいた城之内はふっと笑いながら二人にサインを送った。

 

 

「そうだ、俺には仲間がいる。遊偽たちのような頼れる仲間や竜崎、梶木のようなライバルが!だからこそ俺はここまで来れたんだ!俺はみんなの力を借りてお前に勝つ!「融合」!これでレッドアイズとフィッシャーマンを融合される!」

 

「なっ、何だと!?それで何が出るか分からねえのに正気か!?」

 

「ああっ、俺は信じてるからな!レッドアイズと仲間たちの力を!出ろ!レッドアイズ!お前の可能性を見せてくれ!」

 

 

 ぱっと眩い光を照らし光の中から現れたのはレッドアイズ・スラッシュドラゴン。

 

 

 その攻撃力は元々の2800に加えて墓地にある戦士族モンスター4体の分が合わさり3600へと上昇した。

 

 

「レッドアイズ!スロットマシーンを撃破しろ!!メガフレア!!」

 

「くっ、攻撃の無力化!これでレッドアイズの攻撃を無効化する!」

 

 

 ギリギリのところで凌いだキースであったが手札には既にスラッシュドラゴンに対抗できるカードはなかった。

 

 

(くっ、くぅ……俺が、負ける!?馬鹿な!こんなガキに、俺が!!ペガサスを叩き潰す前に、負けるだと!?)

 

 

 手を震わせてその事実に慄くキースであったが、ふとそこであることを思い出す。

 

 

(いや、そうだ。俺はまだ負けてねえ。この手のリストバンドに仕込んだ7カードさえあれば……)

 

 

 キースはその手をゆっくりとリストバンドへと近づける。その様子をペガサスはマインドを読み取りながら目聡く伺っていたがキースには知る由もないことであった。

 

 

 だが、その手がリストバンドに届きかけたところで止まりキースは逡巡する。

 

 

 

“腐ってるんじゃねえよ!仮にも昔は全米チャンプだってんならてめえの実力で素人のこの俺に正々堂々と勝ってみせやがれ!”

 

 

 

 昨夜の城之内の言葉がキースの脳裏にフラッシュバックする。その言葉はキースが長らく忘れていたデュエリストの魂を呼び起こし、そのプライドを欠片だけでも刺激させる言葉であった。

 

 

(ぐっ……馬鹿なことを!勝負ってのは勝たなきゃ意味ねえんだ……。それは俺が誰よりも知ってる。どんな手を使おうと勝った奴が持て囃され負ければ泥を啜る羽目になる。あの後は裏の賭けデュエルにもそうやって勝ってここまで来たじゃねえか!今更何を躊躇ってやがる!俺が欲しいのは勝利だ!そうだろ、バンデットキース!)

 

 

 邪念を消し去るかのように力強くリストバンドに隠したカードを手札に加えるキース。そうして加えた二枚の7カードをスロットマシーンへとかけた。

 

 

「7カード!1枚につきスロットマシーンの攻撃力を700ポイントアップさせる!これで攻撃力は2300から3700になるぜ!勝負あったな!城之内!!」

 

 

スロットマシーンがその手を翳してレッドアイズに砲撃を仕掛ける。誰もが終わったと息を呑んだが城之内だけがその目に強い光を放っていた。

 

 

「アハハハ!レッドアイズを撃破!俺様の勝ちだ!ひゃはははっ、はっ……何っ!?」

 

 

 爆炎に勝利を確信したキース。しかし、煙が晴れるとそこには無傷のレッドアイズが現れる。

 

 

「俺の伏せた墓荒らしのカード。こいつでてめえの「メタル化・魔法反射装甲」を奪って使わせてもらった。キースよ、盗みの腕で競おうなんて思っちゃいねえが、盗むなら現実じゃなくてデュエル中のカードで盗みを上手く決めようぜ。レッドアイズ!反撃だ!ダーク・メガフレア!スロットマシーン撃破だぜ!!」

 

「ばっ、馬鹿な……俺が、この俺が、こんなガキに……俺が……」

 

 

 レッドアイズ・スラッシュドラゴンの攻撃によりスロットマシーンが消滅する。こうして完全に攻めの手を阻まれたキースは城之内によって敗れた。

 

 

「やったっ、やったぁぁぁ!城之内君が勝ったよ、遊偽君!!」

 

「ああっ、城之内君…よく全米チャンピオンのキースから……。おめでとう!城之内君!!」

 

 

 遊偽らの喜びの声を聞きながら感極まった様子でガッツポーズを決める城之内。

 

 

「うおぉぉぉぉぉ!!勝ったぞ!遊偽!野坂、竜崎、梶木!皆!」

 

 

 城之内の勝利の雄たけびにギャラリーのテンションも一層盛り上がる。

 

 

 そんな城之内らとは裏腹に敗れたキースは膝をつきその事実に傷心していた。

 

 

「俺が……負けた。俺が……、だが、ペガサスぅ!貴様だけは!!」

 

 

 突如立ち上がるとマシーンを飛び越えてペガサスのいる特等席へと侵入するキース。

 

 

 傍に居るSPの面々に囲まれながらもキースは懐から隠し持っていた銃を取り出した。

 

 

「なっ!?キース、てめえ何してやがる!」

 

「騒ぐな、城之内!これが俺の答えだ!ペガサス、もうデュエルなんざどうでもいい!てめえに以前受けた屈辱の恨み、ここで晴らさせてもらうぜ!」

 

 

 銃をつきつけるキースに冷ややかな目線を送るペガサス。キースの怒りを嘲笑で返すと椅子からおもむろに立ち上がる。

 

 

「どうやらユーはデュエリストのマインドを失ったようです。城之内ボーイとのデュエルでも躊躇う心はあったようですがそのままリストバンドからカードを抜くイカサマをした。ここで終わりにしましょう。罰ゲーム!!」

 

「うっ、うおぉぉぉぉぉ!!なんだ、なんだこれは!?」

 

 

 ペガサスの千年眼が輝くと同時にキースは幻術による精神ダメージを受け、銃を落とし床にのたうち回る。

 

 

「デュエリストとしての誇りを失ったユーをユーが使ったモンスターたちが責め続けています。そう遠くない頃に廃人と化すでしょう。連れていきなさい」

 

 

 黒服に命じて発狂するキースを下がらせるペガサス。闇の力の発現に遊偽や城之内、そして他の面々も唖然としていた。

 

 

「くっ……元はと言えばてめえが撒いた種だろうに……。キース、屑野郎だったがてめえの無念くらいは俺が引き継いでやるぜ」

 

 

 城之内は正気を失い連れ去られるキースに僅かながらの憐憫の情を向けるとペガサスへと目を向けた。城之内にとっても杏子の魂をカードに封じ込めたペガサスは憎き敵であるのだ。それを思いながら城之内はデュエルマシーンから下がった。

 

 

 こうして城之内とキースの第二試合も幕を下ろし、一回戦は残すところあと一つだけとなった。

 

 

 ミホは城之内の勝利に元気づけながらも遊偽に励まされデュエルの準備を進めていた。

 

 




誤字報告ありがとうございます。
見返す時間があまりないので助かっています。
城之内VSキース戦は初代のデュエルでは1,2を争うくらい好きです。
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