※この作品はR-18です。

遊戯王のパズルの悪い使い方   作:菓子ラムネ大好き

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第40話

 

 

 城之内とキースの第二試合が終わり一回戦もいよいよ大詰めとなるミホとテッドの第三試合の時間となる。選手であるミホは仲間たちの激励を受けながら準備を進めていた。

 

 

「ちょっ、ミホちゃん!いつまで抱き着いてるのさ!そろそろデュエルが始まる時間だよ」

 

「でもー!こうして遊偽君を抱きしめてると緊張が解れて力が沸いて来るの。もうちょっと、もうちょっとだけ!ね?」

 

 

 抱きしめられ困った顔で窘める遊偽にダダを捏ねて縋り付くミホ。リサは剥きになって引きはがそうとし城之内や舞は呆れたようにその様子を見つめていたがミホはそれらを無視し暫くの間遊偽の胸元でその温もりを確かめている。

 

 

「……私、遊偽君みたいに強くないし人質を取られてる遊偽君や海馬君を押しのけてまで優勝目指したいなんて思ってないの。それに、城之内君みたいに妹の手術費を自分の手で掴み取りたいってほどの強い思いもない。3人に比べると私は本当に軽い気持ちで参加してると思う……」

 

 

 遊偽にのみ聞こえるような声量でミホは囁く。その声にはいつもの明るさはなく、ミホなりの葛藤が伺えた。

 

 

「だけど…だけどね。予選を通過してここまで来れたのは嬉しいし真剣にデュエルすることの楽しさに気づけた。そしてそんなデュエリストの貴さにも。だから、次のデュエル勝つよ!ミホ、絶対勝つんだ!そんな軽い気持ちでやってるミホだけど人質になった杏子ちゃんやモクバ君は救いたいし遊偽君たちの障害の露払いくらいはしたい。賞金稼ぎのデュエリストには絶対負けないんだから!」

 

 

 ミホが凛とした顔つきで遊偽から離れる。遊偽、海馬、城之内と違い背負うものの少なさに人知れず引け目を感じていたようだがそんなミホも自分なりの思いを持って戦うことを決意したようで、その顔は一人前のデュエリストそのものであった。

 

 

「うん、今のミホちゃんなら勝てるよ。俺は応援してる。全力をぶつけるんだ!」

 

「ありがとう♪行ってくるね♪」

 

 

 にっと眩いばかりの笑顔を見せた後、後ろで結んだリボンを翻しながらミホはデュエルマシーンへと足を運ばせる。

 

 

そこでは既にテッドが待ちくたびれたとばかりにだらけた様子でミホを出迎えた。

 

 

「はんっ、ようやく来たのかお嬢ちゃん。彼氏への挨拶は随分と長かったな。全く、何で俺がこんなのを相手に……。懸賞金がかかってる遊偽や海馬をさっさと倒してえんだ。早く終わらせようぜ」

 

「……そうだね。ミホも同じ気持ち。ペガサスに雇われたPKの賞金稼ぎを次の海馬君と戦わせるつもりはないよ。あなたはここで落とす。このデュエルに勝つのはミホだから!デュエル!!」

 

 

 デュエルマシーンにデッキをセットし、審判の開始の合図とともにミホとテッドの第三試合のデュエルが始まる。

 

 

 晩餐会で酔った勢いでペガサスの息のかかったPKであり参加者枠を埋める為に本選出場したこと、そして城之内とミホを閉じ込めたキースを裏で誘ったのが自分であると漏らしミホを見た目から侮ったテッドに対して憤りを覚えていたミホはいつも以上の気迫をもってテッドと対峙した。

 

 

「ホーリー・ドールを召喚!」

 

「はっ、それなら俺はスパイク・ライノセス(攻撃力:1800)だ!ホーリー・ドールを撃破!」

 

「うっ、ミホのモンスターが……」

 

 

 初手は後攻のテッドが上級モンスターを召喚し制する。しかし、ミホもその激しい攻勢にすぐさま対応する。

 

 

「ミホは逆転の女神を召喚!更に、銀の弓矢で攻撃力300ポイントアップ!バトル!」

 

「ほぅ、やるじゃねえか嬢ちゃん」

 

 

 そうして二人のデュエルは一進一退の攻防となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 デュエル場でミホとテッドの第三試合が行われている一方、遊偽一行の仲間である本田、花咲、月行の別行動組は城の地下へと侵入していた。

 

 

「昨日確認した通り、この先の牢屋に囚われているモクバ君を救出します。巡回している見張りと牢番は本田君と花咲君に任せますがよろしいですね?」

 

 

 月行が地下の空き部屋にて二人に最終確認をする。二人はそれに覚悟は出来ているとばかりに強く頷いた。

 

 

「ああっ!あんたの攪乱が成功したら俺が見張りと牢番を何とかしてやるよ。花咲、モクバを誘導するのはお前に任せるぜ」

 

「うん!絶対遊偽君や海馬君のいるデュエル場まで連れていくよ!任せて!」

 

 

 二人が確認し合ったところで月行は作戦決行の開始として手元のPCを打ち始める。

 

 

 三人がいる場所は地下の電気制御室である。そこで月行はPCを繋げて地下区域の電光をシャットアウトする。

 

 

「よしっ、作戦スタートだ!」

 

 

 地下区域が暗闇に覆われたことで本田は花咲を連れて動き出す。

 

 

 地下の構造は事前に頭の中に叩き込んでおり、部屋から牢屋への道も迷うことなく進むことが出来た。

 

 

「先手必勝!おらよっと!!」

 

 

 道を塞いでいた混乱する黒服を叩きのめす本田。城之内ほどではないが本田も並みの不良相手なら3人までは相手することが出来るほどには喧嘩が強い。このアクシデントにより動揺した黒服に対して1対1ならば負けないという自負が本田にはあった。

 

 

「凄い……流石本田君」

 

「へっ、道中は任せろ!行くぞ花咲!牢屋はすぐそこだ!」

 

 

 勢いづいた本田が牢屋の入り口へと侵入する。モクバを監禁している牢屋には牢番と黒服の二人がいた。

 

 

「このっ!糞っ、こいつら強え!」

 

 

 停電からある程度侵入者の到来を想定していたのか牢番と黒服に混乱はなく非常灯に照らされた部屋で視界もはっきりしているためか本田は不利な状況へと陥った。

 

 

「ぐっ、ここで勝たなきゃいけないんだ!僕も…僕も戦う!そして、モクバ君を救って遊偽君や海馬君たちを手助けするんだ!!」

 

 

 がしっと体全体で黒服にしがみつく花咲。本田に隠れていたひ弱そうな少年がまさか組み付いて来るとは想定外だったのか黒服は焦って花咲を引っぺがそうとする。

 

 

 何度も殴られ痣や血を流しながらも花咲は懸命に食らいついた。

 

 

 そして、その隙を逃す本田ではなかった。

 

 

「花咲、お前のガッツのおかげで立て直せるぜ。おらっ!!」

 

 

 牢番を蹴とばした本田は黒服に渾身の一撃を喰らわせる。これに花咲を引きはがすことの出来なかった黒服は受け流すことすらできずに直撃し転倒した。

 

 

「はぁ、はぁ……よかった……勝った」

 

 

 ボロボロになりながらも勝利を喜ぶ花咲に本田は「お前のおかげだ」とその背中を擦る。

 

 

 そうして牢番から鍵を奪った二人は牢屋のカギを開けて魂の抜けた抜け殻となったモクバの身柄を確保した。

 

 

「よしっ!月行のもとへ戻るぞ!俺が先頭になって近づいて来る奴を叩きのめす!行くぞ花咲!」

 

「うんっ!」

 

 

 本田と花咲はモクバを連れて来た道を戻る。道中、牢屋へと向かって来た黒服と何度か遭遇したがその度に本田が不意打ちで倒していった。

 

 

「本田君!花咲君!よくぞ無事で……モクバ君を連れて来たんですね。まさか、それほど多くの黒服を相手に誰一人欠けることなく成功させるとは……」

 

 

 部屋へ戻ると月行は驚いた表情で二人を迎える。黒服との遭遇が予想以上に多かったがそれを二人が切り抜けたことに純粋に驚いていた。

 

 

「いてて……随分と無理しちまった。城之内なら黒服2人相手でも真向から倒せるだろうが、俺じゃ不意打ちで1人相手にやっとだ。だが、花咲もその都度協力してくれたおかげで上手くいった。今回の成功は俺だけじゃなくこいつのおかげさ」

 

 

「そんな……本田君がいてくれたからこそだよ」

 

 

 気恥ずかしさからか謙遜する花咲。そんな花咲に本田は「もっと自信持てよ」と楽し気に背中を叩く。

 

 

「さて、そろそろ上へと戻りますか……むっ!?」

 

 

 二人を微笑まし気に見ていた月行がそろそろとばかりに腰を上げた所で侵入者の気配を感じ警戒を強める。

 

 

「ふふふっ、人質を連れてどうするつもりだい?兄さん」

 

「お前は……夜行!?」

 

 

 現れたのは月行の弟の天馬夜行。ペガサスが育てたペガサスミニオンの1人でもありペガサスを妄信している月行と同じくアジア総局に配置された人間である。

 

 

「月行さんにそっくりだ。まさか、月行さんが以前言っていた弟の……」

 

「本田君、花咲君!今すぐモクバ君を連れて逃げてください!夜行がここにいるということは時期に囲まれてしまいます!」

 

 

 夜行の存在に動揺する本田に月行が即座に声掛ける。それに花咲もハッとしたようにモクバを連れて動き出した。

 

 

「月行さん……すみません、任せます」

 

 

 申し訳なさそうに顔を伏せる花咲に笑みを見せると月行は逃げた花咲と本田を守るかのように夜行に立ちふさがる。

 

 

「ふふっ、相変わらず兄さんは勘が鋭い。だけど、既にこの通信機でデュエル場までの道を封鎖している。彼らが辿り着けるかは……」

 

「いいえ、彼らなら出来ます。彼らは仲間たちの為なら力を発揮できる人間だからです。そして、今私に出来るのはお前を止めることのみ」

 

 

 月行が毅然とした態度で夜行と対峙する。その様子に夜行は苛立ちを隠せない様子で声を荒げた。

 

 

「っ、どうしてだ!月行!!何故、ペガサス様を裏切った!ペガサス様は孤児の俺たちを引き取り育ててくれた恩人だぞ!?それを……」

 

「……分かっています。その恩を忘れたこともありません。ですが、気づいたのです。間違っている道を歩んでいるのにそれを止めずにいるのが果たしてペガサス様の為になるのかと。その道が間違っているのなら全力で止めるべきではないのかと。ペガサス様が自分を取りもどす為に私は彼らと手を組み今ここにいる!」

 

「くっ、くくくっ、ペガサス様が間違っている!?失った愛する女性を取り戻したい、それだけじゃないか!そんなペガサス様に協力してあげずに恩を返せるわけがないだろう!?仮に間違ってるならそのまま堕ちて支えるのが恩返しじゃないか!なあ、月行!!」

 

 

 月行と夜行、二人のペガサスミニオンが恩人に対する恩返しの仕方を軸に激しい口論を展開する。

 

 

 恩人が間違っているならたとえ敵となっても正すべきか、それともともに堕ちて支えるべきか。

 

 

 二人の口論は互いに平行線のまま激化し、やがてその決着をつけるために勝負へと到る。

 

 

「月行、俺たちのどちらが正しいのか。こうして口で争っても収まりはしない。ならばやるべきことは一つ、デュエルの勝敗で決しようじゃないか!ペガサス様が教えてくれたこのデュエルモンスターズでな!」

 

「……ええ。ですが、これはどちらの意見が上かではない。私の意志をぶつけるための戦い。勝負です、夜行!」

 

「くくくっ、「パーフェクトデュエル」の異名を持つ天才デュエリストでペガサス様の後継者に指名されたからって調子に乗らないでくれよ。俺が後継者として相応しいとこのデュエルで教えてやる!」

 

 

 夜行が懐からデッキを取り出す。こうして二人のデュエルが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺はエースモンスター「アサルト・リオン(攻撃力:2600)」を召喚だ!こいつで嬢ちゃんの裁きを下す女帝を撃破!!」

 

「ミホのエースが!?あううっ……」

 

 

 ミホの切り札がテッドのモンスターに敗れ消滅する。

 

 

 LPも削られ、既に残り僅か。デュエルも終盤となり、状況はミホにとってかなり不利であった。

 

 

「キースの元同僚って言ってたが流石カード・プロフェッサーってだけあって強え……。このままだと野坂がやられるな。大丈夫なのか?」

 

「……確かに状況はかなり厳しい。でも、今のミホちゃんなら諦めない。必ずここから逆転するって俺は信じてる」

 

 

 カバンのパズルを触りながら遊偽は目を逸らさずにミホを見つめている。握ったパズルからは淡い光が漏れており、ミホにとってまだ可能性が残されているとでも言いたげにパズルは光を放ち続けていた。

 

 

「ミホは負けない!遊偽君が見ているこのデュエルで負けたくない!でも、それ以上にデュエリストとして諦めたくないって気持ちがミホにもあるの。お願い、この状況を変えるカードを引かせて!ドロー!!」

 

 

 パズルの光とともにミホのデッキが淡く光りそのカードを引き寄せる。

 

 

「えっ?!何、このカード……」

 

 

 まるでミホの頑張りに応えたかのようにミホの手にはデッキには入っていないカードが手元に現れた。

 

 

「……でも、ミホに手は残されてないし、あなたにかけるね!ミホは死者蘇生で逆転の女神様を呼び出す。それに、手札から「心眼の女神」を召喚!」

 

 

 ミホの場には逆転の女神、そして心眼の女神が揃う。

 

 

「ハハッ、そんなモンスター並べてどうするつもりだ!?俺のアサルト・リオンには勝てないぞ!」

 

 

 雑魚を並べても無駄とばかりに嘲るテッドを無視しミホは手札から引き当てたカードを発動させる。

 

 

「ミホはこの「エンドレス・オブ・ザ・ワールド」を発動!女神様二人を生贄に新たなモンスターを儀式で呼び出す!お願い、この場を逆転できる女神様、来て!!」

 

 

 ミホが発動した見たことのない儀式カードを場に出し女神のモンスターを捧げるミホ。

 

 

 ミホの思いが通じたのか、女神二人は姿を変えて強き光となって場を照らし出す。

 

 

 現れたのは怜悧さと強い意志を感じさせる釣りあがった目と固いながらも整った顔立ちが特徴的な銀の長髪の似合う女性モンスター「破滅の美神(女神)ルイン(攻撃力:2900)」。

 

 

 ルインは凛然とした佇まいでミホに寄り添うとそっと戦闘態勢をとった。

 

 

「凄い……これが、新たな女神様……!お願い、女神様!あのモンスターをやっつけて!」

 

 

 ルインはミホの掛け声とともにアサルト・リオンへと飛び込む。

 

 

「なっ、なんだそのモンスターは!?見たことねえぞ!だっ、だが、これならどうだ!「奈落の落とし穴」!これでせっかく召喚したモンスターはしょうめ…何!?」

 

 

 伏せカードを発動し余裕を保っていたテッドの表情が一変する。

 

 

 ルインはその落とし穴を飛び越えるとアサルト・リオンへと武器である鉄斧を振りかざした。

 

 

 ルインの渾身の攻撃でアサルト・リオンが両断される。更にはテッドの残りのLPを全て奪っていった。

 

 

「ばっ、馬鹿なぁ……俺の、俺のエースモンスターが……!?それに、LPも……。そんな、そんな……」

 

 

 慄くテッドに一瞥すると再びミホの場に戻る女神。その頼もしさにミホは思わず拍手をして喜んだ。

 

 

「凄い、凄いよ!ミホ、感激しちゃった!女神様があんな凶悪なモンスターを倒しちゃった!」

 

 

 デュエルマシーンがゆっくりと下降していき審判がミホの勝利を宣言するとともにデュエルは終了となる。

 

 

 ミホの逆転勝利に喜びながらミホの想い人である遊偽がミホに駆け寄った。

 

 

「やったね!ミホちゃん。あの状況でも諦めずに逆転するなんてよく頑張ったよ。俺は信じてた、今のミホちゃんならやれるって!」

 

「わーっ♡ありがとう、遊偽君♡好き、好きぃ♡ちゅっ、ちゅっ♡」

 

 

 遊偽に抱き着きながら頬にキスをするミホ。後から駆け寄った仲間たちはその様子に微笑まし気に見る者、嫉妬する者、うんざりする者など様々であったがミホの勝利を喜び、温かな目でその光景を受け入れていた。

 

 

「……遊偽君、ミホも頑張ったよ。こんなミホだけど、遊偽君の障害の一つくらいは払いのけることが出来るって示せたかな?」

 

「……もうそんなことは気にしなくていいんだ。ミホちゃんが頑張ってるのは俺も分かるから。俺はペガサスを倒す。だけどその過程でミホちゃんや舞、リサ、海馬、城之内君、本田君、花咲君……そして、月行さん、皆が協力してくれてて、そのおかげでここまで迫ることが出来てるって気づけたよ」

 

 

 ミホを抱きしめながら遊偽もまたその温かさと思いに感じ入る。

 

 

 遊偽とミホを取り囲むようにできた集団から離れた位置では負けたテッドは「俺の賞金が……畜生!あんな小娘に!!」っと悔しそうに叫んでいた。

 

 

 こうして第三試合も終わり一回戦の組み合わせが全て終了となった。

 

 

 そして勝ち上がった遊偽、城之内、ミホ、そして繰り上がりの海馬が顔を合わせながらデュエルマシーンへと並び二回戦(準決勝)の準備が行われていった。

 

 

 

 

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