※この作品はR-18です。

「おまえ気に入ったぜ!」 酒場で意気投合した冒険者からアーティファクト(付け耳)を貰ったので獣人の村へ行こうと思う   作:Rオウ

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第13話 賢兎会

 集会場から少し離れた場所に文字通りの意味で「離れ」と呼ばれている平屋の建物がある。

 ウサ耳族の村で、集会場を使うほどでもない小規模な集まりに使用されることが多い。

 

 部屋に曙光が差し込む中、11名の長老が円座して最後の一人を待っていた。

 やがて、その離れの扉を開けて12人目の長老が姿を見せる。

 

「ようやく休憩かの?」

 

 建物の入り口に最も近いところに座っていた長老が声をかけた。

 

「ああ、流石にな。トロンペ殿は先ほど眠られた」

 

「ほっほっほ。ほぼ一昼夜、十二刻ずっと媾(まぐわ)い続けたか……信じがたいほどの益荒男っぷりよな」

 

「いや、今も媾(まぐわ)っておるぞ?」

 

 先程まで立ち会っていた長老が首を横に振って否定する。

 

「は?」

 

「今、眠ったと言っておらなんだか?」

 

 残る11名の長老が次々と不思議そうな声を上げる。

 

「眠っても魔羅は勃ったままなんじゃよ」

 

「え……まだ勃ってるの?」

 

 長老の一人が呆気に取られて、その佇まいとはかけ離れたような言葉を漏らした。

 

「トロンペ殿が眠った後も魔羅は反り返ったままでな。こう……ピクリピクリと首を振って亀頭の先からは雫が垂れ落ちているわけよ」

 

 立ち会っていた長老が魔羅の動きを模倣するかのように指をピンピンと跳ねさせる。

 その指の動きを見て長老の何名かがゴクリと唾を飲み込む。

 

「そんなものを見せられてはな? 順番待ちをしていた孕み妻が涎を垂らしながら辛抱ならんとばかりに跨って女陰(ほと)に収めたら一突きで絶頂(イ)きおったわ」

 

「……ほう」

 

「さすがに寝ておっては孕み妻が絶頂(イ)っても子種は出んようでな。すぐに魔羅の奪い合いが始まったわ。どれだけ絶頂(イ)こうが子種を授かれてない(ボーナスタイム)のじゃからな。思うまま腰を振って魔羅を搾りあげ絶頂(イ)きまくっても交代せずに済む」

 

「少し前、悲鳴が上がったのは……」

 

「ああ、乱闘になりかけたので止めたのだ。せめて順番は守りトロンペ殿の睡眠の邪魔にならぬように、中腰で腰を振って魔羅を搾るように指示はした、一応な」

 

 長老全員が集会場の方向へちらりと視線を向ける。

 白や茶色の13対の耳もそちらに向く。

 耳をすませば、女たちがまるで天上にて絶命するような、悲鳴のような嬌声がたしかに聞こえてくる。絶頂(イ)って絶頂(イ)って絶頂(イ)きまくってる声が聞こえてくる。

 

「手加減して時間を引き延ばしながら魔羅を搾る必要がなくなったというわけか」

 

 立ち会っていた長老は空いていたクッションに座りながら、どこか呆れたようなその呟きに対し肩を竦めることで返事とした。

 

 200名を超える孕み妻がたった一人の益荒男に種付けされる過去に例がない豊穣祭なのだ。

 

 一人あたりの時間は限りなく少ない。

 熟れに熟れ、脂の乗った女たちが何年も待たされ焦らされ続けたのだ。

 

 そこに突如現れた英傑のごとき魔羅の持ち主。

 発情期の女たちが自分に割り当てられた少ない時間でできるだけ性の快楽を貪りたいと願うのを誰が責められようか。

 

「わずか一日で100名以上に種付けして尚、一度も萎えないどころか……女陰(ほと)に咥えこまれる度にカリはより膨らみ角立ち、竿は節くれ立って、女を啼かせるための逸物へ生まれ変わっておる。手加減せずに女陰(ほと)であの見事な魔羅を貪ろうと搾り上げればどうなるか。かっかっか、どいつもこいつも無様に絶頂(イ)き果て返り討ちよ。トロンペ殿が眠ってからの方が女たちの絶頂(イ)きまくりっぷりは酷い有様だわ」

 

 豊饒祭に立ち会っていた長老はどこか愉しげに言葉を続ける。

 

「もはや200名全員に種付けが成されるのは確定したも同然じゃ、なぁミサよ?」

 

 部屋の隅に静かに座っていたミサに何名かの長老が目を向けた。

 

「火精料理と陰泉料理だけではここまでにはならん。トロンペ殿に何をしたのかこの場で語るが良い」

 

 12名の長老全員の視線を受けて立ち上がったミサが円座の中心へゆっくりと歩く。

 堂々としたその姿と裏腹に、頭の上では長い耳はしな垂れ、丸い褐色の尻尾は神経質にぴくぴくと跳ねている。

 

 やがて円座の中心でぐるりと周囲を見渡したミサが静かに語り始めた。

 

「ではご説明させていただきます」

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「村長が以前服用していた強壮薬を飲ませたと?」

 

「北方のムイの木の根とカシュの葉、南方の砂漠に生えるジュヨウの茎、それに炒ったクコの実を粉末にして丸薬にしたものを以前村長のために用意したことがある。それだな」

 

 薬師の長でもある長老が思い出しながら述べる。

 

「余っていたものをトロンペ殿と合意の元服用していただきました」

 

「ふーむ……。いや、理屈は分かるとも……トロンペ殿は人族との混血であるからな。処方した強壮薬はウサ耳族の、いや正確には獣人族の精を強化する薬効があるから、逆に人族の精を抑える方向に働きはする」

 

「夫は……村長は服用後しばらくは『現役』に戻りましたわ」

 

 ミサの返答に長老たちも頷く。

 

「カイとテオが10歳の成人を迎えるまでの繋ぎとして、あの時は村長には無理をしてもらった」

 

 思えば線の細い男の子たちであった。

 生まれた時から病弱でもあった。

 

 5年前、あの子たちが亡くなった時は村全体が深い悲しみに沈んでしまった。

 そして同時に村の未来が閉ざされてしまったのだ。

 

「……いや、話を元に戻そう」

 

「正直、あの強壮薬は10代前半のトロンペ殿が服用するには強すぎる」

 

 トロンペ殿は成人したばかりと聞いている。我らウサ耳族は人族よりも成長が早いから10歳で成人するが、人族はたしか13歳か14歳くらいで成人するはずだ。

 

 人族の精を抑えるためとはいえ強壮薬を飲むには早すぎる歳だ。

 そういう皆の懸念を感じてか薬師の長が口を開いた。

 

「成長の止まった壮年以降の男性があの強壮薬を飲むと魔羅の膨張と感度の上昇は一時的で済むんだがね。成長期のトロンペ殿の場合は……そうだねえ薬効が切れればほんの少し縮むだろうけど、大きさも感度もほぼ今のまま固定されるだろうね」

 

 返事を聞き、何名かの長老が顔を暗くする。

 

 ……やはりか。

 気の毒なことになってしまったな。

 

「ミサ、興味本位の質問だがいいかね?」

 

 長老の一人が問いかけた。

 村の金銭管理を担当している財務の長だ。

 

「なんでしょう?」

 

「トロンペ殿の元々のサイズはどうであったのだ?」

 

「大体、これくらいでしたわ」

 

 ミサが親指と人差指を伸ばして皆に見せた。親指の先と人差し指の先の間くらいの長さという意味だろう。

 

「村長の2倍くらいか……」

 

 村長の魔羅のサイズは村の女ならみんな知っている。

 もちろん今まで見てきた男の魔羅のサイズはみんな村長と似たりよったりだが。

 

「元々大きかったのか」

 

「以前、不埒な人間の男のアレを切り落とした事件があったじゃろ。そやつより大きくないかや?」

 

 もうかなり昔になるが、確かにそんな事件もあった。

 人族の連中に引き渡して終わったが。

 

「……とすると人族の基準でもトロンペ殿のは大きいのか?」

 

「個人差の範疇だろう。しかし<発情の儀>で見たトロンペ殿の魔羅の大きさはその元のサイズの2倍くらいであっただろう? 強壮剤だけでは2倍の大きさになどならん。ミサよ、まだ言ってないことがあるだろう?」

 

 村の祭祀を司っている長が横から口を出してきた。

 その言葉を受けてミサの耳が完全に伏せられてしまう。

 

 はぁ……この子は昔からこうだ。

 強気な風を装っているだけで本質は臆病なのだ。

 

 助け舟をだしてやるかとでも思ったのか、長老の一人が声をかけた。

 

「責めているわけではない、むしろ逆だ。どのようなことをすれば今のトロンペ殿のような魔羅に育つのか知見を得たいと皆が考えておるのだ。狙ったのか、偶然の産物のどちらにせよ今後有用な手段になるかもしれん」

 

 その言葉を受けてミサがほっとした表情を浮かべた。

 まあ見方を変えれば素直ないい子なのだが、と付き合いの長い長老は独りごちる。

 

「トロンペ殿の食事の際にアバの果汁にシシの実とサジオの茎を摺り下ろしたものを飲ませております」

 

「ちょっと待て!」

 

 薬師の長が声を上げた。

 

「アバの果汁は別にいい。甘いだけの飲み物だ。シシの実とサジオの茎を同時に摂るのはだめじゃろ!」

 

 それに他の長老が疑問の声を上げる。

 

「そうなのか? シシの実は弱った内臓を強める働きだし、サジオの茎は性欲を昂進させフェロモン放出を助ける効果がある。トロンペ殿に飲ませてもおかしくないと思うが」

 

「その前にトロンペ殿に服用させた強壮薬とかち合うのだ。特にサジオの茎はまずい。どの書物でもサジオとカシュ、クコを同時に摂取するなとの記述がある」

 

「……飲み合わせるとどうなるのだ?」

 

 薬師の長は短く一言。

 

「死ぬ」

 

 長老たちの顔が一斉に青くなった。

 

「……」

 

「……いや待つのだ。トロンペ殿は死んでないぞ?」

 

「すぐに効果が現れてないだけではないのか?」

 

「……分からん。過去の例では合わせて服用した場合は1刻後に意識混濁と同時に非常に強い勃起が起こり、手当しない場合2刻後には死ぬと書いてある。服用して2日以上も経っておるし効いているならとっくに死んでおるはずだ」

 

「人族の血のせいか?」

 

「一部の薬を除けば人族とウサ耳族では効能はほとんど変わらんはずだが、可能性はあるかもしれん」

 

 魔術師の長が小さく呟いた。

 

「……解毒の護符の類を身につけておるとか? もしくは何らかの術式を使ったか?」

 

「解毒の護符は非常に高価だ。トロンペ殿は持ってはおらんだろうしそもそも素っ裸だ、何も身につけておらん」

 

「ミカが施した術は御陰有頂天外鎖(みほとうちょうてんがいのしばり)だけですわ。孕み妻に子種を授ける以上、この村の男なら生まれてすぐに掛けられる術ですが、トロンペ殿は村の外の男性ですし定着させてないので豊饒祭が終わってしばらくすれば自然と消えます」

 

「……ふむ、別の術の気配を感じたが気の所為か」

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 しばらく長老たちはミサを囲んだまま己の意見を言い合った。

 

「しかしな、結果としてトロンペ殿は生きておるし、我らにとって有益な状況になっているにしても我らが大変な不義理をしてしまったことは間違いないぞ?」

 

「そうであるな。筋は通さねばならん」

 

「ならば搾り妻は……」

 

「あのような年端も行かぬ幼女を搾り妻に迎えようとするトロンペ殿に一言ある長もおっただろうが、それ以上の借りを作ってしまっておるのだ」

 

 豊饒祭に立ち会っていた祭祀を司る長が決定を伝える。

 

「<宵祭り>を予定通り行うこととする。反対することは罷りならん」

 

「せっかくだ、孕み妻からも希望者を募って参加させてはどうだ? 我らが村の救い主なのだ」

 

「そうであるな。孕み妻に限ることもなかろう。胎起(はらおこ)しされてなくても構わん」

 

「見た目とは裏腹に非常に性欲が強いお人のようだしな。魔羅搾り目的なら構わんじゃろう」

 

「な、ならワシも……」

 

 建匠の長が挙手して立候補する。

 

 

 

 

「「「「……年齢を考えろよ」」」」

 

 他の長老が一斉に嗜(たしな)めると、残念そうに手を降ろす建匠の長であった。

 

 

 

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