「おまえ気に入ったぜ!」 酒場で意気投合した冒険者からアーティファクト(付け耳)を貰ったので獣人の村へ行こうと思う 作:Rオウ
第2話 ウサ耳族の村へ
朝焼けが眩しい野原を東に進む。
道はそれほど広くない。
剥き出しの地面の上をてくてくと歩いていく。
自分の前方にも後方にも人影は見えない。
あのおっさん冒険者の話によると、獣人族と人族はそれほど親密な交流はしてないんだそうだ。
大昔に人族の国と獣人族連合の戦争があって終戦後に条約が結ばれたんだって。
ボクみたいに田舎の村に住んでいると獣人についての話は入って来なかったなぁ。
商人さんが行き来してるから貨幣は共通みたいだけど。
歩くだけなのに飽きてきたので、鞄からアーティファクトの付け耳を取り出した。
包んでいた布を外すとラクーンベアそっくりの耳が現れる。
「何度見ても凄いなあ」
ボクはうっとりと金貨100枚とも1000枚とも言われる価値のある付け耳を眺める。
こんな素晴らしいものを金貨1枚で譲ってくれたあの冒険者には感謝しか無い。
昨夜の酒場の支払いについてはきっと何かの行き違いがあったんだろう。
ボクのいた村みたいに誰もが知り合いの関係じゃないんだから、少しのすれ違いや思い違いなんて起こって当たり前だものな。
もちろん、銀貨3枚は痛い出費だったけど。
これからは節約しなきゃ。
鞄の中には堅い黒パンがいくつかとチーズと干し肉が入ってる。
食べ物も現地調達して出費を減らさないと、冒険者ギルド支部のある街まで辿り着けなくなる。
あ、草原の中で何かが動いた。
目を凝らすと丸々と太った草原ネズミが見えた。
ラッキーだ。
ボクはツイてる。
鞄から
紐を指に引っ掛けて
もちろん集中力もだ。
えいっ!
……やったぁ!
ボクは草原の中に駆け込んで、獲物を確保する。
こんなに立派な草原ネズミは久しぶりだな。
体をひっくり返して、毛皮をなぞり皮膚の状態を調べる。
うん、病気はしてないし見て分かる寄生虫もいないな。
ナイフで首を切って流れ出てくる血の匂いを嗅ぐ。体の内側で何か病気があると血の匂いが変わるんだ。
うん、大丈夫そうだ。
ボクは道端に座り込み、葉っぱを下に敷いて草原ネズミを解体した。
ほとんどの内臓は美味しくないけど、草原ネズミの肝臓だけはすごく濃厚で美味しいんだよな。
肩肉と腰、もも肉を切り分けた残りは捨てる。
もっと切羽詰まってきたら話は別だけど、とりあえず今日は美味しいところだけ確保しておく。
今日の昼食と、晩御飯にしよう。
幅広の葉っぱで肉を包み、紐で縛って腰から下げておく。
今日の分の食事の心配がなくなってホクホク顔でボクは街道を進む。
そして歩くのに飽きたり、休憩してる時に鞄からアーティファクトを取り出して眺めるのを繰り返した。
「……あっ!?」
休憩中にアーティファクトを眺めながら気づいてしまった。使い方をおっさん冒険者に聞いていなかった!
「しまった。どうしよう……」
いや、待てよ。
アーティファクトであっても要は付け耳なんだから使い方がそんなに難しいとは思えない。
使用に当たって魔法の呪文とかが必要ならお手上げだけど。
とにかく試してみようと付け耳を手に取って自分の右耳に恐る恐る押し当ててみた。
……何も起こらない。
今度は左耳に押し当ててみた。
だめだ、何も起こらない。
布の上にアーティファクトを置いて頭を捻る。
この街道をあと3日くらい進めばウサ耳族の村があるみたいなんだけど、このアーティファクトが使えなければそもそも村へ行く必要がなくなるというか、近づくのは危ないのではないか?
あーどうしようかな。
ウサ耳族の村に行くのを諦めて冒険者ギルド支部のある街に行って売るしかない……のか。
最近、ボクのおちんちんは事あるごとに勃起してしまい、女の人のあそこを今すぐにでも体験したいんだって五月蠅く主張して、ボクもそんなおちんちんの影響を受けまくっている。
そして昨夜、おっさん冒険者さんたちから聞かされた話でボクの股間は期待に盛り上がりすぎていた。
「くっそぉおおおおおおおおおおっ!!!」
ボクは立ち上がって腹の奥に……いや股間に滾った思いを草原全体に響き渡るような大声で発散してしまった。
……周囲に誰もいなくてよかった。
女の人とエッチなことができないからってこんな大声を出すなんてみっともないよね。
おっさん冒険者二人から聞いたウサ耳族の女性は発情期になると男性に跨りおちんちんをあそこに挿れて何度もぴょんぴょん腰の上で跳ねるんだそうだ。
その時、ウサ耳族の女性特有の巨乳もばるんばるんと飛び跳ね、男は目の前で飛び跳ねる巨乳を見てまるで天国にいるかのように錯覚するんだって。
おっさん冒険者さんはまるで見てきたようにウサ耳族の女性が如何に巨乳ぞろいで腰も
巨乳だけど生涯垂れることなく、張りを保ったままゆっさゆっさと揺れるんだって詳しく語ってくれた。
「あああああっ!! おっぱいっ! おっぱいぃぃ!! qうぇrtyふじこぉぉぉ!!!」
ボクは絶叫した後、がっくりと膝をついて
……そして、ボクは道を引き返すことに決めた。
おちんちんはさっきウサ耳族の女性を想像したせいでズボンの中で大きく勃起してしまってるけど。
だけど次の瞬間、あたりの雰囲気がぴりぴりとして何か空気を震わせるような重低音が鳴り響き始めた。
「え? 何?」
慌てて顔をあげると、地面に布と一緒に置いていたアーティファクトの上に光の魔法陣が出現していた。
「こ、これは……」
魔法陣は村の収穫祭の時にたまにやってくる奇術師さんが披露してくれるのを見たことがある。
丸い二重円の光輪が奇術師の手振りでくるくると回転するのを見るのはとても楽しかった。
だけど目の前に広がっている魔法陣は複雑な模様が何重、何百層も重なってしかも色まで変わり続けている。
光の魔法陣はゆっくりと回転し始めると唐突に2層に別れアーティファクトの周囲を時計方向に回転し始めた。
──見られている!?
なぜだか分からないけど、魔法陣が自分を『見ている』のを感じた。
チ゛ッチ゛ッ
──なにか不味い!
光の魔法陣が赤色から黄色に変わった。
チ゛ッチ゛ッ
再び魔方陣がボクを見ている。
何か調べてる?
得体のしれない恐怖が湧いてきてボクは魔方陣から後ずさり離れようとした。
チ゛ッチ゛ッ
な!? ボ、ボクの足が動かなくなった!?
ボクが身動きできなくなった間に、魔方陣は黄色から青に変色し、そして燃えるような黄金色になった。
ボクは足どころか全身が動かせなくなり、首も、瞼も動かせない。
そして目の前で黄金の色が弾け、ボクは意識を失ってしまった。
目が覚めると太陽が西に傾き日が暮れようとしていた。
ボクは地面から飛び起きて辺りを警戒した。
このあたりには獰猛な獣はあまりいないと聞いているけど、何にだって例外はある。
太陽の光が残っている間にあたりを見回してみたけど、大丈夫そうだ。
大型の獣の気配は感じられない。
「ふぅ……」
安堵のあまり座り込んだボクは、頭に手をやって耳を触ってみた。
「やっぱりそうだよな?」
ボクの頭の元の位置の耳はなくなっており、やや頭頂部寄りにラクーンベアの耳が右と左に付いていた。
ぷるぷるっ
動かせるし……引っ張ってみると痛みを感じる。
これ、付け耳なんかじゃなくて本物の耳に思えるんだけど……。
アーティファクト、S級……と考えればこれくらいの効果があって当然だったりするのかな。
……付け耳の外し方が分からない。
引っ張っても痛いだけだった。
いやアーティファクトが発動した理由も分からないんだから外し方も分かるわけないよな。
はぁ、とりあえず野営の準備をしようかな。
草原の中に生えてる低木の周りを探すと枯枝がいくらか見つかった。
街道の側まで戻り、火を起こす。
考え方は色々あるけど、草原の中に潜むか、街道で火を燃やすかどっちが安全なのか断定はできないけどボクは街道沿いで火を燃やす方が安全だと思う。
パチパチと枯枝が弾ける音を聞きながら草原ネズミの肉を焼く。
調味料なんかは無い。さすがにそこまで贅沢はできない。
生活魔法でコップ一杯の水を出して、焼いた肉をちびりちびり齧りながら明日以降のことを考える。
図々しくも股間で復活したおちんちんがウサ耳族の村に行くことに1票を投じている。
そうだ、元々その予定だったのだ。
想定してなかったのは付け耳を外す方法が分からないことだけだ。
よし、行こう。
ウサ耳族の村へ。