---工藤新一--
憧れの場所にいる。今、ベーカー街221Bにいる。あのシャーロック・ホームズの住んでいた部屋である。彼の生きた証が、目の前に…
「ほとんど、祖父の住んでいたままだよ。ドクターワトソンが保存していてくれたんだ」
普段はハドスン夫人の娘夫婦とドクターワトソンの孫娘夫婦が下の階に住み、この部屋の維持管理をしてくれているそうだ。
「君は僕を調べに、ここに来たんだよね?」
部屋には俺と、アルセイン・H・モリアーティの二人だけである。ヨーコさんと世良親子はホテルにチェックインして、残りの者達は、研究所へ向かったそうだ。
「俺の親父が、謝っても済まないことをしたようだな」
「もう終わったことだ。何を教えれば良い?」
あれで父さんへの罰は終わったってことか?
「本当の血筋は?本によるとモリアーティ家の養子とあるけど…」
「あぁ、そのことか。祖母であるアルセーヌ・ルパンが犯罪卿の息子ジェームス・j・モリアーティと結婚し娘を授かり。一方、シャーロック・ホームズとアイリーン・アドラーが極秘に結婚をし息子を授かった。そして、それぞれの子供同士が結ばれ、生まれたのが僕達双子の姉弟だ。犯罪者であるアイリーン・アドラーのせいで祖父はホームズ家から勘当され、僕達は母方の姓を名乗ることになったんだよ。で、姉はモリアーティ家で育てられ、僕はドクターワトソンの家で育てられた。祖父の兄であるマイクロフト叔父さんにはかわいがられ、法律や医学を叩き込まれた。そう、僕は法律家か医者になろうと思っていた。だけど、モリアーティ卿の日記って物が僕の人生を狂わしたんだ。今もモリアーティ家本邸の金庫に眠っている日記が偽造され、捜査関係者の間で流通していた。それを、君の父が、読み解き、フィクション小説として発表したんだ。なぁ、君が僕の人生を返してくれるかい?」
俺は、何も言えなかった。返しようの無い物であるから。
「あの解毒剤の開発に成功したドクターワトソンは、あの毒を開発し使用した組織に殺された。なぁ、ドクターワトソンを返してくれよ。まだ、学ぶことが一杯あったのに…」
「…」
「ドクターワトソンが残した研究資料を現在の医学に利用できるように、設立したのがワトソン医学研究所だよ。所長は宮野厚司、志保の父親で、ヘルエンジェルこと宮野エレーナが副所長になる。君も夫婦で住み込んで研究所で働いて貰うよ」
アルセインが2枚の紙を渡してきた。目を通すと…なんだって!
「志保との日本の婚姻届と、英国での結婚証明書のコピーだよ。それで許してやる。英国に骨を埋めろ」
証人欄には俺の両親の名前が…コイツの復讐は俺の父さんだけでは終わっていないらしい。ドンデン返しか?最後に、俺にも罰を与えて、復讐の幕は閉じたようだ。
---妃英里----
提出された婚姻届けにある証人欄の筆跡を鑑定したのだが、本人の物と判定された。
「てっきり、蘭ちゃんとの届けだと思って…ごめんね、英里」
目の前で泣いている脳天気な母親の有希子。
「誰に書かされたの?」
「ごめんなさい、記憶が曖昧なの…新ちゃんじゃないかな?」
推測ではダメだ。確実な証拠が無いと、偽の婚姻届として抹消の訴えが通らない。
当の二人は英国にいるので、聴取も取れない。目暮警部が英国に捜査員として、刑事を送ったそうなので、捜査内容に期待である。
---アルセイン・H・モリアーティ---
工藤新一には枷を着けて、研究所に送った。これで、終わりだ。後は、僕の人生を設計し直すだけかな。
「アル…なんか場違いな感じがするの」
隣にはドレスコードをクリアした着飾ったヨーコがいる。今日は女王陛下主催の僕達の婚約パーティーである。
「モリアーティ卿、かわいい娘さんを手に入れて良かったわね」
「お褒めのお言葉、ありがとうございます。陛下…」
害虫駆除が終わり、正式に当主の座についた。世界の富の半分くらいは手に入っただろうか。
「結婚はいつかしら?」
「彼女が今の仕事を引退した後です」
「アル…ごめんね、わがまま言って」
「ヨーコの人生でもあるんだ。好きに生きるのが一番だよ」
「まぁ、仲の良いこと…今後も、英国の為に、働いてもらうわよ、モリアーティ卿」
「仰せのままに、女王陛下」