私、倉田ましろには今、大きな悩みがある。とても人には言えないような恥ずかしい悩みごとなのだけれど、ずっと解決策を考えても答えがよくわからなかった難問だった。私の悩み、それは、普通のオナニーで満足できなくなってきたこと、……というとても下世話なものだ。
私だって普通の女の子だし、性欲があるのだって至極普通のこと……だと思う。けどこういうのって誰かに相談するにしても恥ずかしいし、何よりなんて相談していいかも分かんないし。
透子ちゃんとかに聞いたら教えてくれるかな。と思ったけれど、『シロ……どうしたんだ?』って、とても真面目な顔で別の方面で心配されそうだよね。るいさんに聞いても多分そんなの無駄で効率悪いとか言われちゃいそうだし。
詰まるところ、私は八方塞がりだった。
だから私は今日も自室のベッドの中で湿った下着を今日も擦る。期待に反応したクリトリスの周りをこねくり回すと、また下半身全体が無意識に動いちゃうような、そんな独特な感覚がして、この感覚を求めて私はただひたすらに自分の陰部を撫で回す。そして男の人とエッチなことをする妄想を繰り広げながら、蜜を溢れさせる。次第に激しくなる指を素直に受け入れて、脚に力を入れる。そして、ある一点を超えて、私は今日も解き放たれた快楽を食べるのを楽しむのだ。
けれど、やっぱり満足はできない。
「……そういうことで」
私のベッドの上に置かれた段ボールの中から出てきたのは、何やら細長く先の太くなった棒。電動マッサージ器、という商品名で、初心者にもおすすめ、だなんて銘打たれていたから疑うこともなく飛びついたんだけど、果たしてこれをどう使うのか。これが自分にとって1番の鬼門であった。
「……押し当てる、のかな」
コードの先には明らかに押してくれと言わんばかりのボタンがついていて、私は棒の先をクリトリス付近に当て、そのボタンを押してみた。急にブルブルという振動音が響いて、急に私の膣付近に刺激を与え始めた。
「な、なにこれぇ……」
今まで感じたことのないような高揚感が私を包む。高揚感というか、まるで抗えない浮遊感そのものだった。自分でクリトリスを触ったりするのとは違う、小刻みな刺激が私の下半身を襲う。
「あっあっ、変なりそぉ……」
いつもよりも何故か我慢の出来なさそうな私の体。そのバイブが与えてくれる膣への刺激があまりに強すぎた。
「すごぉっ、イ、イっちゃう……っ!」
ピクリ、ピクリと跳ねた体はだらりと少しだけ力が抜ける。すごい。自分の指とかだけじゃなくて、こういう玩具を使えば私が過去経験したことのないような体の奥底から湧き上がるような快感も愉しめるんだ。そんなことに気がついた瞬間、次に私が目をつけたのは、小さな卵のような形をしたプラスチック製の器具。ローター、なんて書いてあるけど、正直どんなものかなんて全く知らなかったので、箱の中に入っていた取扱説明書を読んでみた。
「……これは」
どうやら乳首などに当てて、これまた振動を与えるらしい。けれど、乳首とかあんまり触ったこともないし、そもそも私はそんな大きい胸でもないから、どことなくそういうところにはコンプレックスを持っていた。だから、これをいざつけるとなると僅かに憚られたのだけれど。
「……やってみよう」
少々思い切りが良い時の行動力というものは恐ろしく、普段は引っ込み思案のはずの自分がどこか遠いところへ行ってしまったが如く、早速胸元にローターを装着した。
「これを押せば……いいんだよね?」
そして、静かな自室にカチッという音がなったと思うと、途端に襲ってきたのは体のムズムズするような変な感覚。それはまさにローターでおっぱいの先が弄られて感じるものだった。
「あっ……んっこれ……」
おまんこだとか、クリトリスだとかを弄っているのとはまた少し違う、焦ったいような感覚に戸惑ったけれど、それでも時間が経つにつれて、次第に慣れてきて、さらにはローターの与える振動も強いものへと変わってきていた。それだけではなく、私が意識していない間になぜか私は自分の下着にまで手を入れていて、触り始めていた。
「あっあっ……んっ、ああっ……」
自然と漏れ出る声と、体の中に足りなくなってきた酸素を求めるためにパクパクと私の口が自然と開いている。それだけでなく足の指先にまでピンと張った感覚。
「んんっ、あっいぃっ、んあっ、……これっ」
そして視線を向けた先に落ちていた、さっき使ったばかりの電動マッサージ器。これを今もしも私のおまんこに押し当てたら……。そんなちょっと夜遊びに出るような浮ついた思考が頭の中を溶かして、ゆっくりと空いている左手を伸ばす。
「んあっ、あっあっひっ、……んっ」
手に取ろうとしている時でさえ私のクリトリスを弄る指は止まらない。それを自覚するだけで、私はなんて卑猥な思考に取り憑かれているのだろうという思いが一瞬頭をよぎるけれど、そんな思いは新しく体の底からじわじわと迫り来る快感に上塗りされてしまって、どんどん気持ちいいことしか考えられなくなる。
「これっ、押して……んんっっっ!」
思わず強すぎる刺激にのけ反りながら声をあげてしまう。反射的にこれはまずいと思って、自分の枕に思い切り顔を押し当てて声を漏れぬように掻き消した。その枕からは少しだけ汗の匂いがして、鼻についたけれどそんなことを認識するまでもなく、マットレスとの間に挟まれたローターが極度に振動を始めた。
「んんっ! んひぅっあっあっあっ」
だめ、おかしくなりそう、そんなことを思った瞬間に自分は既に襲い来る快感の波に呑まれて、背中を思い切り反らせた後、力を失ったようにベッドの上に倒れた。
「んはぁっ、はあっ、……はぁっ、すごっ……い……」
これまでの人生では感じたことのないようなほどの大きな快感。まるでその瞬間に空まで羽ばたけるのではないか、飛んでいってしまうのではないか、と勘違いするほどの波に、私の呼吸は乱された。
「んっ……はぁっ、でも」
私がイってしまってからもなお、私の乳首のローターは動き続けて、止むことのない耐え難い震えを与え続けてくる。そんな振動のよこす快感に当てられたか、どうにも今日の私は一回の遊戯だけでは満足できないようだった。まさか自分がこんなに貪欲だとは思っていなかったけれど、でも、一度こんな気持ち良さを味わってしまってからでは、それがまた欲しいと思うことも仕方のないことであった。
「はぁっ、はぁっ、……うっ、たしか、……これだ」
私が今回魔がさして購入してしまった玩具は3点。クリトリスに押し当てていた電動マッサージ器。乳首にあてているローター。そして、よりリアルに男根を……といってもそんなマジマジと見たことないけど、再現している棒がまだ箱の中には隠されていた。徐に箱から取り出したその棒はグロテスクな形をしていて、なんとこれが私の体の中に入るというのだから驚きであった。
正直なことを言えばこんなの入る訳ない、だなんて思っている。けど、今宵の私はどうやらおかしくなってしまっているらしい。入る訳ない、だから諦めよう、じゃなくて、入る訳ない、けど試してみよう。そんな思考になっているのだ。普段はネガティブシンキングの権化のような私がそんな思考に浸っているなど、明日は天変地異かとも思うけど、何よりそんな好奇心がなぜか勝っていた。
「……よし」
覚悟を決めて、その棒を握る。けれど、いざそれを膣に挿れようと思うとどうにも恐怖が浮き出てきた。だって、いつも膣に挿れているのはこの棒よりもはるかに細い私の指。一応2本ぐらい入れることがあると言ったって、それでもこの棒の太さには敵わない。
「……とにかく、まず指で慣らそうかな……?」
悩んでいる間も震え続けるローターの生み出す快楽に導かれて、私の指は寸秒の我慢もできずにずぶり、ずぶり、と私の膣に入っていく。すでに膣の肉はほぐれきっていて、何よりびちょびちょになっている。私の挿入された指先は既に液に浸かっていて、少し動かすだけでも水音がいやらしく部屋にまで響く。そして、部屋に響くのは水音だけではない。
「はぁっ……んっ、んはぁっ、あっ」
私のいやらしく漏れ出る吐息が静かな部屋に反響する。脳の中にまで響いてくるそんな声は私が卑しい人間であることを嫌というほど私に伝えてきて、余計にそんな暗示に興奮してしまっていた。
「あっ、はあっ、んんっ!」
我慢しなくなったせいか、指の動かし方は激しくなる。やはり普段から手慣れているせいか、膣に挿れるのはやはり自分の指の方が気持ちよくて、頭の中まで蕩けそうになる。
「んあっあっ、はぁっ、はぁっ」
だが指だけではやはり満足できなかった。ローターだけでも満足はできない。電動マッサージ器をクリトリスに当てても満足はできない。ならこのバイブは……。
「あっ、前でだめっ、なら……はぁっんっ」
ふと私が思いついた考え。私も話で、というかそういう創作物から得た知識でしかないけど、どうやら後ろの穴でも快感を得るということはできるらしい。たしかに怖さは相変わらずあるけれど、でもこの穴も使ってみたい、と思うことは確かだった。
「はぁっ、はぁっ、これ……んんっ」
握りやすいような形状の棒を握りしめて、少しだけ先に突起がついている方を自分のお尻の穴のあたりに押し当ててみる。冷たい感覚がしたけれど、その日の思考はやはり思い切りがよく、少しだけ、少しだけと、ゆっくり挿入を始める。
「んひぃっ、な、な、なに、これぇ……」
開いてはいけない場所を押し拡げられる感覚。体の奥底を開いていくような感覚に囚われて、少しだけ挿入の腕を止める。そこで体を捩っていると、偶然私の体の下に入りかけていたローターのスイッチの上に乗ってしまった。
「な、んひぃぃっ!! んあっ」
急に強くなる胸への振動。どうやら振動の強さの調節もできたらしく、強い振動が来たらしい。なんて分析をしている余裕もなく、またもや私の視界がチカチカと白く点滅する。そして体は大きく飛び跳ねる。絶頂に達してしまった。その衝撃で思わず。
「んひっあっ、あっ、あっあっんああっ」
思わず深く挿し込んでしまったバイブ。けれどバイブが押し当てられたところ、穴の奥に当たった瞬間、体の奥底から揺らされるような感覚がして一瞬意識が飛ぶ。そしてまた意識が戻ったかと思うと、私の手は徐にそのバイブを動かしてしまっていた。そして反対の手ではもう一つの、前の穴の奥の奥まで指を挿れて、激しく動かしていた。
「んああっあっあっ! んひぁっあっあっ!!」
抑えきれない声。そして白く飲み込まれていく思考。2穴から来る、体の奥底から段々上ってくるような快感に全身が震える。もうどこが気持ちいいのか分からないほどに全身がビリビリとする。そして力が抜けてしまうようでありながら、まるでおしっこをしたくなるようなムズムズ感。全身を襲う未経験の感覚に私はただ悦びを求めていた。
「んイ、イグっ、イっちゃ、んあっ、んああっ?!」
頭の中が真っ白になって、思い切り全身がピンと伸びた。そして全ての力を失ったようにベッドの上に倒れ込んだ。四肢を投げ出して、私の顔は横を向く。
何度も何度も身体中を襲う快感の波。
「んあっ、ああっ! イクぅっっ!!」
止まらない手は快楽を求め続ける。
「んひぃっ、んあ、ダメェっあっ!!」
声が漏れてるだとか、そんなの考えられないほどに馬鹿になる。
「んああぁぁっっ♡」
出したこともないような淫らで、大きな声を上げて私は何度も達した。力が抜けて、痙攣しながら私はついにおしっこを漏らした。けれどそれすら膣を刺激して気持ちいい。私は自分の尿で布団だとかが濡れることも厭わずに、ただ部屋の天井を見上げて放心していた。感じたこともない快感を味わいながら。
「うぅ……最悪だよ」
私がフィニッシュを迎えてからどれほどの時間が経っただろうか。ようやく意識というか、冷静な思考が帰ってきた私はゆっくりと布団から起き上がり、部屋を見回す。そして、自分が今まで何をしていたのかを冷静に思い起こして、焦っていた。
まず布団の上。散乱している大人の玩具。……でも気持ちよかったから、まぁ仕方がないとして、それはそうと向こうの方についているシミ。なんだか臭う。それもそうだ、私自身が達して、思わず我慢できずに、それどころかそれすら気持ちよさを感じながら放尿した残骸。正直そんなシミ見たくもないけど、これ洗わなかったらきっともっとひどいことになるよね。
そして、私はそこまで冷静に考えて一番後悔すべきことを思い出した。あまりに感じたことのないような快感。そんな快感に負けた私は、最初の方こそ我慢していたが、最後はとても自分の口から溢れ出た声を制御できていなかった。
「絶対聞こえてる……!」
明日一体家族とどんな顔を合わせればよいのか。だが、そんなことを後悔してももう後の祭りで。ただ私は自分の羽目を外したことを後悔しながら後処理に追われるのだった。