「あっ、はぁっ、んはぁっ……はぁっ」
私の淫らな喘ぎ声は静かで寝静まった家の中に響いている。私にはまだ早いかもしれない、大人の玩具による自慰行為は、私に背伸びすることの気持ちよさと清廉に生きることへの反抗から得られる快感を私に押し付けてきた。
「あっ、んあぁ……んあっ……」
自分で聞いていても情けなく聞こえるような嬌声だけれど、それが部屋に、家に響くことが堪らなく気持ちいい。私の下卑た声を誰かが聞いているかもしれない、いつも優しく私を育て見守ってくれる家族が聞いているかもしれない。もしも聞かれていたとしたらきっと私は陰で酷い言われようをして、変態な娘に育ってしまったと落胆されるだろう。そんな絶望的な状況に陥るかもしれないという絶妙なスリルが私をこんな下賤な行為へと駆り立てたのだ。
「ま、たイキそう……んっ、はぁっん……!」
徐々に声が大きくなる。私の二穴を惑わせるオモチャたちが凶暴さを増したのだ。
「んひぃっ、あっ後ろも前もぉぎもちっ」
体の底からせり上がってくる快感は、痴態を晒すスレスレの興奮と混ざり合って、私をどんどんと狂わせる。
「もぉだめっ、んあっ、あはぁっ、んイクっ……はぁっ」
小さな喘ぎ声が部屋の闇へと溶けるように消えていく。それに誰かの答えはない。そうすることで私の中で頂点まで登り詰めた快感は徐々に垂れ下がっていく。
「はぁ……また……。……はぁ」
興奮の中で速くなった鼓動のせいで息が荒くなるけれど、それも次第に収まっていく。鼓動の収まりと同時に私の中で大きくなっていた興奮の欲望は収縮を始めた。
「前よりも……気持ち良くない……」
どういうことだろうか。あの晩は道具を使ってスリルに溺れることがあれほど気持ち良く感じられたのに、今となってはその程度で得られる興奮は絶頂を迎えればすぐに過ぎ去ってしまうようになっていた。
「もっと……もっと……何か」
私はやはりそんな家族にバレるかもしれないという程度の危機感では足りなくなっていた。そんなマンネリをなんとか打開しようと、さらに気持ち良くなれる方法を調べ始めたのだけれど、体に訪れた妙な倦怠感に導かれて眠りに就いた。
数日後、私は夜遅くだというのに、家を飛び出してしまっていた。カバンの中に入っているのは財布や携帯などではない。決して私が持っているだなんて、きっと他人は思いもしないであろうもの。
きっと真面目で、所謂'いい子'の高校生は家の外に出ることはないであろう時間。それを証明するかのように今私がいる場所は静まり返り、人気は全くと言っていいほどなかった。
「夜の公園……、ちょっと怖いな……」
今からもっととんでもないことをしでかそうと考えていた私も、風が吹き荒び、私自身が土を踏みしめる音しかしない公園に得体の知れない恐怖感を抱いていたのだ。
「……はぁ」
公園の奥深く、木々に包まれて道路からも離れたところにあるベンチに私は腰を下ろす。ここならばきっと誰からも見つかることはおそらくない。声を出せば気付かれやすいだろうけど。
ここにくるまでも歩いている人とは殆ど出会わなかった。そんな住宅街を少し抜けた所にある公園なものだから、近場に家こそあれど、こんな時間には人がいるはずもなかったのだ。
だからこそ、私の中に少しずつ芽生え出している、人にはとても言えないような変態的欲望を満たすための場所としては最適な場所だと思ったのだ。
私とて、自分にこんな変態的な側面を持っていることを人に進んで知られたいと言うわけではない。きっとmorfonicaのみんなにこんなことが知られて仕舞えば、みんなからは軽蔑されるだろう。本当に軽蔑されて、嫌われたいというわけではないのだ。
けど、けども、そのスレスレのラインを攻めるのが、私にとって最大の興奮をくれるのだ。高いビルの屋上付近の危ない所を歩くパフォーマンスをしたいのと同じなのだ。
「よし」
私は覚悟を決めた。それは自分の中の倫理観を捨てるため。
人は社会を生きていくために、最低限守らなばならないルールがある。それは人同士が生きやすい世界を作るために存在しているものだ。例えば悪いことをすれば捕まって、罰を受ける。例えば何かが欲しければそれに見合ったお金を支払う。例えば学校では制服を着用する。
私は思ったのだ。もしも私がプライベートじゃない空間で服を脱いでしまったら。社会のルールを破る快感は、私をどれほど狂わせるのか。
衣擦れの音が、静かな公園に溶けていく。外気に素肌が触れて、少し肌寒い。
私は社会で生きていくためのベールを脱いでいく。私の座るベンチの隣には、気がつけば私の私服が積み重なっている。さっきは一部分だけしか私の秘められた部分は晒されていなかったのに、気がつけば私が身に纏ったものは下着だけになっていた。
「はぁ……はぁ……もう、我慢できないっ」
我慢することすら馬鹿らしい。私はカバンの中から愛用の玩具を取り出した。本来なら自分の家の自分の部屋だけで使うようなものを私は秘所に押し当てる。そしてスイッチを入れて。
「うっはっ、はぁっ……いいっ……よぉっ」
声を出してはいけないという社会の規範の叫びが私の耳に響いてくる。その声を聞いた瞬間私は思わず手で口を押さえた。こんな淫らな姿は他の人に見られてはいけないのだ。きっと見られていいのは、自分が選んだ将来を共にしようとする人にだけ。こんな公衆の面前で淫らな行為に耽れば、もしかすると赤の他人に見られてしまうかもしれない。
「でもぉっ、うっはぁっん……ひぃっ……」
だが、それこそが快感なのだ。本当は守らなければいけない、守りたいルールを自ら破ることの背徳感が快感なのだ。
「あっ、もぅもっと……」
私は遂に自らの秘所すら守っていた布すらも脱ぎ捨てた。私の欲望の坩堝からは粘度の高いドロドロの液が溢れ出て、それを全て吸い取ろうとしていた下着はすっかりその役目を失っていた。
「はぁっ、スースーする……けどぉっ……もぉ」
カバンの中から姿を現したバイブが私を誘惑してくる。私はそんな甘くて淫らな欲望を曝け出した誘惑に抗うことができない。出来るはずがなかったからこそ、私はこんな所にいるのだった。
「あっ……後ろの……あなぁっ! んひぎぃっ、はぁん!」
もはや慣らすようなことをするでもなく、私はそんな棒を尻穴に挿し込んだ。バイブは私の穴の肉を掻き分けながら、鋭い振動を全身に伝えてくる。私は声を抑えなきゃいけないっていう規範を理解して、意識しながらもその声を出すことすらも興奮の材料になり始めていた。
「いいっ、いいよぉっ……もっとこっちもぉっ」
薄ピンクを基調としたレースの付いたブラジャー。私の体に最後まで倫理観を留めていた衣服。私はもうそんな社会に縛り付けられたものを全て投げ捨てるかのように、ブラのホックを外して、未熟な胸を曝け出した。もう私の体を隠すものは何もなくて、人が来たら私は即座に痴女だと思われて、社会から後ろ指を指されて生きていくことになるだろう。そうなるかもしれないという危機感を感じるのに、不埒な情事に耽ることが堪らなく気持ちいい。
「あっ乳首っ勃ってるのぉっ、気持ちいい……っ」
誰にも本当は知られたくないのに、誰かにバレてしまいたくて、けれどバレたくなくって。けれども、それを誰かに知らせるように自分の下賤な行いを実況していた。それを拾ってくれる人がいたら、私はきっと終わってしまうというのに、そのスリルとどれだけ発散しても溢れ出てくる性欲だけが私を突き動かしていた。
「あふぅっもぉっ……あっ、あっ……いっ」
私は咄嗟に今の状況を思い出して口を塞ぐ。そして性感帯に襲い来る快感に堪えきれずに静かな絶頂を迎えた。地面に固定されたベンチの上で私の体は静かに跳ねて、木製のベンチは静かに揺れた。
「はぁ……はぁっ……、気持ち……いいよぉ……」
私の体を包む冷たな空気すらも気持ちいい。それどころか私の中の静かな興奮を呼び覚ましてくる。私の体の底から沸き上がってくる興奮と快感は止まるところを知らない。
「……でも、まだぁ……まだ欲しいぃ……」
私の体に込み上がってきた快感はさらなる内なら欲望を叫んだ。だってまだまだ私の中にある性欲は発散されていないじゃないか。私はさらにバイブを奥深くねじ込んだ。
「んんっ?! んはぁっ……ああっん!」
あっ、だめだ。こんな大きな声。
「んぎぃっ、あっ、あぁん! んひぎぃっんっあっ!」
こんな大きく淫らな声。
「だめっもっとぉっ、あっおかしくぅっ!」
こんなに大きくて淫らで恥辱的な声。
「おかしくなりたぃっ、もっと変になりゅっ!」
私の叫び声はもう、この公園の周りに住まう人たちの耳に届いているだろうか。
「あっイグッ、もぉっイグゥっっ!!」
全身を玩具と手戯に犯された私。すっかり脳内は快楽に溶かされた。絶頂に達するとともに尻穴を刺激されすぎた私の恥穴から屁が漏れる。不潔な音が喘ぎの声に色をつけて、淫らに公園に溶けていく。
「あっ、ああぁぁっっ?! んはああぁぁっっ♡」
頭が真っ白に染まった。もう私に人間らしい道徳や倫理はない。すっかりバレるかバレないかの背徳を味わう獣へと成り下がってしまった。
「あっ……はぁっ……んんっ」
絶頂を迎えて全身の力が抜ける。頭がおかしくなってしまうような快感に包まれて、私の体はピクリと数度跳ねた。
「あ……も、漏れる……」
すでに大量の蜜を下の口から吐き出していた私は、生理的に催して、我に帰った。今私はそういえば、人には見せられないような姿をしながら公園で情に耽っていたのだった。
……なんとか全身に力を入れて、荷物をまとめた。
「下着は……もぉいいや……」
その役目を失った下着を乱雑にカバンの中に詰める。下着をカバンの中に放り込んだ瞬間、凄まじい淫臭が私の鼻の奥をついた。尿の臭さだとか、そんなのとはまた違う、私の体の中に徐々に育ちつつあった大人のメスの臭い。そんな卑猥な証に少しだけ気を取られていたが、やがて、とりあえずの衣服だけを上からかぶる。
「んっ♡ おっぱい擦れる……」
私のまだまだ可憐な胸の先が衣服と擦れてピクリと体が震えた。またもや体の中に蘇ってきた快感の味は私の脳内をすっかり淫猥に染め上げる。
けども、ズサっ、という音がした。私は慌ててその音がした方向を、ベンチの横にあった草地の方を見る。それを見れば何やら小動物のようなものが駆けていくのが見えた。私は安堵のため息をつくとともに、今の自分の置かれた状況を思い出した。
「あ……、か、帰らなきゃ……」
一瞬で冷静に戻って、私はゆっくりとベンチから立ち上がって歩き始める。早く家に帰らないと、それだけを思って私は足を進めた。けど、欲望を味わった体はまだ休息を望み、けれどそれとはお構いなしに私の感情はドロドロに欲望が入り混じった。
「はぁ……ダメ……ダメ……」
木々のあるところを抜けて、なんとか公園の入り口にまでたどり着く。人気はやはりなく、私の淫らな痴態は見られていないかも知れない。
「あ……」
公園から出たところで、おそらく仕事終わりのOLだろうか。暗い住宅街で足速に家路を急いでいた。もしかすると、この人は、この人の家族は私の卑猥な叫び声を聞いていたかも知れない。そう考えた瞬間。
「あは……気持ちいい……」
さっき絶頂を迎えたはずなのに、外で淫らなことをしたことの興奮がまたもや体に蘇ってくる。ちょうどその時、私の尿道がブルリと震えた。
「あ、ダメっ、今はダメっ……」
あぁ、もうきっと家までは間に合わない。
もう……もういいじゃないか。だって私は変態なんだから。公衆の面前でも、変態的なことをする背徳感を快感として感じられるのだから。私はフラフラと公園前の電柱に寄りかかる。その衝撃でさらに体が震えた。もう、我慢できないや。
「あっ……でる」
全身を貫く快楽。
「ダメなのにぃ……」
私の心に最後まで残っていた尊厳。
「あはぁ……出ちゃうよぉ……」
何も知らなくて幸せだったかもしれない過去への未練をかなぐり捨てる。
「あっ。もっ……はぁっ」
ジョロロ……という、下賤な音が夜の住宅街に響く。尿道を液体が通る快感。それを外でやっているという背徳感。
「気持ちいいよぉ……あっ、まだでるっ……はぁんっ♡」
暗い夜道の電柱が濡れていく。灰色がさらに濃さを増す。
「あっ犬みたいなのにぃ……あっはぁん……」
私はもうきっと、あの頃の無知には戻れない。私はこの快感の味を知ってしまったから。あぁ、……おかしくなっちゃった。でも、気持ちいい……。