※この作品はR-18です。

「だから最後は一人になった(夫)たった一人の男の犠牲の上に成り立つ、皆の幸せは、ここから始まっ た」   作:木桜 春雨

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友人から知らされたのは息子の浮気だった (義父は悩む) 

 話があるんだが、友人から誘いのメールが来た時、つい先日、一緒に飲んだばかりなのにと思いつつも、すぐに返事をし、その日の夕方、会うことになった。

 いつもならどこかの居酒屋、飲み屋で会うのだが、この日に限って、友人は珍しく、自分の家に行こうと声をかけてきた。

 何かあったのだろうかと思いつつ、待ち合わせの場所で友人の顔を見たときだ、いつもと違うものを感じ嫌な予感がした。

 いつもなら酒をという流れだが、コーヒーや茶がでる気配もない。

 どうしたんだと、こちらから聞いてもすぐには答えない、友人は迷っている様子だ。

 

 「単刀直入に聞くぞ、息子は元気か」

 

 なんだ、いきなりと思いつつ頷きかけて、もしかしてと思う。

 

 「この間、見たんだ、その、なんというか」

 

 友人はわずかに顔を伏せたまま、小声で言いにくいんだがと呟やいていた、しばらく、無言になった後、場所が一人じゃなくて、どう見てもと、言葉をぶつ切りにしながら会話を続けようとする。 

 そんな態度を見ていれば嫌でもわかってしまう。

 

 「女と一緒だったのか」

 

 浮気か、ぽつりと呟き思わず額に手を当て、落ち着けと自分に言い聞かせながら、ふと窓の外を見た。

 

 「なあ、こんなこと聞いたところで愚問かもしれんが、本当におまえの息子なのか」

 

 そんなことを聞いてどうする、今更だと思いながら何を話せばいいのかと迷った。

 

 「結婚を許したのは間違いだったのか、今更だ蒸し返してもどうしようもないが」

 「友人として言わせて貰うぞ」

 

 真剣な声に言ってくれと促した。

 

 「あれは病気だ」

 

 その言葉に確か煮と納得してしまう自分がいた。

 

 「そうだろうな、いや、自分で言われるまでもなく思うよ」

 

 自分の息子が浮気をしているという話を聞いた後、ふと脳裏に浮かんだのは亡くなった妻の顔だ。

 

 (本当に、そっくりだ、おまえに)

 

 今、そんなことが思えるのは彼女がいないからだ、勝手なモノだと思いながらも正直なところ、ほっとする自分がいた。

 

 浮気なんて隠しても遅かれ早かれ、いつかはばれる、帰り道、友人の言葉を思い出す、確かにそうだ。

 もし、ばれたとしても息子のことだ、素直に謝るとは思えない、開き直るのが正直いいところだろう。

 それとも謝れば許してもらえると思っているのだろうか、だとしたら。

 

 

 

 自分と同じ轍を彼女に踏ませるわけにはいかない、そんな思いはさせたくないと思っている。

 家まではあと少しの距離だ、ドアを開けたら、おかえりなさいと息子の嫁は自分を迎えてくれるだろう。

 

 

 

 突然、名前を呼ばれて振り返る、近づいてくる相手を見て誰だと不思議に思ったのも無理はない。

 

 「お久しぶりです」

 

 オザキです、名前を言われてもすぐには顔が思い出せない、初めて見る顔だと思ってしまった。

 だから下の名前を言われてもすぐにはわからなかった、何故なら、目の前にいるのは長身の男性だったからだ。

 

 「十年以上も昔です、わからなくても当然で、あのときは、本当にお世話になりました、感謝しています」

 「感謝、馬鹿な、できることをしただけだ、謝るのは」

 

 相手は首を振った。

 

 「今も浮気しているんですね、それも同じ会社の女性ばかり、三人です、ご存知でしたか」

  

 友人が教えてくれた話だけでも驚きなのに、今更ながらに呆れるというか、愛想が尽きたといってもおかしくはない。

 どうしようもない男、いや、息子だと思わずにはいられない。

 

 「あの人は、あなたの息子さんなんですか、こんなことを言えば酷い人間だと思うかもしれません、でも、居なくなっても、いいんじゃないか、そう思いませんか」

 「少し前なら、そんな事は考えもしなかったよ」

 

 でも、今は、こんなにも負の感情で憎むことができるなど、自分でも驚く程だ。

 

 

 自宅まで、あと少しだ気持ちを切り替えなければと深呼吸して玄関のチャイムを鳴らすと足音と同時にお帰りなさいと息子の嫁が出迎えてくれる声にほっとした。

 

 「晩ご飯できてますよ」

 「すませてなかったのか」

 

 時計を見て遅すぎたと思ったが、仕方がない。

 

 「一緒に食べようと思って、カレイの煮付けと小松菜の煮浸し、兵頭の餡掛け、今日は少し寒いから芋煮も作ってみたんです」

 

 息子の家に同居する事になったのは一ヶ月になる。

 発端は住んでいたアパートでのぼや騒ぎだ。

 出荷が自分の真下の部屋だったこともあり、室内は勿論、家具なども水浸しで使い物にならないので新しいアパートを探す事も大変で息子の家に転がり込んだのだ。

 どうせなら、このまま同居しましょうと言い出したのは息子の嫁だ。

 子供もいない、義父は元気で高齢というほどではない、だが、将来の事を考えてという言葉に息子に同意

した。

 

 

 

 「味付けも丁度いい、いや、こんな美味い和食が食べられるのはありがたい」

 

 テーブルに並んだ料理を口にして素直に感想を口にすると、彼女は本当に嬉しそうな顔、笑顔になる。

 

 「誉上手ですよね、お義父さん」

 「いや、世辞ではないよ、本当に、お代わりをもらえるかい」

 

 ご飯のお代わりをして、息子は今日も遅いのかと思いつつ、いや、居ないことにほっとする。

 浮気を知った今、どんな顔をして話をすればいいのかわからない。

 少なくとも、嫁、彼女の前で言い争うのは避けたいと思ってしまう自分がいた。 

 




以前書いたものに加筆、再構成して再Upしました。
ざまぁものです。
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