「だから最後は一人になった(夫)たった一人の男の犠牲の上に成り立つ、皆の幸せは、ここから始まっ た」 作:木桜 春雨
大事な娘だと思って育ててきた、だが、それが間違いだと気づいたのは遅すぎた、切り捨てるのは正直なところ、簡単だ。
だが、それができないのは自分にも罪がある、手が回ってしまうと思ったからだ。
好きな人ができたのと言われたときは複雑な心境だった、恋愛だけが全てというわけがない、だが、娘はそういう人間だった。
相手を自分に振り向かせる為には必死になって努力する、だが、それが叶い、手に入れてしまうと終わりなのだ。
結婚すれば落ち着くだろうと思ったが、予想は見事に裏切られた、甘い新婚生活は長くは続かない。
見た目だけではない、人のものだと欲しくなるらしい、厄介な事に相手が振り向くまで諦めない、一体、誰に似たのかと思ってしまう。
好きな人ができたと娘から聞かされたときは、またかと思ってしまった、いつものことだと思っていた、だが、話を聞くと相手は既婚者だという。
そして複数の女性と付き合っているという話を聞いても不安になった。
毒に毒だ、相手の男も娘と同じ人間なのかもしれない。
そして妻という女性は夫の浮気を少しも疑っていない、らしい。
「専業主婦で女を捨てているの、孝史さんには相応しくないわ」
明らかに自分の方が上だと言わんばかりの口調と表情に、これが自分の娘なのかと思ってしまった。
仕方ないと甘やかしてきたのは妻の代わりに育てなければと思ったからだ、愛情を与えることに対して迷いながらも欲しがるものは全て与えてきた、これで何度目だろうと思う。
娘が好きになった男たちの末路は悲惨だ、ニートや引きこもり同然になった男もいる、社会復帰は難しいのではないかと匙を投げられた状態だ。
ただ、好きになっただけなのにという娘の言い訳に自分は、そうなのかと頷き、金を出してきた、娘の言葉を信じた訳ではない。
それしか方法がなかったからだ、半分は諦めの境地と言ってもいいだろう。
娘の好きになった男は、どんな人間なのか、調べなければと男は思った、その男の妻は浮気の事実を知らないというが、本当なのだろうか。
もし娘のせいで離婚と言うことになった場合、男は決断し、答えを出さなければいけなくなっていることに改めて気づいた。
「初めてですよね、お義父さんと一緒に、こんなお店に来るのは、なんだか少し緊張します」
友人から食事券を貰ったんだよ、助けてくれた礼だと言ってね、孝史は遅くなるから二人で行こうと声をかけた。
店に着くと店内は静かだ、客がいない訳ではなかった。
運ばれてくる料理を食べながら、周りを見るとカップルや夫婦が多い。
「どうかしましたか」
「いや、今日はいつもと少し違うかなと」
少し化粧が少し濃かったですか、普段は殆どすっぴんなので、少し、すると正幸は笑いながら首を振った。
「綺麗だなと見とれていたんだよ」
正幸の言葉に驚いたのか、少し慌てたように顔を赤らめる、お世辞でも嬉しいですと言われて、反対に自分の方が照れてしまた。
若い頃なら決して口にはできなかっただろう、それなのに、こんな時に当たり前のように言えることに、正幸は妙な気持ちになった。
おとなしくしていると思ったら、また悪い病気がでたようですね、セックスと同じようなものです、恋愛依存症ですねと聞かされたときは、言葉が出てこなかった。
治る見込みはないのかと訊ねると治療してもと難色を示された。
実例を言いますと、有名芸能人でも似たような多いんですよと言われて調べてみると結婚と離婚の繰り返しだ。
アル中みたいなモノだと思って下さい、だが、そう言われも素直に受け入れることはできない、最初から間違っていたのだ。
だから、今回を最後にしようと考えた、終わりだと。
娘が好きになったという相手のことを調べて、過ちを繰り返さないようにと考えた。
赤の他人だと割り切って切り捨てることができたら簡単でしょうが、そう言われて、曖昧な笑いを返してしまったあのときのことを思い出す。
だが、今ならはっきりと言える、自分は切り捨てることができると、何故なら、娘だと思えなくなったからだ。
今度新しいスマホが発売されるから機種変更をしたほうがいい、親子、家族だと割引がきくからと変更させて連動するアプリを入れて娘の行動を把握したのは正解だった。
怪しげなサイトにアクセスしていたのだ、別れさせ屋、好きな相手を自分のものにする為に色々としてくれる、つまりは違法行為だ。
父親の自分には金を頼り、違法行為は他人に任せてというところだろう、だが、リスクというものを考えたことがあるのか。
もう、これが最後だ、終わりにしようと男は思った。
女の素行調査、経歴を見てオザキは、息を漏らした、その表情は驚き以外にもどこか楽しそうな笑みさえ浮かべている。
「こういうタイプの人間は変わりませんよ、治療しても繰り返すだけです、アル中、薬物患者と同じですよ、金がなければ役に立たない、処分するしかありません」
「利用価値はないと」
オザキの言葉に医者はとんでもないと首を振り、興味がありますと笑った。
「カルテを取り寄せてみたんですけど、繰り返していますね、同じ事を、ただ、今回の相手が既婚者というのが、初めてではないでしょうか、父親も苦労するでしょうね」
「会って、みたいですね」
本気ですか、意志は不思議そうに、だが、次の瞬間、お手伝いしますよと笑みを浮かべた。
やっと、更新できました。
新キャラが出てきたので名前をつけようかと悩み中です。