「だから最後は一人になった(夫)たった一人の男の犠牲の上に成り立つ、皆の幸せは、ここから始まっ た」 作:木桜 春雨
これが、あの人の奥さんなの、写真を見た女は驚いた、平凡という言葉がぴったりで、何故と疑問しか出てこない。
特別、美人というわけではない、正直、自分のほうがと思ってしまう、だが、調べていくうちに男には会社内に付き合っている女性がいることがわかった、妻に対して不満を抱いているのかもしれない。
それなら別れたらいいのにと思ってしまう、でも、離婚なんて簡単にできるものではないし、時間もかかるだろう。
でも、理由ができたらどうだろう、奥さんが夫と別れたいと思ったら、例えば他に好きな人ができたとか、結婚していても好きな人ができたり、浮気をしたり、そんな話は世間ではよく聞くし、別れる夫婦だって多い。
いや、それだけではない、たとえば事故に遭うとか、奥さんが、だ、結婚生活に支障が出て続けられず別れたらと考える。
想像するだけなら自由だ、だが、気持ちは収まらない、どうすればいい。
ネットで恋愛相談というサイトを見つけ、別れさせ屋という存在を知った、ライバルの弱みを見つけて場合によっては非合法な方法でライバルを。
どうしても好きな人に振り向いてもらいたくて悩んだ末に頼んだという人もいた、結果報告の匿名掲示板もあった、内容を読むと正直、本当だろうかと思ってしまう。
大事なのは金と書いてあった、要求通り、嫌それに多少なりとも上乗せすれば恋愛関係の揉め事、なんでも請け負いますという人間が世の中州にはいくらでもいる。
金、自分には金がある、両親から十分すぎるほど、たりなれば父親に頼めば出してくれる、今までそうだったから。
決心を確かなモノにする為、試してみることにした。
その為には、今、付き合っている男を切らなければいけないと思い、頼んだのだ、好きでもない男につきまとわれて困っていると。
そして一週間ほどで結果がでた、男が怪我をしたのだ、それも事故で、怪我をしたのは足だが、だがすがすがしいほどのいい気分だった。
何故、迷っていたんだろうと女は思った。
決心した、あの人を自分のモノにしたい、だけど邪魔な存在がいる。
金、お金をだせばいい、そうすれば思い通り、望み通りになる、自分は幸せになれる。
躊躇いはなかった。
自分の家に泥棒が貼ったという事実は孝史にはショックというわより驚きだった、だが、妻も自分の父親も出かけていたらしく、人為的な被害はなかったと聞いて孝史は安心した。
きっと、ショックを受けているだろうと思ったが、久しぶりに顔を見た妻は元気だった、運がいいのか、そのとき、義父と出掛けていたらしい。
その日、息子の友人から二人だけで会いたいと言われて正幸は何だろうと不思議に思い、出掛けた。
最初は喫茶店でもと思ったが、できたら車の中でと言われて正幸は自販機の缶コーヒーを買った。
「どうですか、その後、美夜さん、ショックを受けてたんじゃないですか」
「いや、泥棒と鉢合わせしなくて良かったと喜んでるよ」
ああ、それはよかったと京介は頷いた。
「主婦、女性って、そういうところは逞しいというか、男、いや、自分なら、しばらくは落ち込んでしまいますよ」
「だろうね、セキュリティの強化だといって、防犯システムに入ろうかと近所の人から話を聞いたりして色々と忙しくしている、ところで話というのは」
「実はですね、警察の人から聞かれたんです、孝史のこと、その」
少し言いづらい、どことなく気まずそうな雰囲気を感じ、もしかしてと思いながら自分の方から切り出すと頷かれた。
「気になることもあるんです」
「なんだね」
「現金ではなく、別の目的があったんじゃないかって」
知り合いに警察関係、詳しい知人がいるんですと京介はコーヒーを一口飲んだ。
「金を払えば恋人や夫婦を別れさせることを商売にしている人間もいて」
心臓がドクンと跳ねた気がした。
偽造した浮気写真を送りつけたり、不審者を装ってわざと後を付けて不安にさせる、京介の話に正幸は確か、そんな映画小説が最近、本屋、TVなどで見かけるなと思い出した。
「孝史の浮気、それはは確かなんですか」
「ああ、私の友人が見たんだよ、だが、美夜さんは」
知らないどころか、浮気しているなんて想像もしていないだろう、正幸の言葉に頷く京介は孝史の奴と小さく呟いた。
「まさかと思うけど、郵便を確認して下さい」
自宅に着くと京介に言われてポストを覗いた正幸は何もないことを祈った、ところが白い封筒が、それには消印も宛名もない。
車の中で確認しましょうと言われて中を見ると数枚の写真が入っていた、女性と並んで歩いている、肩を並べて腰に手を回したりしている、それだけではない、写真の女性は皆、違う女性だ。
写真は自分が預かりますと言ってくれたのは幸いだ。
こんにちはと声をかけられて振り返る、ああ、君かと正幸は立ち止まり、相手が近づいてくるのを待った。
「少しよろしいでしょうか、時間はありますか」
構わんよと答えると相手が笑ったのが分かった、サングラスをかけているので、はっきりとした表情はわからないが、そう思ったのだ。
以前なら会っても心から嬉しいとはおもわなかった相手だ、なのに今はそうではない心情になっていることに不思議に思ってしまった。
公演のベンチに座るとオザキは正面を見たまま、腹を割って話したいんですと低い声で呟いた。
「お宅に入ったのは泥棒なんかではありませんよ」
頷きながら息子の浮気写真が送られてきたよとだけ正幸は答えた。
「別れさせ屋というサイトに、ある女性が依頼をしました、夫婦の場合、色々な方法があります、少しでも早く別れさせたいと思ったんでしょうね」
いつもの、もの静かな声と違うと正幸は思った。
「実はサイト側が拒否したんです、依頼人の女性は驚いたと思います、金を出すといってもね、何故だと思います」
問いかけるような言葉に正幸は、しばらく考えた、だが、答えは出なかった。
新キャラですが、名前はなしです、悪い女と思ってください。。