水路を進んでいく。
立て続けの襲撃でボートのほうにも少なくない被害が及んでいるのか、時折エンジンが不自然な音を立てている。
これ大丈夫かな、途中で止まったりしないよな。
そんな事を思っていると、突然川岸の道に面した通路のシャッターが開いた。というか、内側からこじ開けられた。ぞろぞろとゾンビが姿を現し、その中の一人が両手に持った斧を振りかぶる。
「右に敵で──ってうわあっぶない!?」
「大丈夫か!」
「大丈夫です何とか避けました! 心臓止まるかと思った……!」
迎撃が間に合わず、とっさに首を振って回転しながら飛んできた斧を躱す。頭のすぐ横をかすめて明後日の方向に飛んで行った斧は、そのままレンガの川岸にぶつかって甲高い音を立てた。やっぱり拳銃よりも威力と装弾数はいいけどその分デカいから取り回しに劣るな! HK45なら多分撃ち落とせてたぞ今の!
元々投げ斧にそこまでの効力は期待していなかったのか、ゾンビ共は斧の行き先を気にすることなく躊躇なく川に飛び降り、泳いでこちらに向かってくる。クロール平泳ぎバタフライ、各々好き勝手なフォームで泳いでくるが、ボートの速力には勝てずに引き離されていく。あの分ではそのうち追いかけるのをやめて全員で腐乱ゾンビの仲間入りだろう。
「ジェームズ、あそこ!」
エイミーさんが左側を指さす。そちらに視線を向けると、女性がゾンビに襲われようとしていた。例によってそのチンポはギンギンだ。
即座にCM901をぶっ放すが、もともと銃の扱いになど慣れていないパンピーなのでどうしても狙いが甘くなってしまう。さっきの腐乱ゾンビの時は数が多すぎてとりあえず撃てば当たっていたが、さすがに離れた場所の一匹を誤射なしで撃ち抜けって言われると話が変わってくる。何発か撃った内の一発が女性のすぐそばを通り過ぎたのを見て、これはダメだと構えるのをやめた。
かくなる上は! とボートの上で立ち上がり、高跳びの態勢に入る。揺れる場所で狙うからダメなのだ、だったら水中に飛び込むなり空中で狙うなりなんなりして揺れない状況を作ればいい!
銃の素人にあるまじき強引かつバカ丸出しな発想のもと、私は全力で足を踏みきり、銃を構えようとして──5mくらい離れていたはずの岸まで一跳びで到達し、今まさに女性を襲おうとしたゾンビを足蹴にして着地した。
「──はえっ?」
ざぱんと水を割る感触ではなくぐちゃりと柔らかいものを踏み潰す感覚。そして構えた銃から覗いているアイアンサイトの先にはレンガ張りの壁。足元を見ると、レンガ張りの地面の上で的確に頭蓋骨と頸椎を踏みぬかれた腐れ野郎が今まさに赤いシミになっていくところだった。
女性の方を見る。呆けた表情をしていた。
振り返ってボートの方を見る。3人とも呆けた表情をしていた。
もう一回自分の足を見る。多分私も呆けた表情をしている。
『……えっ?』
全員で一言一句たがわず同じ言葉を発する。抱いていた気持ちも一緒だろう。
ハリーさんがいち早く正気に戻って接岸し、女性に避難を誘導する。女性は納得のいかない表情を浮かべてすごすごと指示された方向に歩いて行った。
私も釈然としない表情を浮かべたままボートに乗り込み、そのままボートが発進する。
「……絶対おかしい、体に対して明らかに身体能力身体能力が高すぎる……っていうか急にフィジカルめちゃくちゃ強くなってる……」
「それについては同感だ……何か心当たりはないか?」
「あるとしたらゾンビ共に散々ぶち込まれた精液くらいしかないんですけど」
「……すまん、不躾な事を言った」
「はっはっは、世の中基本的には死な安なんですよ。生き地獄っていう言葉もあるにはありますが」
そんな事を話しながら水路を進んでいく。ほどなくして地下通路への道が見えてきた。そこへボートが入り込み、地下にエンジン音を反響させながら進んでいく。
……が、ここで私たちはまたしても停止を余儀なくされた。
最悪なことに、ジェームズさんの予想は見事に的中していた……地下通路の壁面には大量のヒルがへばりついており、少なくない数の黒女が磔にされている。中には触手が早合点して『起動』させられた母胎もあったのか、ギチギチとラバーの拘束衣を鳴らしながらぎこちない動きで徘徊する黒い影がちらほらと確認できる。
「……ジェームズ、今私の頭に一つ考えが浮かんでいる」
「考え? 言ってみてくれ、ハリー」
アイツらを見てみろ、とハリーが徘徊するラバー母胎を指さす。
「我々があちらを視認できているという事は、あちらからも我々が視認できるという事だ。なのに、どの個体も一向に我々に気付く気配がない」
「……つまり、奴らには視覚がないのか?」
「あのザマだ、五感が満足に機能してるかどうかも怪しいな。というか、母胎そのものは死体なんだろう? 連中の腹の中にいる奴らが索敵から制御まで全部賄ってるんじゃないか?」
「そうでもないと思います」
「どうしてそう思うんだ、ホド?」
その言葉に、私は無言で自身の腹を指さした。ワニザーメンでぽってりした腹、そのへその下では淫紋が燦然と光を放っている。
その淫紋を片手で撫でながら、私は持論を話した。
「さっきのラバーゾンビ……まああれももうミュータントみたいなもんでしょうし便宜的にゾンビって呼びますけど、最初の時は淫紋は光ってなかったんですよ。ただ、触手が耳にぶっ刺さって、頭の中をかき回して母胎を『起動』するのに合わせて光り始めました」
「そして、今ホドの腹のそれは光っている……とすると」
「多分、あそこで磔になってる人たちは死んでますけど、動き回ってる人たちは生きてます。……まあ、苗床兼ミュータントとして」
「あの触手もミュータントの一種だろうからな、それを宿している彼女たちが同類になっていないとは考えにくいか……ゴールドマンめ、悪趣味な……!」
そのミュータントの精液をさっきから腹に詰められまくっていることに関してはノータッチでいく。卵詰められたりはしたけど孕んではいないからセーフでしょ、多分。強化遺伝子がどういう風にしたら感染するのかがわかってないのがアレだけど……。空気、ではないだろうし、血液感染あたりが妥当なところ……かなぁ? その場合何度も中出しされてる私は一気に危なくなるんだけど。
「……とまぁそういうわけで、多分索敵の方は母胎に頼りきりだと思います。視覚は見てのとおりですし味覚も多分触手の粘液と精液に塗りつぶされていて機能するとは思えません」
「機能しているのは嗅覚・聴覚・触覚の3つ、か」
「はい。ただ味覚でも相手を察知できるとは言いますが、あれ確か相当な訓練を積まないとできない芸当なので大丈夫ですね。それに触覚も本当にゼロ距離まで近づかなければ意味のない感覚なので、まあ事実上機能しているのは二つとみていいでしょう」
あんな乱暴な起動方法してる以上聴覚も機能してるかどうかは微妙に怪しいけど、まあ機能しているものと考えよう。
ハリーさんがゆっくりとボートを川岸に寄せる。ほとんど停止状態に近いエンジンの音でも敵性であると判断したのか、ヒルの群れが急速に蠢き、地下通路の壁が波打っているかのような感覚を見ているこちらに与えてきた。
「ジェームズとホドは地下から進んでくれ、俺たちは囮も兼ねて地上から進んでいく……ボートの騒音でならあの連中も釣れるはずだ」
「何かあったらすぐ連絡するわ」
そう言って、2人はボートに乗ったままフルスロットルで去っていく。
ハリーさんの言った通りヒルたちはボートのエンジン音に敏感に反応し、一斉にラバーゾンビを吐き出す。べちゃりと地面に落下した母胎はすぐさま『起動』され、二穴どころか両乳首と口を加えた五穴から飛び出した触手を使ってアクロバティックな動きでボートを追い始めた。なんだあのジャブローから撤退するシャア専用ズゴックみたいな動き……こわ……。
とはいえやはり大方の予想通り視覚は機能していないようで、ボートを追いこそすれど私たちの方にはだれ一人見向きもしなかった。
「よし、私たちはこちらへ向かおう。ちなみにここだけの話ボートを使っているあちらの方が早そうに見えるが、直線距離で考えるとコロシアムへはこっちの方が近道だったりする」
「そうなんですか」
「ああ。水路だとあちこち迂回する必要が出てくるからな……それにこの騒動だ、ボートで逃げようとして事故を起こした市民も少なくないだろう。状況次第では相当な遠回りを強いられるはずだ」
「はえー……」
気の抜けた返事を返しながら、ジェームズさんについて行く。エイムは間違いなく彼の方が上だが、弾幕なら私の方が上だ。銃のスペックで勝ってるだけと言われたら実際その通りだから何も言えないけどね。
悲鳴が聞こえる。そちらへ向けて二人で銃を構えながら視線をやると、青年がヒョロガリゾンビに襲われようとしていた。手早くゾンビをどついて青年を救助する。
「無事か?」
「あ、ああ……助かったよ、ありがとう……すごい格好だね君、恥ずかしくないの?」
「そりゃ恥ずかしいですよ言わせんな恥ずかしい。事情があってこういうのしか着れないんです」
「あー、まあ、確かにその胸だとね……ごめんよ、ちょっと」
「それにしてもよくこんな所で無事だったな、さっきまでヒルとラバーゾンビの巣窟だったろうに」
「ラバーゾンビ……? ああ、あの女性の人たちか。みんな目が見えてないみたいだったからさ、通路の隅っこでやり過ごしてたんだ。本当に隅でじっとしてただけだから普通のゾンビにはすぐ見つかっちゃったけど」
「それにしても、なんでこんな所に?」
「も、元々避難してる途中だったんだ……」
そう言って、青年は道の奥を指さした。
「中の様子を見に行った仲間が戻ってこないんだ、あれほど行くなと言っておいたのに……それを待ってたらいつの間にかヒルの大群に逃げ道をふさがれて、そこからずっと立ち往生だよ」
「……なるほど。私たちで調査してみよう、君は早く避難を」
「あ、ああ……そうしてくれると助かるけど、本当に大丈夫かい?」
「任せてくれ、これでも私は実働系の国家公務員だ」
「私は臨時の民間協力者ですけどねー」
そう言うと、その青年は不安そうにこちらをチラチラ振り返りながらも地下水路から足早に去っていった……って待て、よく見たらめっちゃ私の胸と腹見てやがる。おいこら。爆乳ボテ腹レースクイーンがそんなに珍しいか。
……いや、普通に珍しいな?
「先へ進もう。さっきの彼が言っていた仲間というのも探す必要があるからな」
「絶対ロクな事になってないと思いますけどね……」
こう言うのはだいたい単独行動をした方が死ぬが、そうでなかったら集団で危険地帯に突っ込んだ方が死ぬと相場が決まっている。まあよくて半壊悪くて全滅だろう。
そんなこんなで先へ進もうとすると、今まさに進もうとしていた道の奥からおっさんがこちらに逃げ込んできたところだった。すわゾンビにでも追われているのかと思って銃を構えた次の瞬間、さらにその背後から姿を現した龍のような何かがおっさんに嚙みついてまた奥の方へと引きずり込んでいく。
「なんだ!?」
「追いましょう!」
おっさんの後を追う。すると、用途は不明だが妙に広い場所に出た。すぐ近くに水路があるという事は、点検用か洪水対策の臨時の貯水池か何かだろうか? ただ、ここだけ妙に煙か霧のようなものが濃くて視界が悪い。
走っていくと、何か大きなものが蠢く音と不気味な唸り声が聞こえてきた。そして、霧に紛れて突然姿を現したのは……。
「こいつは……!」
蛇のように常に曲がりくねるような動きをしているため正確な長さはわからないが、それでも目算で身の丈5mはあろうかというヤマタノオロチ……もとい首が五本なので、ゴマタノオロチ。真ん中の一本だけ青色の首をしていて、それ以外の4本首は茶色とオレンジの中間くらいの色をしている。
目は退化しているのか見当たらず、頭部はその大半を凶悪な牙を無数に生やした巨大な顎が占有している。また、左から2番目の首はさっきのおっさんを咥え、さらに一番右の首はあろうことか女性のマンコに首を突っ込み、腹の中を好き放題にかき回していた。その女性は四肢を放り出した状態で白目をむいて泡を吹いていて、その首が身をよじらせるたびに悲鳴ともうめきともつかない不気味な声を発する。
この2人はおそらく先の成年の仲間だろうか。だとしたら、友人とかそういう意味ではなく本当に生存者という意味での仲間だったんだな。
大蛇、あるいは五首の巨竜は私たちに気づくと口にくわえたおっさんや腹内に顔をうずめていた女性を振り飛ばし、こちらへ向けて咆哮を放った。
──3rd BOSS, "The Tower"。コロシアムへの無断侵入者を防ぐためにゴールドマンが配置した、局地防衛特化型ミュータント。弱点は口内、ただし基本は口を閉じた状態であるためいずれかの首がランダムに放ってくる噛みつき攻撃に合わせて攻撃する必要あり。
「口を狙うぞ! 奴の攻撃手段は嚙みつきだけだ、カウンターを狙え!」
「はい!」
一番右で鎌首をもたげていた首が振りかぶられ、光が収束するようなエフェクトとともにその口を開く。
すかさずジェームズさんが発砲し、的確にそいつの口内を銃弾で射抜いた。しかし腐ってもボスミュータント、痛がる素振りこそ見せるものの出血などは見受けられない。どんな頑健さしてるんだ。
私もジェームズさんの後ろでCM901を構え、攻撃態勢に入った首を片っ端から撃っていく。相変わらずエイム力は劣悪の一言だが、相手の動作が緩慢な部類であるおかげでフルオートで5,6発撃てば1発くらいは弱点に命中してどうにか攻撃キャンセルに持ち込めるのが幸いだった。弾薬の消費が増えるのは痛いが、ここでケチってやられたりしたら元も子もない。
「リロードする!」
「わかりました!」
ジェームズさんがスライドの下がりきった拳銃を片手に後退し、代わりに私が前に出る。"審判"のように小さい弱点が好き放題動き回るわけでもなく、"教皇"のように急襲攻撃を仕掛けてくるわけでもない。まだ扱いやすい部類だ。
青の首は攻勢に出ず、不規則にオレンジの首が攻勢に出てくる。私は時間稼ぎに徹し、ジェームズさんがリロードを終えて戻ってくるのに合わせて再び後方支援に戻った。
やがて、度重なる損傷に耐えきれなくなったのかその姿勢を維持できずに地に伏す首が少しずつ現れ始めた。この分ではそう長い時間はかからないだろう。
「これで、最後っ!」
4本あったオレンジの首、その最後の1本の口内を撃ち抜く。ついに限界を迎えたか、その首も力なく地面に倒れる。どういう訳かノーダメージのはずの青い首も一緒に倒れ、何事もなく"塔"に勝利したかのように見えた。
だが、そう甘い話があるわけもない。
一度は倒れた青い首が再び動き出したかと思うと、オレンジの首をすべてパージして蛇のようにのたくりながら逃亡を始めたのだ。生物としての生存本能に従ったのか、あるいは自身の主……ゴールドマンに情報を伝えるための決死の行動か。
どちらにせよ、敵である以上は間違いなく放置するわけにはいかない。
「逃がすか! 地を這い泥水啜ってでも追いつめてやる!」
ジェームズさんがそれを追いかけ、貯水池に飛び込んでいく。私もそれについて行こうとするが、しかしここで待ったが入った。
だんっ! と地面を踏みしめる音とともに、走りだそうとした私の目の前に黒い影が落ちてくる。
「んなっ!?」
急ブレーキをかけながらCM901を構えなおす。
その黒い影は実際に黒かった。そしてその肌はラバー特有の輝きを見せていて、その豊満な腹と胸は不気味に蠢きながら、内部に何かを孕んでいることを暗に示している。
下腹の淫紋は鈍い光を放っていて、その上には"67"と数字が刻まれていた。
そいつはおもむろに自身の口元に手をやり……ずるぅううううっ♡と、口どころか喉や消化器までもを占有していたペニスギャグを抜き取ると、底冷えするような甘さを含んだ声を放った。
『見ツケタァ……♡♡』
「ここでお前かよ……!」
ラバーゾンビNo.67、死体を苗床にした大量の触手が本体のイレギュラーミュータント。死体は触手の手によってゾンビに仕立て上げられ、快楽に支配されて肉欲のままに手当たり次第人間を襲う危険生物……危険
ブポォッ!と汚らしい水音と主に体中の穴から触手を溢れさせ、快楽の奴隷となったメス豚ゾンビが迫りくる。
発砲するが、やはり効果は薄い。粘液まみれのラバーは常識外れの摩擦係数を見せ、5.56mm弾がつるつる滑って見当はずれの方向に飛んでいく。
そうこうしているうちに甲高い音が手元から響き、発砲音が途切れる。努めて冷静に頭を回しながら、ゆっくりと距離を取りつつリロードを──
──ズンッ!
「かぺっ……?」
体に衝撃が走り、口から不思議な声がこぼれる。
腹を内側からゴリゴリと抉られる感覚。下に視線を向けると、腹がボッコリと歪に膨れ上がっていた。さらに視線を下に動かしていくと、特徴的なオレンジの体が見える。
どういう訳か先ほど倒れたはずの"塔"のオレンジ首が再起動し、私のマンコにスカルファックをかましていた。
さらに、残りの3本の首も続々と起き上がって一塊に集まりなおしていき、あっという間に、青い首1本だけを失った状態で"塔"が再起動する。
呆然とその様子を眺めていると、首根っこを掴まれる。
「ガッ!?」
『捕マエタ……逃ガサナイ……!』
ギリギリと67番に首を絞め上げられる。ケツ穴とメス穴から伸びた触手に四肢を拘束され、ぐいっと体が大の字になるように引っ張られる。
一瞬にして無防備な姿を晒してしまった私は、しかし酸素不足で喘いでいてそれどころではなかった。
開口マスクの中で肉色の空間が蠢き、舌が艶めかしくチロチロと蠢いている。ぐぽぉ♡と目の前でそこから大量のチンポの形をした触手が顔をのぞかせた。
チンポ触手がその雄々しい姿を見せつけるように私の目の前にかざされる。67番の手によって口を無理やり開けさせられ、舌をチロチロと動かしてのチン媚びを強要された。
一斉に触手が私の口の中に流れ込んでくる。
「おっ、おごぅっ、ほごっ……!♡」
一瞬にして敗北したザコメスの公開凌辱ショーが人知れず幕を開けた。