ずるるるるっ!! と宿主のメス穴とケツ穴の中身を引きずり出さんばかりの勢いで、肉色の濁流が私たちめがけて迫りくる。
宿主のメス豚たちが体をピーンと弓なりに反らせて絶頂のハーモニーを奏でるその様子は、見るものが見れば淫靡を極めたがあまり一周回って神々しい何かを感じ取っただろう。
……ま、私たちはそんなところに気を配る余裕なんて全くないんですが。
「うおぉおおおおおわぁああああああっっっ!!!???」
「数が多いな!」
寄らば切る、切らねば寄るとばかりに触手とレーザーブレードの仁義なき果し合い。切り落とされ、断面を焼かれて強引に止血されたばかりに生き残った触手が往生際悪くビチビチと飛び跳ねながらこちらに近づいてくるのを踏みつぶしながらの応酬。
アリーナのトップのアレみたいにチャージして一回転ズバーンみたいなの出来ないんですかねこれ! ……作品が違うって? それはそう。
「どれだけ捌けばいいんですかねこれ!?」
「見当もつかん!ブレードのバッテリーも有限な以上早めに終わってほしいものだが!」
視界の先で、ビクビクと機械に繋がれた肉袋が無様に震える。
胎の中に収まっていた全ての触手を吐き出したメス豚の股からはでろりと赤黒い子宮が飛び出て、力なく開いたポルチオから羊水とも卵液ともつかない黄ばんだ粘液をポタポタと滴らせていた。
しかし、ケツ穴のほうはどれだけ出しても在庫の尽きる気配がない。
どういうタネがあってそんな無限増殖バグをやっているのかと疑問に思ったところではたと気づいた──チューブの繋がれた口、その喉元がボコボコと不気味に蠢いているのを。
なおも迫りくる肉欲の洪水を手当たり次第にぶつ切りにしながら、私は半ば半泣きになりながら声を出す。
「ジェームズさんっ、これ後ろの穴のほうは出した先から補充されてるっぽいですぅ!」
「本当か!? となると……仕方ないか、避けながら進むぞ!」
「これをですか!? どこにどうやって!?」
「私にいい考えがある……っと!」
そう言って、目の前でジェームズさんが迫りくる触手を器用に躱しながら──っていうか明らかに私のほうに来てる量の方が倍くらい多い、いくら獣とはいえあまりにも性欲に正直すぎる──おもむろに目の前に鎮座する調教装置に手を伸ばし、下部に設けられたディルドパーツを力任せにもぎ取る。バキッ! という目を疑うような音とともに、ジェームズさんの手にはローションとメス汁でてらてらと輝く黒いイボつき棍棒が握られていた。いやあの、それ繋がってたの金属製のジョイント……。
主人公が目の前で順調に真人間としての道を踏み外しているのを本当にいいのかと不安に思いながらも、触手の群れを片っ端から肉片と緑のバイオ血煙に変換する手は休めない。
そして、ラバーゾンビのアナルからウゾウゾと這い出る触手共の根元をつかんでブレードでバッサリと切断したかと思うと──ズドムッ!!
「これでどうだ……!」
「えぇ……!?」
スーツ姿のあんちゃんが、触手吐き出すケツ穴を、ビッグディルドで貫いた!
思わず七五調が出るような暴挙に、機械に繋がれたメス豚が大きくその身をよじらせる。しかし、根元までぶちこまれた影響でどれだけアナルに力を込めようと、もこもこっ♡と括約筋が淫らに盛り上がるばかりで中身が出る気配はない。
見る見るうちに腹がいびつに膨れ上がり、くぐもった喘ぎ声にいよいよ苦痛の色が混ざり始めた。
それをよそに、ジェームズさんはひょいひょいと触手の中をかいくぐっては生体ユニットのディルドユニットをもぎ取り、そこに繋がれたメス豚のケツ穴にぶちこんでいく。
私が最後の一本を切り伏せるころには、すっかり緑色のバイオ体液とラバーゾンビの苦悶の叫びに満ちた空間が出来上がった。
パンパンと手を払いながらジェームズさんが言う。
「よし、これで先に進めるだろう。とはいえ一時しのぎの応急措置だ、急いで先に進むとしようか。ホド、対処を任せきりで済まなかった」
「いや、それはいいですけど……え、全部処理したんです?」
「ああ、20本はへし折ったな」
マジかよ。
そもあれ、今はそれについて詰めてる場合じゃない。てかこんな場所でそんなのんきに事を運ぼうものならずらっと機械に繋がれた触手風船が爆発してもれなくゲームオーバーだ。ジェームズさんはそのままお陀仏だろうし、私は良くて苗床、悪くてそのままロクでもない実験の治験体になることは想像に難くない。
急いで先へ進み、都合よく待機していたエレベーターに乗り込む。……いや本当に都合よくいたな。なんだったら私たちが来るのに合わせて扉まで開いたぞ。
「作為を感じる……」
「これもゴールドマンの狙い通りだろうさ。突破してくるやらそれでよし、あわよくばホドを確保して邪魔者を体よく始末……そんなところか」
「そんな気はしてましたがやっぱロクでもないですねあの金玉男」
「あまりにも悪意に満ちた直訳」
最初に乗った時よりも時間はかからず、チーン、と言う音とともにゆっくりエレベーターが停止する。液晶画面に映し出されるのは"50"の数字。
ジェームズさんがさっき言っていたし、もはや朧げになりつつある原作の記憶とも辛うじて一致する──ここが最後の関門、社長室のある階だ。
扉が開くと、ブレオンアンドロイド2体のお出迎え。
エレベーターを飛び出してすぐさまこちらもブレードを展開し、片方のアンドロイドめがけて大上段で振り下ろす。
「ウェルカム天誅ゥァ゛ーッ!! くたばれダボカスゥーッ!!!」
「ホド!?!?」
両腕のブレードをクロスさせることで受け止められるが、構わず全力を腕に注ぎ込む。
やがて、限界を迎えたアンドロイドの腕がスパークしながら音を立てて砕け、頭頂から股下まで唐竹割りにぶった切った。
ガラガラと崩れ落ちたスクラップに中指を立てて吐き捨てる。
「おととい来やがれってんですよガラクタが! 邪魔すんな!」
「君なぁ……」
ジェームズさんの呆れたような声が聞こえるが、彼は彼でこちらに視線をよこしながらノールックでもう一体のアンドロイドに5発くらいヘッドショットを叩き込んで黙らせていたのを私は見逃さなかった。あまりにもエイム力が良すぎる。
それはさておいて、大理石張りのモダンな廊下を進んでいく。どこに隠れていたのやら、次から次へとノーマルアンドロイドが姿を現しながらわらわらこちらに寄ってきた。……隠れるも何も、そういえばこいつら光学迷彩かなんか搭載してたな。ってことはこいつら透明化した状態ですし詰めだったのか。……想像してみると結構シュールだな?
とはいえ、紆余曲折あれどもここまでやって来た私たちの敵では……あんまりない。迫りくるスクラップどもを恙なくレーザーブレードの錆にしていきながら、ずんずんと突き進んでいく。
程なくして、通路の一番奥、扉で閉ざされた突き当りに行き着いた。
「……どっちが先に行きます?」
「私が行こう。ホドは後ろを見ていてくれ」
「了解です」
シュイン、とほとんど音を立てずに扉が開く。
その先にあったのは、なんでこんなところにこんな場所が? と思いたくなるようなオーソドックスな研究室だった。とはいえ、そこまで本格的というわけでもないのか、顕微鏡やビーカー、フラスコといった学校の理科室でも置いてある程度の設備が置いてあるのみとなっている。……まあ冷静に考えて何かあったときのリスクが大きすぎるし、その手の専門的なものは別途違う場所で研究しているのだろう。……っていうかそれこそDr.キュリアンのいた初代のあの施設がそうなんじゃないだろうか。
先へ進むと、さらに新しい扉が設けられていた。
ご丁寧に扉の表面には特徴的なマークと注意書きの記入されたパネルがはめ込まれている。曰く──『
この上なく今の状況にぴったりな一文に、乾いた笑いが零れる。
「なんだここは……!?」
そう、HoDプレイヤーも知っている──じゃない。セックスシーンでもないのに天丼はポリシーに反する。
その先にあったのは、今までに見てきた多種多様なゾンビを格納した培養カプセルの群れだった。人のことを肉便器みたくハメ潰してくれやがった腐れ野郎どもが雁首揃えて安置されている姿は正直言って気分が悪い。……っていうかこれ目の前通ったら急に覚醒してガラスぶち破ってきたりしないよね?
これでもかというくらい存在感を主張する培養カプセルの森の中を、変に刺激したりしないよう細心の注意を払いながらそろりそろりと進んでいく。カプセルの中身は一本につき一種類のゾンビが格納された博物館システムになって打て、手斧などの武器を装備したまま培養液に付け込まれてる奴や指先でつつけばそこから型崩れを起こしそうなドロドロの腐乱死体、果てはさっきから相手にしているどう考えても湿気厳禁そうなアンドロイドまでもが詰め込まれている。なんだこれ、見境なしか。
その時、とてもではないがこの世のものとは思えない、しかしそれでいてものすごい聞き覚えのある咆哮が周囲に響き渡った。閉鎖された屋内で放たれたそれは壁・床・天井をめったやたらに反射し、さながら非常ベルじみて耳朶を打ちつける。
「うるっさ!? 今度はなにぃ!?」
「この声は……!」
目を白黒させる私をよそに、ジェームズさんは一目散に音源と思しき方向へ駆け出していく。あんなスタングレネードかなんかみたいな轟音を直浴びしたのになんでそんな復帰が早いのかと疑問に思って、そういえば私の五感ってあれこれとミュータントの遺伝子を盛り込まれたおかげであちこちブーストがかかってるんだったと気付く。まずいな、なんかもうこの体の感覚でいることが当然みたいになってきてる……よくも私をコケにしやがって、殺してやるぞゴールドマン……!
ともあれ、うかうかしてはいられない。頭を振って意識をはっきりさせ、ジェームズさんの後を追う。案の定というか、そこにいたのは青とオレンジのクソ蛇。
私たちが銃を構えて近づくと、こちらに気付いたのか鎌首をもたげて再び咆哮をかましてくる。しかし、目もないのにどうやってこっちを認識してるんだか……確か現実の蛇には赤外線を探知する器官みたいなのがあるらしいし、コイツにもそれが搭載されてたりするのだろうか?
さて、閑話休題。
「わざわざこんな狭いところで姿を現すとは殊勝な心がけだ! 今度は一本たりとも逃がさん!」
「お前のせいでこっちは迷惑してんですよ! 頭の中に変な奴生えてくるし! くたばれクソ野郎!」
そういえばそんな
「やる事は以前と一緒だ、口を狙うぞ!」
いの一番にど真ん中に鎮座していた青い首がその身を振りかぶり、光が収束するようなエフェクトとともにその口を開く。今回は本体も殴り掛かってくるのか。
すかさず二人がかりで銃撃を加え、ジェームズさんの撃ったほうの弾丸がクソ蛇の口内を直撃する。私の撃った弾は御立派な牙に当たって弾かれた。なんでや! ……まあ本体を射抜いたとて頑丈なのは変わりなく、なんだったら周りの4本首よりも固いのか以前にも増してダメージを食らっている様子が薄い。
……こんな風に言うと難敵のようにも思えるが、結局のところ特にトータルの耐久力が変わっているというわけでもない。攻撃態勢に入った首を片っ端から撃っていけば、こちらの弾薬が底を突くよりも先に相手のほうが倒れるだろう。……なお、いつまでたっても成長の気配が微塵もない私のエイムに関しては考えないことにする。6発撃って4~5発牙にぶち当てるの、一周回って器用なんじゃないの? 録画してyoutubeかなんかにアップしてやろうかな。私の服装がコレだから速攻で年齢制限入りそうだけど。
そんな風にダイナミック抜歯治療に勤しんでいると、ジェームズさんが拳銃を負ったまま一歩後ろに下がった。
「リロード!」
「了解っ!」
一歩前に出る。よーし、あとは私が時間稼げばジェームズさんがリロード終えて仕留めてくれる──カキンッ──はず……ん? カキンって言ったか今?
首を傾げる。っていうかあれ、急に弾が出なくなったな。 ぶんぶんと銃を振り、ついでにマガジンを取り外して中身を見る。スッカラカンだ。
……これは……弾切れじゃな?
「やっべ」
好機とばかりに青い首がこれまでにないほど全力で青蛇が体を振りかぶる。ジェームズさんはもちろん、いくら私といえども食いちぎりの直撃をもらえばただでは済まないだろう。事態に気付いたジェームズさんが咄嗟に拳銃を構えようとするが、それよりもはるかに早く首が振り下ろさて、乱杭歯が不気味に煌き──
がしっ、と私を丸かじりにしようとした首を片手で受け止めた。さすがにその衝撃は無視できるものではなく、ズンッ! と体がわずかに沈み込んだ。久しく感じていなかった快楽を伴わない純然な痛みに表情が歪む。
気合で我慢し、もう片方の手でレーザーブレードを展開する。そのままぐいっと限界まで振りかぶり、クソ蛇野郎の下あごから貫くようなアッパーカットをぶちこんでやった。
「往生せいやオッッッラァッ!!!」
暴れて逃げ出そうとする青蛇だが、その頭をさらに両腕でわしづかみにして無理やりに抑え込み、レーザーブレードめがけてダメ押しの膝を全力で叩き込んだ。もはやミュータントに片足も両足もすっ飛ばして腰まで浸かりつつある膂力に耐えきれず、ブレードの発震器が粉々に砕け散る。
しかし、貴重なレーザーブレード一本を使い潰して得られた戦果は膨大だ──統率を失った蛇共の動きが途端にぎこちなくなり、隙だらけの様相を呈している。それをいいことに私はとっさに放り捨てたCM901を拾い上げ、悠々とリロードに取り掛かった。
「よっし、これでOK♪」
「あまり心配させるようなことをしないでくれないか! 肝が冷えたぞ!」
「すいません、これしかないと思って……」
「だとしてもだ!」
リロードを終えたジェームズさんが苦言を呈しながら残った首の口の中に銃口を突っ込み、容赦なく連射して仕留めていく。いや、あの、あなたも大概ヤバいことしてると思うんですけど……。めちゃくちゃ指摘したい気持ちでいっぱいだったが、藪をつついて蛇を出してもいいことがないので頑張って黙る。
……むやみやたらと暴れまわるようになったせいで多少時間はかかったものの、烏合の衆となった蛇野郎を殺しきるのにそう時間はかからなかった。
ズズン、と力なく地面に倒れ伏す蛇野郎。恐る恐る近づいて、青い首を蹴飛ばしてみる。……反応はない。どうやらちゃんと死んだようだ。
改めて手持ちの銃をリロードし、先へと進む。扉を抜けると、先ほどまでのどことなく学校の理科室を感じるような空気感はなく、大理石張りのモダンな廊下が広がっていた。
「……いよいよか。この先にゴールドマンが……」
「……ですね」
どうやら待ち伏せしていたらしい3体のアンドロイドを片手間に仕留め、さらに先へ先へと進んでいく。
──決戦の時はすぐそこに。
「……あれ?」
「どうしたホド?」
「いえ、なんか一匹忘れてるような……? ……まあいいか。行きましょう、ジェームズさん」
……どこからか、微かに悲しげな雄たけびとチェーンソーの駆動音が聞こえたような気がした。