GM:◆外壁区 リーブラ法律事務所
『外壁区に居を構えるリーブラ法律事務所。隣人であるテンパランスの仕事場で、ヴァージンペインは出されたお茶を飲みながら妹の消息を聞いていた。』
テンパランス:「朝早くからごめんね。ちょうど手が空いたから、お願いされていた妹さんの行方を調べてみたの。半年ほど前に、楽園区の教団付属病院から住宅区の教団支部に移されている。住み込みの一般信徒として登録されていたみたい。ただし、3ヶ月ほど前に"行方不明"となってる」
ヴァージンペイン(以下VPと省略):「ありがとうございます! こんなに早く消息がつかめるなんて。でも行方不明、ですか……」
テンパランス:「ええ。今机上で分かる情報だとね。これ以上は正式な依頼という形になるわね」
VP:「そう、ですよね。まだ正式な依頼ではありませんよね!」
(ならまだ先はあるはず……。でもこれ以上の借金はできない……)
テンパランス:「ああ、それともう1つ。ついさっき、あなた達"トラゴエディア"を含む複数の教団HPに、ハンター向けの依頼が掲載されたの。内容は連続児童失踪事件の解決、受付は住宅区の各教団支部。依頼を受けるついでに、妹さんのことも調べるチャンスじゃない?」
VP:「それは確かにそうかも……。時期は合わないと思いますけど、"以前にも"という形で聞いて回っても怪しまれない、いい機会だと思います。受けてみます!」
『情報端末でさっそく確認してみる。』
GM:すると、教団HPに依頼の告知がアップされています。本当に掲載されて間もないようです。
●依頼内容
事件内容:連続児童失踪事件の解決
事件現場:住宅区下層
達成条件:児童の捜索及び救出
報酬:100クレジット
期限:48時間
依頼主:住宅区の教団(複数)
VP:『気は向かないけれど、せっかくのコネを活かせる機会でもあるので、教団支部に足を運んで話を聞く。』
GM:◆住宅区中層 トラゴエディア教団支部
『緑の多い敷地に建てられた落ち着いた外観の低層ビル、それがトラゴエディア教団の住宅区支部だった。宗教施設らしさはなく、周囲の住宅街にさりげなく溶け込んでいる。一見すると公共施設のようだが、中に入れば巨大な黒い雲のような肉塊の壁画、異形の生物の彫像などが並び、そうでないことを教える。受付で名と要件を告げたヴァージンペインは、女性の信徒に案内され、支部長の元へと通された。』
VP:(うまく隠してる……楽園区の施設ともぜんぜん違う。こういうところは本当にうまい人たちだなぁ……)
GM:トラゴエディアは目立たないけど、地味に金と権力を持っているという設定です。
VP:一応、大手のイシュタル教団とかに近い構成ですからね! 豊穣とエロなので。酒の代わりに"乳"とかが商品でしょう。シュブ=ニグラスの乳は肉体変異をもたらす系の恵みなので!
GM:『案内される途中の館内は、廊下の両側に部屋がいくつも並んでいるが、壁も扉も分厚い造りで中の様子は伺えない。ときおり扉が開くと、中からは焚き込めた香の香りと悩ましい艶声が微かに聞こえてくる。』
VP:(……私もついこないだまで、ううん、なにかあればまた呼ばれるんだろうな……。楽園区のエルフよりはマシだと思いたいけど……)
GM:『通された部屋は、シンプルだが贅を凝らした造り。背を向けた部屋の主は誰かと通信中だった。』
「……はい、今期の夜会において"神餞"にご推挙いただきまして、誠にありがとうございます。ご期待に沿えるよう、精一杯励ませていただきます。では」
VP:(あっ……そうか、あの人なんだ……)
『無意識に身体が萎縮し、太ももを擦り合わせる。』
GM:『通信を終えて振りむいた和装の男は若く、2~30代だろうか。整った顔立ちに糸のように細い目が印象的だった。ヴァージンペインには馴染みの……楽園区に居た頃の世話役だった男、稲栄名切(イナエナギリ)。』
VP:「その、お久しぶりです……。稲栄さん」
稲栄:「ええ、こちらこそご無沙汰しておりました、聖女様」
「つい先日"掌院"に昇格しましてね。貴方の支援も兼ねてこちらの支部長に赴任した次第です。一応、栄転というところでしょうか。貴方には感謝しておりますよ」
VP:「……おめでとうございます、感謝ですか……。いえ、それよりも。支援というのはハンターとしての活動についてですか?」
稲栄:「ええ、そうです。貴方のハンター活動は太母様のご意思ですから。教団はそれを最大限支援させていただきますよ」
VP:(どこまで本気なんだろう……。でも楽園区から私を出したんだから、そこはたぶん本当のはず……)
「それなら、つい先程公開された依頼について詳しいことを聞けませんか? 児童が失踪している件についてです」
稲栄:「貴方がこんなに早く訪ねてくるとは意外でした。ちょうどこちらから依頼の連絡をしようとしていたんですよ」
「半月ほど前から、住宅区下層を中心に児童の失踪事件が多発しておりまして。2日前の夕方、我が信徒の家庭にも被害が及んだため、他の教団とも共同で捜索及び救出の依頼を出した訳です」
VP:「特に心当たりはないんですよね? たとえば犯人の目星はついているとか?」
(あるいは誘拐してるのはトラゴエディアとか……)
稲栄:「未だ犯人の目星はついていません。場所が下層なため、警備機構はほとんど動いてくれません。そのため、住宅区の教団が動くことになった次第で」
VP:「そう、ですよね……」
(そっか、警備会社と契約してないんだ……。上層だとこういうことはまずない……)
GM:大手の"トラゴエディア"の信徒に被害が及んだことで、ようやく解決の動きが出たという感じです。
VP:金ならある!
「わかりました。被害にあった家庭の住所と、他の教団の連絡先を教えてください」
(ちゃんとこういう仕事もできれば、前みたいな扱いはされない、といいなぁ……)
GM:「ありがとうございます。児童の家族からの証言等はここにまとめてあります。他教団の連絡先も。捜索の助けになるでしょう」
●ヒントA:被害者家族の証言。失踪児童(女児12歳)の行動範囲と時間が判明。犯行場所を割り出す役に立つだろう。
VP:「……ありがとうございます」
(じかに話を聞くつもりだったけど、向こうの都合とか考えてなかったな……。お金にうるさそうなここが依頼を出すんだし、それなら相応の証言はあるよね……)
「……あの、もし知っていたらでいいですけど。妹の那岐がどこにいるか知っていませんか? 主教さまは"まだ会わせられない"の一点張りで」
稲栄:「さあ、私も存じません。主教様の御心は、私ごときには計りかねるところですから」
VP:(……わからない。しらを切ってるのか、本当に知らないのか……)
「では依頼を……」
と言いかけて、
GM:『その時、あなたの心の中に太母シュブ=ニグラスの声がこだまする。』
「愛子よ。この道を進め。お前の求めるものはこの先にあるだろう」
VP:『困惑するのも束の間、身体に強烈な疼きを覚えて、身をすくめる。邪神によって歪められた肉穴が熱を持って反応する。』
「んっ、くぅ……」
稲栄:「……まさか、神託ですか?」
『稲栄の細い目がわずかに見開かれる。』
VP:「……し、知りません! こんなの始めてで……。し、失礼しますっ」
『よろよろと、部屋を出るために踵を返して歩き出す。』
稲栄:「……あなたなら、我らが神の子らを無事救出できると信じておりますよ、聖女様」
VP:(そんなこと言って……! でも助けないといけないは本当だし、あの言葉が正しいのなら、那岐に繋がる道筋はこれしかない……。ちゃんとしないと……)