荒野の朝は早い。木々はなく、山も遥か遠くに聳える火山のみの土地では早くに太陽の光が地を照らす。
「.....流石に寝苦しかったな」
乾燥した風に乗って荒野を抜けていく火山の熱気は北方生まれの体には合わず、馬車の番をしながらでは満足に休息することも出来なかった。
欠伸をして幌にもたれかかると、中から術者達の談笑の声が聞こえてくる。あの戦闘の後で何事もなく過ごせるのは遠征にも慣れているからだろう。頼もしい限りだ。
席の隣にフランの姿はなく、荒れた風が顔の横を吹き抜けていく。
「フランはまだ寝てるのか」
「ええ。まだ気持ち良さそうに」
「全く、よくこんな環境で眠れるな」
寝坊の癖が取れないのは問題だが、彼女も疲れているのだろうと起こすのはやめておく。
何より昨日の様に寝惚けたまま甘えられたら俺がパンクしかねない。
幌から顔を戻して席に座り直す頃には、遠目に赤いレンガ造りの高壁が見えてくる。
「見えてきたな。ウルガンド」
赤レンガに囲まれた炎と鋼の国。
「廃神戦争」の後、ドワーフが作り上げたその国は人間の侵攻を阻み、火山から採掘された鉱石を加工する鍛治場として栄えている。
獣人とは友好的な関係にあり、戦時中の武具を製造していたのも彼らの腕だ。
エルラドの地下鉱脈が発見された現在では、希少価値の高い魔導鉱石を使った武具を鍛え、交易を行っている。
早朝の薄暗い荒野でも燃えるような赤いレンガの色は一際強い存在感を放ち、近付く者を圧倒する。
「皆、そろそろ準備を始めてくれ。もうすぐ到着する」
「フランシア様はお起こしした方が?」
「いや、俺が起こすよ。最悪担いで行く」
「.....承知しました」
おそらく幌の中で全員が引いているだろう。
だがフランの事だ。仮に起こしたとして反応するとは思えない。
ましてそれが顔も覚えていない魔術師では鬱陶しがるだけだ。
ウルガンドの壁が高くなるほど、内側から上る煙が分厚くなる。
幌の中では術者達が次元鞄に杖やら魔石を詰め、身支度を進めている。これだけ周りが動いていると言うのに、奥の席で座って眠るフランには感心する。目が覚める頃には体調も万全だろう。
壁門前に馬車を停めると、巨大な扉の横に開けられた窓から、一人のドワーフが顔を見せる。
「どちらさんだ。家に何か用かい」
「エルラドの者だ。鍛冶設備の修理の依頼の件で伺った」
「ああ!獣人のご一行か。ちょっとばかし待ってな。今開けてやるからな」
「早いんだな。もう暫く待っているつもりだったんだが」
「まあ......なっ!前々から調子が悪かった鍛冶場が完全におっ死んじまったってもんでこっちも苦労してたんだ」
ゴロゴロと重々しい音と共に門が開く。馬車を進めると、高台からドワーフの男が飛び降りてくる。
「ならもう少し早く言ってくれてもよかったのに」
「はっ!そうはいかねえ。何せお宅らにも収穫祭があるだろう?俺たちゃ祭り事にはうるさくてな。他所様の祭りだろうが大切にしなくちゃなんねえ。その邪魔をしてまで仕事に執着するなんざウルガンドの民失格よ!」
「そうは言ってもな」
「王さんにも進言したが即刻却下よ。他国の祭事に水を挿すな。今ある仕事で間に合わせるのだ!だと。実にあの方らしい」
「変わらないな」
「まあな。それが我らドワーフよ」
豪快に笑い、自慢の髭をさする。
「いくらかは鉱山での仕事に回ってもらってたんだが、危険の多い作業に人員を割いちゃ死人がでちまうってんで頃合いを見て頼ませてもらった次第だ。これも採掘に向かってる連中を待っている最中ってワケよ」
「なるほど。因みに問題の死者は」
「その点は心配無用よ。こっちも長く坑夫やって来てんだ。危険は誰より承知してる」
「なら良かった。もし死者が出たなんて話が出たらドワーフ王に土下座しなきゃならない」
ドワーフは話好きで知られるが、ここまで快活なものか。
「そう言えば、ドワーフ王は健在だろうか」
「勿論よ。連日鍛冶場に入っては自分で直せないものかと悪戦苦闘している」
「なら急いで行かないとな。今日も鍛冶場に?」
「おそらくな」
「分かった。なら修理ついでに挨拶も済ませてくる」
「おうさ!パパッと済ませてまた俺たちに腕を振るわせてくれよ!」
「任された」
鍛冶場に向かう前に、停めた馬車の幌に入り眠っているフランを揺する。
「フラン、起きろ。もうウルガンドだぞ。おーい」
フサフサと揺れる髪と尻尾に、時折ぴくりと動く耳。迷惑そうに顔を歪め、寝返りを打つ。
「皆待ってるぞ。ほら早く起き」
「うるさい」
首に手を回され、そのまま向き合う形で幌の中に寝かされる。
「まだ寝るの」
「って!なんて力だよ」
背中を尻尾でさすられると、ほんのりと暖かい感触がする。
寝ぼけているとは思えないほど器用な動きにこちらも眠気に落とされそうになる。
「フラン。起きろって」
「んぅ......」
うっすらと目を開いたフランが、瞼を擦る。
「兄様......」
「目が覚めたか。早く起き」
「んー」
「......何」
「キス」
「は?」
「昨日してくれなかった。今日はしてくれなきゃ起きない」
「起きてるだろう」
「やーだ」
頬を膨らませて抗議するフラン。牙を覗かせた口でねだられると、その色香にやられそうになる。
「わがまま言ってないで起きなさいって」
体を起こそうと床に付いた手を掴んで引っ張られる。
「逃げないで」
「遊んでる場合じゃないんだけど」
「遊びじゃないもん」
「......ったく。早く済ませてくれよ」
軽い口付けをして離れると、フランは不満そうに顔をしかめる。
「普通のキスしかしてない」
「見境い無しか」
「良いじゃん。好き同士なんだよ?」
「そう言う問題じゃない」
「はぁ、分かったよ。行こ」
「やっとか。早く支度済ませてくれよ。先行ってるかーー」
「待ってて」
「......分かった」
フランの身支度を待って、二人で馬車を降りる。
他の術者は先に鍛冶場に移動しているらしく、門の内側にはフランと俺の二人きりだった。
「暑いなぁ」
「そうか?丁度良いと思うけどな」
「兄様は北方生まれだからだよ」
鍛冶場に足を向けると、フランを案内しながらウルガンドを歩く。
普段はそこら中から響いているであろう槌の音も、大鍛冶場の機能が停止している今では殆ど聞こえてこない。
巨大なドーム状の施設が見えると、そこから一際大きな笑い声が聞こえる。
「何。今の声」
「ドワーフ王だよ。これから世話になることもあるから、フランの紹介もしようと思ってな」
岩を固めて作られた入り口を潜ると、視界の端から石柱のように太くゴツゴツとした物が現れる。
「わっ!」
フランが仰け反ると、頭上からよく響く声がする。
「おう!皇太子様じゃねえか。よく来たな!」
「お久しぶりですドワーフ王。お変わりはありませんか」
「はっ!まだまだ現役よ。この腕も衰え知らず。強いて言うならこいつの音と熱を感じられないのが寂しくてならねえ。早いとこ直してもらわねえと家の民も冷えた鉄見たく固まって萎縮しちまう。ワシらドワーフは熱く燃える鋼よ。いつだって柔軟かつ情熱的でなくちゃな!」
「そうですね。我々としても貴国の鍛える武具に生かされる身。一刻も早い復興を望まれる事には同意します。故障箇所に覚えはおありですか?」
「それをワシも見ておるんだが、どうにもこう複雑なモノには疎い。なあ皇太子様よ。こいつはもう少し簡単に作れんものか?」
「改善の余地はあると思いますが、それにも時間と費用がかかるうえ、仮に出来たとしても現在と殆ど変わりはないかと」
「なるほどなぁ。金の事は問題ねえが、時間がかかるってのはいけねえな。早く仕事がしたくて体が疼いてるってのに、そこにお預けを食らったらいよいよ暴動でも起きるぞ」
「それは......大急ぎで仕上げないといけませんね。改善案についても近く検討します。良ければそちらにも目を通して頂ければ」
「おう!取り敢えず炉の修復は任せたぞ。ワシは宴の用意をしてくるからな」
「はい......ところでまた宴会ですか。祭事が絶えませんね」
「炉の復興記念よ」
「なるほど」
苦笑してドワーフ王を見送ると、先に到着していた術者に合流する。
「随分と格闘されていたようで」
「ああ、本当に大変だった」
幌の中での事は口が裂けても言えない。
「それで、原因は分かりそうか」
「いくつかの箇所に魔力の漏れがあります。術式が綻んでいるのかと」
「ふむ。この熱さからすると排熱機関にも問題があるのか」
ウルガンドの大鍛冶場は一度に多くの道具を鍛えるため広いスペースを取るが、ドームの正面を無防備に開いては熱が逃げてしまう。その為炉の近辺に排熱機関を設置し、その裏に部屋を作り北方の魔術を施した大水晶を配置して熱による故障を防止している。
「これは.....冷気が弱い?」
排熱口の一つに手を当てると、流れてくる冷気が設置した頃より薄い事が分かる。
「皆は炉の術式の修復を頼む。俺は裏に居るから何かあったら教えてくれ」
「裏ですか。大水晶に問題が?」
「おそらく。冷気が弱まっている様だ。ドワーフは炎に慣れているうえ、手袋を着けての作業も多い。道理で気づかないわけだ。北方の技術を使える術者が居たら良いんだが、生憎と今はそうも言ってられない。俺が向かうのが手っ取り早いだろう」
「どうかお気を付けて」
「ああ」
炉の裏に続く扉に向かうと、それまで黙っていたフランが付いてくる。
「私も行っていい?」
「良いけど、面白いことなんてないぞ」
「良い。だってここに居ても兄様はいないんでしょ」
「まあそうだけど」
「なら良い。兄様と行く」
「......邪魔するなよ」
「......何で分かるの」
「分かるだろう普通」
「兄様なんて嫌い」
「嫌いで結構」
「あ、行っちゃやだ。置いてかないで」
素っ気ない態度で歩き出すと、すぐにフランが腕を掴んで密着してくる。
「動きにくいんだけど」
「良いじゃん」
「.....」
扉を開くと、奥の部屋から漏れ出す冷気が足下に触れる。
「冷たい」
「北方の魔術だよ。風と雪の信仰。その恩恵の力」
「何か地味じゃない?。もっとぶわーっと嵐を起こすみたいなやつはないの?」
「......普通は出来ない」
「やっぱりそうなんだ」
「これもただの応用。風纒いの魔術に降雪を掛け合わせただけだよ」
「兄様がやったの?」
「ああ、北方の魔術を知っているのは俺とバティくらいだからな」
炉の裏に置かれた水晶に手を触れ、取り巻く風を払う。
雪が舞い上がり、風に束ねられていた雲が広がっていく。
「ね、北方ってどんな所なの」
「フォズラリアの事か」
「兄様の生まれた場所の事。知りたいんだ。兄様の事はなんでも」
「エルラドとそう変わらないかな。あっちは山地の国ってだけだよ。空気は澄んで、植物もエルラドより豊富なんだ。雪がよく降って、その溶けた水は口当たりも良いんだ」
「オウルに聞いたけど。そんなに長くは居なかったんでしょ?よくそんなに沢山覚えてるね」
「思い出だからかな。うっすらとだけど、フォズラリアでの暮らしも楽しかったから」
「帰りたいって思う?」
「今はそれどころじゃないけど、いつかはね」
「じゃあ一緒に行こう?。私も行ってみたくなったし、兄様の思い出の場所にも興味があるから」
「分かった。いつか行こう」
「うん。約束」
嬉しそうに笑みを溢すフランの声を聞きながらも、作業の手は止めない。
術式を組み直し、再び風と雪を水晶に纏わせると、力を取り戻した大水晶は再び冷気を纏った風を放つ。
「取り敢えずはこれで......後はこれの原因だな」
式の力が弱り、術に乱れが発生していたようだが、術を解いた際に奇妙な力の流れを感じた。この術に組み込まれるはずのない乱気の魔術の式。風を束ねる力魔術とは真逆の式が組み込まれているのであれば、当然魔術の力は弱まる。大水晶に細工をするなどドワーフには出来ないはずだが、ウルガンドのドワーフにも魔術を治めるものがいるのだろうか。
「乱気の魔術は東方の砂地で生まれた術だ。こんな場所には縁もないはずなのに」
「砂嵐を起こす術の事?」
「力自体はもっと弱い。せいぜい砂を巻き上げて飛ばすくらいのモノだが、問題はそれが大水晶に刻まれていたことだ」
「風を纏めても、それをすぐに崩されたら意味がないから?」
「ああ、ドワーフがそんなことをするとは思えないし、そもそもそこまでの魔術の知識を持っているとも考えにくい」
「なら他に手を出してる奴がいるってこと?」
「そう考えるのが妥当だろうな。ウルガンドはエルラドみたい外交を絶っているわけじゃない。人間が発展を僻んで忍び込んだ可能性もある」
「.....馬鹿なの?」
「言ってやるなよ」
「自分の首絞めて何が楽しいんだか。そんな奴らに負けたなんて、本当によく分からないよ」
「あの時は人間が狡猾だったんだよ」
推察が正しければ、ウルガンドの外部との交易で輸出出来る武具の数を制限してしまえば発展が遅れると考えているのだろうが、殆どの国家は廃神戦争を経て軍事には消極的になっている。
ウルガンドの主な輸出品がタリスマンやアクセサリー等の装飾品となった今、その行為は武具の需要を満たせていない人間自身を苦しめるだけなのだ。
「おかげでエルラドの資源は欠片の一つも手に入らないけどな」
「人間はどこまで狂えるのか興味が出てくるよ」
「まあ、研究熱心なのは流石に感服するが......な?」
「どうしたの?」
「何かある.......」
大水晶のズレを正していると、手に小さなモノが触れる。大水晶に付着したそれは小さな魔石で、東方原産の物に見られる砂塵が閉じ込められた琥珀のような物だった。
「これが原因。わざわざ改造まで施しているのか」
「魔石?なんでこんなのが」
「仕掛け用に改造されている。長期の使用を見越していたんだろうな」
「最低。こんなことしてまで他の国を陥れたいかな」
何事かと覗き込むフランに魔石を見せると、彼女は分かりやすく嫌悪の表情を顕にする。
「なら表の術式の綻びも同じ様な原因か」
「そうなんじゃないの?」
「犯人の予想聞いても良いか?」
「人間」
即答されるとは思わなかった。言いたいことは否定しないがもう少し迷って欲しい。
「ドワーフ王に話を聞いておくか。これについても心当たりを確認しないと」
魔石を握り手中で転がすと、表面に浮き上がった砂の破片がザラザラと肌に触れる。
「修理は終わったの?」
「術式の崩れだけだったからな。ドワーフから見れば難題だったが、俺達にしてみれば普段から見ている物。少し観察すればすぐに分かる」
「そういう所、兄様は特別凄いんだと思うけど」
「凄い?」
「術を解いただけで混じっていた異物を見つけて、その正体も解き明かす。普通の魔術師ならそんな短時間なら無理だと思うけど」
「史跡調査で各地を回って、そこで得た知識があるからだよ」
「兄様って一目見たら殆どの事が分かるけど、それもお得意の知識ってやつなの?」
「いいや、ただ知っているだけじゃ意味がないよ。その知識同士を繋ぎ合わせてこそ、一つの答えが見つけられる。調査で身に付いた事を自然とね」
「兄様の部屋の紙束の山でしょう?。研究資料みたいな」
「見聞きした事は記録する癖がついててね。それをバラバラに放置しておくのも嫌で、時間が出来ると整理したくなるんだ」
「で、それを応用するってこと?」
「その通り」
「マメだよね」
「知識はあるだけ力になる。それが間違っていない限りは」
「私には絶対に出来ないな」
「地道な積み重ねだからね。根気がいるのは確かだよ」
大水晶を配置し直し、鍛冶場へと戻る。
表で修理に当たっている術者達の作業はまだ続いているようだ。
「進捗は」
「あまり順調とは言えません。思いの外破損箇所が多い様で、直しても次から次へと」
「大水晶の修繕は終わったが、東方の魔石が見つかった。ドワーフ王に聞き取りをしに暫く席を外す。急ぐ必要はないからゆっくりと進めてくれ」
「承知しました。皇太子様もお気を付けて」
「フランの力は必要か?」
「いえ、お嬢様にそのようなお願いは出来ません。ここは我々にお任せを」
「分かった。ならフランも連れていくよ」
ドワーフ王の邸宅に向かう道中、フランが口を開く。
「あれ、本心かな」
「そうだろう」
「本当に?」
「そう疑ってかかるなよ。彼らなりの気遣いだよ」
「どうせ怪物の手なんて借りなく.....いった。何するの」
「それ止めなさい。フランはフラン。エルラドの王女で俺の妹。分かるか」
「それは知ってるけど」
彼女の額を指で弾いてそう教えるが、彼女は尚も不満そうにむくれる。
「次はこれぶつけるぞ」
「怒るよ」
「怒ってどうするつもりだ」
「寝かせない」
「勘弁してくれ」
「何でそこで逃げるの。本当にそういう所嫌い」
「せめて場所考えろ」
「エルラドにいたってしてくれない癖に」
「時間考えろよ」
「夜中に逃げるのは誰だっけ」
「.......」
「私の事嫌いなの?」
「好きだよ」
「ならいいじゃん」
「好きだから嫌なんだよ。分かってくれ」
「意味分かんない。私はしたいのに」
「際限が無いのは良くないってことだよ。フランを大切にしたいんだ」
「.....そう。じゃあそういうことにしとく」
「そうしてくれ」
いくら人混みの騒ぎがあるとはいえ、こう言う話にはいくらか抵抗がある。
足早に商業通りを抜けて邸宅へと向かう。
ドワーフ王はその名こそ王であるが、使命は住民間の争いの仲裁や祭事の仕切役と言う何とも簡単なモノだ。
これもウルガンドの住民の結び付きの強さあっての事なのだが、ドワーフ王の祭好きが高じたものである。
何かにつけて祭を開いては、住民を集めて酒を飲み料理を食べる。そうした中で住民同士が打ち解け、次第に関係性を深めていく。
ウルガンドが大きな争いもなく平穏に存在できるのは、国内に強い信頼関係があるからであり、ドワーフ王の祭好きから生まれた偶然の成功である。
いくつかの角を曲がると、白石で造られた邸宅が現れる。大柄な彼に合わせて造られたそれは、一つのホテルのようにすら見えた。
「おう皇太子様。調子はどうだい!」
門前にどんと構えていたドワーフ王がにっと歯を見せて笑う。
「もう少しかかりそうかと。裏の水晶部屋にも不調があったので修繕をさせてもらいましたが、こんなものを」
「む?こいつは.....何だい」
「魔石です。魔術を発生させる道具のようなものですが、これが故障の原因になっていたようなので、何かご存知かと」
「うむ.......ワシにはそんな話は届いておらんな。鍛冶場の者なら分かるかもしれんが」
「なら次は鍛冶場のドワーフに聞き込みですかね」
「おう皇太子様。ちょっと待ちな」
「はい」
「さっきは聞きそびれたが、そこのお嬢ちゃんは誰だい」
「お会いするのは初めてでしたね。彼女はフランシア。エルラドの第二王位継承者です。貴方への紹介を兼ねて同行させました」
「そうかい。わざわざ遠くからご苦労なもんだ.......にしても随分と可愛らしい姫様じゃねえか。皇太子様も良い嫁さんを貰ったもんだな」
「はは、フランシアは妹ですよ。義理ですがね」
「何だ。そこは嘘でも恋人と言ってくれよ。酒の肴になるってのに.....まあいいさ。とにかく修理の方も」
突然外から轟音が鳴る。
「何だ!」
「魔力反応。しかもこれはまた」
「私にも分かる。大きいかも」
「ドワーフ王。身を隠していてください。こちらで対処します」
いい終るや否や、邸宅を飛び出す。
遠くには赤黒い皮膚の魔物の姿が見える。
「オーガ種......」
ロクに眠りも出来ないままで新たな魔物の出現。
最悪の気分だ。
今作のドワーフは大柄で身長も高い存在です。