※この作品はR-18です。

除け者赤ずきんと優しい狼の幸福論   作:rippsan

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主人公の属性の盛り方が雑


変わると言う事 変えると言う事

どこまでも広がる図書館。魔術で本棚を動かしては、その中から現れる次の本棚を探る。

 

「これでもない.......これでも......あれでも」

 

宙で手を泳がせ、本棚を指揮する。

 

「おっと......」

 

動き回る本棚。その中から一冊の本が落ちる。

魔術を使う手を止め、本を拾い上げる。

 

「あ.........」

 

赤ずきんと優しい狼。随分と懐かしい本がそこにはあった。

しかし不思議だ。この本は本来ここにあるべき物ではないはずだ。フランが大切にしていた物がどうしてここにあるのだろう。

 

「これも持っていかないとな」

 

いくつかの本棚を探り、目的であった史跡の調査資料を取り出して図書館を後にする。

 

「これを置いたら、届けにいこうか」

 

図書館を出てすぐに、騒がしい声に迎えられる。

 

「あ、兄様!」

 

声に振り向くと、フランが廊下の曲がり角で手を振っていた。

 

「フラン。ちょうど良かった。これ、図書館で見つけたんだが」

「え?.......ああ!?。どうしてそれが」

「棚に挟まってたみたいだ。何か覚えは?」

「特に無いですね」

「ずっと前になくしたのか?」

「かもしれないです。大切にしてたはずなんですけど」

「まあ、見つかったなら良かった」

 

駆け寄ってきたフランに本を渡し、自分の部屋へ向かう。

 

「兄様も何か御用が?」

「ああ、調査資料の読み返しをしたくて」

「読み返し?そんなのつまらないじゃないですかー。一緒に読書しましょう?」

「次回の調査報告に向けて整理しておきたいんだ。それが終わったらな」

「それは明日もできますよ。私と読書出来るのは今だけですよ」

「今日出来ないなら明日も誘うだろ」

「むー」

「はいはい怒るなって」

「分かりました。読書は諦めます」

 

そう言いながらフランは俺の腕を握る。

 

「へ?」

「私の部屋でも出来ますよね?。手伝います

よ」

「はぁ!?」

「善は急げですよ。ほら速く」

「ちょっと待っ。いででで!」

 

走るフランに腕を引かれる。流石は獣人。足の速さは男1人掴んでいても健在なようだ。

 

「は、走るなよ。痛いって」

「少しくらい我慢してくださいよ」

 

犬の散歩でもされている気分だ。

まあ、俺も狼の獣人なのだからイヌ科ではあるのだが。

そんなことをぼんやりと考えて走ること暫く、フランの部屋の前に到着する。

 

「さあ、資料整理。やりますよ」

「フラン.....出来るのか?」

「出来ますよ。多分」

「多分って」

 

床に資料を広げてページを捲るフラン。

俺も隣で別の資料を読みながら整理を進めるが、フランはただ唸るばかりだ。

 

「兄様」

「ん?」

「次はいつ出掛けられるんですか?」

「む。どうだろうな。執務も溜まっているし。ヴァロンが不在では国の守りが薄くなる。暫く調査はお預けかもしれない」

「そうですか.......。あの、兄様」

「どうした」

「調査。私も連れていってもらえませんか」

「珍しいな。前まで汚れるから嫌だって言ってたのに」

「興味が出たんです。兄様、調査の事をとても楽しそうに話されるので」

「俺は構わないが、取り敢えず担当に話はしてみる。通るかは別だぞ」

「やった。楽しみにしてますね」

 

座ったまま両手を上げてはしゃぐフラン。

笑顔を浮かべて喜ぶ彼女の姿は眩しく、幸せそうだった。

 

「ね、兄様。これは何ですか?」

「ああ、剣の断片だよ。確か300年前の戦場から持ち帰られた戦利品。近くで瓦や加工された板材も見つかってる。おそらく村が襲われたんだろう」

「すごい!そんな事まで分かるんですね」

「何度も調査を重ねて、やっと見つけた情報だからね。どこの調査も一度じゃ完成しない。間違いだっていくつもあるから、その度組み直して積み上げるんだ」

「うーん。何か面倒なんですね」

「まあね。仮に完成した事だって、1つ情報が加われば簡単に崩れる。間違い探しも楽しくなるんだ」

「楽しい。ですか」

「初めは俺だって苦手だった。調査は嫌いだったし。新しい発見なんて無い方が良いとさえ思っていたんだ」

「ふーん.......じゃあこっちの資料は何ですか?」

「兜だよ。錆びていて分からないかもしれないけど、川底に埋もれていたのを発見された。近隣の地域で起きた地震が発見の引き金になったんだと思う。」

「所有者とかは?」

「錆び取りに出したきり、今も帰って来ていない。ここに纏めるのはもう少し先になりそうかも」

「そうなんですね。あれ、ってことはここに置いてあるのはもしかして」

「ああ、まだ分類出来ていない物だ」

「え!?。こんなに沢山あるんですか!?」

「各地から集めているからね」

「こんな数を.....」

「全て重要な資料だし、エルラドの未来の為には必要なものだから」

「エルラドって。国の為にですか?」

「ああ、戦争にしても生活にしても、こういう過去の人々が残した遺物から見つけられるものはある」

 

資料のページを捲り、以前完成させた戦争の略図を開いて見せる。

 

「戦争の.....計画ですか?」

「ここに壊れた弓の残骸があって、そこから降りた先で同じ物が見つかった。そしてここには馬を飼育していた痕跡があった」

 

狭い渓谷を背にした野営地と、そこに近い丘とを指でつなぐ。

 

「他にも離れた場所でこの弓と同じ刻印のされた木材があった。だとすると」

「弓兵の部隊が移動した.....あ、それでこの地図の矢印が!」

「そう、たったこれだけの断片でも、戦術の1つを見つけられる」

「なら、ここの矢印は」

「砦の跡地。樽に毒草のエキスが混じった水が染み込んでいた」

「つまりここは毒によって全滅した?」

「しかし、全焼した見張り小屋の跡があった」

「それだと理由は分からなくなりますね」

「戦闘の痕跡があったことから、ここでは襲撃が壊滅の原因だと考えている」

「何だかクイズみたいで楽しいですね」

「少し不謹慎ではあるけどね。でもその気持ちは分かるよ。一部だけ埋められたパズルを見たとき、それが完成した時の姿を見てみたいと思うし、完成させていくのも楽しいものだ」

「確かに。でも国の役に立つっていうのは?」

 

目を輝かせながら、フランは質問を続ける

 

「過去の戦争で使われた戦術を取り入れる。それは、その戦術がどう使われたのかを熟知していなければ実行できない。その戦術の弱点を知れば、更に改善を加えてより強い戦術に変えられる」

「それで?」

「多くの戦術を持っていれば、戦争でも有利に事を運ぶ事ができる。そのために、過去の戦争の記録から学ぶんだ」

 

略図に乗った資料を1つに纏める。

 

「それが俺達の戦い。武器や魔術。それだけで守れないモノを、1つでも多く守るために選んだやり方」

 

 

「過去の力を現在に繋いで戦う。形も声もなくても、過去は必ずこの背中を押してくれるんだ」

 

 

「......繋ぐ。その言葉、兄様は好きですよね」

「ああ、俺に生きる理由をくれた言葉なんだ。ただ落ちていくだけだった俺を繋いでくれた言葉。旅立って行った彼らと、俺を繋いでくれる言葉なんだ」

「なら私にとっても、兄様と私を繋いでくれた言葉ですね。あの絶望だらけの屋敷から救って、私にやり直すチャンスをくれた」

「そうだね。繋がっている。俺も、フランも」

「はい!」

 

2人で同時に笑う。

そのフランの大人びた笑顔に少しだけ胸が高鳴る。

 

「この本も、兄様との繋がりを作ってくれたんでしたね」

「そうだったね。初めてフランが笑ってくれたのもこの本を見せた時だった」

 

 

フランが城にやってきた時、彼女は誰とも関わろうとせず、俺からも距離を取っていた。

そんな中、図書館で1人悩んでいた時に見つけたのが彼女の大切にしている本「赤ずきんと優しい狼」なのだ。

 

恐ろしい猟師の娘に生まれ、動物からも人間からも恐れられていた少女が、森の人気者の優しい狼と出会い、その手助けで動物や人間との交流を深め、最後には猟師を退治するという物語だ。

 

これを見たフランは、自身と赤ずきんを。狼を俺と重ね、俺にこう言った。

 

「私も......この赤ずきんのようになれますか?」

「勿論。優しい狼が叶えて見せるよ」

 

俺の答えを聞いた彼女は、暗かった表情をほんの少し和らげて笑い。

お願いします。とだけ答えた。

 

 

「兄様を兄様と呼ぶようになったのもあの時なんです。この人なら信じて良いんだって。この目を知っても、私を受け入れてくれる人なんだって」

「当たり前だよ。俺はフランの兄様なんだから。その目がどんな恐ろしいものだって構わない。フランが赤ずきんになるなら、俺は狼のようにその味方になる。そう決めたんだ」

 

彼女の目は人を殺す。

いとも容易く。見つめるだけで力と命を奪い取る。

その目の翡翠に射抜かれた者は、時間を掛けて命を吸い上げられ、形1つも崩さず骸となるのだ。

その力を知られた彼女は、表面上の敬意の裏で、人殺しの悪魔として疎まれて来た。

 

「こんな力欲しくなかった。こんな力があるから、周りから避けられるばかりの人生に....どうして私が」

「そうして生まれてしまった以上。フランの目も、それで積み重ねた過去も変えられない。仮にそれを抉ったとして、フランはもっと苦しむことになる」

「っ!」

 

上手く慰める言葉を知らない。

 

「でも、変えられないのは全てじゃない。これから作っていく未来は、フランの生き方次第で変えられる物もある。だからその辛さも乗り越えて、変えていこう」

 

彼女の苦しみは分からない。この言葉は、何も知らない俺の無責任なモノかもしれない。それでも彼女の事を思う心だけは伝わって欲しいと願った。

 

「私も.....変われますか?」

「ああ、俺が居る。変わろう。一緒に」

 

フランの顔が明るくなる。

 

「兄様となら、出来そうです」

「ああ、フランなら大丈夫。俺の妹なんだから」

 

フランの頭を撫でると、彼女は嬉しそうに笑う。

 

「ね、兄様。久々に読んでくれませんか。狼と赤ずきんの本」

「もう子どもじゃないんだから、自分で読み直せば良いだろう」

「むう。そういう事じゃないんですよ!兄様に読んで欲しいんです!」

「わ、分かったよ。あまり怒らないで」

「はい。ほら早く早く」

 

フランから本を受け取り、そのページを開く。

彼女の未来も、これから変わっていくことだろう。

その行く先が幸せであるよう、彼女を守ろうと、改めてこの胸に決意を抱く。




出たよ歴史バカの悪い所が
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