殺した人間を解体して埋める話。
こっちだったらコメントか付くかと思って。
犯罪行為+人体の損壊描写を伴うのでR-18警告タグをつけておきました。
こんなのばかり書いている所為で、自分の中の基準が曖昧になってきた今日この頃。
【解】
自動車の天井にふよふよと漂う煙を、目で追うとも無しに追いつつ、ぼんやりと時間を潰す。
頭の中で何度も何度も今日の作業のシミュレーションをするのもいい加減飽きてきたあたりで、会社から帰宅する人の群れでごった返す駅の改札口から吐き出される人の中に目当ての人間の顔を発見した。
トレンチコートを着た、50代そこそこのオッサン。私との歳の差は、確か20歳以上あった筈。少し薄くなった頭髪を最近気にしていて、今日も帽子を被っている。
ただ、確か帽子を被ることで頭皮が蒸れるのがハゲの原因になっているなんて話を聞いたことがある気もするので、もしかすると逆効果かも知れない。いや、冬場だからいいのかな?
ちらりと横目で車内の時計を確認すると、待ち合わせの時刻5分前で、別に彼を非難するような時間では無い。
何度も彼の送迎に利用している車に乗っているお陰で、彼もまた迷わずに助手席のドアを開けて車内に乗り込む。漂う煙に顔を顰めた。
そういえばこの人今禁煙中だ、この状況は酷だろう。
「ごめんなさい。」
謝って火を消そうとしたのを止めるように彼の手が突き出されて、
「一本、貰えるか?」
驚愕の言葉を吐いた。
「構いませんけど、禁煙中では?」
ポケットから少し皺のよった煙草の箱を取り出して端を2,3度叩く。反動で出てきたフィルターを彼の唇に近づけると、唇が軽くすぼまって煙草を咥えた。
同じようにポケットから取り出した100円ライターで火を付ける。
「悪いな。」
一言礼を言ってから彼は深く息を吸い込んで、盛大に咽た。
「お前・・これまた重くなってるだろ・・・。」
「久しぶりに吸うのにいきなり大きく吸うからですよ・・・。」
惚けてみた、この人に前あげた時より4ミリほど重くなっているのは確かなのだけど。
「そうか?」
今度は慎重に、ゆっくりと紫煙を吸う。まるで中学生か高校生が隠れてこそこそ吸っているように見えて、少し可笑しい。
「で、禁煙中では?」
聞きながら、自分の煙草を口に咥えようとして、少し止まる。先刻消しそうになったやつだが、もう大分短い。消して新しいのを付けるか暫し悩んで咥え、アクセルを踏む。
最近は煙草も高くなってきた。1本1本大切に吸おう。
「禁煙は止めだ。五月蝿いのが居なくなったんでな。」
確かこの人に禁煙を強要していたのは奥さんだった筈。
「三行半でも突きつけられました?」
本当は男の人が突きつけるものだけど。
「いや、死んだ。」
「はい?」
あまりに意外で、間抜けな声が出てしまった。
「脳梗塞だか脳溢血だかでな。ほんの1週間くらい前だよ。」
その2つだと病状はまるで逆になるのだけど。具体的には血管が詰まるのか、破けるのか。
「それは・・・ご愁傷様です。」
ただ指摘するのも面倒なので、定型文を返しておくことにした。
「でもそれがどうしてまた喫煙に繋がるのです?」
確か禁煙を始めたきっかけは奥さんに注意されたことだった筈だけど、後半は自分も健康のためとか言ってそこそこ乗り気だった。言う人が居なくなった位でいきなりやめるようには見えない。
「いや、不意に煙の匂いをかいだら懐かしくなってな。」
ということは、この1週間は吸って無かったと。
悪いことをしたかも知れない。
「まぁ良いんだ。どうせ遠からず吸ってただろうし。」
それは私に気を使ったのだろうか?
「しかしまぁ、俺たちは職業柄人の死には多く触れているし、人間突然死ぬもんだとは解っていたけどよ。いざ自分の肉親がそうなってみるといろいろ来るな。」
「そうですか。」
適当に相槌を打つ。いまだに両親共に健在な私にはあまり共感できない。
「突然すぎて実感が湧かないんだよ、葬儀とか全部終わった後に、家に戻ってソファで一息ついたときにどっと来るんだぜ。年取ると涙腺が緩むってホントだな。」
この人が泣くのは、少し意外な気がする。いや別に血も涙も無い人だと思っているわけではないけど。
「だからさ、警察が捜査する時に遺族にバンバン話し聞くだろ?あれどうかと思ってたが意外と平気かも知れないな、と今は思うよ。寧ろ忙殺してくれたほうが楽かもしれない。」
「それは人によるんじゃないですか?悲しみにくれたい人も居るでしょうし。」
そういった人からすれば邪魔で仕方ないだろうし。
「そんなもんか?」
まぁそんな風に考える人は私の交友関係の中には居ないから、全く解らないけども。
目の前の信号が赤になって、車を止めた隙に短くなっていた煙草の火を灰皿にこすって消し、流れるように2本目へ火をつけて咥える。
深く息を吸って、紫煙を肺へ送り込む。舌の上にのる微かな苦味が、癖になる。
「でよ、ひとつ相談があるんだ。」
信号が青になったのでアクセルを踏んで加速。仕事場に着くまであと10分は掛からない。
「この仕事、辞めていいか?」
「ええ、別に構いませんけど?」
面倒くさい事を言い出したなぁ。
「そんなにあっさり・・・いいのか?」
少し不信に思ったのか、言葉をつなげてくる。警戒心をもたれると面倒だから適当に誤魔化そう。
「ええ、構いませんよ。ウチは来るもの拒まず去るもの追わずの方針なんで。」
嘘はついていない、筈。実際追ってはいないし。
「何でお前がそんな事知ってるんだ?俺と同期だろ。」
しまった。
「いや、同期だという話は嘘なんですよ。」
仕方ない、ばらしてしまおう。まぁ適当な言い訳は今思いついたし、多分彼は気を使って踏み込んではこない筈だ。こういうとき、自分の容姿に感謝したくなる。不細工ならこうは行か無いだろう。
「実は前任者が貴方の前に1人いましてね、彼も同じように辞めてったのですが、面倒なので端折ったのです。実際、同じ事しかしてませんし。」
1つ嘘。もっと居ます。確か彼は・・・5人目?
「ん・・・そうか。」
予想通り、若干の不満を飲み込んで黙る。
「何か書類にサインとかしなくて良いのか?」
「いやいや、退職届とか無いですから。手当ても無いし。」
第一この仕事にそんな公的なものが付属している訳が無いのに。
「じゃぁ普通に次回からお呼びが掛からないと思っていいんだな?」
「ええ、貴方のことはばらしませんし、貴方も私たちのことをばらさない。この約束が守られている限りは、お呼びが掛かる事は無いですよ。」
少し虚構を交えて、事情を説明する。私一人だと思われると、舐められる。1度それで失敗してしまったから、今度はミスをしない。
「そうか、解った。長い事世話になったな。」
そう言われてみると、確かにこの人とは半年以上一緒に仕事をしている。最長記録かもしれない。
「いえいえ、こちらこそお世話になりました。」
実際この人は非常に良く出来た同僚だった。正直やめると言い出したのが惜しいくらい。
「記念、という訳ではないですけど、今日の仕事は少し特殊ですよ。」
めぐり合わせとは中々奇妙なものだと思う。
「今日はね、2人なんです。」
そう言いながら、車をありふれた雑居ビルの駐車場に止める。
「2人?」
車から降りながら、彼が素っ頓狂な声を上げた。確かに、ルール違反だけど。そこまで驚く事だろうか。
「ええ、まぁ何事にも例外はつき物だという事で1つ。」
「面倒だな・・・」
確かに、1人でも大変だ。労力2倍となれば、それはもう。
「最後の最後に貧乏くじ引くか普通・・・」
ぼやきながら階段を上って行く彼の後について上がり、3階へ。
ポケットから取り出した鍵で、扉を開ける。部屋の中には大型の業務用冷蔵庫以外何も無い。実際作業をする部屋は奥で、この部屋は専ら作業中の荷物置き場だ。
「じゃ、着替えてきますね。」
それだけ言い残して、室内のボストンバッグを肩にかけて部屋を出た。それぞれの更衣室は一応別だ。確か2人目がごねた。別に同姓なのだから気にしなくて良いと言ったのに。
脱いだ服を適当に脱ぎ散らかす。下着の類も全部脱いで、変える。匂いが付くから。
着替えに擁する時間は精々2,3分だ。早いのか遅いのかは知らない。
部屋を出ようとしたところで、髪を結び忘れていた事に気付いた。
洒落っ気の無い黒のヘアゴムで髪を後ろに結う。
私が部屋を出たのとほぼ同じタイミングで、彼も更衣室から出てくる。
「じゃ、始めましょう。」
「ああ。」
短く受け答えをして、部屋の中の冷蔵庫を開けて、中を覗く。2人の人間が入っていた。
まぁ入れたのは私なので、別に驚く事はない。腕を突っ込んで一体を抱き上げる。
大体10代後半の女性。体型は平均的なので、精々50キロあるかないかだろうけど、非力な私には非常に重い。因みに衣服は剥ぎ取っているが、ここにはネクロフィリアは居ない筈なので問題ない・・・と思う。
「もう1人はお願いします。」
「ああ。」
1人目を引き摺り出して、彼に後を託す。二人とも目立った外傷はなく、その死体は非常に綺麗。特に理由はないが、即死させないから。
「よっ・・・こい・・しょ・・」
うなりながら、彼がもう1人を引き摺り出す。私が抱えている1人目と同じ位の年齢の男。カップルだったのだろうか、仲睦まじく歩いていたけど。
2人の死体を引き摺って奥の部屋へ向かう。こうなる事を見越して、扉スイングドアに変えてあるから、問題なく死体を運び込んだ。
無機質なコンクリート打ちっぱなしな壁の部屋。蛇口が1つと、4隅には排水溝。このほうが洗いやすい。因みに冷蔵庫をこの部屋に置かないのは、洗うときに気を使うのが面倒だから。
壁には種類豊富に工具と刃物が取り揃えてあって、他にも各種容器や固定器具など、作業をするのに便利なように作ってある。
適当に死体をうっちゃって、壁から鉈を手に取る。
「今日は少々巻き気味でいきましょう。」
「解った。」
答えながら、彼も鉈を手に取った。
目測で関節に狙いを定めて、鉈を振り下ろす。「ぐちゃり」と「ごり」の中間の音がして、足首が離れる。
血はあまり出ない。心臓が止まっているから。
もっとも、このまま解体を続けていけば、その内嫌でも辺りは血にまみれ、部屋は鉄錆びの匂いに支配されるのだけど。
「でもまた、何でやめようと思ったんです?突然。」
作業中は頭が暇なので、話を続ける事にしてみた。
「単純に言えば、金を稼ぐ必要が無くなったんだ、家にはもう俺しか居ないからな。」
「あれ、お子さん居ないんですか?」
もう独立しているだけかもしれない、言ってから思った。
「いや、2人息子が居るが、どっちも独立しているよ。片方なんか結婚して子供が居るから、俺ぁこの歳で『おじいちゃん』だぜ。」
おじいちゃんの部分を妙に強調して、言う。
確かに還暦前におじいちゃん呼ばわりされるのは、あまり気持ちの良いものではないかもしれない。
しかし息子さんは若くして結婚されているようだ。普通に考えたら、20代前半だろうに。
「あれ?でも年金生活まではまだ結構間がありますよね、その間どうするんです?」
50代後半とはいえ、今は年金支給が65歳からという人も多いと聞く。彼がそうかは知らないけど、もしそうだとしたら大変だろうに。
「まぁ、適当に仕事を探すさ。それに今だって公証無職だ、年金には端から期待してない。」
ああ、無職か。そもそも私はこの人が何でこの仕事を始めたのか知らない。無頓着すぎただろうか。
「暫くは嫁の保険金があるからな・・・あいつには悪いがありがたく使わせてもらうさ。」
意外と楽観視してらっしゃるらしい。
このご時勢再就職は結構修羅の道だと思うのだが実際のところどうなのだろう。
何しろ真っ当に就職した経験がないものだから、そういった意味での現実を知らない。
「でもあまり祝える門出ではないですね。」
適当に感想を述べる。
足を洗うという意味では、寧ろお祝いなのかも知れないけど、この先生活が苦しくなっていく事を考えると、手放しでは喜べないのではないだろうか。
まぁ価値観は人それぞれだし、彼がどんな価値観をしているか語れるほど、私は彼と親しくない。
「いやいや、お祝いだろ、足ぃ洗うんだから。」
どうやら彼は私と価値観が違う人間らしい。
「あ、それもそうですね。」
「あんたこっち側に居すぎて感覚おかしくなってるんじゃないか?」
寧ろ私が異常者だと言いたい様だ。まぁ普通ではないという話なら全面的に賛同するけども。
「かも知れないですね。」
否定はしないで置こう。まぁキャリアと言ってもそんなに長くはないのだけど。
そんな話をしながらも、私と彼の手は澱みなく2人の人間をバラして行く。
「さて、いつも通り丁重にお願いしますよ、怒られちゃいますから。」
ここからが、一番気を使う部分。
部屋の隅にある道具類の中から、直径15センチ程度の円筒形をしたガラス容器を選ぶ。今回は、2つ。それを手にとって持って行く。
既に右手しか胴体にくっついていない、達磨になる寸前の死体に歩み寄ってその右手首から先を切り落とす。
2人分なので、2つの手をそれぞれ1つずつ容器に入れて、壁際へ。そのまま同じように道具類の中に置いてあるポリタンクから、液体を注ぎ入れる。刺激臭が鼻を衝いた。
容器に並々と注いだところで蓋をして、と。
「ったく・・・何でこんなもの集めてんだ?雇い主は。」
「さぁ?私には何とも。」
嘘です。
利き手には、その人の人生が詰まっていると思う。
手に出来た怪我の跡、指の形、タコ。
最も今回は素適な手を見つけてしまったので、下調べなど全くせず狩って来てしまったからどっちが利き手か解らないので、日本人の大多数が右利きであることによって利き手の選択をしてしまったけど、手を見ればそれがどんな使い方をされてきたかわかるし、手の使い方はそれすなわち人生の足跡だ。
いろんな人の足跡ならぬ手跡?を集めるのが、そんなに奇妙だろうか。みんな似たようなことをしてるじゃない。自叙伝買ったり、エッセイ買ったり。
まぁ最もそんな事語っても何も得しないのは火を見るより明らかなので、黙ります。
雉も鳴かずば撃たれまい。良い言葉でしょ?
さ、残りのパーツは用済みなので、ちゃちゃっといきましょう。
鉈を右肩に振り下ろし、達磨になった人間の腹を、壁からとったナイフで捌く。食道と直腸を適当に切って、内臓の大部分を摘出する。
下処理は生きている内にしてあるので、腹の中は綺麗なものだ。
摘出した内臓は、適当な容器に入れる。別に保存するわけではなく、捨てるまでの一時的な保管。基本的に死体は全部廃棄する。
腐敗の進行を助ける為にばらばらにする訳で、正直面倒くさくてやってられない。必要なものだけ取り出して廃棄したいのだけど、そうすると高確率で警察のお世話になるだろうし。
もっとも、こんな素人考えの方法で今まで何回も乗り切れるとは、我ながら運がいいと思う。
首も落とし、人体を関節毎でばらし終えて、それぞれのパーツを、内臓を入れたのと同じような容器に入れる。これでとりあえずのお仕事が終了。
ここまでで約半分、後はこれを埋めて廃棄すれば本日のお勤めは終了になる。
「とっとと車に積み込んじまおうぜ。ったく気味悪ぃ。」
「りょーかいです。」
大量の容器を数回に分けて、車に積み込んで行く。
ハッチバックの貨物スペース一杯に積み込まれた荷物を、荷造り用のロープでしっかりと2列目のシートに結びつけ、固定する。以前これを怠ったら、振動で止め具が外れ、あわや大惨事になりかけた。
すっかり汚れてしまった解体部屋を水で洗って、汚れた作業着を着替える。更衣室に隠してあるベレッタを手に取る。
もっともエアガンを改造したもので、人は殺せるが実銃じゃない。
作業着をボストンバックにつめて、ベレッタと代えの弾倉を上着の内ポケットに入れる。これが便利なので、普段からジャケットを着用している事が多い。
ボストンバックはそのまま更衣室に放置。今度洗いにこよう。
一息つくこともなく、そのまま車に乗り込む。煙草は車内でも吸えるし。
辺りが暗くなっていたのでヘッドライトを点けた。
市内のインターチェンジから、高速道路に乗って市街地を離れる。
「煙草、いります?」
自分の分を取って、咥えて火を付けた後に、彼に聞く。
「ああ、貰おうか。」
特に遠慮する事無く私から煙草とライターを受け取って、吸い始める。
大きく呼吸するたびに、作業によって若干這っていた神経が、紫煙に緩められる。
2時間ほど車を走らせて、日本中知らない人は居ないだろう山梨県の樹海へ車を入れる。
所謂自然保護の法律には反するのだろうけど、そんな事には構わずに車を進め、不法投棄のゴミが積まれた場所へ。
こういったところは良い。穴を掘って死体を埋めても、直ぐにゴミが覆いかぶさってくれるので、発見が遅れる。
遅れれば遅れるほど、身元や証拠の特定が困難になる。
車から降りると、ゴミ山の発する悪臭が鼻を衝く。殆ど無機物の筈なのに、何故か異臭がするのは、この下に埋めた死体が発する腐臭なのだろうか。
いや、私が始めてここに死体を埋めに来たときには既にこんな匂いがしていたので、そう言うことではないはず、多分。
車内からスコップを取り出して、ゴミ山の麓を二人で掘り返す。深さは精々2~3メートルあれば良い。匂いは既にとんでもないものが充満しているし、不法投棄をする人は車から降りない。
1時間ほどの時間をかけて、穴を掘り終える。車内にあるばらばら死体を容器から適当に穴の中へ放り捨てる。ゴミの扱いは適当でいい。
さて、本来ならこれで埋めればお仕事完了なのだけど、今日はそうも言ってられない。
「じゃ、埋めるぞ。」
作業を早く終わらせたいのだろう、彼がさっさとスコップを持って埋めにかかる。丁度いい。
ジャケットの内ポケットからベレッタを取り出す。別に反動はきつくないので、そのまま片手で構えて両の太ももへ1発ずつ発射。
空気の抜けるような音と共に発射された弾丸が、太ももの筋肉を裂く。
いきなりの痛みに驚愕と、苦悶の声を上げながら、彼が地面の上をのたうち回る。
丁度いいので、そのまま近づいて蹴り飛ばし、穴の底へ放り込んだ。
「な・・・何を、お前。」
訳が解っていないようで、意味の取れない言葉を話す。
「えと、お疲れ様でした。」
再び銃を構えて、引き金を引く。
銃を構えられた瞬間に彼は頭を腕で覆う。それに構わずに引き金を引いたので、胴体や腕へ乱雑に弾が当たる。
再びの激痛に彼は悲鳴を上げた。鬱陶しいな。
ベレッタのスライドが開きっぱなしになっていて、弾丸を吐き出しつくした事を私に告げている。弾倉を交換。
今度は両手できっちりと狙いを付ける。彼は頭しか庇っていないから、喉ががら空きだ。
弾倉に入っている弾丸を全て喉へ送る。
皮膚、筋肉、気道、脊椎、神経。人1人の喉を構成するパーツを全て引き裂いて、彼の悲鳴さえも断ち切った。
見開かれた目の焦点がゆっくりと合わなくなって行く。意識が消え、人が物になる。
ふと、彼の利き手が気になった。弾丸で少し傷ついた右手。そういえば同業者の右手を採取した事がない。
便利な道具はあらかた作業場に置いて来てしまったから、魚を捌いたりするのに便利で車内に積んであるナイフを一振り持って来る。アウトドア派でよかった。
穴の底へ飛び降りる。3人分の死体がクッションになるので、着地は問題ない。
腕まくりし、しゃがみこんで手首を裂く。リストカットを重ねるような要領で、手首の皮膚と筋肉、腱を引き裂く、途轍もない量の血が出てきた。
いつもは死後大分たってから解体をするのであまり大量に血が出ることはないだけに一瞬ビビる。いや当然のことだってば。
ビビッてしまった自分を無言で叱咤しながら作業を続ける。段々面倒になってきたので、最後は力任せにちぎってしまおう。
もう殆ど離れかけている手を強引に掴んで、ぐりぐりと引っ張る。
ぶちぶちと色々なものが千切れる音がして、最後に一際大きな音を立て手首が人体から独立する。
ちょっとした達成感があるね、これ。
今までは割りとシステマティックに叩き切っていたけど、こういった趣向もおつかもしれない。断面は汚いが、この方が愛着は湧くんじゃ無かろうか。
そんな事を考えつつ、穴をよじ登る。気付くと洋服に斑模様がついていた。血と、土。
車のヘッドライトに照らされた状態で確認してみると、ズボンの方は赤主体、ジャケットは黒主体で柄が追加されている。最も土汚れのほうは衣服の色が黒主体なお陰で余り目立たない。
土は払えば落ちるとして、血はそうも行かないだろう。まぁ良いや、どうせ今日は内に帰るだけだし、夜だから見えないでしょう。
とりあえずジャケットは捨てようと、脱いで穴の底へ放る。
後はまぁ適当にスコップで穴を埋めればいい。掘るときと違って、そんなに大変じゃない。適当に土を穴の底へ押しやってやれば良いのだから。
それでも時間は掛かる。30分程かけただろうか。平らになった地面を、スコップで叩いて均す。ゴミ山から適当なゴミを広い、穴の上にばら撒くことで、地面の色が不自然なのを誤魔化した。
1度遠目で全体の様子を確認して、極端に不自然な点が無いかどうかだけ確かめた後で、道具をしまって車に乗る。彼の右手は、行きに死体を運んできた容器に入れるのもなんだか申し訳ないので、剥き身のまま助手席に置いた。
さて、家に帰ったらまた共同作業者の選定をしないと。
女手1つでこれだけの作業をするのは少々骨が折れるから。