テラフォーミングされた太陽系外縁天体に建設されたドーム型都市内の士官学校。
地球で俺が見た惑星の一つであり、地球で言う所のエリートが集う学園である。
「しかし、洗脳か、くだらない事を考える物だ」
そう言いながら、俺は目の前で行われている行為に対して、嫌悪を込めて睨んでいる。
切れ長の眼。色白の肌。女性らしい豊かな丸みを帯びたプロポーション。ふっくらした唇は硬く結ばれ、ほとんどが無表情に見える女性。
データを調べた際に分かったがユーリア・ブラッドストーンで間違いないだろう。
そして、すぐ近くには緩やかなウェーブを帯びた艶髪は亜麻色にきらめき、猫科の獰猛さながらの美しき身体をしており、両手でも抱えられないような豊かな乳房を持つ女性はエリザ・パールマン。
俺が知る限りでも、これまで出会ったどの女性よりも魅力的であり、今すぐにでも手に入れたい。
だが、それは今ではない。
ここの猿以下だと思われる奴らに蹂躙されている姿を見れば、苛立ちが燃え上がるが、今は我慢の時だ。
その蹂躙され、心が全て折れるまでの間、少しずつ、少しずつ助けていき、俺への依存が高まった瞬間にようやくありつける。
ユーリアが自身が信じる宗教を裏切ってまで、俺に尽くした時の顔はどんなだろうか。
エリザが愛した夫よりも、俺の方を愛し、尽くしている時の姿はどのような感じだろうか。
目の前への怒りが報われる瞬間にありつく為に、今の俺が行うべきは、この学園での工作だ。
これから先、アルベルトと繋がりがある奴がきっと俺を狙うだろう。
そんな時に、二人を狙われてしまったら、せっかくのお気に入りが消えてしまうのは不愉快だ。
だからこそ、それを防ぐ為にも、奴のバックを調べる必要がある。
「それまではチャオ」
そう、エボルト兄さんが言っていただろう一言を呟きながら、学園へと侵入する。
どうせ、ここから先の時間は全ては彼女達を手に入れる為の作業だ。
------数時間後------
「そろそろいいか」
そう、小さく独りごちると、俺は行動に移す。
まずは、自分の机に置かれた私物を鞄の中へ入れていく事から始める事にしようじゃないか!!
教室にいる人間達は全員席に座っており、ぼんやりとした顔で窓の外を眺めている。
この教室にいる奴らで実験してみたが、どうやら地球人の奴らは思った以上にこの技術を使いこなせていないようだ。
奴ら自身が洗脳の為に行っていたチャイム。
それが奴ら自身にも作用されているのも知らず、アルベルトを含め、そのほとんどが動けない状態であった。
その間、俺はただ一人動けているだろう人物の元へと向かう。
「あのすいません、少しよろしいですか?」
俺はそう言いながら、普段は行わないような猫撫で声を言いながら、目的の人物に話しかける。
「えっと、あなたは一体」
「あっごめんなさい!僕はダイナと言います。
実は最近になって、この学園に転入してきまして、その失礼ですが、あのユーリア・ブラッドストーンさんで間違いないでしょうか?」
「えっえぇ、間違いないですよ」
「良かった!
あのっ良かったらサインください!僕、ずっとサインが欲しかったんです!!」
そう言いながら、俺はわざとらしくサイン色紙を渡し、伝える。
「えっえぇ、それぐらいでしたら」
よしよし、これで俺への印象を固める事ができた。
後は……さりげなく、俺自身の正体を匂わせておくか?まぁいいやそれはその時考えよう。それよりも今は目的を優先したい。
だが、今ここでやるのはまずい。
もうちょっと、もっと、状況を深めないと。
「それにしても、ダイナ君は一体どういう目的でここに?
失礼ですが、まだ小学生に見えますが」
「失礼ですよ!
僕、こう見えても立派な18歳ですよ!」
「えっ嘘!」
まぁ実際は100歳からは数えていないが、意外と女は子供の容姿には甘いからな。実際目の前の女もその例だったようだ。
「それよりも、その、聞きたい事があるんですか。
その、ユーリアさんは、その生徒会長とは付き合っているんでしょうか?」
「えっ何をいきなり言っているんですか」
俺の一言を聞いて、疑問に思ったように声を出す。
実際には洗脳されている間の記憶なので、覚えていないが、ここで違和感をつけ込む事にする。
「えっと、その、恥ずかしいんですけど、そのユーリアさんと会長さんが外で、その行為をしているのを見掛けて、本当は話しちゃいけないと分かっているんですけど、会長さん、ユーリアさんだけではなくエリザさんにも「その話」っ」
「詳しく聞かせて下さい」
俺の言葉を聞き、違和感を感じたのか、ユーリアの奴は詰め寄ってきた。
どうやら、彼女自身も僅かな記憶の違和感を感じていたのか、俺の証言が気になり、寄っていた。
やはり、こいつは天才だな。
一度の証言でここまで予測するなんて!!
やはりターゲットとしては、極上の獲物だ。
その獲物であるユーリアは目の前で、俺から得た情報を元に予想を立てていく。
「過去での出来事を含めても、しかし、未だに状況証拠だけ。何か決定的な物があれば良いんだけど……」
そして同時に確信した事も分かる。恐らくこの女ならやれると。
「ダイナ君、すみません。
こんな事に巻き込んでしまって。
ですが、あの人達の所業を放っておくわけにはいかないのです。
何か、突破口を見つけなければ。
しかし、再び洗脳された場合、対処はできません。
ダイナ君のご両親に連絡して、事情を話したらきっと協力して下さると思うので、もしよかったら電話を」
「僕、その孤児でして、ここに来るのも親戚を放り込まれたような形ですので」
そう弱々しい笑みを浮かべながら、ユーリアの保護欲を誘う。
「っすいません、無神経な事を言ってしまい」
その言葉を聞き、罪悪感があったのか、すぐに謝る。
こういう所を身ながらも、俺は彼女に謝罪をした理由を説明する事にした。
「いえ、こちらこそ、暗い話をしてしまい申し訳ありません。
それよりも今はどうやってあいつらの洗脳を解くかという事を考えましょう。
おそらく、この学園全体が罠を填めていると考えて、ここで調べるのは危険ですね」
「あの、それだったら、その僕も怪しいんでしょうか」
「怪しいと言えば、確かにそうですが、私にこれを知らせてもメリットはありません。
だから、私はこの学園ではあなたの事をエリザと同じぐらいに信頼しています」
いやぁ、良いねぇ。
人間は、やっぱり危機的状況で手を差しのばしてくれた存在を信頼してくれる。
それも自分よりも弱いと思っている奴が必死になって頑張っていると思っていると、よけいにその信頼度が高い。
「ですから、無茶をしないでください。
このような洗脳を施す奴らです。
何を仕掛けるか分かりません」
そういうと、彼女は嬉しそうな表情をする。
「ありがとうございます!でも大丈夫ですよ!」
その笑顔を見て、思う。あー、もうこれ堕ちたなと。
ここまでチョロいとこれから先心配になるのだが……まぁいい。
こうやって油断する相手ほど落としやすい。
まぁあとは少し試しておくとするか
「あの、その、いえ、やっぱりなんでもないです」
「どうかしましたか?」
「いえ、少しお願いがあるんですけど、やっぱり良いです」
そう言いながら、俺は必死に我慢するように笑みを浮かべる。
本当ならば、すぐにでも向かいたい所を我慢する。
それが彼女からしたら、無理をしているように見えるから、余計に効果的だ。
「無理しなくても良いですよ。
私に何かできる事があれば、なんでも言って下さい」
「そっそれじゃ、失礼ですけど、その、きっきっ」
俺がわざと、言葉を濁しながら、ゆっくりと言う。
「きっ?」
「キスをっしてください!!」
「きっキスですか!?」
俺の言葉に驚き、眼を見開いている。
それに対して、今の段階ならば、確実に断るだろう。
だが、もしもユーリア自身が俺に惹かれていれば
「なっなぜ、私なんですか。
その私の歳は28歳ですから、あなたよりも10歳年上、なのに」
「歳は関係ないです!
その、ずっと二人に憧れていて、二人の力になれると思っていたんですか、こうして一緒に話していると」
俺がそこまで言うと、少し悩んでいる様子のユーリア。
さて、どうする。受けるか?それとも、断るか?
「分かりました」
(よし)
心の中でガッツポーズを取りそうになるが堪える。
ただのキスではダメだからな。ちゃんと考えてある。
ユーリアがこちらに来る。そして、優しく唇を合わせてくれたので
なんだこれはまるで、普通の子供同士がするようなただ触れ合うだけの優しいもの。
それだけで顔が赤くしている。
せっかくだし、もっと体験し、仕込んでおくか。
それと共に、俺はそのまま彼女の口内に舌を動かし、流し込まれる唾液を啜り込んでいく。
それと共に彼女は驚き、目を見開く。
そのキスを行われ、何が起きているのか分からず、混乱しているが、徐々にその目は恍惚と細められる。
『やはり、この女、快楽に弱いな』と思いながらも、さらに続けていく。
数分後、ようやく離すと息を荒くして呆然としていた。
「今更だけど、ファーストキスですけど、その大丈夫でしょうか?」
俺が笑いかけると彼女もハッとしたように反応する。
「いっいぇ、ちがいますよ。
しょの、ちょっとびっくりしただけで、べつに、はじめてとかそういうんじゃありませんから!」
慌てるのが可愛い。
これだから、人間は面白い。
「はぁはぁ、とにかく、これを」
そう言いながら、ユーリアが手に取ったのは、手紙だった。
「これは一体?」
「ここには私からエリザへのメッセージを込められています。
これを渡せば、信用してくれるはずです」
どうやら、俺の方から仕込む必要はないようだ。
ありがたい。
「本当にありがとうございます!!」
彼女に感謝される。こんなにも感謝されると嬉しいものだな、悪くない気分だ。