数多ある外史、そのどの外史においても北郷一刀という男は落ちた国に勝利を届け、そしてその恋姫達を愛し、愛された。
外史は本来の歴史から分岐した、つまりifの世界であるが故、それぞれに異なる微細な違いが生まれるのは当たり前である。
だがしかし、その違いを当たり前と知るが故に、突端を開く者自体にあった少々の歴史との違いには、管理者達は対応しきれなかったのである。
……これはそんなifの世界の、ちょっとだけ、いやかなり歪んだ性癖を持つ、北郷青年の物語である。
「……ああ゛、何処だよここは?」
一面に広がる荒野、建築物の影も、飛行機も無い、純粋に広がる青い空と荒れた大地。いきなり目の前に現れた、いやむしろ自分が現れたのか?世界に、俺、北郷一刀は少々困惑していた。
「……ワープ?」
突然の超常現象に思考が追いつかない。今まで割と波乱万丈な人生を送ってきた自負はあるが、SFは流石に初体験だ。
「おい、ニイちゃん」
とりあえず、さっきまでの記憶をまとめよう。いきなりSFの世界に飛び込んだと考えるよりも、薬か何かで意識を奪われてから拉致されたと考える方がまだ現実的だ。
「おいテメエ!アニキが話しかけてるのに無視してんじゃねえよ!」
俺は確か部活を終えて前々からの“計画”を実行に移すべく寮に帰る途中、無駄にいい声して、無駄にイケメンな白髪野郎と出会ったんだ。
「と、とりあえず、と、止まるんだな……」
明らかに窃盗の現行犯だったのもあったし、いけ好かないタイプの人種なんでボコボコにノシてやったまではいいが、手品か何かで運んでた窃盗の証拠物件から強い光を出して……
「ダメだ、そっから思い出せねえ……」
「そのまま何も思い出せなくなっちまいな!」
背後から後頭部への一撃、ご丁寧に叫びながら斬りかかってくれたので振り返る事もなく半身で避ける。
「とりあえず、人に会わないことには始まらないか……」
「舐めんじゃねえぞ、コラァ!」
続く第二擊も同じく半歩右へ体を逸らして避ける。というか初太刀が避けられたんだから学習しろよコイツ……
まあいいや、とりあえずコイツにしよう。
「ああ、そこの下等遊民さん達?ちょっとお尋ねしたいことがあるんで、そこに土下座してくれるかな?」
「ふっざけんなあ!死ねよやあッ!」
しびれを切らしたのか胴薙ぎの一撃。流石にこれを避けるのはしんどい。後ろにスウェーすれば問題ないが、こういういかにも雑魚相手に一歩でも後退するのは、その、なんというか、ムカつく。
「ああっ!?」
よって刀の腹を蹴り上げ、宙に浮いたそれを奪い、状況に追いついていない雑魚Aに突きつけた。雑魚Aの信じられないといった感じの顔が実に愉快だ。
「さて、こっちの話を聞く気になってくれたかな?」
首筋の刀から目を離せないでいる雑魚Aは緊張で動けないようなので、後ろで惚けている雑魚B,Cに問いかけた。
「はっ、はいぃ!」
「な、なんでも話すんだな!」
雑魚どもはまだ自分の置かれた状況が理解できていないようなので、とりあえず主犯格っぽい目の前の雑魚Aの鳩尾に前蹴りを入れる。
「俺が10秒前に言ったことも忘れちまったのか?そんな出来の脳味噌じゃ質問する価値も無いかもしれないな……」
言いつつ鳩尾の痛みに耐えかね、体を二つに折ったAの頭を踏みつけて強制的に土下座の形にする。そこまでしてやっと気づいたのか、残った雑魚どもも地面に頭を擦りつけた。
「よし、それじゃあ聞くぞ、ここはどこだ?」
一番大事なことだ。少なくとも日本では無いだろう。見渡す限り何もない広大な土地。そこまでならまあありえない話では無いが、目の前の雑魚どもが持つ刀がそれを否定している。……となると中国のド田舎あたりかな?と雑魚のアジア系の顔を見て当たりを付けながら聞いた。
「こっ、ここは陳留だよっ!あんた自分がいる場所も分からねえぐらいのボンボンなのか!?」
「聞かれてない事まで喋るな。今すぐここをお前の墓場にしてやろうか?」
ビンゴ。現在地が分かっただけでも収穫……ん?
「……おい、今なんて言った?」
「だ、だから陳留だって……正直に言ったんだからもう勘弁してくれよお……」
陳留、たしか歴史の授業で習った。今は無い古代中国の地名。と、そこで最初から感じていた違和感に気付いた。
「……なんで言葉が分かるんだ?」
こいつらが歴史かぶれのイカレ野郎どもだったとしても、ここが中国ならば言葉が通じるはずはない。いや、そもそも最初の段階でかなり現実味の無い話だったんだ。途端に自分がまるで夢の中にいるような気さえしてくる。
「あの、ニイさん、もう行っていいすかね……?」
とりあえずはあの白髪野郎を探そう。そしてもう一度半殺しにして、知ってることを全部吐かせてから殺そう。
「……アニキ、今のうちに逃げたほうが良さそうじゃないっすかね?」
しかしまずは先立つものが必要だ。そして人間がいるなら必ず街、もしくはそれに近い集団が存在するはずだ。そこを目指そう。
「そ、そおっと逃げるんだな……気づかれたら全力で走るんだな……」
当座の目標を決めた俺は、こそこそ逃げ出そうとしていた雑魚の背中を踏みつけけて動きを止める。
「おい、予定変更だ。もうちょっと付き合ってもらうぜ」
まあどうも腕っ節がモノを言う世界のようだし、どうにかなるだろう。今にも声を上げて泣き出しそうな三人の雑魚の面を見下しながら、俺はそんな事を考えていた。
いいだろお前無印からのプレイヤーだぞ(意味不明)
とっくの昔に旬が過ぎてるって、はっきり分かんだね。