商人と冒険者と娼婦 作:にやまな
付与の仕事を引き受けてからシャルルの日常はとても忙しくなった、想像していた通り、いやそれを遥かに超える仕事が舞い込んできたのだから当然だろう。
神殿には毎日大量の武具が送られてきてそれに祝福を付与する毎日である、最初の数日はこんな仕事も悪くはないと新鮮な気分で付与をしていられたのだが、山となり津波のように押し寄せて来る鋼の武器たちに、シャルルが青ざめることになるのは一週間もかからなかった。
娼婦神の神殿の依頼が無ければ昼の間は暇になるので、その時間が付与の時間に割り当てられている、神殿の中庭に積み上げられた武器に埋もれながら発光を繰り返すシャルルを見て、他の娼婦たちは気の毒に思うのだった。
同情してくれたのだろう、お茶や甘味を差し入れてくれたりもした。
シャルルとしては一日の目標を決めてノルマを課しそれを満たす毎日である、昼はそうやって過ごして夕暮れ時になると娼婦としての仕事もしているので資金は溜まるばかりだろう。
神官であったのならばこうはならない、願い奉ることで力を受け取る彼ら彼女らは疲労するのだから、しかし聖騎士は体の内側から湧き出る祝福を武器に移すだけなのでそこまで疲労はない。
寧ろ、付与を行う度に効率的になっていき洗練されていく感覚すらあった、シャルルにとって良い訓練になったのかもしれない。
暫くそうして過ごしていると祝福を発動することが、その状態が当たり前になってしまったのか、同僚の娼婦たちから「なんかほんのり光ってるわよ」と指南されることすらあった。
慌てて鏡を見てみると確かに淡く輝いていた、どうやら無意識で祝福の光を垂れ流してしまったらしい。
慣れとは恐ろしいものである、以前から呼吸をするように扱えていた力であったがこの大量の付与によってより洗練されたということだ、それこそ生まれ持った手足の延長のようなものになったのかもしれない。
「うんん? 其方、暫く見ない間に少し雰囲気が変わったか?」
そんなことを言ったのは武器の性能を確かめる為にアンデットを狩りに遠征をしていたルールーである、仕事終わりに王宮ではなく娼館に来るのはどうなのだろうとシャルルは思ったが、彼女の娼婦としての予約の多くがルールーに占められていることを思い出す。
神殿にあるシャルルの私室に入って来たルールーは、竜鱗の鎧を脱ぎ捨てて興味深そうにシャルルを見つめるのだった。
「そうか? 一週間かそこらで何か変わるなんてことないだろ」
「外見はな、だが中身が異なるぞ、おそらく祝福の力が大きくなっているのだろうな……以前に聖都の祝祭で挨拶した聖アントニウスを思い出したぞ」
「あのおっちゃんか、滅茶苦茶強いんだよな」
「うむ、交流試合をしたことがあるが、力だけでは勝てん相手だったわい」
ルールーは脱いだ鎧を雑に部屋の隅に放り投げると、服すら脱ぎ捨てて全裸になり風呂場へと駆けこんでいく。
「はぁ~~……やはり働いた後の風呂は格別だな」
「それはおつかれさま、アンデットの討伐に行ってたんだろ、成果はどうなんだ?」
「おぉ、悪くなかったぞ!! なにせ叩けば灰になるからな、細かく粉砕する必要もないでの。葬式も大儀式も必要ないってのは便利なものでな、途中から楽しくなってきたもんだ」
「効果があったのならワタシも安心だ、今やってる作業も無駄にはならなそうだな」
シャルルは自らの手元にある鋼の武器に今も祝福の光を宿している、どうやら私室にまで武器を持ち込んでいるようだ。
「そいつは例の兵士に回す武器か? 閨でも作業をするとは忙しそうではないか」
「今日のノルマがまだ終わってないんだよ」
「無粋じゃなぁ、これから交わるというのに鋼がチラつくのは」
「あとちょっとだから待ってろ」
ジャバっと、湯が床を打つ音が浴槽からシャルルの耳に届く、そちらに視線を向けてみると湯船から上がってバスタオルへと手を伸ばすルールーの姿があった。
まるで自分の部屋のような寛ぎようである、彼女がここに来るのも頻繁なことなので慣れたものなのだろう。
ルールーは濡れた体を拭きとりながら寝室へと帰って来ると、付与作業を行っているシャルルの手元を興味深そうに覗き込む。
「慣れたものではないか」
「そりゃここ最近はずっとこうしてるからな」
「だがつまらんぞ、手前に構ってくれ」
「わかってるよ……ほら、こいつで最後だ」
淡い光を最後の剣に宿してそれを部屋の隅にあった箱へとしまい込む、そこには同じように光を宿した剣が大量に重ねられていた。
「しっかり蓋しとかないと寝るときちょっと眩しいんだよな」
「確かに、それはあり得るだろうて」
蓋と鍵をかけたことを確認したシャルルの体がふわりとした浮遊感に包まれる、女性にしては筋肉質なルールーの両手が膝の裏と肩に伸ばされており、しっかりと抱き上げられていた。
お姫様抱っこの形である、臀部にはルールーの股間から伸びる欲望が感じ取れるので、どうやら彼女は待ちきれないらしい。
「ほれほれ交わるぞ、アンデット相手にさんざん暴れまわったのでな、滾っておるのよ」
そのままポイッと寝床に投げられたシャルルの体に覆いかぶさるように手が伸びる、鍛えられた掌が手首を掴んでベッドに押し付けると、身動きが取れなくなった状態でルールーに見下ろされるのだった。
「カカッ! 久しぶりに堪能させてもらおうかの」
「んぁッ……あッ、こら、牙で引っ掻くなっての……んんッ!」
「嫌よ嫌よも好きの内ってな、血が出るほど深くはせんから味わえ」
鎖骨をルールーの舌と犬歯が撫でた、僅かな痛みと甘い感触がそこから全身に広がっていくのを感じていると、それは下腹部に熱となって集まっていく。
興奮に濡れ始めていた股下に膝が押し付けられる、両手をベッドに押し付けられている状態ではろくな抵抗もできないのでされるがままであった。
「うッ、んん……ふッ……あッ」
「はぁ~……んんん、其方の匂いはなんだか癖になるな、とても落ち着くぞ」
人間より長い犬歯の先端が鎖骨のへこみをガリっと引っかける、蚯蚓腫れのような跡が残ったことを確認するとルールーは満足気に微笑んだ。
「其方が男であったら子種を貰いたかったんだがなぁ、もったいないことだ……う~ん、魔術師連中みたいに生やせんのか? 娼婦神の神殿で働く者は房中術の手ほどきも受けて得意なのであろう?」
「ん、んん? どう、だろうな……うぁ……全員がそういう訳でも……あん……ないだろうし、ワタシも少しは使えるけど、完璧でもないからな」
「では本格的に学んでみんか? 其方を孕ますのも悪くないが、其方に孕ませるのも良さそうだ、きっと強い戦士が生まれるでな」
「いやいや無茶言うなって、そんなことになったら責任とれないっての」
「責任など取る必要なかろう、子など乳をやれば勝手に育つのだから、いつかどこかの戦場で戦うことになるやもしれぬぞ」
「……獣人の感覚は本当におおざっぱだな」
「ふむ……まぁ子については今はよかろう、だが男の感覚も悪くはないものだぞ、女のものと全くことなるものだ、やみつきになるぞ」
そう言われてシャルルが思い浮かべたのはエミリーの姿であった、房中術を駆使して男性器を生やしたあげく自分とキャロルを激しく犯してきた存在である、確かに彼女は男の感覚に嵌って楽しんでいたようにも思える。
「そんなに良いもんなのか?」
「女の感覚とはまた違うがな、甲乙はつけがたい……手前の種族は気分で変えるが、大抵がどちらかに偏るもんよ……で、どうであるか?」
「う~ん……まぁ一度くらいは経験してみるのも悪くはないかもな、気持ち良いらしいし」
「おぉ!! では学べ!! すぐに生やすのだ! この神殿なら容易かろう!! そして手前を犯してくれ!!」
「今は無理だっての!! ただでさえ忙しいんだから!! 暇ができたらちょっと房中術の魔術書でも覗いてみるからそれまで待ってろ」
聖印を持っているので図書室の使用許可は下りるだろう、後は房中術をより深く習得できるかどうかであるが、本格的な魔術師ではない彼女には習得できるかどうかわからなかった。
いや、可能性は高いのかもしれない、寧ろシャルルは感覚そのものは既に掴んでいるのだろう、男性器を生やしたエミリーや雌雄同体のルールーと房中術を介して繋がっているのだから。
感覚は既に掴んでいる、後は切っ掛けだけなのかもしれない。
「カカッ!! ならばその時を楽しみにしておこう、今は孕ませることに集中するか」
股の間に押し付けられていた膝が離れると、代わりに固くそそり立つ男の象徴が膣口へと宛がわれる。
そのままグッと腰を押し込むと、固く大きなそれが狭い膣へと押し込まれるのだった。
「うッ! うぁぁああ……お、ぐ……やっぱ、大きいな」
「おうとも、こいつで色んな女子をヒイヒイ言わせてきたのでな、其方もそろそろ馴染んできたであろう? すぐにこいつ無しでは生きられぬ体になるとも」
「くッ……エロ親父みたいなこと言いやがって、んやぁッ!?」
「ほれほれ素直にならんか、待ちわびていたのだろう? 痛いくらいに締め付けよって」
ルールーの犬歯がまたシャルルの鎖骨に伸びる、手首を押し付けた状態のまま白い肌に噛みつき、新しい跡を残しながら腰を振る行為はとても激しいものであった。
子宮を押し上げる固い肉棒をシャルルはきつく締め付けるのだが、圧倒的な圧迫感を押し留めることはできずに包み込むだけである。
「やぁぁ、あッ、あッ、あああああッ!!」
そんな感触を心地良いと思ったのかルールーの腰は徐々に激しくなっていく、大きさもあってか僅かな痛みを伴う交わりであったが、シャルルの体は甘い痺れを感じているようだ。
固い肉棒を受け入れる膣口からは掻き混ぜられて白く泡立った愛液が糸を引きながら溢れている、それによって滑りが良くなって更に交わりは激しくなっていった。
「おッ、おッ、うッ……やはり其方の体は堪らないな、んッ、ちゅる」
ペロッと、手首を押さえつけられて身動きの取れないシャルルの頬を舌が滑る、そのままキスの雨を降らしながらも彼女の亀頭は最奥を押し上げていく。
唇での愛撫は慈しむようであり、それでありながら腰使いは征服するかのような暴力的なものである、その差が奇妙な快感となって背筋を駆け抜けていくのだ。
「あぁッ! やぁ、イクッ……これもう、イク、からぁ!!」
「カカッ! まだ交わったばかりではないか、淫乱な奴じゃな!! だが悪くはないぞ、イカせてやろう」
頬を舐っていた舌が唇へと差し込まれた、それをシャルルは大人しく受け入れながら絶頂へと上っていく。
自分はこんなにイキやすい体であっただろうか、そんなことを彼女は思う程にルールーとの相性が良いのだろう。
相手が調子に乗るので言葉にはしないが、この交わりをシャルルも楽しみにしていたのだ。
「んむッ!? んんんッ、んちゅ……んッ……んッ……~~~~~ッッ!!」
「ぷはぁ!! カカカッ!! まだまだ可愛がってやるからな、何度でもイカせてやる、ほら孕め、孕まんか!」
射精は絶頂に震えるシャルルにトドメを刺すかのようなタイミングで放たれた、体を捩じって押し寄せる快楽の爆発に耐えていた彼女の最奥に遠慮なく吐き出されていく。
絶頂で震える子宮で受け止めた精液は、堪らなく気持ちが良かった。
「あぁッ!? イク……また、イク……うやぁああ!!」
短い間に二度の絶頂へと至り、視界に火花が散った、激しすぎる大きな波に翻弄されて意識を手放しそうになるが、それを阻止するかのようにルールーの犬歯がまたも鎖骨を引っ掻いていく。
「あぁ~~……あぁ~~……はぁ、はぁ……激しすぎだっての」
「それが好きなのだろう? なぁに、今は犯されておけ、其方が房中術で生やせるようになったら手前を好きに犯せば良いのだからな、その時は生娘のように可愛らしく抱かれてやろうぞ」
「はぁ、はぁ……言ったな、その時は覚悟しろよ」
「カカッ! 愛い女子に抱かれるのであれば望むところよ、ぜひ犯してくれ」
二人して情事の跡が残る柔らかいベッドに寝転がると、ルールーの手がシャルルの頭に伸びて引き寄せられる。
そのまま自分の鎖骨に押し付けるようにしながら抱き合う形である、行為の最中は征服的な行動が目立つが、余韻に震えている間はとても優しくなるのが彼女の特徴であった。
その状態で髪を撫でられると途端に穏やかな気分になる、我ながら単純なものだとシャルルは思うのだった。
「暫く休むか、それともイチャつくか?」
「なら酒でも飲もう、喉が渇いたよ」
「カカッ! ならば腹ごしらえとするか、娼婦神の神殿はその辺は充実しておるからありがたい」
勝手知ったる我が家のように、戸棚に完備されていた酒やつまみを取り出すルールーを見ながら、シャルルは絶頂の余韻に浸っている。
今日も長い夜になりそうだ、忙しい毎日だが充実していることは間違いないのだろう。