商人と冒険者と娼婦 作:にやまな
アリーヤは帝国への迅速な援軍を求めるために生まれ故郷へと少数の近衛兵と共に向かった、彼女が乗る馬車と周囲を固める騎乗兵をシャルルは黙って見送った。
彼女はこの国の存続に必要な命綱である、少しでも早く帰ってきてくれることを祈るしかないだろう、だがシャルルにはこういう時にどの神に祈れば良いのかわからないので、投げやりに自分が最も近くに感じられる戦神へと祈るのだった。
そして視線を横に向ける、そこには同じように城壁の上からアリーヤを見送るルールーの姿がある。
「アンタはアリーヤと一緒に行かなくて良かったのか? 近衛兵なんだろ?」
「カカッ! 姫様の命令でな、手前はここで戦うのよ。なぁに、近衛兵は手前だけではないので問題はなかろうよ」
ここにいるのは命令だとルールーは言うが、隠しきれない闘争心を感じ取れてしまうので自らの意志でもあるのだろう。
近衛騎士という立場もあって大きな戦いに関われないと嘆いていた彼女だ、こんな機会を見過ごすものかという覚悟があった。
「何せ相手はアンデットの大群らしいのでな、こんな戦場はそう何度も味わえるものではなかろう、戦士の血が沸くってもんよ……それにこの場に残る云々という話ならば其方こそ良かったのか?」
「ん~、首なし騎士がここに来るかもしれない……いや、来るだろうからなぁ」
「あぁ、アレか……戦士の因縁というやつだな」
ルールーにも覚えがあるのかうんうんと頷いて納得している。
「では戦場では背中を預け合うことになろうな、楽しみじゃわい」
ルールーの手がシャルルの首に伸びて肩を組む形になった、ニヤニヤと笑う彼女はそのままシャルルの首筋や頬へと騎士を繰り返す。
「はぁ~……相変わらずそなたの匂いは癖になるな」
「ちょ……んぁ……こら、こんな時になにやってんだ」
「何を言う、こんな時だからこそだ。お互い戦いで倒れるやもしれぬのだから、ならばその前に交わっておこうと思うのは当然じゃい。数日中にはアンデットの大群がやって来るんだからそうなれば暇もなかろう」
本能に忠実な獣人らしい……いや、ルールーらしい言葉であった。
「部下に相手をさせてもいいんだがな、奴ら手前の相手をするとなると嫌な顔しよる」
「まぁ男の物をぶら下げてる訳だからな、男は嫌だろ」
「女の部分で相手をしてやると言っているのにだぞ? まぁ中には肉棒でして欲しいとか言う奴もおるがな」
「あ~……なんか戦場ではそんなに珍しいもんでもないって聞くけど、それに大きな国の軍隊になると従軍娼婦とか男娼とか高い金を払って呼ぶんだろう?」
「不満を溜めて略奪やらさせぬ為に呼ぶこともあるな、後は兵士たちを部隊に所属させてだな……そういう所に送られるのは騎見目麗しい男子でな、男色の連中がよう世話になっておる。手前も何度か味見したことがあるぞ」
「そういう専門の部隊があるってことか……そこに所属しろって言われても嫌がられそうなもんだけど」
「なにせ給金が高いのでな、薄給の兵士たちの中ではそれなりに人気があると聞くぞ。まさか戦場に恋人を連れてくる訳にもいかんので一般の兵士にも需要が高い、娼婦も男娼もな」
ルールーはそういうものかと納得しているシャルルの耳たぶを甘噛みしてきた、そのままチロチロと舐めると指先は鎧の下へと滑り込んでくる。
「まぁまぁ今はどうでもいいだろう、手前たちは肌を重ねようではないか」
「神殿はそろそろ封鎖されてるから場所がないぞ、まさか城壁でする訳にもいかないだろ」
「そうなのか? なら手前の部屋にでも行こう」
王城の中にルールーに用意された部屋があるのだろう、近衛騎士団団長でありアリーヤの護衛でもある彼女ならば個室でありそれなりの場所であるはずなので声が漏れることもないだろう。
強引に引っ張られるがシャルルも嫌という訳ではない、ここは神殿でもなければ今は娼婦でもないので、仕事ではなく完全に個人の楽しみになってしまうのだが、彼女はセックスが嫌いではなく寧ろ好んでいるので不満もなかった。
偶には稼ぐ為ではなく楽しむ為のセックスも悪くないかもしれない、手を引かれながらそんなことを考えていると場内にある兵舎の一室に案内される。
やはり相部屋ではなく個室である、それに広い、雑に武装が放置されて散らかっている様子であり女性らしさは皆無だが、ベッドだけは豪華で上質な物が用意されている。
ルールーが言うには狭いと色々と不便らしい、男女問わずよく部下を連れ込んでいるそうだ。
「さてさて楽しむとしようか」
背後からシャルルを抱きしめてうなじにキスを繰り返すルールは、いつものように力強くリードしようとするのだが、そんな拘束をするりと抜け出してしまう。
「いやいや、今日はアンタの好きにさせる訳にはいかないな」
「む? なにやら自信があるようだな」
「前に話したじゃないか……ほら房中術でどうのこうのって奴」
「おおあれか!! もしや生やせるようになったのか?」
「一応、勉強はしたんだ……仕事の合間に神殿の図書室でな。ただあんまり深くはわからなかったんだよなぁ、魔術書って専門用語とか多くてさ」
「あぁわからんでもないな、奴らは手前どもとは違う頭を持っておるんだろう」
「だろ? だからふんわりとしかわからなくてさ、なんかこう……体内の魔力を陰から陽にして男性寄りにするとかなんとか言われてもさっぱりで……中途半端にしか理解できなかったんだ」
「なんだ、結局習得できんかったんか」
「いや、少しだけど理解はできたんだぞ、後は経験というか真似すれば良いんじゃないかなって思うんだ」
「ほう、真似か……何やら当てがあるようだな」
シャルルは鎧と上着を脱ぎながら仕事の合間に眺めていた魔術書の内容を思い浮かべると、それと同時に男性器を生やしたエミリーとの交わりも鮮明に思い出す。
あの状態のエミリーと房中術を介して交わったのだ、魂の繋がりによって相手の状態を深く理解することができた、それは専門用語が多く前提となる知識が必要な魔術書を眺めての勉強よりもシャルルにとってはずっとわかりやすいだろう。
思い出すのはエミリーの状態、一時期は何度も交わっていたので問題はない、房中術を介して流れてきたその感覚に魔術書の知識を加えていく。
全裸の状態でベッドに座り、瞼を閉じて「むむむ」と唸るシャルルをルールーは期待した眼差しで見つめていた。
「ほれ生やせ、さっさと生やせ」
「そんなに急かすなっての……もうちょっと、こう、なんか、こう」
彼女としても言葉にしづらい感覚なのだろう、そもそも本来は女性に存在しない男性器を作るのだから簡単なことではない。
だから準備にも時間が必要になる、体に循環する魔力がへそ辺りに集まって熱に変化するとそこからムズムズとした感覚へと変化していき、肌の下から何かが膨れるような形となっていった。
「う、ぐ……うう……お、おお?」
「だ、大丈夫なのか? なんだか苦しそうだが」
「よくわかんないけど……なんか股間が熱い」
女の興奮とは異なるのだろう、息苦しそうにしながら前のめりになっているシャルルは、息苦しそうにしながら潤んだ瞳をルールーへ向けている。
彼女の股間、そこには本来存在しない筈の男性器が伸びていた、肉豆が膨張して立派な男の象徴となっているようだ。
「おお!! こりゃ凄いのぉ!! 魔術師どもはバカなことを考えるもんじゃわい、カカッ!!」
「はぁ……なんか……うぁ……変な感じだなこれ、ルールーは常にこんな物をぶら下げてるのかよ、邪魔過ぎるだろ」
「そりゃ大きくさせた状態じゃからな、邪魔だからこそ発散させるのよ」
「んぁ!? ちょ……勝手に触んな、うやぁ……んッ、くぁ」
「なんじゃなんじゃ、今日は其方が手前を犯してくれるのだろう? この程度で弱音を吐いてどうするのだ……ん、ちゅ」
ルールーは手でシャルルの肉棒をしごきながら、挑発するような流し目で亀頭にキスをする、シャルルはただそれだけで慣れない感覚に腰砕けとなっているようだ。
彼女のように生まれ持った物ではなく、魔術による後付けなので感覚に慣れていないことが大きいのだろう、舌や唇で行う軽い愛撫にすら耐えられていない。
男の感覚、男の興奮、シャルルはそれらに翻弄されるばかりで涙目になっており、どこかに救いを求めているかのようだ。
「ふぅぅ……んくぅ……あッ……あッ……んんんんッ」
「カカッ! 愛い奴じゃな、せっかく生やせてもまだまだ子供よ……考えてみれば童貞なんだから当然か。ふむ、ここは手前が導いてやろうではないか」
「待って……待ってくれ……これ、おかしくなる」
エミリーが今のシャルルと同様にこの房中術を会得したばかりの頃は、新しい感覚にとても翻弄されていたことを思い出す、確かにこれを制御するのは難しいだろうと今になって理解することができた。
受け入れるのではなく吐き出す性質は女にはわからないものである、それを魔術で強引に後付けしているのだから簡単に制御できるものではない。
エミリーのようにある程度の経験を積めば制御できるようになるのかもしれないが、今はまだされるがままである。
「カカッ、童貞を切る相手が手前だ。なぁに、一生の思い出にしてやろうぞ……それ、うッ……おッ…これは、なかなかのもんじゃな」
以前は乙女のように抱かれてやると宣言していたのだが、男の感覚に翻弄されているシャルルを見て面白くなったのか、強引にベッドに押し倒して寝かせるとそのまま跨って固くそそり立つ肉棒を自分の女の部分にあてがった。
魔術的な物ではなく自然に男と女の両面を持つ彼女の興奮は、当然ながらその両方を熱くさせている、膣は濡れて男性器は固くなっているのだ。
シャルルが相手ならその両方を楽しめる、とても相性の良い相手だと考えているのかもしれない。
「熱ッ……うぁん……ふッ……んッ……んんんッ!」
ぬぷっと、味わうかのようにゆっくりとシャルルの肉棒が沈み込んでいく、やはり未知の感覚なので困惑するしかないのだが、痛みはなく甘い痺れとなってじんわりと広がっていく。
「うあぁ……男は、いつもこんな感じなんだな……はぁ……やみつきになるのも、なんかわかるかも」
「だろう? 女の快楽も悪くはないが……おッ……手前は男の方が好みでな……んッ、相手を征服するような快感がたまらんのだ……んん」
シャルルに跨った状態で円を描く様に腰を動かしていく、あまり強い刺激ではないのだがそれでも十分なほどに快楽を感じられているようだ。
その状態でルールーは固く伸びる自らの肉棒を掴んで自慰をしている、視線を少し下げると男の快楽に体をよじって苦しんでいるシャルルがいるので、亀頭は彼女の胸へと向けられていた。
「カカッ! これは良いな、なんとも甘いものじゃ……おッ……おッ……たまらんぞ」
「やぁッ……ちょ……激しくすんなぁ、あッ、あッ……んんんッ!!」
「愛い奴じゃなぁ……はぁ、ちゅ、ん……ちゅ」
ぐっと跨ったまま前かがみになるとそのままシャルルの唇を貪る、その状態で腰を揺らして円を描くと溜まらず絶頂へと導かれるのだった。
「じゅる……ちゅる……ぷはぁ!! なんか来る、上って来る!?」
「おお出すのか? まだ始めたばかりであろうに、堪えられぬか……うッ、くッ!」
「やぁああ!? 締め付けるなぁ!?」
「童貞ではこんなものか……まぁ一発目はこの辺で許してやろう、ほれ出すが良い」
ぐりぐりと回していた腰を持ち上げてから勢いよく落とす、ぱちゅんと肉がぶつかり合う音が部屋に響くと、シャルルはろくな抵抗もできないまま射精されてしまう。
「んんんんんんッ!?」
股間から走り抜ける男の絶頂と共に視界の中で火花が散ると、彼女の腰は自然とへの字に曲がって少しでも多くの精液を吐き出そうと突き出されていく。
その勢いは上に跨っていたルールーの体が上昇するほどであり、少しでも奥へ吐き出そうとする腰使いに彼女の体も震えているようだ。
シャルルの絶頂を感じ取ると同時に、引っ張られるように彼女も上り詰めていく、それは女の部分もそうだが自慰をしていた男の部分も同様であり、受け入れる絶頂と吐き出す絶頂を同時に味わうことになる。
「おッ! おッ! んんんんッーーーーーッッ!!」
ぶちまけられる大量の精液はシャルルのへそから乳房、そして顔面へと届く勢いで発射された。
「はぁ~……はぁ~……んッ……ん」
唇付近へと届いたルールーの精液をぺろりと掬い取る、房中術を会得してからというものの、妙に美味しいと感じるようになったそれだが、また一段と味わい深くなったとシャルルは思った。
もはや極上の美酒と大差がない、もっと房中術を理解すればまた変わっていくのだろう。
「カカッ、まだまだ固いようだな……元気があってよろしい」
「うぁ、待って、本当に……あッ、締め付けるなぁ」
「鐘が鳴るまでもう少しあろうな、風呂にも入りたいから少し余裕を見て……そうさな、少なくても其方がこれの使い方に慣れるくらいまでは付き合えるだろうて」
跨ったまま見下ろしてくるルールーの瞳は獲物を前に舌なめずりをする獣とよく似ていた、そして股間で固くそびえる肉棒もピクリと跳ね回っている。
おそらく二度や三度では満足できない、少しだけ恐ろしくなったが逃がしてくれそうにもない。
それに、互いに人生最後のセックスになるかもしれないのでここは楽しむべきだろう。
戦いの鐘が鳴る少し前まで、二人は繋がり合ったままだった。