商人と冒険者と娼婦 作:にやまな
マリー達神官団が怪我人の治療で忙しくしている時間は日暮れまで続くことになった、単純に夜になると前線の戦士たちが戦えなくなるので、負傷者の供給が止まるからである。
夕暮れになる頃には前線の戦士たちは撤収を始めており後方の拠点へと帰って来る、アンデットたちは暗くなっても構わず活動して徘徊するので周囲を監視する戦士たちもいるのだが、多くは戦いの疲れを癒す為に無数の天幕が並ぶ後方拠点へと帰還していく。
怪我をおった友人の見舞いに向かう者や、夜警に備える者、負傷者の様子を細かく見て回る神官、大鍋を掻き混ぜて食事を作る者もおり、中には遠征の噂を聞きつけてか近くの宿場町や村から差し入れや物を売りに来る住人もおり、軍事活動中であるのだがなかなかに賑わっている様子が広がっていた。
並び立つ無数の天幕にも多くの人が詰めており、友人同士で細やかなギャンブルを行っていたり、いつの間にか紛れ込んでいた吟遊詩人の歌に耳を傾けていたりなど、以外にも娯楽は多い様だ。
中には以前から憧れていた美しい神官とお近づきになろうと口説こうとしている男もいる、何であれ拠点内は相応に騒がしい。
締め付けすぎても不満が残るのである程度は息抜きも許されており、ストレスを溜めた結果住民に迷惑をかけて評判が悪くなるよりは適度に発散させた方が責任者としても好ましいという事情があるのだろう。
だから遠征中であっても、いや、遠征中だからこそ尚更娯楽が必要であった。
後方拠点に並び立つ無数の天幕の一部から、艶やかな喘ぎ声が聞こえることもまた可笑しなことではなかった。
今回の遠征には戦士や神官だけでなく従軍娼婦も同行している、主に娼婦神の神殿から派遣された神殿娼婦なのだが、遠征の噂を聞きつけて他所からも娼婦が一時雇いとして集まっておりかなりの数の娼婦が後方拠点には在籍しているようだ。
遠征の中核をなす戦士たちには支度金と称して臨時収入が与えられており、懐がいつもより温まった彼らが従軍娼婦たちの世話になるのも自然な流れだろう。
戦士の欲望と暴力性を爆発させず上手く手綱を操作することもまた、従軍娼婦たちの役目である。
拠点の一角はそういった目的の為に多くの天幕が並んでおり、夜の歓楽街のような賑わいに満ちている様子が確認できた。
艶やかな薄着を纏って男性たちを自分の天幕へと誘い込む娼婦たちと、戦いの熱と余韻を引きずる戦士たちの熱気によって、後方拠点の一部は他とは異なる騒ぎとなっているようだ。
その一角に足を踏み入れるとまずは幾つもの天幕の中から喘ぎ声が耳に届く、そして右往左往していると獲物を見つけたとばかりに娼婦たちに天幕へと引きずり込まれてしまう。
持ち運びに便利で組み立てやすい簡易天幕が殆どの為に、隣の情事や声が簡単に届く有様である、ある種の乱痴気騒ぎとなっているらしい。
中には天幕の中ではなく外での交わりに興じている男女の姿もあり、さらには男娼を好む客もいるようだ。
そんな多くの人々の交わりで満たされた拠点の一角に、娼婦神の聖印をぶら下げたエミリーの姿もあった。
他の娼婦と同じく肌が見えるような薄着を身に纏い、二年の間に立派に成長した艶やかな体で大天幕の前に立てば、客はあっという間に見つかったことだろう。
何より聖都で生活している間に、よく客としてエミリーに予約を入れていた聖騎士の男であったので、顔見知りと言うこともあり二人は顔を合わせてすぐに娼婦たちの仕事場である大天幕へと入っていく。
「あぁ、エミリー様、お客様がお見えになられたのですね」
大きめの天幕の中は二つのベッドに分けられているようだ、カーテンで区切られてはいるが殆ど意味をなしていない状態である。
ただここに娼婦神の神殿は無く天幕の数にも限りがある、こればかりはどうしようもないのかもしれない、それぞれの仕事場をカーテンで区切るくらいの配慮程度のことしかできないだろう。
天幕の中には癒し手としての仕事を終えたマリーもいるようだ、彼女もまた艶やかな薄着を身に纏っており美しく男を誘う姿をしている。
また、エミリーより早く男性を捕まえたのか、片方のベッドの上で客の相手をしているようだ。
エミリーの客とマリーの客の視線が結び合う、お互いに聖騎士であり見知った相手である。
お前もか、という顔をする彼らは僅かな笑みを浮かべるだけであった。
「あら、お知合いですか?」
「同僚ですよ」
エミリーの問いかけに聖騎士の男はそんな答えを返す。
「羨ましい奴だ、聖女様に相手をしてもらえるとは」
「あら、私がお相手では不満なのでしょうか?」
「いえいえ!! まさか!! エミリー殿に不満などありはしませんよ」
何度も相手をしてもらっている間柄である、頻繁に予約をいれてくるので相性が悪い訳でもないのだ。
「まったくだ、エミリー殿はなかなか予約が取れないというのに……それもこれもお前が頻繁に予約をいれるからだろう。俺が相手をしてもらいたいくらいだぞ」
「聖騎士様、目の前に女性がいるのに他の方に懸想するのはどうなのでしょうか?」
「おっと、これは失礼した……せっかく聖女様にお相手していただけるというのに」
焦る男性たちの様子を面白いと思ったのか、エミリーとマリーは笑顔を見せている。
そして自分たちが揶揄われていることに気が付いたのだろう、二人の聖騎士は互いに苦笑いを浮かべるのだった。
そもそもベッドの上で娼婦に勝てる筈がないのだ、早々に白旗を上げて降参するのが吉だろう。
さっそく手玉にとられた二人はそれぞれの相手と共にカーテンで仕切られるだけのベッドに倒れこみ、甘い匂いと柔らかな感触を楽しみ始める。
そもそも相手に不満がある訳でもないのだ、エミリーもマリーも極上の相手であることは間違いない、娼婦神の聖印がその価値を証明しているのだ。
「さぁ、今日はどういたしましょうか?」
「ん~……どうするか」
何度も予約を入れられたことでエミリーと聖騎士の男は顔見知りであり体の相性もよく理解している、互いにどうすれば心地よいか把握できているのだろう。
ベッドに倒れこんで注文を尋ねるエミリーだが、言葉と同時にその手は男のベルトに伸びており、慣れた手つきで金具を外している。
そのまま興奮で盛り上がった男性器を露出させると、そこを柔らかな手つきでしごいていく。
この男とは何度も交わったのだ、色々と試したが最終的には責められることを好むと知っている、相手に合わせることもまた娼婦の技術であり仕事でもある。
男性側も特に抵抗することなくその愛撫を受け入れているので、環境が変わってもやることは変わらないらしい。
「はぁ……凄く大きくなっていますね、なんだかいつもより固いような気がします」
熱い吐息をかけながら大きくなったそこの存在感を掌で感じ取る、興奮で脈打つ男性器はエミリーの感覚としては普段よりもずっと固い。
戦いの余韻がそうさせるのか、それとも普段とは異なる環境によるものなのか、判断はできない。
ただ彼の意識がカーテンで仕切られている隣のベッドに向けられているので、それが原因の可能性もある。
薄手のカーテンの向こう側ではマリーと同僚の男がセックスに興じているのだ、たった一枚の布では声や姿を完全に遮ることはできないので、そちらの交わりが手に取るようにわかってしまう。
「あッ、あッ、んぁッ!!」
穏やかなランタンの光がカーテンに映し出すのはマリーの情事である、男に組み伏せられて喘ぐ姿が影となって動いていた。
喘ぎ声や体が合わさる生々しい音も、愛液がかき回される粘度の高い音も、全てが筒抜けである。
それはあちら側も同様なので、これが薄いカーテンの限界なのだろう。
重要なのは、エミリーが相手をしている男がそちらを気にしてしまっていることである、恥ずかしさもありそうだが、それ以上に好奇心のような物で気が散ってしまうようだ。
「んッ……隣が気になりますか?」
股間を弄り、男の首筋へとキスをしながらそんなことを尋ねると、相手はわかりやすく動揺してみせた。
「ふふ、なんだったらあちらと混ざってみますか?」
「あ、いや、決して羨ましくなった訳ではなくてですね、少し気が散ってしまっただけなのですが」
「そうですか? でもせっかく同じ天幕にいるのですから、そういう趣向も良いかもしれませんね」
普段と同じ娼婦神の神殿で行う情事ではないのだ、薄いカーテンで仕切られているだけなので互いの距離が近い、なので普段とは異なる交わりも良いかと思って提案したんだが、思っていたよりも食いつきが大きい、興味はあるのだろう。
喉をゴクリと鳴らす男性を横目に、エミリーはそういうことならばとカーテンへと手を伸ばす。
もとより壁と呼ぶにはあまりにも頼りない物でしかないのだ、あっても無くても意味がない。
それにだ、男性の興味もそうだがエミリーとしても大いに興味がある、マリーが娼婦として働く姿はとても艶やかだろう、そんな様子を隣で眺めるのは彼女としても見てみたいものである。
自分で愛でることも良いのだが、自分以外の誰かと交わっている姿もまた良い、そんな複雑で面倒な思惑と共にカーテンを開く。
「あんッ、ああんッ・・・・・激しッ、あッ、あッ……ひぁッ!?」
喘ぎと驚きが重なった、突然カーテンが開かれて隣からエミリーが顔を出したのだから当然だろう。
「わぁ、マリー様、とてもお美しい」
「あ、あの、エミリー様……んッ……そんなに凝視されるのは」
個人的に体を重ねた中ではあるのだが、他の相手との交わりを観察されることに羞恥を感じてしまったのだろう、興奮と合わさって耳まで真っ赤になっている。
「ごめんなさい、ただこちらのお客様が複数での交わりに興味があるそうでして」
エミリーは自分の興味を棚上げにして男性に責任を押し付けた。
「なのですいません、隣に失礼いたしますね」
そして彼女はマリーのすぐ隣に体を沈めてしまう、柔らかなベッドの感触と右側から感じ取るマリーの熱と興奮を味わった。
「もう、エミリー様ったら」
マリーもまたそんな状況を受け入れたのか、左手を伸ばしてエミリーと繋がり合う。
「さぁ、こちらも楽しみましょう、どうぞいらしてください」
そしてエミリーは空いた手を秘所へと伸ばして、膣口を自らの指で開いて男たちに見せびらかす、そこは既に愛液で満たされてあり艶やかに男を待ち構えていた。
「なんというか……たまらんな」
「……あぁ」
二人並んで密着し、男を迎え入れるエミリーとマリーを見た感想がそれである、怪しく艶やかに微笑む彼女たちを見下ろしながら大きく喉を鳴らしてしまう。
どちらも聖都ではとても人気のある相手なのだ、マリーは勿論だがエミリーもまたここ二年の間に顔を広く知られている、聖都の男性たちからは憧れの相手でもあるのだろう。
彼女に相手をして貰ったんだと鼻高々に自慢できるくらいには、この二人は人気があった。
そんな憧れの二人がベッドに並んで濡れる秘所を見せつけている、興奮しない男はいないだろう。
「さぁ、どうぞお好きな方に……ふふふ、頑張ればどちらとも楽しめるかもしれませんね」
「まぁ、エミリー様、立派な殿方なのですから何度だって楽しませてくださいますよ」
火に誘われるように男たちは二人の股に滑り込み、辛くそそり立つ欲望を蜜壺へと押し込んだ。
「あんッ!?」
「んんん~ッ!!」
大きな興奮によって男たちにも余裕がないのだろう、女性陣に配慮することなく激しく腰を打ち付けており、暴力的な快楽を柔肌へと刻んでいく。
子宮を押し上げ、膣口まで引き抜いて、愛液を掻き混ぜながら再び最奥へ、その度に広がるそれぞれの快感は普段の交わりよりもずっと大きい。
「んぁああッ!! うぁッ、んッ、んんッんんんんッ!!」
「やぁ、あッ、あッ……エミリー様ッ……んぁッ」
男たちのやや乱暴な腰使いに合わせて二人の胸が揺れ動き、それに気を良くしたのか更に行為は激しくなっていった。
凌辱されるかのような激しい交わりの中で、エミリーとマリーは耐えるように固く手を結び合って与えられる快楽を受け入れる。
押し込まれる興奮もそうだが、隣にいる互いの熱もまた心地が良いのだろう。
知れず、二人は舌を伸ばし合って唇を重ね合っていた。
「んんッ……ちゅ……んむんんんッ」
「はぁ、れる……んッ、んんんッ!!」
キスは女同士だというのに、セックスする相手はそれぞれ別と言う状況に、言い知れない興奮をこの場にいる全員が感じているようだ。
四人の男女の興奮と体液が混ざり合い、天幕の中が混沌としていく中で、それぞれの絶頂が重なり合う。
房中術で繋がっているので互いが互いの絶頂に引っ張られて快楽を爆発させたのだ。
四人分の絶頂である、視界の中で火花が散ったような錯覚と共に、全身へと甘い痺れが広がるのだった。
「「――――ッッんんんんんんッ!!?」」
エミリーとマリーが一つになったかのように、彼女たちは同時に甘い沼へと落ちていく。
結び合った指は痛いほどに力が込められており、へその下に感じる男の熱を共有していた。
「はぁ、はぁ……交代するか?」
「あぁ、今度は俺が聖女様の相手をしよう」
精液と愛液が混ざりあってドロドロになった膣内から糸を引いて引き抜かれた男たちの欲望は、未だに衰えることなく固さが維持されており、次の相手を求めて場所を変えていく。
マリーを抱いていた男はエミリーの股の間に、そしてエミリーを抱いていた男はマリーの股へと滑り込む。
「聖女様、構いませんか?」
「ふぁ……はぁ~……はい、大丈夫です、どうかお気になさらず、存分に楽しまれてください」
「エミリー殿も、大丈夫ですか?」
「は、はい……んッ……こちらも大丈夫です……もっと楽しみましょう」
こうして彼女たちはその夜を楽しんだ、合間に休憩を挟みながらも、何度も何度も相手や体位を入れ替えて混じり合い、数え切れないほどの絶頂を繰り返すことになる。
遠征の最中にある、ほんの一幕であった。