商人と冒険者と娼婦 作:にやまな
上階で繰り広げられる悍ましい会話はどうやら終わったらしい、魔術師の男の言い分に内心はどうであれ納得するポーズを見せたエキドナの発する気配が消えていく。
「ふん、悍ましい怪物めッ……天剣さえ手に入れれば真っ先に処理してやるからな」
エキドナの気配が完全に消え去った瞬間にそんな言葉が飛び出すくらいには両者の関係は悪いらしい、彼もエキドナも内心ではお互いを邪魔に思っているのだろう。
両者の関係を保証する縛りがなくなった段階で殺し合いは確実なのだが、彼は自分が負けるとは欠片も考えておらず、既にエキドナを這いつくばらせる想像すらしていた。
まぁそれは、きっとエキドナも同じなのだろう、それが両者の関係である。
「まぁ良い、あんな怪物よりも……今は新しい器だ」
すると地下へと続く階段を踏みしめる足音がエミリーの耳へと届く、当然のことながら地下室に現れたのは魔術師の男であった。
「ほう、起きていたか、意識もしっかり保っているようだな……呪いに抵抗できているのか」
小太りの男はそのまま地下室の床に転がるエミリーの近くまでやって来ると、興味深そうに観察を始めた。
モルモットでも眺めるかのような熱のない視線である、そこにあるのは興奮でも蔑みでもなく好奇心なのかもしれない。
「やはり乗り移るのならば若い体だな……男の方が色々と便利ではあるが、まぁ文句は言うまい」
ジャラ、と鎖が擦り合わされる音が地下工房に響く、それは天井からぶら下がる鎖が引っ張られた音であり、エミリーの手首に付けられた手枷へと繋がっていた。
体が自由に動かせない彼女にまともな抵抗ができる筈もなく、天井からぶら下げられる形となってしまう、膝立ちの状態で万歳しているような体勢である。
すると男のごつごつとした手が伸びてきてエミリーの頬に触れて来る、そのまま指先は爪を引っ掛けながら耳へと移動して髪を一房摘みあげた。
「ふむ、女の体はいつぶりだろうか、それも聖印持ちの神官か、隠れ蓑としては悪くはないだろう」
「……なに、を?」
男の指先が振れた瞬間に思考が溶け始めたような感覚に陥った、酷い酩酊状態のように前後不覚になりそうに精神が押し込まれてしまう。
それが房中術だと気が付いてはいたのだが、抵抗できるだけの力は現在の彼女にはない。
「魂の移植さ、私の魂を貴様に植えこんで分配するのだよ」
「それ、は……きんき、の」
「らしいな、愚かなことだ……倫理だの秩序だの、実に下らん……魔術の深淵を目指さんとするものが可能性に蓋をするなど、愚行そのものだ。正しい成長? 凡人の物差しで測った正しさなど何の価値もない」
すると男はエミリーの背後に回って天井からぶら下げられているエミリーの乳房や秘所へと手を伸ばす。
「これだけ自由を奪っても魂への干渉だけはしっかりとなされているようだな、なかなかに仕込まれている、師が良かったのだろう」
最初の接触で男はそこに気が付いていた、この魂に触れて掌握するのは簡単ではないと。
例えるのならば暖炉に手を突っ込むようなものだ、或いは見えない壁に隔たれていると言った所か、魂の移植を行うには取り除かなければならない何かがあるのだろう。
「まぁ、男の体はこういう時に便利ではある」
そう言って男は無遠慮にエミリーの体を撫でまわし、法衣を強引に破り去る。
少女から女へと成長を初めて、幾人もの男と交わった体は、思わず息を呑むほどの艶やかさを既に宿している、もう数年もすれば極上の味わいとなることだろう、それこそ彼女と夜伽を楽しむ為には大金を積み上げなければならない程に。
法衣を剥ぎ取られて可憐さと艶やかさを併せ持つ体を晒されようとも、天井からぶら下げられるエミリーは全く抵抗ができていない。
男の指先が形の良い乳房を鷲掴みにして、もう片方の手で膣口を撫でられようともだ。
「うッ……んッ……ふぁ」
魂に深く干渉するのに房中術は有用である、それこそ長じた者ならば相手を洗脳して記憶や信仰を書き換えられるほどに凶悪なものでもあった、セックスを通じて相手と溶け合う行為は魂を繋がり合うことでもあるということだ。
この男の魂の移植と、房中術はとても相性が良いということである、特に男の体ならば相手の奥深くにまで己の意思や欲望の種を解き放てるのだから都合も良い。
「や、やめ……ふッ……いやぁ」
見た目に反して男の愛撫は巧みだ、房中術も使用しているので触れられた場所から燃えるような熱が広がっていく。
男に抱かれることなどもう慣れたものであるのだが、彼女の感覚としてはセックスは神聖な儀式であり互いに楽しむものである、一方的な凌辱は望むようなものではない。
それでも体は熱を持ってしまうのだから、房中術は厄介である。
何より肌を悪寒で震わせるのは、凌辱者である男が自分に対して何の興奮も抱いていないことだろう。
欲望や興奮によってエミリーを凌辱している訳ではないのだ、必要だからやっているだけであり、それこそ相手が犬猫でも同じように淡々と行為を進めるのかもしれない、そう思ってしまう程に熱が感じられないのだ。
しかし房中術によってエミリーの興奮は大きくされている、逆に男の体は全く昂ることは無い、それが不気味でもあった。
こんな気持ちの悪い情事は初めてだ、まだ興奮と共に乱暴に求められる方がマシだと思えてしまうほどに、流れ作業のようになってしまっている。
エミリーの気分としてはまな板に乗せられた魚の気分だ、断じて男女の交わりではない。
「さ、さわらないで、うッ……ください……はぁ、はぁ」
「知らん」
男の反応も実に淡白なものである、それも当然だろう、彼は欠片も興奮していないのだから。
女を抱くよりも魔術の研究やその成果を眺める方が彼にとっては興奮の対象なのだろう、ハッキリ言って異常である。
興奮が欠片も宿らない指先だというのに、高度な房中術で強制的に昂らせられる状況を悔しく思いながらも、彼女にできるのは僅かに身動ぎして鎖を鳴らすことだけであった。
「まだ魂へは届かんな、やはりこれか」
するとエミリーの背後からカチャカチャという金具を弄るかのような音が聞こえて来る、それがズボンのベルトを外す音だと気が付いたのは、日頃の経験からだろう。
本格的に凌辱されてしまう、それがわかっていながらも呪いと房中術で完全に自由を奪われているエミリーには何の抵抗もできなかった。
興奮もしていないのに固くそそり立つ肉棒の先端が膣口を押し開き、愛液を垂らす蜜壺の奥へと押し込まれていく。
「あ……あッ……あぁぁあッ!!」
徐々に沈み込んでいく肉棒の感触に背筋がゾクゾクと震えて、与えられる快楽はじんわりと全身へと広がっていった、へその下辺りに感じる圧迫感はもう慣れ親しんだものではあるが、普段と異なるのは相手が魔術師であり房中術を行使することだろう。
男の魔術師は少ない、魔女という言葉が当たり前に扱われるくらいには女の魔術師は多いのだが、逆の言葉は一般ではない。
それは数が少なく接する機会が少ないからである、大きな体や強靭さと体力を持つ男性は魔術に対する適性が薄いとされる為だ……或いは興味を示すことが稀であるからだろう。
だから房中術を使う男性の魔術師はエミリーにとっても初見の相手である、膣を押し開く肉棒の感触も普段と異なるのはそれが原因だ。
「ひゃッ……熱ッ……やぁ、やッ、んんんッ」
端的に表現すれば凄まじく気持ちが良かった、サイズは少し大きくて彼女の好みとしてはもう少し小さいくらいが良いのだが、それでも膣壁全体に擦りつけられる快楽は電流でも流されたかのようである。
「は、はげしいッ……やッ、やッ……やぁぁッ」
腰使いもまた配慮や優しさが感じられない雑で淡々としたものである、エミリーとしてはもっと溶け合うようなセックスが良いのだが、それでも与えられる熱は攪拌の度に大きくなっていく。
興奮と高ぶりを房中術で強制的に高めていくのだ、抵抗しようとエミリーも房中術を使おうとするのだが、何らかの封印が施されているのか魔力を迸らせることができないでいるらしい。
つまりはされるがままだ、抵抗しようにも巧みな房中術に翻弄されるしかなかった。
グチャグチャ、ヌチャヌチャと愛液が攪拌される音が地下室に響き、彼女の秘所から垂れるそれが白く濁るのにそう時間はかからない。
「……じ~」
「うぁッ……ぅッ……み、みないで、あんッ」
何より恥ずかしいのは凌辱されて感じてしまっている自分の姿を、プリメーラがじっと見つめていることだろう、男女の交わりが興味深いのか食い入るように見つめていた。
隠そうにも両手は手枷に固定されて鎖で天井からぶら下げられているのだ、腰使いに合わせて揺れる豊かな胸も、白濁した愛液を垂れ流す秘所も、昂ったことで球のような汗を浮かべる白い肌も、全てが観察されてしまっている。
そんな彼女の羞恥や感情などを全て無視して男は淡々と腰を振り続けていく、やはりそこに情欲はなく熱もない。
「やッ、あぁッ、あああぁッ……うッ、うぁ」
亀頭が子宮を押し上げる苦しさにどうしようもないほどに身もだえて。
「んひゃんッ!?」
膣口付近まで引き抜かれる感触に背筋を震わせる。
「んおぁッ!?」
そして再び雑に押し込まれる肉棒に体を激しく反応させるのだった。
「エミリー……気持ちよさそう」
そんな彼女の反応を注意深く観察するのがプリメーラである。
純粋な瞳で撫で上げるように足元から頭まで見つめられ、よりエミリーの羞恥を高めていくのだ。
「やぁぁぁあッ……も、う、だめぇ……あッ、あッ、ああああッ!?」
背筋を震わせる快楽は留めようがないほどに大きくなっており、それこそ引きずられるような勢いで絶頂へと向かうことになる。
それもそのはずだ、魔術が封じられているのに相手の男は房中術を行使しているのだ、冬場に全裸で放り出されているのと変わらない程の危険な状態なのだ、彼女は体を温めることも服を着ることもできないまま冷気に晒されているようなものだろう。
「んッ、くッ、ふぁ……うッ……――~~~~んんんんッ!?」
まともに抵抗することもできないまま彼女は絶頂へと押しやられることになった、ガクガクと体を痙攣させながら秘所から潮を吹きだしている。
「――――ッんんんんんんんッ……くッ……ふぅ~……ふぅ~……ひぁ!?」
あられもない声を出していることに気が付いて、せめてもの抵抗として小刻みに呼吸をしながら押し込めようとするのだが、そんな彼女に押し付けられる肉棒は僅かばかりの躊躇すらもなかった。
甘い痺れが全身に走り、余韻に絡めとられている状態のエミリーを無視して男の肉棒は最奥へと突き込まれて淡々と動き続けていく。
「ま、まってくだ、さ……おッ!? おッ、やあぁああんッ!?」
二度目の絶頂はそれから十秒ほどでやって来た、頭の中に火花が走ったかと思えば燃えるように甘い痺れが広がったのだ。
短い間に二度も大きすぎる快楽を爆発させたのだ、エミリーは前後不覚に陥って白目になりそうなほどに体を痙攣させてしまう。
「ふむ、だいぶ脆弱になったようだな」
そんなエミリーを男はそんな風に評する、抵抗できない相手に房中術で犯しつくし、魂の守りが最初よりもずっと薄くなったのだろう。
魔術師らしく見えない所や触れられない場所にもしっかりと魔術的な守りを施していたのだが、度重なる房中術による魂への干渉でそれが取り除かれてしまっている。
それこそ、今ならば洗脳や催眠が容易い程に脆弱だ。
だが魔術師の男はそんな状態だからこそ、腰を押し付けていく。
魔術師は狡猾な人種だ、例え脆弱に見えても思わぬ不意打ちを受ける可能性もある、自分がそうなのだからエミリーも同様だと考えたのだろう。
だから彼は、彼女を三度目の絶頂へと押しやっていく。
「あぁ~~ッ!! あぁ~~ッ!!?」
それを受けるエミリーの反応は強すぎる快楽に半ば意識が失いかけており、涎を垂らしながら舌足らずで獣のような喘ぎ声を響かせるのだった。
逃れようにも体は重い上に快楽の沼に浸かってしまっており、頼みの綱である魔術も使えない、挙句の果てに両手は天井からぶら下がる鎖でまともに動かせない、彼女にできるのはただ喘いで鎖を鳴らすことだけである。
「―――――あッ」
三度目の絶頂は全てを受け入れることはできなかったのか、首を絞められたかのようなか細い悲鳴を上げて、エミリーはなんとか維持していた意識を手放すことになるのだった。
鎖に繋がれて膝立ち状態であった体はだらんと脱力して完全に天上からぶら下げられることになる、手枷を嵌められた手首は体重の全てで引っ張られるので僅かに鬱血しているようにも見えてしまう。
そして魔術師の男は完全に意識を失ったエミリーの最奥へ興奮が欠片も存在しない射精を行う。
それは精子の放出と言うよりは、毒針を刺すことに似ているのかもしれない、女の最も深い場所を占拠するのは魔術師の男の毒である、それはエミリーの体に染み渡るように広がっていき完全にその存在を掌握することになる。
ここまで来れば後は家畜を〆るよりも容易く魂へと干渉できるのだ、肉棒を引き抜いてから男はエミリーの後頭部を鷲掴みにするかのように掌を乗せるのだった。
すると両者の間に魔術的な道ができあがってしまう、房中術よりもずっと大きく太い道であり、強力な契約を結んだ時のように離れがたい縁でも結ばれてしまったかのようである。
今の二人の距離は限りなくゼロに近い、肉体的にも精神的にもだ、だからこそ魂の移植は容易になるのだろう。
「さぁ、新しい体へと移り変わるとしよう」
ボロボロの肉体は脱ぎ捨てて若く才能のある器へと、それが彼、或いは彼女の人生である、もう数え切れないほどに繰り返してきた儀式でもあるのだ。
その為には互いの魂の距離が可能な限り近い方が良い、その方が成功確率が高くもなる。
掌からエミリーの内部へと男が行使する魂の魔術が流れていく、それはなんの守りもないエミリーの魂へと届き、やがてはそこを染め上げるのだろう。
最後の最後まで注意深く観察しながら反撃が無いか調べており、油断も隙もない様子から男は警戒心が強いことがわかり、自分の気のすむまで慎重さが消えることはない。
やがて完全にエミリーから反撃を受けないという確信を抱いた段階で、男は魂の移植を開始するのだが――。
エミリーの魂と自分の魂が完全に繋がり合った瞬間にそれはやって来た。
最初に流れ込んで来たイメージは暖炉である、未だに火が燻っているそれは住居を温める熱を感じる物である。
これはなんだ? という疑問が頭に浮かんだ次の瞬間に、燻る暖炉から濁流が吐き出されるかのように大量の炎が放出されてしまう。
これはあくまでイメージでしかない、ただそれだけである、少なくともこの魔術師の男はエミリーの魂に対してそんなイメージを抱いたのだろう。
実際に炎に呑まれている訳ではないのだが、それでも魂を繋げあった状態でそんなイメージを押し付けられてしまえば、精神面への衝撃は巨大なものになってしまうのだ。
彼が感じったのは身を焦がす炎、例えそこに無かったとしても魂は感じ取った。
それと同時に、炎の中で雄々しく羽ばたく不死鳥の姿も幻視する。
「ぴ~」
小さな鳥のさえずりは、やけに大きく感じられたらしい。