商人と冒険者と娼婦 作:にやまな
酒場の空気がどんな場所であろうとも変わらないように、歓楽街に流れる空気もまたどこであろうと変わらない……古今東西、神代から現代に至るまで、夜の街は不変であり続けてこれからも変わることはないだろう。
淡い輝きの中では酒と金と欲望が渦巻き、女は愛を囁いて男は光に群がる蛾のように引き寄せられていく。
この場所ではまさに女が主役と言えた、特にこの歓楽街はキグナスの意向と方針が大きいのか高級志向で統一されており、店も娼婦も一流と表現することが出来る。
ボロ布同然の服を纏って客引きをして、雨漏りと隙間風に晒されながら働くような娼婦は存在しない、通りにいる誰もが艶やかでありながら質の高いドレスや下着を身に着けており、買おうとすれば平民では手が届かないであろう装飾品や化粧品も彼女たちにとっては当たり前の物、つまりそれだけの稼ぎがあるということだ。
しかし十年ほど前まではそんなことはなかった、この歓楽街は治安が悪い上に働く娼婦たちは奴隷同然の扱いを受けており、彼女たちが働く環境としては最悪だったと言えるだろう。
それが日常であり、それが当然でもあったのだが、そんな時に現れたのがキグナスであり、そこから全てが始まったのだ。
街を支配していた無法者を金と武力で叩き出し、歓楽街のど真ん中に新しい酒場と娼館を作ってからは街の雰囲気は大きく変化したと言えるだろう。
キグナス商会の庇護下に入った娼婦たちはまず最初に礼儀作法と立ち振る舞いの矯正を徹底された、なぜそんなことが必要なのかと幾人かの娼婦が質問するとキグナスはこう返したという。
娼婦の仕事は股を開くだけではない、そう言って彼女は傭兵業の傍らではあるが娼婦たちの教育と働く環境の整備に取り掛かることになる。
莫大な金が動いたことだろう、周辺の店や土地を次々に買収しては立て直し、大量の大工を雇って道の整備までやってのけた。
結果として今がある、この街は大陸の玄関口であると共に貿易の中心地であり、大陸屈指の歓楽街でもあるのだ。
そして中心にはいつもキグナスがいる、今や海運王の再来とまで称されるほどに勢いに乗った彼女の商会は、この海沿いの国において最大の派閥となりつつあった。
娼館の主からそんな説明を受けた四人はキグナスの事業の巨大さに愕然としながらも、どこかその在り方にキャラバンの方針や空気を感じ取って笑顔を浮かべる。
たとえ今はキャラバンにいなくとも、そこでの教えはキグナスの中に根付いていることに安心するのだった。
「確かにこの街の歓楽街って他と雰囲気が違うよな」
その話を聞いてシャルルは納得したように頷く、大きなガラス窓の向こうに広がる街並みはこれまで彼女たちが旅してきた歓楽街とは大きく異なって見える。
「そうなんですか?」
ミカエラもまたシャルルの隣に座って大きなガラス窓の向こうを眺めるが、旅の経験が少ないために違いがわからないようだった。
「ん~……なんていうかさ、歓楽街ってどこに行っても治安が悪いのが当たり前なんだよ、大体がスラムと隣り合ってたり、いかつい男やヤクザ者が牛耳ってたりして、スリとかカツアゲとか縄張りとか注意しなきゃならないし」
「後は麻薬の販売とか怪しい集団が拠点にしていたり……全てがそうではありませんが、ここほど雰囲気が落ち着いている場所はそうそうありませんね」
エミリーもまたソファーに座って同じように大きなガラス窓の向こうを眺めていた、そしてそれはキャロルも同様だった。
「……ひどい所だと、女はまともに出歩けない」
しかしこの場所は違った、大通りに出て客引きをしている娼婦たちは身の危険がどこか遠くにあるかのように無防備であり、警戒心が薄いように感じられる。
そして街を歩く男たちも落ち着いている……と言うよりは秩序ある発散と適度な欲望を向けているだけであり、理性というものが垣間見えるのだ。
彼らはここで不埒な行いをすればどうなるかを理解している、だからこそ紳士的な態度を可能な限り崩さない。
羽目を外しすぎれば制裁を受けるのは自分たちなのだから行儀良くもなるだろう、それだけキグナスが恐れられているということなのだが、娼婦たちにとっては良い職場であると断言できる。
「こういった環境で働けるのは幸運でしたね、臨時とはいえ正式な契約も結べましたし、あとはキャラバンが来るまでにしっかり生活費を稼ぎましょう」
「真珠も欲しいしな」
現状の海賊騒ぎが落ち着くまでは難しいかもしれないが、最初から諦めるわけにはいかないだろう、生活費を稼ぎつつ何とか真珠も手に入れたのが本音である。
海沿いの国であるこの場所ですら高騰しているのだ、輸入に頼るしかない内陸部は更に高くなっているだろう、つまり稼ぎ時であるのだ。
四人の仕事はキャラバンで働いていた時とそう大きくは変わらない、働いていた娼婦が引退したので手が足りなくなっていた娼館で働き、偶にキグナスからの指示で彼女の影響下にある店や縄張りで雑務をこなしていた。
そして今は夜、四人は煽情的な薄着を身にまとって歓楽街での客引きを行っているようだ。
しかし客引きと表現するよりは品物の展示に近い、裸同然の薄着と向こう側が透けて見えるくらいに薄いベールを身に着けて丁寧な化粧を施し、香水をわずかに肌に振りかけた状態で部屋の中で寛ぐだけだった。
各々がソファーや椅子、床に置かれたクッションに座って雑談しながら指名を待っているのが現状である。
四人の正面には大きなガラス張りの窓、汚れや歪み一つないそれは歓楽街の大通りに面しており、その向こうでは無数の男たちが舐めるような視線を彼女たちに向けていた。
大通りに出ての客引きもあるのだが春とはいえまだ夜は寒さがある、慣れていない者がやって体調を悪くしたら周囲の足を引っ張るだけなので、キグナスの配慮でこうやって展示されているらしい。
評判は悪くはないのだろう、ガラス窓の向こうにいる男たちは熱い溜息を吐いて股間を熱くしているのだ。
しかしなかなか指名が入らない、手ごたえは多少なりともあるのだがもう一声欲しいのか男たちはガラス窓の向こうで何やら話し合っているようだ。
「ええっとなになに……新人……悪くない……でも子供っぽい、かな」
「シャルルさん、あの人たちが何を言ってるかわかるんですか?」
「唇の動きを見ればなんとなくだけどわかるんだ。ここの入場料はそれなりに高いからどうせ遊ぶならベテランの方が良いみたいだぞ」
「むう……若いのもいいのに」
子供っぽいという評価に不満なのか、この中で一番幼い容姿のキャロルが愚痴を零す。
「そこそこ経験があるってことをアピールしてみるか?」
「……どうやって?」
「大通りで客引きしてる娼婦とか見習って……こうかな」
シャルルは肩にかかった下着の紐に指をかけて下げる、すると殆ど裸同然の姿をしていたのだがその行為によって更に露出が増えて彼女の乳輪が少しだけ露出されてしまった。
その瞬間、素直なもので男たちの視線がシャルルへと集中するのだった。
「こんな感じで良いんじゃないか?」
「ん……試してみる」
キャロルもまた他の娼婦を見習って男を誘惑するかのようにアピールするのだが、成人を迎えているとはいえ彼女の体はまだ幼いのでシャルル程の効果はないらしい、それが不満だったのか対抗心からか露出を増やすのではなく指に唇を押し付けて投げキッスへと変化する。
反応は、それほど悪くはない、多くはどこか子供がする背伸びを見守るかのような微笑ましい視線なのだが、一部の男たちからの欲望は確実に高まっていることがわかった。
自分たちの生活費を稼ぐ為なのでエミリーやミカエラも媚びるようなしぐさをするのだが、この二人は恥ずかしさが先に来るのか少々ぎこちない。
「は~いみんな注目、指名が入ったから後は宜しくお願いするわね」
そんなアピールに効果があったかはわからないが、四人に相手をしてもらいたいと指名が入ったのはそれから十分後のことである。
娼館の経営者兼娼婦でもある女性がそう言って四人に部屋番号が書かれたカギを渡してきた、そして別室で休憩していた娼婦たちが四人と変わるように展示室に入ってくると、そこで見せびらかしの仕事は終わりとなる。
次は娼婦としての仕事が待っている、ここはキャラバンではないのだがどんな場所であろうともやるべきことは何も変わらないのだ。
すなわち、今日もまた生きる為に全力を尽くす、それが彼女たちの全てである。
キグナスの傘下にある娼館は春風のキャラバンが経営しているそれとも大きく異なるようだ、まず娼館自体がかなり大きく貴族の邸宅と見間違うほどであり、数多くある部屋は高級宿屋と言っても問題ない程に広く備え付けられた調度品はどれもが高級そのもの、そして何より驚きなのがそれぞれの部屋には浴場がある点だろう。
客からの評価も上々であり娼婦にとってもこの環境は得難い物であるらしく、この歓楽街で働く娼婦はキグナスの直営店で雇われることがある種の憧れであるらしい。
客がいない時にその仕事部屋は私室に代わるのだから、下手な宿で暮らすよりもずっとまともな生活ができるのだ。
こういった点は移動巡業が基本となっている春風のキャラバンでは真似できないだろう、しかし似通っている点も見受けられる。
まずは入場料が高いこと、そしてチップは娼婦の懐にそのまま入れられること、これらは春風のキャラバンと同じだった、キグナス自身が元々は春風の娼婦だったこともあるので教習しているのだろう。
これまでと違う環境ではあるが、似通っている場所もあるので混乱は少ない、キャロル自身もそこまで戸惑うことなく男との交わりに挑むことが出来た。
「ん、ちゅ、んッ、んッ……ふッ、ちゅる」
キャロルを指名したのは四十代後半の男であり日焼けと筋肉がよく目立つので船乗りだろうと思われる、既に前線を引いてもおかしくない年齢ではあるのだが今でも自分の船に乗って大陸をかけているらしい。
浴場で体を洗いながらの自己紹介でそのようなことを説明されてチップを渡された、それは大銀貨だったので羽振りがいいのだろう。
「見た目は幼いが慣れているようだな、ここでの仕事は長いのか?」
「んん? ぷはッ……別の場所で働いてたから、そこで」
「ああ、やっぱり新人か、見ない顔だと思ったんだ」
「……そっちも、慣れてる」
「ははは、そう見えるか? まぁ間違ってはないな、妻が若い時に病気で亡くなってからはよく足を運んでいる」
体を洗ってから二人はそのまま寝床へは行かずにそこで体を重ね合っていた、男性は濡れた床に腰かけて足だけを湯船に沈めており、キャロルは体全体を湯に浸けて頭だけは男性の股間に埋められていた。
舌と唇での奉仕を気に入ったのだろう、ゴツゴツとした手がキャロルの頭に乗せられて髪を優しく撫でてくる。
嫌な感触では無かったのでキャロルもお返しとばかりに舌先で亀頭を弄ぶ、先端には先走りが流れており僅かな苦みがあるのだがそれも悪くはない。
娼婦として働いたばかりの頃はこんなことは出来なかったと彼女は記憶しており、男の精液が持つ独特の苦みや匂いも苦手ではあったのだが、今では不思議と不快には思わなかった。
精神的にも技術的にも成長を感じられて彼女はほくそ笑むと、自分は娼婦としての才能があるのではないだろうかと考えるが先輩であるローレライの顔を思い出して自重する、さすがに彼女に比べれば自分等まだまだひよっこだと控えるしかない。
「ん……このまま一度、ね?」
雑念をかき消すように仕事に集中することにした、再び男の肉竿を咥え込んで手ではしごきだす。
「ん……ん……んんッ、うッ、んんんッ!」
咥え、手で握った肉棒が固く熱くなっていくのが良くわかった、根元から込み上げてくる精液の気配を感じ取ってキャロルの下腹部が無意識の内にキュンと引き締まる。
「ちゅ、ちゅる……もうイク?……どうする、外、中?」
男はキャロルの頭を掴んで股間に押し付けた、三度咥え込まれた肉竿は彼女の舌を滑り喉奥まで到着すると、そこへ大量の精液を吐き出すのだった。
「んんッ!? んッ、んッ、んッうぐッーーーッッ!!」
口内に広がった熱を喉を鳴らして飲み干そうとするのだが、想定より量が多かったのか唇の端から零れ落ちてしまう。
それでも何とか受け入れようとむせ返りそうな男の性を貪り、飲み切れず口や肉竿から垂れ落ちた分は舌を伸ばして掬い取って無駄にはしない。
匂いと味、そして熱を五感で感じるだけで体が高ぶっていくのがよくわかる、ゾクリと背筋を震わせた彼女の股間は湯船に浸かっているのでハッキリとはわからないが濡れていることだろう。
「ん……はあ、はあ……ちゅ、うん……ふぅ」
最後の精液を舐めとってそれを舌で転がして最後に飲み込む、そしてボウっとする頭でキャロルは男の肉竿をさらにしごくのだった。
一度吐き出して柔らかくなっていたのだが、キャロルの視線と舌の行き先に翻弄されたのか徐々に硬さを取り戻していく。
「……熱い」
湯に浸かりながらの奉仕だったので、性的な興奮と合わせて彼女の体はいつも以上に熱くなっているらしい、ザバッと音を立てて湯船から身を乗り出すとそのまま両手を伸ばして男の首にぶら下がった。
「……私くらいの見た目が好きなの?」
「ど、どうしてそう思うんだ」
「ん……わたしを買うのってそういう人ばかりだから」
少しばかりの動揺を感じ取って図星だと確信に至る、あの展示室には他にも美しい女がいたにも関わらず、わざわざ自分を指名したのだから自ら暴露しているようなものだろう。
「私の年齢なら娘がいてもおかしくないだろう……そんな私がお前さんを指名するのはやっぱりおかしいか?」
「別に……そういう人って多いし」
これまでの経験を振り返ってみるが、その言葉に間違いはなかった。
「そっち位の年齢の男は……若い女を抱きたいんじゃないの?」
男の首にぶら下がったままキャロルは完全に湯船から体をだして、股を開いて両足でその逞しい体を挟み込む、そして対面座位のまま濃い髭を生やした頬にキスをすると筋肉質な体がピクリと反応を返してくる。
「どうなんだろうな、私は、まぁ……お前さんくらいのほうが興奮するが……知り合いはそうではないし、人によるんだろう」
「認めた……ふふ……このロリコン」
「……あまり虐めんでくれないか」
「……別に虐めてない、ただ事実を言っただけ」
下腹部に熱を感じて視線を下げるとそこには完全に硬度を取り戻した男の一物があり、先走りを垂らしながらキャロルのへそ辺りを突いていた。
「ん……入れるね……ふッ、うッ……はぁはぁ、おっきい」
しっかり濡れていたというのに挿入には少しの苦痛が伴ってしまった、それでも少しづつ導いていき最奥へと亀頭が辿り着く。
「うぁ……凄い」
「苦しいか?」
「……ちょっとだけ、でもすぐに慣れるから……んんッ!」
腰を浮かして引き抜き、また最奥へ、そして引き抜き、何度もそれを繰り返すと苦痛は徐々に減っていく、愛液が糸を引いて滑りを助け白く泡立ち始める頃には完全に熱と快楽だけがキャロルの体を駆け抜けていくのだった。
「んッ……んんッ……ふふ、どう? 自分の……アッ……娘くらいの、娼婦を抱く気分は?」
「だから虐めんでおくれ」
「虐めて……アッ……ないよ」
そうは言うがキャロルは微笑を浮かべている、そして男の方も自分の性癖を責められるたびに股間が反応しているのでお互い様だろう。
「ふぁッ!?……いきなり、動くのは……アッ、アッ……ダメ、ああぁッ!」
「責められてばかりでは分が悪いだろ、まだ若い者には負けんよ」
「あ~……ダメ、奥ダメ……あ~……んッ、んッ、ああッ……やああ!」
腹部に感じる男の象徴はこれまでにない程に熱く高ぶっており、狭い膣内を強引に突き進んで子宮口を強く突きつける、そこへ到達せんとばかりに何度も何度も叩きつけて限界へと上り詰めた。
「んんんんッ!---ッッ! ---んんんッ!」
最奥に吐き出された熱を感じ取って、キャロルの背はゾクゾクと震えて体中へとその快楽広げていく。
娼婦として働いていれば何度も経験する瞬間なのだが、未だに完全には慣れることのできない感覚でもあるのだ、体中を駆け巡る衝撃と甘い痺れにはどうしても抗えない。
思考が乱れて、その絶頂に全てを委ねてしまう、キャロルはこの一瞬が嫌いではなかった。
「はぁ……はぁ……あ、あッ……ぅあ、あぁ」
脱力した体を男へと完全に預けると、相手はキャロルの小さな体を落ちないように抱きとめ、そしてそのままの体制で絶頂の余韻を噛みしめながら互いの体温を感じ合う。
「……ふ、ふふ」
「どうしたんだ?」
「凄く……興奮してた……自分の娘くらいの子に射精するのは、そんなに気持ちいい?」
「何度も言うが虐めないでくれないか」
「……虐めて、な……アッ!?」
最後まで言い終わることなくキャロルの体は男の太い腕に抱かれて持ち上げられる、そして男は足だけを浸けていた湯船から立ち上がると、そのままキャロルを寝具の上に寝かせた。
「何度も何度もからかいよって、これはキツイ躾が必要だな」
「……できるの? おじさんの体力で?」
挑発的な笑顔を浮かべると、男はムスッとしながらキャロルの股へと滑りこんで小さな体を引き寄せる。
「あまり大人を舐めないことだな」
「ふふ……じゃあ期待しておく」
そして男はキャロルの両手首を自分の両手で固定して、その大きくて筋肉質な体で覆いかぶさってしまう。
これから長い交わりになるだろう、性愛の神がどちらに微笑むかは誰にもわからないのだった。
シャルルを今晩の相手にと買った相手はずっと不機嫌だ、どこかイライラしており眉間には常に皺が寄っているのが特徴である、年齢は高級娼館に遊びに来るにはまだ若いように思えたので、おそらく二十歳前後といったところだろう。
しかし金はあるらしい、小振りな金貨を渡してきたのでどこかの富裕層の息子なのかもしれない、そんなシャルルの考えは間違っていなかったらしく、彼は部屋に入って開口一番にこう言った。
「俺はブランジュー商会の若頭だ」
「ブラ……なんだって?」
「……ウチの商会を知らないのか?」
「いや、ワタシは最近この辺に来たばかりだからなぁ……有名なのか?」
「当然だ、この街でも最高の……とは言いすぎかもしれんが、まぁ中堅どころだな」
そして彼は自らが所属する商会がいかに勢いがあり、そしてこれからも成長していくのがを熱弁するのだが、シャルルにはいまいち伝わらないようだ。
わかったのは、彼がその商会の次期会長であり、それなりに羽振りがいいということだけであった、それ以外のことはあまり理解することができない。
早口でまくし立てて顔を興奮で赤くさせながら自分の立場と商会の規模を、これまでの努力とこれからの展望を、なにより時期代表としての責任感を語り終えた彼に向けて、シャルルはこう言った。
「つまりお前は童貞ってことだな」
「そんなハッキリと言うもんじゃない!」
あまり理解することのできない長い話を聞き終えてシャルルが出した結論に、若い男は声を荒げて力強く否定する。
「いいかね、俺は次期代表としての勉学や経験を重ねる為にこれまで努力を積み重ねて来た。それも全ては偉大な父の背中に追いつくためなのだ、成人を迎えて五年経ちそろそろ船の一つでも任せるという話も出て来た、しかしそこに至るまでには本来なら様々な学びが必要なんだよ」
「遊ぶ時間が無かったって言いたいんだろ……つまり童貞ってことじゃん」
「だからハッキリ言うな!」
「別に馬鹿にしてないっての、沢山頑張ったんだってことは伝わったからさ」
「本当だろうな? 俺や商会を見下しているんじゃないか?」
「なんでそうなるんだよ、穿った考えしすぎだろ」
そこでシャルルは身にまとっていた下着を脱ぎ捨てて、部屋に備え付けられた大きな浴槽へと体を沈める。
長い話を聞かされて少し冷えていた体を温める、ここまで贅沢な水の使い方をしたことが無かったので思わず両手を広げて泳ぎだしてしまった。
そして仰向けになってプカプカと浮かびながら天井へと視線を向けると、あまりにも心地よかったのでこのまま眠り落ちてしまいそうな気分になりつつあったが、部屋の端にいる男を思い出して声をかける。
「何やってんだ、アンタも来れば良いじゃないか」
「い、いや、そのだな……」
「娼館に来て恥ずかしがってどうすんだ、男ならどっしりした態度を崩さずに女を抱きに来い」
「くッ! これだから娼婦は困るんだ、慎みというものが足りてない」
「じゃあこのまま何もせずに帰るのか?」
少なくない入場料とチップを払ったのでそんな選択肢はない、しかし彼もまたプライドが邪魔をしているのだ。
そんな男を見かねたのか、シャルルは広い風呂から出るとそのまま男の服を掴んで脱がしにかかる、なにやら抵抗しているようだったが単純な腕力なら分があったらしく、あっという間に全裸になってしまう。
そして男の体を風呂の中へと放り込む、そしてシャルルも飛び込んだ。
「貴様!? 何をする! 私は次期……」
言い終わる前に男のへキスをして強引に黙らせる、触れさせるだけの軽い口づけであったが効果は覿面であり部屋は静かになった。
「ん……ほら、ワタシの目を見ろ、お前をバカにしているように見えるか?」
「……い、いや」
「これまで頑張ったんだろ? 努力したんだろ? なら凄いじゃんか、お前が童貞だとかそんなもんは大した問題じゃない、笑ったりなんてしないさ」
そして彼女は湯船の中で男の手を取って自分の股間へと誘導すると、その指先を淫唇へと触れさせる。
「今まで頑張ったご褒美にさ、今夜は難しいことを考えずに楽しめよ……良いとこのお坊ちゃんなら婚約者とかいるんだろ?」
「あ、ああ、それはまあ」
「なら本番で失敗して馬鹿にされないようにさ、ワタシでしっかりと練習すればいい」
ニッとシャルルは笑って見せる、その屈託のない笑顔を見つめて男はようやく肩の荷が下りたのか、僅かにスッキリとした表情でこう尋ねるのだった。
「どう、すればいいんだ……まぁ、俺はあれだ……童貞だからよくわからん」
「大丈夫、大丈夫、ワタシが教えてやるから……ほら、指動かしてみろ」
見た目よりもずっと固くて逞しい指先が恐る恐るシャルルのそこへと触れてくる、震えながらも興味はしっかりとあるらしい。
「痛ッ……」
「す、すまない! 大丈夫か?」
「まぁ最初はそんなもんだからあんまり気にすんな、爪を立てないようにゆっくり動かしてくれ、優しくな」
指先がシャルルの膣へと侵入するとその僅かな熱と感触に体は素直に反応した、指示通りに優しい愛撫はなかなかスジが良いと彼女は思った。
「あッ……いいぞ、そのまま……んッ、んん、はぁ、ああ」
「痛くはないんだな?」
「おう、その調子だ……ほらワタシの中、濡れてるだろ」
見せつけるように自分の淫唇を開くと、滑りのある粘液で男の指は濡れていた、その光景に彼はゴクリと喉を鳴らして股間を熱くする。
「続けろよ、優しくな」
男の指はシャルルの膣をかき混ぜて、シャルルの指は男の肉竿をしごき出す、そして互いの指先から感じる甘い快楽をただ受け入れていく。
「ふぅッ……ふぅッ……あッ、アッ、そろそろ激しくしても、いいぞ」
その言葉を待ちわびていたのか男の指先がシャルルの中で暴れまわる、とても雑な愛撫ではあるがよく濡れているので苦痛は感じない。
「うッ、くぁッ……指、二本目も入れて……もっと激しく、あぁぁッ!?」
そこで男も我慢の限界がきたのだろう、強引にシャルルの体を湯船の端に押し付けて自らの指で最奥を触れようと動かすのだが届かなかった。
だがそれで終わりではない、愛液を纏まりつかせた指はただただ強引に激しく膣内を蹂躙していく、その度にシャルルの体が反応するので彼も初体験の不安が徐々に消えていっているらしい。
「ここか? ここが良いんだな?」
「あぁッ! あぁ!? そう、そこ、気持ちいい……アッ、アッ、アッ、激し……ああ、あぁぁッ、あぁぁぁぁッ!!」
一際激しい反応と共にシャルルの体ががくりと崩れ落ちて湯船に落ちる、膣内は指を食いちぎらんばかりに蠢いて指先を締め付けていく。
「ーーーッ! 激しすぎ、だっての……あぁ、はあ、はあ、はぁ~」
「す、すまない、つい夢中に……苦しいのか」
絶頂の余韻でぐったりしているシャルルを気遣うように肩を揺すってくる、商会の次期代表ということで常に気を張って言葉遣いや態度を舐められないように厳格していたのだが、今はその気配がなくなっているのでこれが彼の素なのだろう。
こういう姿の方がシャルルとしても好感が持てる、少なくとも眉間に皺を寄せているよりはずっと男前だと思った。
「まぁ、大丈夫だ……ちょっと激しかったから、腰が抜けただけでな……それよりも、そっちも限界みたいじゃん」
眼前にある男の一物は固く聳え立っている、先端からは先走りが溢れて男の匂いをこれでもかと放っているのだ。
それを見てシャルルは唇の端をペロリと舐める、そして視線をベットの上へとやった。
「次はお持ちかねの本番だな……ほら、運んでくれよ」
差し出された手を受け取って男は湯船からシャルルの体を持ち上げる、そして荒い鼻息を吹きながら体も拭き取らずにベットへ押し倒す。
「入れるぞ! 入れるからな!」
「アッ、ちょっと待て、まだーーーーッッ!?」
しなやかな体を組み伏せてそそり立つ肉竿を力づくで挿入すると、余裕も理性も無く腰を打ち付けていく、だがそれをシャルルは許さなかった。
「やめろコラ、言っただろうが練習だって! 強引にすんなよ痛いだろうが」
まさか説教されるとは思っていなかったのか男は唖然としながらも頭を下げてくる、どうやら理性は戻ったらしい。
「ああ、ほらほら、そんな青い顔すんな……別に怒ってるわけじゃないからさ」
「本当か? これだから童貞はって呆れたんじゃないのか?」
「だから変な誤解はよせって、ワタシは優しくって言っただろ」
そしてシャルルは突き飛ばした男を改めて引き寄せる、そして二人してベットに沈み込むと、笑顔を見せつけて男の顔を見上げるのだった。
「こっちは娼婦だからまだ良いけどさ、今みたいな力づくで突っ込むのは駄目だからな、まして処女とか相手ならもっと紳士的になれ」
「す、すまない」
「良いよ、これは練習だから失敗したっていいんだ……さぁやり直すぞ、今度はゆっくりな」
男の象徴がシャルルの淫唇に触れて僅かに押し広げていく、突き飛ばされたのが効いているのか今度の挿入は指示通りゆっくりとしていて優しい腰使いを維持している。
またシャルルの中で評価が上がる、素直に助言を聞き入れてくれるのでとてもやりやすい、偉そうにしていても根は悪い男ではないのだろう。
「ん……んッ……はぁ、ゆっくり、ゆっくりだぞ」
結局、男の肉竿が完全にシャルルの中へ沈み込むまでに数分の時間がかかった、少し焦らしすぎたかもと思わなくはなかったが、これからこの青年の相手をする女の為にも仕方がない。
完全に密着した二人は微笑み合う、そして良くできましたと言わんばかりに男を抱き寄せて、その耳元でシャルルは囁いた。
「上出来だ……童貞卒業おめでとう」
「ありがとうと、言っておこうか」
「今の感じ忘れんなよ……そんで上手くできたご褒美だ」
そう言ってシャルルは両手を大きく広げて完全にその体を青年へと委ねてしまう、その姿は自分を好きにしろと言っているかのようだった。
「ここから先はお前の自由だ、全部受け止めてやるからさ……好きなだけ犯して良いぞ」
膣内の肉棒がピクリと反応した、シャルル自身も焦らされていたので辛抱できなかったというのも本音なのだが、それは隠しておく。
「いや、待ってくれ……俺はまだ君の名前を聞いていない」
「ん? そう言えばそうだったな、でも必要か?」
「それはそうだろう、これから抱く女の名前くらいは知っておきたい」
「あはは、娼婦の名前なんて知ってもあんまり意味はないぞ、まぁ知りたいんなら教えるけどさ……ワタシの名前はシャルルだよ」
「そうか、シャルル……色々と面倒をかけたな、初めての相手が君で良かったと俺は思う」
「なら良かったよ、抱かれたかいがあるってもんだ」
二人はそこでどちらともなくキスをした、啄むようなキスを何度も繰り返して、最後には舌を絡め合う。
そして理性や思考を静かに沈めてただ交わりあう、青年は何度もシャルルに射精して、シャルルもまた限界までそれを受け入れた……溶け合うような甘い交わりは終わることなく続いていくのだった。
性愛の神様と娼婦の神様への祈りは欠かすことが出来ない、特に信心深いエミリーにとって娼婦として働く時は不可欠な祈りになるのだろう。
娼婦の神へ祈れば僅かばかりだが男女の交わりが上手くなるような気がするし、性愛の神に祈れば得られる快楽は増えて苦痛が少なくなるような気がする。
そう、気がするだ、目に見えるような変化ではないのだがそれでもエミリーにとって祈りは重要な物であった。
与えられる恩寵は決して多くはない、しかしそんなことは関係がないのだ、重要なのは信者である自分が神々と繋がっている実感でありその結果としてのお恵みなのであって、力の強弱はあまり関係が無い。
ほんの僅かで構わない、少しばかりの慈悲を持って神々の力の欠片でも貸し与えてくれるのなら、神に仕える者としてこれ以上の幸福はありえないのだ。
娼婦であろうと、傭兵であろうと、役者であろうと、どんな時でも彼女は祈りを欠かすことはなかった。
今夜も同じである、娼婦と性愛の神へと祈りを捧げて自分を買った男との交わりに備えていた、最初こそ気恥ずかしさのあった娼婦としての仕事ではあるが、今となっては慣れたものだろう。
男の服を脱がして互いに裸になって、少し線の細い印象がある体を洗い、そして愛撫を繰り返す。
娼婦の神に祈った影響なのかどうかはわからないが、手や唇での奉仕は毎回評判が良い、胸はまだ成長途中なのでキャラバンの先輩娼婦に教えて貰った奉仕はまだできないが、擦り付けるだけでも喜ばれることはエミリーは知っていた。
「君はまるで聖人ミーシャのような女性だ」
ベットに仰向けで倒れている男がエミリーを見上げながら熱っぽくそう言った、聖人ミーシャの名前は当然ながら彼女も知っていた、その人物は自分の憧れであり目標でもあるのだから。
「んんッ、あぁ……聖人、あんッ……ミーシャですね、アッ、アッ、そんな方と同じにされるのは、恐れ多いです」
男に跨ったエミリーは緩やかに腰を動かしながら男を見下ろす、既に何度も交わっているのだが男の肉棒はまるで萎える気配がない。
口で一回、手で一回、そしてエミリーの膣内に三回、それでも二人は穏やかに交わりを続けていた。
エミリーは本来ならそこまで体力が無いのだが、娼婦の神に祈った影響なのか夜の仕事ではあまり疲れることが無い、妊娠の心配も殆ど必要ないので男の欲望を何度も受け入れる。
娼婦としての仕事をある程度経験したからだろう、余裕が生まれて苦痛や忌避感が薄まってきたのでエミリーは男女の交わりを純粋に楽しんでいた。
生活の為という大義名分があるのだが、彼女自身、慎みがどうのと言葉では否定しようともセックスが嫌いではないらしい。
一時期は自覚の無かった自分の性癖に落ち込んではいたのだが、それはもう吹っ切れたようだ。
今はもうありのままの自分を受け入れている、男に抱かれることも女の柔肌にキスすることも、エミリーは良しとしていた。
「アッ……アッ……あぁぁ……ですが、嬉しいです、んッ、んッ……ミーシャも、かつては、こうして娼婦として働いていたそうですから……やぁん!」
聖人ミーシャ、その人物は遥か昔、神代の時代に生きた聖職者の名前だ。
敬虔な信徒だったミーシャは今のエミリーと同じように巡礼の旅を続けていたと、彼女のことを記した本には書かれている。
巡礼の旅、それは神々に己の信仰を示す儀式の名であり、長い時間をかけて世界中に存在する神の膝元へ祈りを捧げることであった。
しかしそれは単純に祈りを捧げるだけでは意味がない、己の歩んできた道の証明であり、どれだけ神の僕として働いたかを説明する旅でもあるのだ、エミリーが娼婦として働くのも生活費の為ではあるが巡礼の旅の為でもある。
神曰く、世界を回り、様々な苦楽を経験して、多くの幸福を分け与え、己の力の届く限り他者を慈しみ支えて奉仕せよ、信仰の深い信者であればあるほどその神の言葉を重視した徳の重ね方をするのだ。
彼女もまた同様だ、男に抱かれることもまた経験であり他者を幸福にする奉仕であると言えるだろう。
「でも、嬉しいですね……ミーシャみたいだなんて……ふあぁ、こんな、淫らに腰を振る女が、そう呼ばれるなんて……はあ、はあ」
エミリーは腰を穏やかに動かしている、上下から前後へ、そして大きく円を描くように、その腰使いはまだまだ熟練であるとは言えないだろうが、彼女くらいの年齢ならば十分すぎるほどだった。
「謙遜することないさ、信心深い君はまさにミーシャだ」
ミーシャは巡礼の旅の中で娼婦として働くことも多かったという、優秀な魔術師だった彼女ではあるが女の一人旅には危険が付き物であり、後ろ盾もないので生活費を稼ぐのも容易ではない、女の身である彼女がその旅路で娼婦として働いたのも無理はないだろう。
傭兵として、娼婦として、様々な経験と苦楽を味わい、持てんばかりの力で人々に尽くしたミーシャは、旅の終わりに訪れた神の膝元でそれまでの旅路を神々へと報告した時に、その働きが認められて聖人となったらしい。
かつての偉人が辿った道をエミリーは歩んでいるのだ、まだまだ道半ばではあるのだが簡単な旅路でないことは最初からわかっている。
今はただ、己にできる限りの力で徳を重ねていくだけだった。
「あぁ……また、中に出て……ふぁあぁぁッ」
緩やかな腰の動きに応じるように、四度目の射精がエミリーの中に放たれた、股間から背筋にかけてゾクリと甘い快楽が走り抜けて、彼女は抵抗することなくまた絶頂を迎え入れる。
「はぁ、はぁ……あぁ、まだ硬いままです」
「うん、不思議と萎えない……君となら何度でもできそうだ」
「ふふ、性愛と娼婦の神様が力を貸してくださっているのですよ」
固い肉棒を膣内で締め上げると反応が返ってくるのだ、幸いにも夜は長いので時間を気にする必要はないだろう。
エミリーはベットに沈み込む男の頬に手を伸ばしてその唇へとキスをする、腰使いもキスも最初に比べれば随分とスムーズになったものだと自分でも考える。
娼婦としてしっかりと成長できている証だろう、エミリーは少しだけミーシャに近づけた気分になったので嬉しくなった。
未熟な自分とかつての聖人を同じだと言ってくれたこの男性にはしっかりと奉仕しよう、彼女はそんなことを思いながら舌を絡ませて再び腰で円を描く。
「んッ、ちゅ、ちゅ……んん、んんんッ、ちゅ」
夜はまだまだ続いていく、これもまた彼女が歩む巡礼の旅の一幕でしかなかった。