商人と冒険者と娼婦 作:にやまな
アンデットを掃討する為の前線拠点となっている城塞内部には商人たちが持ち寄った品を集めて露店市が開かれていた、この場所に駐屯している兵士や傭兵たちの需要満たす為に様々な品が並べられている。
目立つのはやはり酒類を筆頭に食品だろうか、それに保存食やつまみ、後は甘味など舌を楽しませる物が喜ばれるらしい。
傭兵たちはこの地域を治める予定の国から報酬を得ているので資金も潤沢であるが、現在の小王国郡では金貨や銀貨を持っていてもあまり意味がない、社会や経済が崩壊しているので財布を片手にちょっと買物とはいかないからだ。
店はどこにもない、なので傭兵たちが買物をしようと思えばキャラバンに頼るのが自然な流れであり、商人たちもまた現在の小王国郡で稼ごうと思えば纏まった資金を持つ傭兵たちが相手となる、ここに需要と供給が噛み合ったということだ。
四人娘のキャラバンもまた露店市の一部に陣取って商品を広げているようだ、主な商品は祝福を宿した剣である、それら一つ一つを丁寧に並べて置くとそれだけで注目が集まってしまう。
「うん、衝撃は大きいようですね、好感触ですよ」
「そうなのか? エミリー殿」
「えぇ、本当に興味の無い物には一瞬しか視線を送りませんから、足を止めることすらありません」
「ほう、そういうものか」
「興味を向けられなければ、そのままずっと商品が捌けることなく永遠とその場にあり続けるんです……なんて恐ろしい」
「棚や荷台を占拠し続ける物は確かに邪魔だとは思うが……」
「こうしてちゃんと売れる商品はとてもいい子ですね、ふふふ」
商人として働いた経験がまだ薄いミューにはその恐怖がいまいちわからないようだ、それに対してエミリーは春風のキャラバンでの経験からこやしになり続ける商品の恐ろしさを知っているのだろう。
春風のキャラバンでもあったのだ、一部ではあるがいつまでも荷台を占拠する商品が。
特に美術品に多く売ろうと思っても売れない、いつかは売れるだろうとずっと持っていて、気が付けば年単位の時間が過ぎていることも珍しくはない。
商人たちの間では俗に呪いの品と呼ばれるものである、それに比べればしっかりと売れる見込みのある彼女たちの商品はとても善良に思えた。
必ず利益となる商品のなんと尊いことか、だからエミリーもご機嫌な様子である。
「挨拶回りはシャルル殿とキャロル殿に任せたが、そちらは大丈夫だろうか?」
「慣れているから大丈夫ですよ、私たちはこちらに集中して、ミューさんは用心棒をお願いします。ガラの悪い方も多いので」
「承知した、全力を尽くそう」
こうしてエミリーとミューは商いに精を出すことになった、それに対してキャロルとシャルルは各方面への挨拶回りを担当することになる。
傭兵相手に物を売りつけるのとは異なる考えや行動が必要となるのだが、相手にもよるが幾らかの土産を贈ればそれで済むのが基本と言えるだろう。
贈り物に関しては様々である、相手によって変わるのだがやはり基本は金貨や銀貨だ、状況次第では珍しい美術品などになることもあるのだが、今回キャロルとシャルルが持って行ったのは小さな巾着に入った幾枚かの貨幣である。
あまり多くなくていい、露骨すぎても駄目であった、ちょっとした気持ち程度のものが良いだろう、相手がよほどがめつくなければこれで話はすんなり通るだろう。
意気揚々と姉妹は市場を仕切っている者を探して挨拶に伺ったのだが、彼女たちの掌にある巾着が振るわれることはなかった。
何故なら相手が要求したのは挨拶代わりに用意された数枚程度の金貨や銀貨ではなく、キャロルとシャルルとの逢瀬であったからだ。
彼にとってチャリチャリ音のなる巾着よりも、二人の首にぶら下がる娼婦神の聖印の方が魅力的に映ったということなのだろう。
「それよりも一晩相手をしてくれる方がありがたいなぁ」
男は挨拶に来た二人の足から頭まで観察して、最後に胸の中央で輝く聖印を見て悪びれることもなくそう言ったのだ。
「この辺はまだ復興が始まったばかりな上にいかつい男たちばかりで溜まるばかりであるからな、どこぞの娼婦でも呼ぼうかと考えていたんだ」
そんなことを考えていると都合よく二人が挨拶に来た訳である、しかも聖印を持っている最高級娼婦である、本来なら予約を入れて長い時間を待たないと相手をしてもらえない存在である、男ならば飛びつくことはおかしくない、寧ろ自然と言えた。
「ワタシらはここの市に参加したいんだけど」
「ん……許可は貰えるの?」
「勿論だとも、商いは大歓迎だ、なにせそれが復興の第一歩なんだから」
そんな話が三人の間で交わされて、シャルルは差し出した巾着を懐にしまうとそのまま妹と一緒に男の要求を呑むことになった。
許可が貰えるのならば良しと思ったのだろう、挨拶代わりの贈り物が金貨から自分たちに変わっただけと考えたのかもしれない。
「とりあえず私の部屋に来なさい、あまり広くはないがこの城塞内部では最も整った場所であるからな」
聞けば男は貴族であると言う、故郷は小王国郡を囲むように存在している国の一つであり、聖都で行われた会議の結果、この地を統治することになり彼が代官としてやって来たらしい。
市の纏め役というより、この周辺地域の纏め役ということである。
「市に参加したいということだが、何を売り出すつもりなのかね?」
「……武器、とか」
「祝福を宿した武器だな」
「ほう、それは良いな、私が買い取りたいくらいだが……うむ、傭兵たちを雇ったことで資金が足りそうにないか、残念だ。まぁ、結局傭兵たちに与えることになるのだから一緒であるか」
城塞内部を歩きながら様々な者たちとすれ違い、それでも徐々に彼の私室へと近づいていく中でそんな話も聞けた。
彼がここの傭兵たちを集めて契約を結んだということだ、そしてだからこそ傭兵たちの財布は太っているということである、祝福の武器はきっと売れるだろう。
「さて、ここだ、入りたまえ」
城塞の最も奥、司令官が使うであろう堅牢な石造りの部屋へと案内されたシャルルとキャロルは、中へ入ってまずはベッドの感触を確かめる。
部屋はあまり広くはない、個人の私室としては十分ではあるが貴族の部屋とは思えないほどに調度品が少ない、机と椅子とベッドがあるだけであり、寝て起きる為だけの部屋という印象を与えた。
実際にその通りの場所なのだろう、ここは要塞内部であり城ではないのだから、豪華さとは無縁なのかもしれない。
元より軍事施設である、兵舎はあっても高級宿のような設備は存在しないのだ。
ただ男女が交わるだけならば、ベッド一つあればそれで良いとも言えるだろう。
「因みにチップの相場はどの程度なんだ?」
「アンタ娼婦と遊んだことないのか?」
「うむ、男爵家とはいえ貴族であるからな、しかも次男だ、自由に使える金は少ない上に世間体もある、好きにとはいかないとも」
「ん……出張中だから自由にできる?」
「うむ、憚れることもないだろう。こんなアンデット蠢く呪われた地で唯一の楽しみだな。貧乏くじを引かされて代官を押し付けられてしまった時はどうしたものかと悩んだものだがね」
「ふ~ん、貴族ってのも大変なんだな」
まぁその辺りの事情は二人にはあまり関係が無く興味もない、契約は結んだのだから後は娼婦として働くだけであった。
「チップは必要ないよ、市場に参加する権利が貰えるのならさ」
「ん……それで良い」
「おぉ、それはありがたい、さっきも言ったが傭兵たちを雇ったことで資金難でね」
話が纏まった所で、三人はベッドの上に体を預ける、そして慣れた手つきで服を脱がせていく。
さてどうしたものかとシャルルとキャロルは視線を重ねる、戸惑っているのではなくどう奉仕するのかと互いに出方を伺っているようだ。
ただ二人はそれなりに経験を積んだ娼婦である、すぐに呼吸を合わせて男と肌を重ね合わせていく。
「ん……ちゅ」
キャロルは男の口元へとキスをしていた、顎髭を邪魔に思いながらも啄むような口づけを繰り返す。
「ふふ、キャロルがそっちならワタシはこっちだな……んん、れる」
そしてシャルルは男の股間へと舌を伸ばしていく、固くそそり立つそこを唇と舌で奉仕していくのだ。
美しい姉妹による奉仕を受けて男の顔はだらしなく歪んでいる、二人を侍らせることで実家にいる時は得られなかった充実感があるのかもしれない。
「んん~……髭邪魔」
キスをする度に肌を撫でる整えられた髭にキャロルが眉を顰めている、チクチクとした感触がお気に召さないらしい。
「むぅ……キスがしにくい、剃るべき」
「いやいや、これは嗜みの一つなのだよ」
確かに伸ばしっぱなしで放置している訳ではなくしっかりと整えられている、三十代の男と考えれば嗜みの一つであるという言葉は間違いではないが、キャロルの評価は低い。
「良いじゃんか髭くらい、渋くてさ……んッ、んん」
だがシャルルはそこまで気にしていないようだ、彼女は股間に顔をうずめながら亀頭へとキスを繰り返し、手ではしっかりと肉棒をしごいている。
甘味を舐るかのように丁寧に舌先が男の股間走り、睾丸から根元へと移ろい最後に亀頭まで進むと先走りを吸い込むように口へと含む。
「んんッ……んむ、んッ、ん、ちゅ、じゅる」
そのまま頭を上下に動かして男の欲望を刺激していった、巧みな舌使いに堪らず腰が引けている。
「ん……ならこっちにキスする」
キャロルは髭の感触を嫌って男の側面に移動して、耳へと舌を伸ばし始めた、耳たぶを甘噛みして舌先で舐めるのだ。
「はむ、ん、んん、あむ……れる」
男の耳にキスや甘噛みをする度に男の体はゾクゾクと震えるのがよくわかる、肉棒に奉仕するシャルルにもその震えが伝わったのだろう、得意げな顔を浮かべると妹の動きに合わせるかのように奉仕を激しくしていく。
肉棒の奥にある熱の全てを吸い上げるかのような吸引を行って、いっそ下品とさえ思えるほどに舌を動かして吸い込んでいく。
耐え切れなかったのだろう、男は体を痙攣させながら強制的な射精を受け入れた。
「んぐッ!? んんんんッ、んッ、んんッ……うッ、ん、ぷぁ」
「ずるい……私も欲しい」
口内に精液を受け入れた姉の姿を見てキャロルは男の耳元から離れてそちらへ移動する、そんな妹の動きを把握していたのか、シャルルは口内にある精液を飲み込むことなく舌で味わう。
「ん……ちょうだい」
キャロルの両手がシャルルの両頬を支えると、そのまま引き寄せて二人は唇を重ね合わせた。
感じるのは柔らかな唇の感触や舌の艶めかしさだけではない、飲み込まれることなく味わっていた精液もキスをすると流れ込んで来る。
「はぁ、んんッ……ちゅ、ちゅ……んむ、んんん……ぁ、シャル姉、舌、もっと」
「うッ、あ、はッ、んッ、んッ……んんんんんッ!!」
唇を重ね合わせて僅かに空いた隙間から舌を押し込み、互いに突き合うように舌先を動かしながら絡め合い、そこにあった白濁を分かち合っていく。
赤い舌が二人の間で何度も行きかいそこに塗りたくられた精液は糸を引いて掻き混ぜられていた、淫靡な光景を見せつけられたことでベッドの端で男が喉を鳴らしているが、姉妹には届くことはなく、二人だけの世界を構築しているかのようである。
そのまま二人はどれだけ互いの舌と唇を味わっていただろうか、調味料代わりの精液をぺろりと飲み込んでシャルルとキャロルは熱っぽい視線で見つめ合う。
このまま二人だけで情事に進んでしまいそうな表情であるが、この場では客である男がいるのでそのままベッドを独占することはできなかった。
あ、そういえば仕事中だったと、そんな顔を二人してしていると、彼女たちの視線は興奮を取り戻した肉棒へと移ろう。
黄金を注ぎ込んだかのようなキャロルの瞳が、強い活力を見て取れるシャルルの瞳が、熱く滾るそれを舐めるように見つめながら固定されていた。
「ん……まだ頑張れる」
「よしよし、元気なのはいいことだ」
例え固くできなくとも房中術で強制的に固くさせるのだが、相手から自発的に求めて来るのなら手間がかからない。
「じゃあ……しよっか?」
「どっちでも、好きな方としてくれ」
姉妹はベッドの上で膝を付いて男に臀部を見せつけた、股間からは愛液が流れており太ももまで伝っており、柔らかな尻が誘うように左右へ揺れている。
こんな場所ではまず見られないであろう光景に、男は本日何度目かの喉を鳴らすと、シャルルの腰に爪を立てながら己の欲望を押し込んでいった。
「うぁんッ!?」
勢いよく押し込まれた異物の存在感と熱をへその下辺りで感じ取ったシャルルが喘ぎ声をあげ、それを羨ましそうに隣で見ていたキャロルがこっちにもよこせとばかりに尻を左右に振って見せると、男はすぐにそちらへも肉棒を挿入する。
「んッ……くッ……あはッ……これ、良い、これ好き、あッ、あッ」
「キャロル、独り占めすんな……ほら、こっちも空いてるだろ?」
「やだぁ、これ私のッ……あんッ」
「こいつめ、ワタシもいること忘れんなよ」
仕方がないのでシャルルは男に房中術を使って魔術的な道を作り出し、彼の意識や興奮を操って自分へと向けさせた。
あッ、ずるい、とでも言いたげな妹の視線を受けながら、キャロルの愛液でドロドロに濡れた肉棒を己に誘い込むのだ。
「むぅ……ならこっちも」
そしてキャロルは競うように男に房中術を行使する、主導権を奪いたいのだろう。
男からしてみれば見えない力で自分を中心に綱引きをされているような状況であるが、痛みを感じることはなく寧ろ奇妙な満足感のようなものを覚えているらしい。
美しい少女が自分を取り合うような状況を楽しんでいるのだろう、彼の窮屈な人生でこれまで感じなかったことである。
「あッ、あッ、うぁあああッ」
「んッ、んッんんんんんッ」
相手を犯して求めているのははたしてどちらの方なのか、男がその興奮を押し付けているようにも見えるがそれは操られているとも言えるだろう。
どちらにせよ彼女たちは楽しんでいる、旅の娼婦にとっていきずりの男と交わることなど当たり前のことなので、彼女たちにとってはわかりやすい娯楽となっているようだ。
当初の目的であった市場への参加権は記憶の片隅にしかなく、姉妹はただただセックスを楽しんでいるのだろう。
そう言えばと思い出したころには一時間以上の時間が過ぎ去っており、二人はやけにつやつやした顔でキャラバンへと戻るのだった。