※この作品はR-18です。

商人と冒険者と娼婦   作:にやまな

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第六話 資金調達

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 悪漢からの襲撃から逃れる為にルールーの立場や影響力を利用するという作戦は上手くいったようだ、四人娘を襲撃してきたチンピラたちは屋敷に入ってからというもの姿を見せなくなっている。

 

 

 

 帝国に住んでいる者なのだからどんな愚かな者であろうとわざわざ帝国騎士に喧嘩を売るような勢力は存在しない、ましてや相手は精鋭中の精鋭である帝国近衛騎士である、誰が好き好んで戦いを挑むと言うのだろうか。

 

 

 

 路地裏や闇社会で屯しているようなチンピラやゴロツキ、そんな彼らであるからこそルールーには喧嘩を売らない、暴力と言う手段に手を染めることに慣れている者であればあるほどに彼女を恐れるからだろう。

 

 

 

 近衛騎士の主な仕事は皇帝や皇族の護衛、これを第一としながら次に帝城や帝都の守護がある。

 

 

 

 帝都を巡回する警邏兵たちは近衛騎士団の下部組織に当たるのだ、つまりその組織のトップは騎士団長のルールーであった。

 

 

 

 そんな相手にわざわざ喧嘩を売る必要はない、どう考えても利益が合わないのだから商人に雇われたチンピラたちは小遣い稼ぎを放棄していつも通り路地裏で屯することになっていく。

 

 

 

 数日間の間はルールーの屋敷で様子を見ていたのだが、こちらを伺うような者もおらず問題なく安全を確保できたと確信できた段階でようやく外へ出れるようになったのだ。

 

 

 

 ただ問題の全てが解決できた訳ではない、おそらく狙われているであろう妖精の酒が今も手元にあるので、それを処分しないことには今後も隙を見て襲い掛かって来ることが考えられる。

 

 

 

 なので四人娘としてはさっさと売り払ってしまいたい、何なら多少は格安になっても手放してしまいたいほどに厄介な品となっているのだろう。

 

 

 

 だが手放すにしてもアスラ次第といった状況である、こればかりは彼女たちではどうしようもない。

 

 

 

 加えて、夏風のキャラバンにはそろそろ資金が尽きる頃合いである、帝都での活動資金を稼ぐ必要もあった。

 

 

 

 妖精の酒の売却はアスラの返答待ち、荷馬車の中にあった保存食は既に売却済み、手元に残ったのはそこまで大きくない資金だけである。

 

 

 

 四人が不自由なく生活していくには少々足りない額である、もう一週間もすればそこが見えるだろう。

 

 

 

「酒はさっさと手放したいよな、金になるんだし」

 

 

 

 そんな自分たちの状況を鑑みてのシャルルの発言に、隣を歩いていたエミリーが頷きを返した。

 

 

 

「そうですねぇ、秘密裏に処理しても相手はそんな事情なんて関係ないでしょうから、わかりやすく手放したという状況をアピールしたいんですけど……」

 

 

 

「あのアスラって人からの連絡待ちって所か」

 

 

 

 二人はルールーの屋敷の長い廊下を進みながらそんな会話を続けて、最終的には屋敷の主の私室へと辿り着く。

 

 

 

「あッ……あッ……あぁ~ッ」

 

 

 

 扉を開けた瞬間に甘い声が届く、二人の前に広がったのはベッドの上で絡み合うルールーとキャロルであり、その傍らでぐったりとしているミューの姿であった。

 

 

 

「はぁ、朝っぱらからこれかよ」

 

 

 

「ルールーさんは……その、とても元気な方ですから」

 

 

 

 家賃代わりに相手をすることになった四人だが、滞在している間は家主の意向に全面的に従っているようだ、つまりはルールーの興奮をその身に受けて奉仕している状況である。

 

 

 

 種族的な特性なのかルールーはとにかく性欲が強い、彼女たちがやって来てからというもの、暇さえあれば呼び寄せて交わっているような状況であった。

 

 

 

 今回はキャロルとミューの番であったらしい、因みに昨日はエミリーとシャルルが相手をしていた。

 

 

 

「おッ、おッ、イクぞキャロル、其方を孕ませてやるからな、たっぷりと注いでやるッ」

 

 

 

「んんッ!? んッ!! やぁああッ!!」

 

 

 

 娼婦神の加護があるので彼女たちは孕む可能性はほぼ存在しない、生命神の加護を纏った状態でなければまず妊娠することはないのだが、そんなことは知るかとばかりにルールーは孕まそうと精液を放つ。

 

 

 

 実際に妊娠するかどうかはどうでも良いのだろう、そのつもりで射精することを彼女は好んでいるのだ。

 

 

 

 大量の精液を最も深い場所で受け入れたキャロルは絶頂の爆発に痙攣を繰り返している、そのままベッドに体を沈めると荒い呼吸を繰り返す。

 

 

 

 その隣で同じようにベッドに体を預けるミューも似たような状態である、激しい交わりに疲れているのだろう。

 

 

 

「はぁ、はぁ……うむ、次はミューともう一度」

 

 

 

「お~い、ちょっと良いか、そろそろ私らも行動しようと思ってるんだけど」

 

 

 

 ぐったりとしているミューを引き寄せて股を開かせようとするルールーに、シャルルは開け放たれたままの扉をノックしてその音を届かせる。

 

 

 

「んん、シャルルにエミリーよ、来ておったのか……其方らも混ざるか?」

 

 

 

「いや、こっちはこっちで仕事があるんだって……そもそもルールーだって仕事があるんだろ?」

 

 

 

「なんじゃ、もうそんな時間であったか? 全く、ロビンの奴め、いつから手前を引っ張り出せるほどに偉くなったのやら」

 

 

 

 彼女は忙しい、しかもどうやら出張も重なっているらしく遠出が必要なようだ、いつまでも肉欲の宴は続けられないだろう。

 

 

 

 不満が多々あるようだがそれでも責務は忘れていないので、ルールーは服を拾い上げるとそのまま浴槽へと向かって仕事へと備えるようだ。

 

 

 

「手前は暫く屋敷を開けることになるだろうが……其方らはまだおるのであろう? 何か必要な物があれば家令にでも言うが良い」

 

 

 

「ありがとうございます」

 

 

 

 エミリーの礼を受け取ってルールーは浴槽へと消えていく、そこで二人は視線をベッドの上に向けるのだった。

 

 

 

 激しい交わりであったのだろう、体中に精液をこびり付かせた状態のキャロルとミューは余韻に震えながら荒い呼吸を繰り返している。

 

 

 

「キャロル、ミューさん、大丈夫ですか?」

 

 

 

「ん……んん……はぁ、大丈夫」

 

 

 

「あ、あぁ……こちらも、問題はないかと」

 

 

 

 多少の疲れはあるがそのまま倒れるほどではないらしい、本日は彼女たちも資金調達を行う必要があるので眠ってはいられない、彼女たちも風呂に入る必要があるだろう。

 

 

 

 大きな屋敷なので浴槽も複数ある、ルールーが浸かっている場所とは別の浴槽に二人を運ぶと、エミリーとシャルルも朝風呂を楽しんで身だしなみを整えていく。

 

 

 

 体と髪をしっかり洗って服も下着も着替える、そうやって最低限の形を整えた四人はようやく屋敷を後にするのだった。

 

 

 

 予定は多い、まずは酒神会へ行って売却状況の確認だ、アスラの財布事情次第といった所ではあるが、厄介な商品へと変わってしまった妖精の酒はさっさと売却してしまいたいのだろう、金貨五百枚でなくともこの際構わない。

 

 

 

 その次は美術商へ向かって契約の更新である、四人で相談した結果モデルの依頼を引き受けることになったのだ。

 

 

 

 その二つを滞りなくこなせれば纏まった数の活動資金を集めることができる、財布の底が見え始めた彼女たちにとってはありがたい仕事と言えるだろう。

 

 

 

「ん……お酒を売りにいくの?」

 

 

 

 椅子に座った状態でミューに髪を整えられているキャロルのそんな質問に、エミリーはこんな言葉を返す。

 

 

 

「早めにわかりやすく手放したいですからね、少しばかり損をしてでも可能ならば今日中に売却したいと思っています」

 

 

 

「またチンピラに囲まれても困るからな」

 

 

 

 シャルルもさっさと売ってしまいたいのだろう、エミリーと同意見のようだ。

 

 

 

「エミリー殿の話では、あちらは資金不足で売却が難しいとのことですが……まぁ、ずっとこちらで持っているよりはずっとマシでしょうね」

 

 

 

 最早呪いの商品のような扱いになっており、全員が共通して手放したいという意思を共有できているようだ。

 

 

 

 チンピラに囲まれながら帝都で活動など出来る筈もないので、私たちの手元にはもう妖精の酒はありませんとアピールしたい思惑がある。

 

 

 

「ん……それじゃ、行こっか」

 

 

 

 朝風呂を済ませて身だしなみを整えた四人はルールーの屋敷を後にする、自分たちを追う者がいないかと注意深く周囲を観察しながら進んでいるが今の所は問題ないだろう。

 

 

 

 やはり近衛騎士団団長という看板が持つ影響力は大きいようだ、わざわざ喧嘩を売れるような存在ではないと帝都の住民ならば理解している、少なくとも現時点では愚かな脅威は現れていない。

 

 

 

 ならばこの隙にわかりやすく酒を手放す姿を見せておきたい、なので彼女たちが向かうのは帝都の大通りにある酒神会の本店であった。

 

 

 

 手元には酒もある、蛇の守護像にビックリしながらも受付へ向かうとアスラへの面会は簡単に許される、もしかしたら事前に話が通っていたのかもしれない。

 

 

 

 以前にも通された商談室へ案内されて待つことおよそ五分、扉が開くと羽飾りが目立つ帽子を被った青年が姿を現すのだった。

 

 

 

「やぁやぁ夏風のキャラバン御一行だね、お待たせして申し訳ない」

 

 

 

 舞台役者のような朗らかな笑顔を見せる青年は僅かに香水の匂いを漂わせている、それは一歩間違えれば相手に顰蹙を覚えさせてしまうのだが、こういったオシャレが嫌味に思われないような雰囲気を持つ人物である。

 

 

 

 接客に慣れているのだろう、朗らかな笑顔も相まって向かい合う相手に安心を与えるかのようであった。

 

 

 

「エミリー殿とシャルル殿は面識があるよね、そちらの方々はお仲間かな?」

 

 

 

「はい、どちらも同じキャラバンの仲間です」

 

 

 

「ん……キャロル」

 

 

 

「ミューリアンと申します」

 

 

 

「お初に、気軽にアスラと呼んでくれて構わない……いや~、しかし何とも華やかなお嬢さん方だ、役得役得」

 

 

 

 舌がよく回ることも彼の特徴だろう、そんな態度も嫌味にならないのは素直に凄いと思うしかない。

 

 

 

「さてさて、要件はわかっているよ、妖精の酒の件だね?」

 

 

 

「えぇ、実はちょっとした面倒事が舞い込んできましたので、多少損をしたとしても早めに手放したいと考えています」

 

 

 

「それなら丁度良かったよ、こちらも資金をなんとか工面できてね、そちらに損することなく払うことができそうだ」

 

 

 

 それは朗報であった、厄介な商品と化してしまった酒をさっさと売り払う為に損失を受け入れる覚悟をしていたのだ、満額が支払われるのはこれ以上ないくらいに嬉しい状況である。

 

 

 

「色々と顔を出して資金調達をしていたんだけどなかなか上手く行かなくてね、そんな時にとある知人に話を通したら快く提供してくれたんだよ。いや~、持つべきものは懐の深い友人だよ」

 

 

 

 そういってアスラは近くに控えていた従業員に合図を送ると、丸々と太った革袋を持ってこさせる。

 

 

 

「一応、中身の確認を頼むよ、枚数が多いのでね」

 

 

 

「はい、わかりました」

 

 

 

 革袋の紐が緩められると同時に机の上には黄金の輝きが零れ落ちた、酒瓶一つに付いた値段は帝国金貨五百枚である、簡単に稼ぐことはできない金額であることは間違いない。

 

 

 

「おぉ、なんかあれだな、一気に金持ちになったな」

 

 

 

「ん……凄い金額」

 

 

 

「額が額だから集めるのに苦労してね、咥えてちょっとした問題もあって金貨の扱いには苦労しているんだ」

 

 

 

「問題ですか?」

 

 

 

「そう、大問題さ」

 

 

 

 エミリーの疑問にアスラが答える、それは帝国で流通している金貨の一部が偽物であるという問題であった。

 

 

 

「実は帝国では通貨の偽造が流行っているようでね、一部の金貨はその偽造された物のようなんだ」

 

 

 

「通貨の偽造なんてどこでもやってることじゃん、そんなに深刻なことか?」

 

 

 

 シャルルはイマイチ大きな問題であるという認識が持てないらしい、彼女の言う通り通貨の偽造はそこまで珍しいものでは無いからだろう。

 

 

 

 悪いことを考える者はどこにだっている、多少の知識や技術があれば通貨の偽造を行う者だっているだろう、もしかしたら人から人へと渡る通貨だって偽物が交じっているのかもしれない。

 

 

 

 状況や地域によっては偽物とわかった上で使用されている場合もあるだろう、帝国だってそれは変わらない筈である。

 

 

 

「とても深刻さ、何せその偽造金貨は本物と全く区別がつかない代物だからね」

 

 

 

「とても凄い精巧な偽造技術ということでしょうか?」

 

 

 

「いや、そんなわかりやすい物じゃない、完全に完璧な偽造さ、重さも含有量も姿形も完璧な金貨だ、限りなく本物に近い……いや、本物の偽造金貨さ」

 

 

 

 本物の偽造金貨という矛盾した表現に四人娘は首を傾けている。

 

 

 

「君の言う通り普通の偽造ならばまだ可愛い物さ、問題なのは完璧な偽物を製造する意味が無いのにわざわざ作って流通させていることさ、一体何の為に? 何の得があって?」

 

 

 

 偽造通貨は敢えて本物の通貨とは僅かな違いを作るという、それは本物と偽物をわかりやすくする為である、偽造する側もその方が管理が簡単という理由だからだ。

 

 

 

 偽造と言うのは本物でないということに価値がある、完璧な偽造に至った段階でそれは本物になってしまうのだから意味が無くなってしまうのだ。

 

 

 

 だというのに本物と同等の偽造を行っているというのなら、それはもう通貨の正常製造となってしまう、一体なんの意味があるのかと疑問に思うだろう。

 

 

 

「そんな妖しい通貨が流通しているんだ、何の理由や徳があってのことかはわからないけど、警戒すべきだろう? おかげで資金調達にも難儀することになるから面倒だよ。君たちも帝国で商いをするのなら気を付けるといい、おつりをうけとったらそれが本物の偽造通貨かもしれないからね」

 

 

 

「ん……どう見分けるの?」

 

 

 

「確かに、差が無いのであればそれはもう本物と金貨になってしまいますね」

 

 

 

「そこは我々も苦労していてね、なにせパッと見ではわからないから、魔術師に依頼しているんだよ。聞けば魔術師の目は普通の人よりずっと多くの情報を観測できるらしくてね、最初に偽造通貨を発見したのも帝国学院の魔術師なんだ」

 

 

 

 なるほどとエミリーは納得した、彼女にとってそれは説得力のある説明だったのだろう。

 

 

 

「ならエミリーやミューに任しておけば偽物を掴まされることも無さそうだな」

 

 

 

「ん……大丈夫」

 

 

 

「おや、そちらの二人は魔術師なのかい? 確かにそれなら安心だろうね。ただ気を付けた方が良いのは間違いない、どんな理由で流通しているかわからないから、どんな目的なのかもわからない、帝国の商人組合なんかでは商いをする時にはそれとなく注意を促しているんだ」

 

 

 

 アスラが四人娘に偽造通貨の話をしたのはそんな事情もあってのことだろう、まだ大騒ぎにはなっていないが近い内に帝国中の商人たちが知ることになるのかもしれない。

 

 

 

「まぁ僕からは以上かな、こうしてせっかく商いができるんだから話しておきたくてね。ここにある金貨は全て間違いなく綺麗な物だからそこは安心してくれたまえ」

 

 

 

「わざわざありがとうございます、偽造金貨に関しては私たちも気を付けましょう」

 

 

 

 これから帝国で活動していくのなら無関係でもいられない問題である、それを取引相手だからという理由で教えてくれたアスラにエミリーは感謝の言葉を返すのだった。

 

 

 

 呪いの品になり始めていた妖精の酒も手放すことができた上に損することもなく満額が支払われた、帝国での活動資金を集める滑り出しとしては上々だろう。

 

 

 

 そして次はモデルの依頼もこなさなければならない、そちらでもある程度の稼ぎが見込めるので彼女たちのやる気は十分である。

 

 

 

 帝都での活動資金を得る目標は順調であると言えるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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