商人と冒険者と娼婦 作:にやまな
一抹の不安を抱えながらも、商品が荷台にあるのならそれらを売り払わなくてはならないので、彼女たちには進む以外の選択肢がない。
西部方面に足を延ばしてそこで縁を作る、それが目的であると同時にアスラからの依頼もあるのだ、嫌な予感があっても引き返すことができないだろう。
信頼は金貨の山より価値がある、そう思ったからこそ荷馬車は進路を変えることもなく西部方面へと向かうのだった。
丘を越え山を越え、川にかかった石橋を踏み、幾つかの宿場町を経由して商品を入れ替えていく、そんなことを繰り返す度に荷台の商品は減っていき代わりに財布代わりの革袋は膨らんでいった。
ただやはりと言うべきか帝都ほど新通貨は流通していない、地方にも情報は届いており両替は推奨されているのだが、新通貨が普及するにはまだまだ時間がかかるだろう。
彼女たちの財布に入っている通貨の三分の一ほどが新通貨である、残りは全て旧通貨でありつまりこれはそのまま地方での新通貨の流通量を表しているのだ。
この短い間に、三分の一にまで普及させたこと自体が賞賛されることなのかもしれない、よほど正体不明の偽造通貨を嫌っているようだ。
古い通貨は金の購入に充てて消費するしかないだろう、わざわざ帝都に持って帰って両替する必要はないと二人は考えたらしい。
はぐれ悪魔とでも呼ぶべき存在との接敵もあれ以来は起こっていない、西に近づくに連れてうじゃうじゃと湧いてくるのかと思っていたが、想像よりもずっと平和な光景が広がっていた。
周囲一面に広がる麦と芋の畑がよく目立つ、賊が出る訳でもなく立ち寄った村や地方都市も余所者を排除するようなこともない、内心はどうであれ歓迎する様子を見せるくらいには落ち着いた情勢である。
それともこの辺は独立心がそこまで高くないからなのか、何であれ治安が良いのなら商いもやりやすいのでシャルルとキャロルにとっては歓迎すべき状況であった。
「キャロル、今日はこの辺で休もうか?」
「ん」
地方都市から地方都市へと移ろう中で、地図を見ながら距離や必要な日数を計算したとしても上手く日暮れまでに辿り着けないことは多い、特にそれが初見の地域であれば予定が狂うことなどよくあることだろう。
二人も日暮れまでには都市と都市の間にある宿場町辺りへ辿り着けるものだと思っていたが、今は星と月がよく目立つ夜となってしまっているのに、まだ町も村も見えてこない。
もしかしたら次の丘を越えたら見えて来るのかもしれないが、暗闇の中を進むのも不安があるので本日は野宿をすることにしたらしい。
旅に生きていれば野宿など当たり前なので特に抵抗がある訳でもなく、国道から僅かにそれた場所で準備を始めた。
周囲に広がるのは麦と芋の畑ばかりである、喧噪も少なく静かなものだ。
荷台に積んであった天幕の骨組みを組み立ててその上に布を被せるだけの簡単な拠点を作り上げ、その近くに篝火を築く。
準備などそれくらいで終わりであった、後は干し肉を篝火で炙るくらいだろうか。
「……明日には都市も見える?」
「見えるだろ、地図で見た限りだとそこまで離れてないだろうし、ちょっとだけ見通しが悪かっただけさ」
よくあることである、ましてや二人にとって帝国西部は初めて訪れる地域である、土地勘が薄いのだから都市や宿場町の距離感を見誤るのも当然であった。
「まぁ野宿も良いさ、宿代が浮くからな。ほら、肉食え、肉、キャロルはもっと体を大きくしなきゃな」
「むぅ……シャル姉が大きすぎるだけ」
主に胸の大きさにこの姉妹は大きな差がある、シャルルの発言は別に皮肉っている訳ではなく純粋に華奢な妹を思ってのことなのだが、キャロルはそうは受け取らなかったらしい。
以前はそこまで大きな差は無かったのだが、離れていた二年の間に発育の差は顕著となった。
シャルルだけでなくエミリーも同様である、ミューはそこまででもないが背が高くスラリとした肢体はしっかりと美しい。
華奢で幼さの残る体は自分だけかと、密かな劣等感を感じていたのだろう。
だからなのか悔しさを飲み込むかのようにキャロルは差し出された肉を貪る、そしてチーズにも手を付けた。
そんな妹の様子にシャルルは朗らかに笑っている、あまり四人でいる時は見せない表情ではある、彼女は彼女で姉妹二人きりでの時間を楽しんでいるのだろう、妹に世話を焼く姉のような様子なのだ。
そしてキャロルもまた四人でいる時とは異なり、どこか妹らしく甘えているようにも見えた、エミリーやミューがいないからこその姉妹の時間なのだろう。
仲間として過ごすのとは少しだけ異なるが、これもまた親愛の時間であった。
ただ少しだけ、この姉妹の親愛は深いものであるのだろう。
「ん……んん~……シャル姉」
「こらこら、どうした?」
「ん~」
食事をしてから少しだけ酒を飲んで少しあと、酔いが回って来た段階で身を寄せ合っていたキャロルが甘えるように頬へ唇を寄せて来た。
完全に酩酊している訳ではないだろう、だが酒の力も合わさった上に二人きりと言う状況が普段とは僅かに異なる積極性を生み出したのかもしれない。
姉の体に抱き着いて頬へキスをする、くすぐったそうに身を捩るのだが逃がさないとばかりにキスを繰り返していった。
普段よりずっと甘えた様子にシャルルはやれやれと言わんばかりに眉を下げた、そのまま突き飛ばす訳にもいかず、そのつもりもなかったのでキャロルの唇を受け入れていく。
そう言えばいつもはエミリーやミューがいるから二人でというのはあまり無かったな、と考えた段階で二人の唇は重なり合う。
「……ちゅ……あむ……はぁ、シャル姉とするの、落ち着く」
「んん……ふ……そうか? エミリーやミューとするのと大差ないだろ」
「ん~……あの二人とするのも好き、うん……気持ち良いから……でもシャル姉とするのは気持ちよくて落ち着く、不思議」
抱擁を交わして頬擦りをしてくる妹の後頭部を撫でながら、シャルルはキャロルの言葉にどこか納得しているようだ。
きっと彼女も同じ思いが心のどこかにあるのだろう、エミリーやミューと交わることは決して嫌いではないのだが、やはりキャロルと睦み合うのはどこか落ち着くのだろう。
半分とはいえ血が繋がっているからなのか、仲間とは異なる繋がりがあるから魂が近いのかもしれない。
シャルルは体が火照りだしたことを感じ取って、その熱が抱きしめる妹からも伝わり、その華奢な体を抱き上げて周囲に広がる麦と芋畑から隠すかのように簡易天幕の中へと連れ込む。
それほど多くない骨組みに布を被せただけの天幕はとても狭くて頼りない、本当に寝る為だけの場所であるのだが、多少窮屈でも二人だけならこれで十分であった。
狭い空間で二人は再びキスを繰り返す、そんな両者の姿を天幕の入口付近にある篝火の明かりが照らしていた。
「はぁ、ん、んん……ちゅる、ちゅ」
「んんんッ……あん、シャル姉……もっと舌伸ばして……はむ」
天幕の中で唇を重ねて舌を絡め合う、互いの唾液と熱を交換しあうかのように激しく求めあい、呼吸すら忘れてしまったかのように貪り合っていく。
そんなことを数十秒は続けただろうか、さすがに限界を迎えたのか酸素を求めて互いの唇が唾液の糸を引きながら離れてしまう。
「ぷはぁッ……はぁ、はぁ、激しすぎるだろ」
「ん……そっちも、いつもよりねちっこかった、おじさんみたい」
「嫌な言い方すんな、お前がしつこくキスしてくるからそれに合わせてたんだよ」
そんなことを言い合いながら二人は互いの衣服に指を引っ掛けて肌を晒していく。
薄暗い天幕の中を篝火が少しだけ明るくしているので、少しだけ汗ばんだ二人の白い肌が垣間見える。
シャルルが地面に引いた毛布に背中を預け、そこに覆いかぶさるようにキャロルの華奢な体があった、別に決まった形がある訳でもないのだが今日はそういう流れになったのだろう。
優し気な表情で見下ろしてくるキャロルを見つめ、両手を広げて迎え入れる体勢になると、キャロルは背筋を震わせながらへその下辺りを撫でまわして、房中術を構築していく。
大樹海を彷徨っていた頃にミュー相手に散々試した魔術なので手間取ることもない、元々そこまで難しいものでもないので男の欲望を形にするのも慣れたものであった。
この肉棒で姉を凌辱する、そんなことを想像するだけでキャロルの体は甘く痺れてしまう。
同性愛を好むエミリーのことをあまり馬鹿にできなくなってきたこの頃だ、ただ一度でも味わってしまえば簡単に抜け出せるようなものでもない。
女の快楽は勿論好きだが、男の快楽も良い物だ、毒のように、或いは麻薬のように体に広がって、今となっては嗜みの一つになっているのかもしれない。
作り上げた肉棒を姉の蜜壺へ押し当てた瞬間に背中を走る痺れといったら、堪らない甘さを含んでいることをキャロルは知っている。
「はぁ、ん……入れるね、ふぁああぁッ」
「うッ、うあぁッ」
キャロルが腰を押し出すと亀頭が膣口を徐々に押し開いていく、あまり愛撫はしていなかったが激しく深いキスを繰り返したことでしっかりと熱を持っていた。
これならば苦痛は感じないだろうとそのまま腰を押し込み、最も奥にまで欲望を届かせていく。
「あッ、あぁッ……体は、ちっちゃいのに、こっちはあいかわらず凶暴だな」
「むぅ、ちっちゃいは余計……んッ、んッ!!」
「うぁああッ、あッ、あッ、待て……んんんッ」
シャルルの言葉にキャロルはわかりやすく怒りを露わにした、仕返しとばかりに荒く腰を振ると姉は途端に甘い声を聞かせてくれる。
そんな様子にキャロルは唇の端を舐めて見せる、例え馬鹿にされようともすぐに鳴かさせる立場にあると認識して余裕が出て来たのだろう。
「はぁ、はぁ、あッあッ……うッ……馬鹿にしちゃダメ……おッ、おッ……セックスしてる時は、犯してる方が、偉いんだからッ」
「な、なんだそれッ……うおッ、おッ……ま、まて、待て待てッ、激しいって……んやああッ!!」
徐々に腰使いは激しく荒くなっていく、膣壁を引っかきまわして子宮を押し上げ、愛液を絡めとりながら引いていく。
その度に淫靡な音が簡易天幕の中に幾度も響く、肉と肉がぶつかり合い、粘液が掻き混ぜられるそれは耳朶から脳を溶かすかのような甘い熱が込められている。
薄い布を骨組みに被らせているだけなので中で何が行われているのか簡単にわかってしまうが、周囲で聞き耳を立てているのは麦と芋畑だけなので心配ないだろう。
「ぅんッ……はぁ……ちゅ~しよ」
「あッ、んんんッ……あむ、ちゅる……はぁ……ぷはぁッ……ちょっと待てぇ……キスしながら、動くなぁッ!!」
「ん、や……んんッ、馬鹿にしたからッ……はむ、ちゅ、れる」
「んむ、はん……んむううううッ!!」
グッと上半身を傾けてシャルルの唇へとキスをする、更に彼女の両手首を掴んで床に押し付けると、その状態で激しく腰を振るっていく。
唇を塞がれているのでくぐもった声が響いていた、そんな姉の弱弱しい声に妹は気分を良くしているのか腰の動きは速まるばかりであった。
華奢な体に似つかわしくない凶暴な肉棒はシャルルの最奥を何度もノックしており、これでもかと愛液を纏わりつかせながら卑猥な音を立てている。
攪拌された愛液は泡立って白濁しており、それはたっぷりとキャロルの肉棒に絡めとられてねっとりとした糸を引いていた。
「あぁ~……あぁ~ッ」
いつしかシャルルの口からは快楽に蕩けきった甘ったるい声ばかりが漏れ出るようになっていた、浅い絶頂を何度も繰り返しているのか体は痙攣を繰り返しており、興奮と熱に染まり切った表情はなんとも淫靡である。
「ふッ……んッ……んんッ……はぁ、はぁ……あッ、あッ……イクッ……うッ……あんッ」
キャロル側も限界が近いらしい、シャルルを地面に押し付けながら激しく腰を振っており、自らの興奮を奥へ奥へと押し込もうとしているかのようだ。
「ひぐぅッ!?」
子宮口を力強く押し上げられた瞬間にシャルルは首を絞められたかのような反応を返した、そして同時にこれまでとは異なる大きな快楽の爆発を感じ取るのだった。
「あッ……イクッ、イクね……出すからね、シャル姉・・・・・あッ、あッ、あああああッ!!?」
痛いくらいに締め付けて来る蜜壺に、キャロルは堪らず精液を解き放つ。
「「~~~~~~ッ!!?」」
どちらも快楽を爆発させると同時に声にならない叫びを天幕に響かせていた、心臓の脈動に合わせるかのように体は跳ね上がりそれは数分に渡って続いていく。
そして徐々にその脈動は弱まっていき、快楽の波が完全に引いた瞬間に両者は呼吸を思い出した彼のように肩を揺り動かした。
深く長い深呼吸が数え切れないほどに繰り返されて、それがようやく収まるとキャロルは体を脱力させて下にいた姉の豊満な胸へと顔を沈める。
シャルルはそんな妹の後頭部に手を伸ばして髪を撫でる。
心地よい熱とが広がる体は汗ばみ甘い痺れも残るが、そんな余韻を共有する二人はとても穏やかな顔をしているようにも見えるだろう。
どちらもくすぐったそうに身を捩りながら、余韻を楽しむように頬や額へとキスを繰り返しており、そこには確かな慈しみが感じられた。
いつもならばここでエミリーかミューに相手が変わって盛り上がるのだが、今日は二人きりなので後戯もたっぷりと時間をかけているらしい。
啄むようなキスや指先での慈しみはいつまでも続いていく、それこそ体に宿った興奮や熱が抜けていくまで。
そういった時間はセックスをして互いの興奮を重ねている時とは異なる、不思議な充実感を与えてくれるものだ、激しく爆発しそうな快楽も勿論のことながら好きなのだが、こういった時間も同じくらいに心地いい。
そんな時間を過ごして溶け合うこと十分ほど、体の中に残っていた僅かな熱を引いて落ち着き始めた頃に、キャロルの耳が天幕の外に生まれた異音を拾い出す。
彼女が聞いたのは羽ばたきの音だ、なんだろうと天幕の外へ視線を向けてみると、そこには篝火に嘴を突っ込んで食事をしている不死鳥の姿があった。
「ん……ヘステアだ」
「お~、よくワタシらの場所がわかるな」
「ピ―ッ、ピッ、ピッ!!」
篝火を食べると言う行為に驚きながらも、ヘステアがここに来た理由はそこまで不思議ではない。
エミリーが始めたことなのだが、ヘステアを伝書鳩のように使って情報や報告のやり取りをしているのだ。
不思議なことにこの不死鳥はどれだけ距離が離れていても手紙を届けてくれる、今のように離れて行動している時はとても重宝しているのだろう。
「エミリーとミューから手紙だ、ん~と……帝都の方は大きな問題も無いみたいだな」
ヘステアの背中に付けられた小さな鞄の中を覗き込むと、エミリーたちの近状が書かれた手紙が姿を見せる、書かれている内容も穏やかなものであったようだ。
シャルルとキャロルも返信の手紙を背中の小さな鞄へと入れる、そしてご褒美にとおやつ代わりの燻した豆を与えると、ヘステアは喜んで啄む。
離れていてもこうして意思を伝えることができるのだから、なんとも便利なものである、エミリーなどはこれを機会に本格的な契約魔術を学ぶ気でいるらしい。
「ん……よろしくね」
「ピィ~~ッ!!」
手紙を受け取り、豆を食べきったヘステアは再び夜空へと飛び立つ、そんな神々しい姿を見送った二人は少しの肌寒さを覚えて天幕の中へと引っ込む。
「そろそろ寝るか? 明日も早いんだから」
「ん……腕貸して」
「ほら」
差し出された腕を枕にしてキャロルは眠りにつく、そんな妹の姿にシャルルは微笑むと、彼女もまた静かに瞼を閉じる。
二人での旅はまだ始まったばかりである。