※この作品はR-18です。

商人と冒険者と娼婦   作:にやまな

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第二十話 帝国西部 5

 

 

 

 

 

 

 

 

 帝国西部、特に最西部地域がどんな所なのかと問われると、金と農業が盛んな地域と多くの者が答えるだろう。

 

 

 

 帝国の領土として組み込まれる前から豊富な鉱物資源を有していた為にとても裕福で富の多い土地であると言えた、ただその豊かさにかまけてそこにしか寄る辺を作れなかったことから国力自体はそこまで大きくはなかった。

 

 

 

 良くも悪くも鉱山資源頼りの国であった訳だ、本当にそこだけが突出していて他が疎かであった為に戦争に巻き込まれたと言っても過言ではない、足りない食料は他所から買えば良いと雑に考える者が国を運営していたのだから国家自体が非常に大雑把な歩みを刻んでいたのだろう。

 

 

 

 戦争になった途端に様々な脆弱性が露見して国土が散々荒んだ結果、紆余曲折を経て帝国の傘下に入ったのが先代皇帝の頃である。

 

 

 

 当時の帝国上層部は眉間に皺を寄せながら国土の回復に勤しんだことだろう、傘下に加えた以上は食わせていかなければならないからだ。

 

 

 

 幸いなことに資源は豊富な地域である、そこから生み出される富を資金として抜本的な国家の再構築が行われたらしい。

 

 

 

 具体的には帝国で盛んに行われていた芋や麦の生産を最西部地域でも実行したのだ、森を切り開き荒れ地を耕して広大な農地を作る、やったことはその繰り返しだ。

 

 

 

 鉱山資源一辺倒だった国はこうして広大な食料生産地ともなった訳である、それから半世紀の時間が過ぎ去れば、帝国でも有数の農業地帯であると同時に豊富な資源が眠るとても豊かな土地となった訳である。

 

 

 

 食い物が豊富で資源も大量に掘り出せるのならば、極めて安定してなおかつ豊かな土地として歩んでいけるだろうという帝国の思惑は、事実としてそうなった。

 

 

 

 半世紀という時間が過ぎ去ればかつての大きな戦乱の傷跡もすっかりと消え去り、最西部地域は豊かな資源で溢れて広大な農地が広がるそれは豊かな土地となっていた。

 

 

 

 それは同時に、かつてここにあった筈の国家や地名も人々の記憶から薄れていくということだ、傷跡と一緒にそこにあった筈の歴史も消えてしまったのだろう。

 

 

 

 今となっては、かつてこの最西部地域に王朝があったことを覚えている者は少ない。

 

 

 

 大半の者が帝国国民として生まれて育っていく位には帰化が進んでいる、食料に困ることも無ければ資源も豊富なのでとても穏やかに過ごせるだろう、そういった多くの市民たちの記憶の中にかつての王家はどこにもない。

 

 

 

 せいぜい、年寄りたちの昔話で聞かされる程度であり、帰属意識の実感を持つ者は少ないだろう。

 

 

 

 彼らは今日もまた帝国国民として生きて働いていく、昨日と同じようにだ。

 

 

 

 豊富な鉱山資源から生み出される金、それを加工して様々な金細工が作られており、その意匠の大半が帝国風となっていたり、生み出される金貨には帝国の紋章が知るされる。

 

 

 

 かつてここにあった筈の王家の印を知る国民は、きっと少数派だ。

 

 

 

「おぉ~……凄い」

 

 

 

「そうだな、聞いてた以上だ。あちこちに金が溢れてる」

 

 

 

 そんな帝国最西部地域にある、最も大きな地方都市の大通り、かつては王都であったこの場所で、シャルルとキャロルがキョロキョロと顔を動かしながら賑わいに驚いていた。

 

 

 

 王都の大通りなのでその賑わいは帝都にも負けてはいない、さすがに人の数でみれば負けているだろうが活気という点ではとても華やかである、右を見ても左を見ても露店が広がっておりそれ以上に多くの金細工が並べられている。

 

 

 

 多くの金が産出できる地域なのでとにかく金細工が多い、また職人の腕も良いからなのか精巧な意匠も多くとても手が込んでいる、店に並べられた何気ないものでも美しい掘り込みがあるのだ、道行く商人などが興味深そうに眺めていた。

 

 

 

 シャルルとキャロルもそんな中の一人である、元々最西部地域には金の購入目的で来たので彼女たちも金には大いに興味があるのだろう。

 

 

 

「やっぱり金細工は結構高いな」

 

 

 

「ん、まぁ……金だから」

 

 

 

「手持ちの資金でどれくらい買えんだろ?」

 

 

 

「金細工はいらない……高いから」

 

 

 

「そりゃそうか、手間のかかってる金細工よりも砂金でも買った方が安く済むか」

 

 

 

 職人たちが手間暇かけて作った金細工はこの地方の名物ではあるがやはりその手間分の値段が上乗せされているので少し高額だ、彼女たちはその身を豪華に飾り付けたい訳ではないのでそちらには興味が無いらしい。

 

 

 

 それよりも金そのものを手に入れたい、これだけ金の流通が太い地域なのだから金細工だけでなく砂金や金塊などがそのまま取引されていても不思議ではないだろう。

 

 

 

「ん……でも、金より先に、仕事を終わらせないと」

 

 

 

「傭兵業の報酬を貰ってからゆっくり金を集めるか」

 

 

 

 色々と興味を惹かれる物が多いが、現在の彼女たちの身分と立場は騎士団に雇われた傭兵である、金を集める前にやるべきことを成さねばならない。

 

 

 

 しかしそれは雇い主である騎士団、それもルールーやロビンフッドの都合や方針が大きく影響してくるだろう。

 

 

 

 そしてその二人は今、この地方都市の代表者と面談を行っているらしい、政治の場なのでシャルルとキャロルが活躍できるような余地はない。

 

 

 

 実際に彼女たちはとても暇をしているのだ、傭兵として雇われていたが思っていたほど最西部地域の治安はとても良い、活躍の場が無いままこの地方都市までやって来て大通りを見物するくらいには暇を持て余しているのだろう。

 

 

 

 彼女たちだけでなく同行していた騎士団員なども同様なのか、暇を持て余している男たちが帝都に帰還した時に恋人や家族への土産のつもりなのか、しきりに金細工を眺めては露天商に進められている光景が至る所で発見できてしまう。

 

 

 

 誰も彼もが暇なのだ、この地方領主と交渉中であると思われるルールーやロビンフッドを除けばだが。

 

 

 

 騎士団の指揮官である二人は他の者たちと異なり多忙のようだ、立場も身分もあるのでどうしたって様々な場と相応の振る舞いが求められる。

 

 

 

 ルールーなどは普段は粗暴で雑で戦闘狂な部分が目立つが、あれでも帝国では卿の地位を得ている、貴族的な交渉の場に呼ばれることなど慣れているはずだ。

 

 

 

 ただ慣れているだけで荒もなくこなせる訳ではないのだが、さすがにあの非常識な鉄塊を苛立ちと共に振り回さないくらいの分別だって持っている――そう判断されたから近衛騎士団の長という立場に就けたのだろう。

 

 

 

 おそらく、たぶん、なんとか、今も己の責務を全うしているはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ロビンフッドは自分の背後から聞こえて来る「トントン」という軽い音を聞きながら冷や汗を流す。

 

 

 

 少しだけ振り返ってみると同僚であるルールーが会議室の扉に背中を預けて、腕を組んだ状態で自分の肘付近を人差し指でテンポよく叩いている様子が見えてしまう。

 

 

 

 トントン、トントン、と貧乏ゆすりを繰り返す指先はさっきよりずっと早くなっている「手前はすこぶる苛ついてるぞ」と、言葉にすることなく主張しているかのようであった。

 

 

 

 敢えてこちらにも聞こえるように指を鳴らすのだから、その音はロビンフッドの正面に座る男にも当然ながら聞こえているはずなのだが、相手はそんな雑音など知らぬとばかりに堂々とした態度を貫いている。

 

 

 

 腹の出た不摂生な体に加えて、長い髭をずっと指先で弄んでいる男だ、お世辞にも見芽麗しくはなく、ポケットの隙間から飴玉でも出てきそうなほどに甘い匂いが漂ってくる。

 

 

 

 ただそれは好意的な匂いではない、どこか顔を背けたくなるような毒にも似たものであった。

 

 

 

「困りますなぁ、いかに高名なロビンフッド卿と言えどそのようなことを要求するなど」

 

 

 

「ロドリゲス卿、私はそれほど無理を申している訳ではないと思うのですが……ほら、皇帝陛下の命令書もありますよ」

 

 

 

 ロドリゲス、ロビンフッドにそう呼ばれた肥え太った男は、ふんッと鼻を鳴らして二人の間に置かれている机の上にあった命令書を眺める、そこには帝国皇帝ランポッサの名前と帝印が記されており、この者に作戦遂行に必要な全てを権利の行使を許すという文言もあった。

 

 

 

 これはつまりロビンフッドは帝国皇帝の命令で動いており、その立場は名代である、帝国皇帝と同等の存在として扱う必要があるということだ。

 

 

 

 そう扱わなければならないほどの、立場と責任があり、皇帝からの信頼があるということである、当然ながら軽く扱えるものではない、普通ならば。

 

 

 

 だが彼の体面に座るロドリゲスは膝を付いて聞き入れる必要があるその命令書から視線を外して、馬鹿にしたかのように鼻を鳴らす。

 

 

 

 豚のようだな、と扉に背中を預けて貧乏ゆすりを続けるルールーは思った。

 

 

 

「だとしても困りますなぁ、いきなりやってきて騎士たちを駐屯させるなど、しかも宿泊施設を寄こせだなんて、帝国は我が国の独立と主権を脅かそうというのですかな?」

 

 

 

 我が国、という部分を強調したロドリゲスに、ロビンフッドは極めて冷静にこう返す。

 

 

 

「ロドリゲス卿、それは大きな誤解があります。我々は任務遂行に必要な当然の要求をしているだけです、そしてここは帝国領土であり貴方はこの地の領主でしかないのです、我が国という発言は中央の者が聞けば眉間に皺を寄せるような発言ですよ……忠誠を疑われかねない」

 

 

 

「……ふん、それは脅しか?」

 

 

 

 肥え太った男は淀んだ視線をロビンフッドに向けて睨みつけると、ただそれだけで巨漢なロビンフッドはへにゃへにゃと揺らめいて硬度を無くす。

 

 

 

 先程まで舐められない様にと強気な姿勢を演じていたらしい、この部屋に入る前にルールーに尻を蹴られて無理矢理気合を入れられたので、最初は上手く行っていたようだが通じないとわかった瞬間にソワソワと視線を揺らめかせている。

 

 

 

 これでは交渉者としては失格だろう、例えどんな状況であったとしても表情から心情を読み取られるなどあってはならないのだから。

 

 

 

 一際大きな体に反して心の方はかなり弱弱しいロビンフッドは、その性根が覗かれてしまっているのかロドリゲスからどうにも軽く扱われてしまっているようだ。

 

 

 

 ただ彼は悪くはない、交渉者としては失格であるのは間違いないが、帝国皇帝の名代と言う立場にあるロビンフッドを軽く扱う方がこの場合は確実に悪いだろう。

 

 

 

 つまりこのロドリゲスという男に、帝国への忠誠心など皆無なのだ。

 

 

 

 この城にも、この部屋にも、帝国の旗はどこにもない、あるのは以前にこの地にあった王家の紋章だけだ。

 

 

 

 中央政権から忠誠心を疑われるというロビンフッドの言葉も、決して間違いではないのだろう。

 

 

 

「そもそも貴公らの主張もよくわからん、悪魔が西からやって来るなんて世迷言を信じろと?」

 

 

 

「は、はい、それは間違いありません。事実、私たちはここに来るまでに幾度か接敵していますから」

 

 

 

「そんな連中はこの辺ではまず見かけんな、そちらが難癖付けて内政干渉をしようと考えているのではないだろうな?」

 

 

 

「そ、そんなことは……そもそも内政干渉も何も、ここは帝国領であって」

 

 

 

「言葉を間違えるな若造めッ!! ここは帝国領ではないッ!!」

 

 

 

 二人の発言が大きく食い違う、根本にある認識がそもそも間違っているかのように話が合わない、それもその筈でこの二人は立場も身分も認識も価値観も異なる、当然の結果と言えるだろう。

 

 

 

 ロドリゲスはこの周辺地域の独立と自治がある妄信して、ロビンフッドはそれは違うと考えているのだから、二人の話し合いはどこまで行っても平行線であった。

 

 

 

 この場合の正当性を持つのはロビンフッド側である、ロドリゲスがどんな主張をしようともこの地域が帝国領に編成されているのは揺るがない事実であり、それも半世紀も前の話である。

 

 

 

 ここはもう五十年も帝国としての歴史を歩んだ地域なのだ、今更独立や自治がどうのと言われても大半の人間が首を傾けてしまう、そんな話をロドリゲスはしているのだ。

 

 

 

 不毛な会話である、強気な姿勢を崩さない男と、そんな勢いにタジタジとなっている男では、気の利いた結論など出る筈もない。

 

 

 

 それを誰よりも早く理解したのはルールーであった、一際大きな舌打ちを部屋に響かせると、彼女は部屋の壁に立てかけてあった鉄塊を片手で担ぎ上げて大股で二人へと近づいていく。

 

 

 

「な、なんだ貴様ッ、ここをどこだと思っておるのだ!? 恐れ多くも王を前にしてなんだそれはぁッ!!?」

 

 

 

「ちょちょちょッ、待って、お願い待ってッ!! いくらなんでも気が早すぎますってッ!!」

 

 

 

「いや、知らん、何も聞こえん」

 

 

 

 いつまでも平行線を辿る会話にいよいよ我慢ができなくなったのだろう、大きな鉄塊をこれでもかと振りかぶっているのだが、それを巨漢のロビンフッドが止めようと抵抗している様子だ。

 

 

 

「はんッ、つまらん脅しは止めよ、こちらがその程度の暴力に屈するとでも思ったのか?」

 

 

 

「貴方は挑発しないでくださいよぉ!!?」

 

 

 

「なんじゃい、脅しだとでも思ったのか?」

 

 

 

 ロドリゲスは武器を振りかぶるルールーの行動を交渉の場で行うポーズのようなものだと認識したのだろう、暴力をちらつかせて話し合いを有利に進めようという一つの外交手段であると。

 

 

 

 よくあることである、外交の場であれば武力を背景にするのは当然であるとさえ言えた、ただ残念なことに彼の認識は極めて浅い位置で迷走していた。

 

 

 

 ルールーと言う戦士はこういった状況で躊躇するような存在ではない、一応は彼女の頭の中にも外交問題だとか交渉の場だとか色々と思い浮かんでいる上に、盛大に額に皺を寄せるランポッサの顔をあるのだが、それら全てをどこかに放り投げて鉄塊を握る手に力を籠める。

 

 

 

 これは冗談でも脅しでもなければ外交手段でもない、ただ相手がムカつくからぶっ飛ばすのだ、それ以上の意味も価値も彼女は見出していない、故に全力であった。

 

 

 

「吹き飛べ豚野郎ッ!!」

 

 

 

 ロドリゲスも眼前に勢いよく迫る鉄塊に、脅しや交渉の気配が欠片も込められていないことにようやく気が付いたのだろう、自分の頭が弾け飛ぶ光景が頭に閃きそれが避けられない現実であることを理解したらしい。

 

 

 

 ただ彼にとって幸運なことに、この場には帝国最高の騎士と称される男がいた、分厚く強固な筋肉と強靭な骨格、そして戦士として鍛え上げた体幹は大きな肉壁となって鉄塊を阻む。

 

 

 

 武装こそしていなかったが両手に装備したままだった籠手が鉄塊を受け止め、広がった衝撃は全身へと分散して何とか耐え抜く。

 

 

 

 あろうことかロビンフッドはルールーが小枝のように振り回す鉄塊をその体で受け止めたのだ、本来ならば籠手越しであっても簡単に挽肉になって当然の威力と重さを持っていたのだが、彼の体幹は揺らぐことがない。

 

 

 

 どんなに幸運であったとしても腕は粉々だろう、しかしロビンフッドは痺れを感じる程度で落ち着いているらしい。

 

 

 

「邪魔するでないッ!!」

 

 

 

「邪魔しますってッ!! マジでやめてくださいッ、絶対に皇帝陛下から怒られますってッ!!」

 

 

 

「皇帝が怖くて戦士が務まるかッ!!」

 

 

 

「何言ってんだこの人ッ!?」

 

 

 

 二度三度と鉄塊が振るわれて、その度にロビンフッドがその体で受け止める、まるで巨大な岩石のような頑強さである。

 

 

 

 鉄塊を受け止める度に大きな衝撃が部屋の中に広がっており、窓ガラスには罅が入っている、相手への配慮が欠片も感じられない攻防は、互いにこの程度では死なないと理解しているからだろう。

 

 

 

「か、帰れぇぇえッ!!? 今すぐここから出ていけぇぇッ!!?」

 

 

 

 態度はともかく、極めて全うな主張を叫んだロドリゲスに、ロビンフッドは何も言い返せないままルールーへ飛びついて強引に担ぎ上げると、そのまま部屋の外へと出ていくのだった。

 

 

 

「騒いですいませんでしたぁぁぁあッ!!」

 

 

 

「こら離さんかッ!! まだ殴っておらんぞッ!!」

 

 

 

 扉を蹴破るように外へと出てそのまま走り去っていく、巨漢が人を担ぎ上げたまま疾走する光景に城で働いているであろうメイドや従者はギョッと驚いたかのような顔をするのも仕方がないだろう。

 

 

 

「……何故止めたのだ?」

 

 

 

「えぇ……説明いります?」

 

 

 

 地方都市の領主を近衛騎士の代表が殺害するなんて状況は誰が考えても拙い状況である、そもそも未遂の時点で多くの者が眉を顰めるだろう情報だ、きっとこの報告を帝都で皇帝が聞けば間違いなく大きな溜息を吐く。

 

 

 

「落ち着いてくださいよ、さすがに殺してしまうのは拙いですって」

 

 

 

「……そもそも、なんであんな男が領主なんじゃい、もっと中央への忠誠心がある奴が幾らでもおろうて」

 

 

 

「あの人は旧王国の血を引く王族ですから、先代の皇帝陛下が配慮なさったんですよ」

 

 

 

 つまりロドリゲスはこの周辺地域にあった王国の正当な後継者という立場だ、その辺をロビンフッドが言ったように先代皇帝は配慮した、統治が容易になると考えたと思われる。

 

 

 

 そしてその判断は間違ってはいなかった、帝国の傘下に入ったばかりの頃は市民にも不安が広がっていたのだが、王族を領主にすることで一定の理解を得られたのだろう。

 

 

 

 よく知らない帝国の貴族よりも、自分たちをこれまで統治していた王族がこれからも上に立つ、そんな安心感は確かに初めの内は重要な役目を果たしていた――今となっては重しになっているようだが。

 

 

 

「で? 知りたいことはわかったのか?」

 

 

 

「えぇ、悪魔と聞いた時にあの人は僅かに動揺しましたから、何かしらの心当たりがある筈です」

 

 

 

「ふん、ならなおさらぶん殴れば良かったであろうて」

 

 

 

「そんな簡単な話じゃありませんって」

 

 

 

 なんでもかんでも武力で解決しようとする同僚に呆れるしかないのだが、そのロビンフッドも最終的にはそれが必要であると一定の理解を持っているらしい。

 

 

 

 大事なのは状況と理由と大義である、それさえ揃えば彼とて止めることはなかっただろう。

 

 

 

「とりあえす周辺を調査しましょうか、何か見つかれば良し――」

 

 

 

「見つからなくとも、奴が痺れを切らして尻尾を出すかもしれんか?」

 

 

 

「はい、そんな訳でこの都市を中心に警邏を行いましょう、私は周辺の貴族たちへの挨拶をしてきます」

 

 

 

「話になるのかの、この辺の連中はあんな感じだろうて」

 

 

 

「そうでもありませんよ、中央や帝国に親しみを感じている人だっている筈です……どちらかというとあの人が特別なんですって。そんな訳でルールーさんは警邏の方をお願いしますね」

 

 

 

「うむ……まぁ良かろう、面倒事はお主に任す」

 

 

 

 ロビンフッドとしてもその方がありがたいのだろう、行く先々で暴力事件を起こされてしまえば挨拶どころではないのだから。

 

 

 

 こうして彼らはこの地方都市を中心に悪魔を捜索することになった、嫌な予感を胸に抱きながらだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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