商人と冒険者と娼婦 作:にやまな
帝都は夜でも賑やかな都市である、眠らない都市なんて呼ばれることもあるくらいには娯楽が多いということだ。
地方都市などでは日が暮れると後は食事をして眠るだけといった住人も多い中、帝都では各種娯楽施設が豊富な為に深夜であっても人通りが確認できる。
歓楽街などその最たるものだろう、寧ろその場所は夜こそが本番だ。
帝国最大の大劇場では人気の歌手が美声を響かせ、帝国魔術院では才能ある学徒たちが参考書を片手にペンを走らせる、歓楽街では男女が絡み合い、賭場や闘技場では汗と血と悲鳴が際限なく生まれた。
夜であっても変わることの無い熱気が帝都のあちらこちらで感じ取れるのは、やはり大陸でも最大の繁栄都市であるが故なのだろう。
そんな熱気は帝都の一等地にあるルールーの屋敷にも存在していた、この辺りは貴族街ということもあって歓楽街よりはずっと落ち着いた雰囲気が広がっているのだが、その屋敷の一室を拠点としているエミリーとミューは甘い声を響かしている。
「あ~……あぁ~……んぁぁあ」
柔らかなベッドの上で、枕に顔を押し付けながら腰を突き出すような体勢でエミリーが喘いでいる。
なんとも艶やかで快楽に蕩けきった声だ、度重なる絶頂にふやけてしまったかのように甘く、相手の欲情を誘う熱が込められている。
既に交わり始めて長いのだろう、何度も絶頂へと至り、それでも体を重ねることを止めないので、彼女たちの体は球の汗と粘液が流れているのが確認できた。
秘所から流れ落ちる大量の精液と愛液は何度も何度も攪拌された為に白く泡立ち濁り、太ももを伝ってベッドの上にシミを作っている。
グチャグチャ、ヌチャヌチャと淫靡な音を部屋中に響かせながら、エミリーは四つん這いで臀部を突き出し終わりの見えない行為を受け入れていた。
そんな彼女の腰を掴み、臀部を引き寄せるのはミューである。
彼女は彼女で体中に球の汗を浮かべており、エミリーの突き出された丸みのある臀部に自らの腰を打ち付けている。
ミューが腰を押し付ける度に彼女の鼠蹊部とエミリーの臀部が合わさりパンパンと肉を叩くような音と共に、粘液を掻き混ぜる卑猥な音を広がる。
もう何度も繰り返した行為だが伝わる快楽は一向に飽きる気配がない、だから彼女は何度も何度もエミリーの割れ目の最奥へと己の興奮を押し付けていく。
「イクッ……イクイクッ……あッ、あッ……またイッちゃいます、ふぁぁぁ」
「うッ、あッ……私もだ、エミリー殿ッ……また、イクぞ、うッ!!」
「いやんッ、またエミリーって呼んでくださいッ……耳元でぇ、乱暴にッ!!」
「エ、エミリーッ……イクからな、受け取ってくれッ!!」
要求に従って少しばかり強気に名前を呼ぶと、ただそれだけでエミリーの体は震えだす、それはミューが房中術で作った肉棒を更に刺激して限界を超えさせた。
「ひッぐッ……~~~~ッんんんんんんッ!!?」
今晩はもう数え切れないほどに繰り返した射精ではあるが、勢いが落ち着くことなく最奥を更に満たしていく。
既にこれまでの交わりで大量に射精してエミリーの膣内は隙間なく埋め尽くされているのだが、それでも限界を超えて押し込まれていった。
あまりにも受け入れる量が多かったのだろう、エミリーの腹部が僅かに膨らんでさえいる。
ただほんの僅かに膣口に栓をしていた肉棒が硬度を失うと、その隙間から絞り出されるように膣口へと白濁液が溢れていく。
こうしてまた粘液がエミリーの太ももを伝ってベッドのシミを大きくするのだろう、もう何度も繰り返したことである。
「はぁ、はぁ……ぁ……エミリー……そんなに締め付けては……うッ……ふぅッ」
「だって、ミューさんのこれが……気持ちよくて……おっきくて固くて……すぐ乱暴するんです、こんなの、誰だってこうなります……あッ」
「乱暴とは、酷い言い方をする……こんなにも愛おしそうに締め付けているのに」
「あはッ……んんッ……また固くなりましたね」
「貴女が魅力的だからな」
そんなセリフと共にクスッと笑みを見せるミューにエミリーの胸が高鳴りを知らせる、そんなことを言われてしまうといよいよ終わりが見えなくなってしまうだろう。
ミューは美形だ、キャロルに言わせれば男装が似合いそうな中性的な美しさを持った相手である、微笑と共に甘い言葉を囁けばきっとさぞかしモテるに違いない、男にも女にもだ。
ミューは微笑みと共にエミリーの腰を掴んでクルッとひっくり返す、すると正常位の形となり二人は見つめ合うことになる。
体重をかけられてミューの顔が近づいてきたかと思うと、鎖骨や首筋、そして頬へと啄むようなキスを繰り返した。
そのまま二人の唇はいつの間にか重なり合っており、貪るように舌を絡め合う。
「んん、ちゅ、ちゅる……んぁ、はぁ、エミリー、もっと舌を」
「あむ、ちゅ……ミューも……んぐ……もっとください」
今現在、二人は房中術を使いながら性行に耽っている、単純に娼婦業に慣れた為に肌を重ねることを好んでいるので趣味の側面もあるのだが、ただ欲望に任せて交わっているだけではなくちゃんと意味があっての行為であった。
二人が共通の師弟関係であるという契約を結んでからというものの、こうして彼女たちは頻繁に肌を重ね合わせている。
房中術を使って体だけでなく魂まで溶け合うような繋がりを得て、その魔術的な路を通してエミリーとミューは互いの知識や経験の共有を行っているのだ。
単純に教え合うよりもこうして房中術を使って魂を溶け合わせる方が圧倒的に効率が良いと、魔術師である二人は知っている、お互いに抵抗もないので話は早かった。
房中術によって強固な繋がりを作り上げ、そこから意識や記憶や経験を共有していけば、彼女たちが知っている魔術も効率的に習得できるだろう。
それが二人がこうしてセックスに溺れている建前であり、それも間違いなく理由の一つでもあるのだが、単純に気持ちが良いからというのが結局は全てなのかもしれない。
エミリーに誘惑されたり押し倒されたりすると、ミューも断り切れない位には肌を重ねることに抵抗がなくなっているようだ。
「はぁ、はぁ……んぁ……エミリー、もう一度構わないだろうか?」
今日何度目かのもう一度という言葉に、エミリーは嫌がることなく受け入れる。
両手を広げてミューのうなじに回すと、そのまま引き寄せて二人はまた絡み合う。
「はい、もっともっと、愛してください……ミューは凄くお上手ですから癖になっちゃいます」
耳元でそんなことを囁くと尖った耳が興奮と熱で赤く染まっていく、別に嘘を言ったつもりもないのだが少しばかり心配になるくらいにちょろい反応である、もしミューが男性であったならば娼婦に絡めとられていたかもしれない。
だが、そんな反応もエミリーは好ましく思っているのだろう、肉棒を受け入れる膣内は艶めかしく蠢いているのだから興奮も大きい。
「うッ……んッ……あぁ……吸い付いて離してくれないな、ふふ」
グッと押し込めば大量の愛液に満たされた膣壁が蠢き奥へと誘い込み、腰を引いて肉棒を抜こうとすれば離さないとばかりに絡みついて引き留める。
なかなかの名器である、それこそ一度エミリーを味わえばなかなか抜け出せないくらいには心地いい。
だからミューもまた飽きることなく腰を押し付ける、大量の粘液を攪拌しながらエミリーに興奮を刻みこむ行為によって広がる甘い痺れに病み付きとなっているようだ。
房中術による記憶や経験の共有という目的もあるのだが、こうも溺れてしまえばそれも思考の片隅に追いやられてしまっているのだろう。
ただただ甘く、心地いい熱に溶け合うだけであった。
「あんッ、激しッ、あッ、あッ、ひぁッ!?」
「ふふッ、貴女の喘ぐ声は堪らないな……もっと鳴かせたくなってしまう、うッ……おッ、おッ」
揺れ動く程よく実った揺れる乳房も、熱を帯びた瞳も、美しい唇も、肌に浮かぶ球の汗も、全てがいやらしくミューを誘って離さない。
エミリーの肌に幾つか残されている鬱血痕を見るだけで興奮と征服感が溢れて来るのだ、本当に相手を蕩けさすことが得意な娼婦であった。
エミリーの肌に浮かんだ汗を舐めとるかのように鎖骨へ舌を這わせると、ゾクゾクとした震えを感じることができ、その痺れはそのまま秘所へと移動してミューの肉棒を刺激してくる。
「ひやあぁぁぁあ……あん、あんッ……あッ、あッ!!」
「ふあぁ、貴女の中はなんて熱いんだ……はぁ、蕩けてしまうッ……うッ、くッ!!
体の奥の方から煮えたぎるような興奮が生まれて競り上がって来ることを感じ取る、それに合わせて腰使いは激しく大胆になっていき、二人の重なり合う股間部分は大量の愛液と精液が混ざり合って白く濁った粘液が大量の糸を伸ばしていた。
べっちゃべっちゃと卑猥に過ぎる音が二人の耳朶に届いて脳を刺激している、ただの音でしかないがそれすらも興奮を高める一つとなっているのは間違いない。
何度目か数え忘れてしまうほどの絶頂の予感に痺れる二人の体は房中術で繋がり合ったことで異常な程の熱を内包しているようだ、熱中症のような状態を僅かに感じ取りながらも行為は続いていく。
それだけ身も心も深く繋がり合っているということだ、房中術を使った交わりは体だけでなく魂まで溶け合うので度が過ぎれば危険も伴う。
彼女たちは記憶や経験の共有を行っているので可能な限り繋がりを深めたいのだがそろそろ限界と考えるべきだろう、セックスをしすぎて死亡するなど笑い話にもならないのだから。
「おッ!! うッ、おッ……イク、また来る、またぁ、エミリーッ!! 受け止めてくれ!! ふあああああッ!!?」
「はいッ、私もまたッ……あッ、あん、あうんッ!? やぁああああああッ!!?」
こうして同時に達するのも何度目だろうか、少なくとも五回は間違いなく超えているだろう、絶頂を迎える度に二人の魂は複雑に絡み合っていきより深く記憶や経験を共有することができる。
今となっては既に互いの境界がとても曖昧となってしまっているらしい、記憶や経験だけでなく視界や体温なども同期しており、どちらがどちらであるかも朧気となってしまっていた。
チカチカと火花が散る視界に移っているのは喘ぐエミリーだ、そしてエミリーはミューの視覚を通して自分の顔を見ている、きっとミューも同じだろう。
自分はエミリーなのか、それともミューなのか、境界が無くなったことで確信が持てない程に二人は溶けあった。
そこまで来れば二人は完全に同一の存在となっていく、相手の考えや思惑が手に取るように伝わって来て、様々な記憶や経験を統合されていく。
エミリーがこれまで歩んで来た歴史がミューに伝わり、ミューが歩んで来た時間がエミリーへと流れて行き、最終的には両者の頭の中に詰まった知識も共有されていくのだった。
「はぁ~……はぁ~……ぁ……エミリー」
ようやく絶頂の余韻が引いた時、これで最後とばかりにミューは頬へとキスをした、不思議と情欲を感じさせない柔らかな口づけだ。
「ん……お返しです」
そしてエミリーもまたキスを頬へと返す、慈しむようなそれを受け取ってようやく激しく濃い交わりは終わりとなった。
崩れるように脱力した体をベッドに任せ、二人は荒い呼吸を繰り返しながら体中を縛る甘い痺れに浸っていく。
熱中症寸前になるまで昂っていた体はなかなか熱が引かない、それでも確かめなければならないことがあるので、彼女たちはベッドに横になったまま互いの掌を近づけた。
「えっと、ではさっそく試してみましょうか?」
「あぁ、ある程度は理を掴めたと思う、以前は基礎的な部分に留めていたが、今ならば小さくとも形にできるだろう」
彼女たちがこうして肌を重ねていた理由の一つがそれである、房中術を使って魔術的な路を作り、互いの知識や経験を共有することで魔術の習得を目指していた。
魂を接続して一度に大量に知識の交換を行うと危険も伴うので、何回かに分けて小出しにしてきたのだが、それも今回で殆ど終わったらしい。
ベッドの上で心地いい疲労と共に横になっている二人は、その体勢のままお互いの掌で器を作り出す。
天から降って来る滴を掬い上げるかのような形となったそこに、小さな火花が散ったかと思えば、宝石のような輝きを宿した灯が形成されていく。
熱さは感じない、ただどこまでも穏やかな灯は蝋燭の火のように揺らめきながらそこに漂う。
「良かった、上手くできましたね」
「エミリーのものと比べればまだまだだがな」
二人の掌が作る器の中で揺らめく灯の魔術はミューが作ったものだ、彼女は炎の魔術師ではないがこうして使えるようになったらしい。
まだ小さく弱弱しい光でしかないが、この世の闇をあまねく照らし潰す光であった。
「大きさはあまり関係がありませんよ、悪魔と戦うのならこれでも十分過ぎる位です」
「開発者の太鼓判があるのならば心配はいらないな」
掌にある灯の光を掴むように消し去ると、彼女たちは一仕事済んだとばかりに瞼の奥に眠気を感じ取ってしまう。
ただ眠る訳にはいかない、ベッドも体もドロドロなのでこのまま意識を手放すのはさすがに難しい。
風呂に入って寝床を整える必要があるだろう、重たい瞼を無理矢理開きながら二人は浴場へと向かっていく。
その最中、ふとガラス窓の外を眺めると、帝都の夜は相変わらず賑やかで文明の光に満たされているのがわかった。
通りをほろ酔い気分で歩く住民の姿が確認できる、きっとどこかの酒場で楽しんでいたのだろう、気分よく鼻歌を奏でながら家路を進んでいるようだ。
エミリーからは確認できなかったが、その住民は指先で幾枚かの硬貨を握って感触を楽しむかのように弄んでおり、ふいに親指で一枚だけ弾いて見せる。
別に何か深い意味がある行動でもないのだろう、ちょっとした遊び以上の理由は無い。
その金貨の輝きの中にある魔性に、彼は気が付くことはなかった。