商人と冒険者と娼婦 作:にやまな
「各方面軍や傘下国からの援軍状況はどうなっている?」
帝城の最奥、最も警備が厳重な皇帝の執務室にはその部屋の主であるランポッサがいた、今日も今日とて津波のように押し寄せる書類や公務を捌きながらペンを走らせる。
今最も優先すべき黄金の悪魔との戦いに備えて、彼は皇帝としてやるべきことを淡々とこなしていく。
無い物ねだりをしても仕方がないので、今ある物を最大限に集めて運用するという、国家の最善手を実行している真っ只中である。
人を集めて脅威に備える、これは一つの国家が行える最大にして最善の対抗策であると言えるだろう。
当たり前のことではあるし、とても単純なことでもあるが、いざそれを実行しようとするのは口にするほど簡単なことではない。
例えば帝国以外の国ならばもっと簡単ではないだろう、それぞれの領地を治める貴族や土豪などにも事情がある上に忠誠心だって誰もが等しく高い訳でもないのだ、加えるならば誰も彼もが未来を憂いて行動できる訳でもない、ましてや軍隊と言うのはとにかく物資と資金を食いつぶすイナゴの群れにも等しい。
来いと言われてすぐに軍隊を動かすのは簡単ではないということだ。
だが帝国では地方領主に軍隊の指揮権がない、私兵軍隊を持つことも禁止されている、地方と中央の間に存在する多くの困難や壁がとても薄かった。
軍の最高指揮官は皇帝であり、彼の命令無くして動けない、逆に彼の命令があればそれだけで国内を自由に移動できる訳だ。
加えるのならば帝国は道も良い、都市と都市の間にある宿場町も豊富だ、軍馬の育成に、法整備、工業や産業に多額の資金を投じて、日々押し寄せる大量の移民を受け入れて開拓村を作らせ続けている。
国家の成長に必要な当たり前のことを、常に、そして停滞させることなく継続させることこそが帝国の最大にして最高の強みなのだろう。
これもまた考えてみれば当然のことなのだが、それを淡々と続けるのはやはり簡単ではない。
幾星霜も続けた躍進と成長の結果が、今の帝国である。
とにかく大量の人員と、その人員がいきなり移動しても代わりを務められるだけの人材を集めて配置していく。
結果、帝都を目指して凄まじい数の戦力が集おうとしていた。
「各方面軍の集結は問題なく、傘下国に関しては……まぁ、あちらにも事情がありますので」
「期待しすぎるのも悪いか……いやこれで良い、戦力の中心はあくまで騎士や兵士たちだからな」
秘書官であるエリンからの報告にランポッサは淡々とそう答える。
豊かで広大な国土と長い時間をかけて研ぎ澄まされた社会が作り出す、強固で分厚い人類社会こそが帝国最大の武器であった、少なくともランポッサにそれ以上の手札はない。
極めて単純な戦い方である、それこそ魔王が聞けば「数を揃えただけ」と鼻で笑うのかもしれないが、帝国の用意する手札はとにかく豊富で分厚い、ただそこを徹底的に突き詰めた国家だからこそできることだろう。
勝てるか勝てないかはこの際考えない、やるだけやったのだからそれでも死んでしまうのならば仕方がないと割り切って冥府に沈んでいくような軽い考えで、ランポッサはその時を待つ。
「皇帝陛下、各方面の準備が整ったとのことです」
「よろしい、各々、持ち場で動きがあるまで待機とせよ」
ノックと共に執務室に入って来た秘書官の報告に彼は思考を次へと切り替えていく。
悪魔の存在がこの帝国にチラつくようになってからそう遠くない内に大きな戦いが起こるであろうと彼は考えていた、それは決して避けられないことでありランポッサを随分と悩ませたのだが、やはりと言うべきか迷った所で状況は解決しないのだから行動するしかない。
避けられない戦いが迫っているのならばそれに備えるだけである、その為に必要な戦力は集まったので皇帝として次に進まなければならないだろう。
さてどう動くべきだろうか、ハッキリと姿を現さない相手をどう動かすべきだろうか、皇帝の悩みは尽きることがない。
大きな戦いが迫っていて、それが避けられないのならば、どう着地させるかが重要になってくる。
「……悩んでいるみたいだねぇ、やっぱ皇帝は大変だ」
瞼を閉じて深く考え込むランポッサを、苦笑いと共に揶揄うのは彼の兄であるアスラであった。
今日は酒神会の商売や取引が無いのか帝城に控えているらしい、片手に酒瓶を持ちもう片方の手ではつまみを持って寛ぐ姿を、執務室で働く文官や秘書官たちからは少しばかりの苛立ちと共に眺められている。
ただ彼はそんな居心地の悪い状況であってもどこ吹く風とばかりに柔和な笑みを浮かべて酒を味わうだけである、図太い性格をしていると言えるだろう。
「兄上、酒を楽しんでいる場合ではないぞ、私が動けなくなれば次は貴方なのだからな」
「やれやれゾッとするね、僕はほどほどに稼ぎながら酒を楽しむ人生で十分なんだが」
「それは許されない、皇族である以上は星の未来を思わなければな」
「ご先祖様も厄介な呪いを残したものだよ」
「……呪いか、わからんでもないが」
「君は良いさ、その呪いも力に変えて進んで行けるんだから……ただ僕はほどほどで満足できてしまう男なのでね、なかなかに難しい」
遠慮していると言うべきか、それとも謙虚に振る舞っていると表現すべきだろうか、自分を矮小に見せかけようとしているようだが、ランポッサはアスラのことをそこまで低く見てはいない。
まだ先代皇帝が生きていた頃、アスラは次の皇帝に最も近い位置にいたのだ、ランポッサは漠然とだがアスラが次の皇帝になり自分はそれを補佐するのだろうと考えていた。
しかし皇帝が崩御して次は誰なのかと帝国が揺れる中、最も支持を集められる立場にいたアスラは早々に帝位を捨てて自由人となってしまう、後に残されたのは彼が皇帝になるだろうと思っていた兄弟姉妹である。
なんて無責任なと思わなくも無かったが、その結果としてランポッサが皇帝となった。
彼は自他ともに認める優秀な人物ではあるが、それだけで皇帝となれる訳でもない、当然ながら他の皇帝候補もそれぞれが優秀なのだから。
それでもランポッサが勝ち残れたのは、本人の能力に加えてアスラの後押しがあったことが大きいだろう。
アスラはランポッサに皇帝の座を押し付けたのだ、本人曰く「君の方が相応しい」とのことらしい。
ランポッサも特に不満も無かったのだが、自由に生きるアスラに思う所が無いと言えば嘘になってしまう。
もし彼が皇帝を目指していたのならば、そんな未来を夢想することもかつてはあったが、今となっては不思議な納得もある。
皇帝の立場とは自ら選び取るものではなく神が定めるものなのだ、そんなまさかと笑い話になるような考えなのかもしれないが、初代皇帝と神の対話に加えて今も受け継がれている契約を考えれば決して馬鹿にはできない。
アスラではなく、ランポッサだからこそ皇帝となれた、ならば自分にしかできないことがあるのではないか、今ではそんなことを考えるようになっていた。
だとしても代わりがいらない何てことは無い、自分が行動不能になれば次はアスラに任せるしかない、そしてもしアスラが動けないのならばその次はエヴァの番である。
皇帝であっても代わりはいる、そう考えると少しだけ大胆に動けるのだった。
なにせ悪魔との戦いに備えているのだ、リスクを受け入れてでも前に進まなければならない。
「まぁ良い、何だかんだと文句を垂れようが兄上は動くしかないのだからな……もしもの時は頼んだぞ」
「そのもしもを、可能な限り避けて欲しいものだ、優秀な弟よ」
「人は全知には届かないし、全能にはなお遠い、つまり死ぬときは死ぬんだ……私もまた同様だな」
「そうかい、ならばせめて君の無事を祈っておくとしよう」
少しだけ大袈裟な動作で祈りの姿勢を見せるアスラに、ランポッサは呆れたような視線を向けて、執務室の椅子から立ち上がる。
「さてエリン、次の仕事に向かおうか……次は何だったかな?」
「陛下、次は各方面の視察になります」
「……うむ、そうだったか」
「はい、一先ずは帝国銀行に向かいましょう、例の偽通貨の処理方法に関して総裁から相談があるとのことです」
そこで皇帝は瞼を閉じて深く考え込む、瞑想をしているようにも祈りを捧げているようにも見える。
そんな時間がどれだけ過ぎ去っただろうか、周囲にいるエリンやアスラも声をかけることなく静かな時間が流れて行き、最終的にはランポッサ自身による大きな溜息で状況が動く。
彼の中でなんらかの踏ん切りがついたのだろう、少しだけの緊張と強い覚悟を宿した瞳を開いた瞼から覗かせて席を立つ。
「さて、行くとしよう」
やるべきことは多い、やらなければならないことは更に多い、考えなければならないことも、直近に迫った戦いをどう進めるかも悩みどころであった。
エリンを伴いながら彼は進んで行く、頭の中ではずっとこれから先の未来を思い描きながら。
突出した思考と頭脳が、今ある情報と手札と戦力を使って様々な未来を考えていく、それこそ木々の枝葉のように無数の未来を予想していくのだ。
予想は予想でしかない、こうなったら良い程度の慰めでしかないが、思い描いた未来に上手く着地させるのは指導者の仕事である。
だから彼は常に考える、この戦いの決着はどうあるべきか、どれだけの犠牲で済ませられるかを。
ランポッサが考える必要な犠牲の中に自分すらも含まれているのだから、指導者としてはまさに完璧と言えるだろう。
まるで感情を無視して淡々と国家を導く装置のようだ、ランポッサと言う男は自分の命にすらもしかしたら執着が無いのかもしれない。
王として、皇帝としてならば欲望が無いというのは少しばかり物足りない部分なのかもしれないが、星の未来を思う者としてはこれ以上の男もいないのかもしれない。
個人ではない、国家でもない、ただ未来を思い行動する姿勢こそが皇帝に求められるものなのだろう。
アスラはそれを呪いと呼んで、ランポッサは力と呼んでいる、その認識の違いが今の立場を作った可能性すらあった。
真実はわからない、だがランポッサは今現在、皇帝という立場にある、他にも優秀な兄弟姉妹が沢山いたというのに彼が皇帝となった。
神に選ばれたとうぬぼれるつもりは無いが、それでも不思議に思ったこともある。
なんであれ彼は今日も星の未来を思うのだから、きっと皇帝に相応しいのだろう。
「陛下、到着いたしました」
「ん……あぁ、ご苦労」
未来を予想してどう動くべきかと深い思考の海に旅立っていたランポッサの意識を、秘書官のエリンが声をかけて呼び戻す。
皇帝の公務は多忙を極めるが、やるべきことは書類仕事だけでなく視察なども含まれている、帝都に集った戦力たちへの顔見せもそうだが、エリンにまず案内されたのは帝国銀行であった。
帝城からほど近い位置にあるこの施設では名前の通り銀行業務を主に行っている、それに加えて現在は通貨の管理や製造業務なども行っているらしい。
新通貨への移行が発表されて最も忙しくしている部署だろう、日々大量の通貨が集まっているのだから激務の真っ只中であった。
どこか神殿を思わせる扉を中へと入ると、先触れがあったのか銀行の職員たちが一斉に頭を下げる。
「大臣、何か問題は?」
ランポッサがまず声をかけたのは帝国銀行の代表である壮年の男であった、とにかくケチで資金の管理にうるさい所が短所であると同時に長所の男である。
皇帝からの短い問いかけに大臣はいつも通りの神経質な顔で深く頷く、全て心得ていますとばかりに。
それを確認すると今度はエリンに視線を向けると、彼女もまた頷いて皇帝を先導していった。
「今現在の報告によりますと新通貨への交換業務は順調とのこと、例の偽造通貨も着々と集まっており、今年度中には全体の四割を交換できると報告が上がっています」
「それでは遅いな、あれがなんであるか、どんな危険があるのかハッキリとしていない、可能な限り急がせろ……と命じたとしても人は増えんからな、まずは人手の確保か」
「はい、加えて言わせていただきますと集めた金貨の処分方法にも困っておりますね、真贋の区別が魔術師の方たちではないと判別できませんのでとても時間がかかる上に、それとて完璧ではない……仮に上手く分けられたとしても偽造通貨をどう処分するかという問題も残るので」
「まぁそうだろうな、そこに関しては魔術院に任せるしかあるまい……例の魔術が効果覿面らしいので使える魔術師を増やして処分するべきだろう、場合によっては聖都から聖騎士を呼ぶこともできる。少しばかり高く付くだろうがな」
「仮に聖騎士を招聘できたとしても、あれだけの数の偽造通貨を処分などできるのでしょうか」
「うん? 報告は受けているが、それほどの量が集まっているのか?」
「それは勿論、書類に記載された数字を見るのと、実物を見るのとでは大きな違いがありますので、山のように金貨が溜まっておりますよ」
ここは帝国経済の心臓なのだ、新通貨への交換もあって凄まじい規模で貨幣の流れが出来ている状態だ、それこそ帝国全土で流通している金貨が一度はここを経由するのだから、一時的に保管したり隔離する蔵や倉庫は幾らあっても足りない状況であった。
新通貨への移行が落ち着けば多少は楽になるだろうが、それが終わるまでは何もかもがぎゅうぎゅう詰めと言った状態である。
「……陛下、一度ご覧になられますか? その、やはり危険ではありますが」
書類に印された金貨の枚数と、実際にそれが山となっている状況が上手く一致しない皇帝に、エリンは少しだけ躊躇しながらそんなことを言った。
少し表情が暗い、僅かな緊張も見て取れる、本当にそうするべきなのか迷い戸惑うかのような顔をしている。
そんな部下の顔をジッと見つめて、ランポッサは迷うことなくこう言うのだった。
「……そうだな、一度くらいは見ておいた方が良いだろう、書類だけではどうにも実感がわかないのでな」
「……わかりました」
「エリン、案内を頼む」
ランポッサは財務大臣に視線を送ってから小さく頷く、すると相手もまた小さく頷きを返す。
エリンに先導されて案内されるのは帝国銀行の地下部分である、その場所全てが大量の金貨を一時的に保管している巨大な金庫であり、同時に隔離施設でもあった。
下手な城門よりもずっと頑丈な門が重厚な摩擦音を上げて開かれると、地下空間全てに広がる巨大金庫が待ち受ける。
今現在のその大半が偽造通貨を隔離する為の施設として運用されていた。
「なるほど、実際に見てみると凄まじい量だな」
まずランポッサの目に黄金の輝きが飛び込んで来る、地下空間の床を埋め尽くすだけでなく山となってもまだ足りないとばかりに金貨が広がっているのだ。
凄まじい量である、これでも帝国全体で流通している金貨のほんの一部でしかないのだから、帝国の巨大さを誇るしかないだろう。
確かにこれを見ないで書類上の数字だけを頼りに判断するのは軽率かもしれない、口で「処理しろ」と言うのは簡単だが、言われた側はこの金貨の山を見て頭を抱える可能性すらある。
まぁ今はそんなことはどうでも良い、重要なのはこれからだ。
「さて、それで……貴様は何者だ? まずは名乗ることを許そう」
地下空間に広がる黄金の山よりもなお眩しい存在がそこにいたのだ、ランポッサの瞳はやはりそこへ向けられる。
積み上げられた金貨の山に腰を下ろすのは黄金の悪魔であった。
「あらあら、それが人に名を尋ねる態度かしら?」
「ふん……貴様は人ではない、ならば当たり前の礼儀など不要だ」
皇帝と黄金の悪魔、両者の邂逅はこうして始まった。
「よくやったわエリン、貴女に頼んで本当に良かった」
しかしただ一人、皇帝の傍にいるべきだったエリンは主を間違ったかのようにパレスの傍に立っている。
パレスの手が愛おしい猫を撫でるかのようにエリンの頭に置かれると、彼女はそれを静かに受け入れてしまう。
まるでランポッサに見せつけているかのようだ、実際にその通りなのだろう、勝ち誇ったかのような顔をしているのだから。
「ふふ、ねぇ、今はどんな気持ちなのかしら? 護衛もいないし頼りになる配下はこのざま、裸の王様ってこんなにも惨めなのねぇ!!」
ここはパレスの領域だ、大量の金貨が配置されており自由自在に操ることができる、それを証明するかのように一部の金貨がどろりと溶けて形を変えると地上へと続く重厚な扉を閉ざしてしまう。
「これで逃げ場も無くなったわねぇ、ねえどんな気持ち? 怖い? それとも恐ろしい? 惨めに泣き叫んでくれたらこっちはとても気分が良くなるのだけど」
パレスがエリンを操って命じたことはただ一つ、皇帝を孤立させることだ、厳重な守りがある帝城からこの場所へと誘導するように操っていた。
上手くいくかどうかはわからなかったが、数ある手段の一つ程度に考えていた作戦はこうして上手くいったらしい。
ランポッサに護衛はいない、身を守る騎士も兵士もいない、あまりにも無防備だ。
唯一の部下であるエリンもパレスの手中にある、ここに彼女の勝利はゆるぎないものになったのだろう。
この状況だ、彼女がそう考えるのも仕方がない。
だからあざ笑うように皇帝を挑発するのだが、彼から帰って来たのは苦し紛れの言葉でもなければ焦りでも怒りでもましてや恐怖でもなかった。
反応は小さな溜息が一つ、そして愚かな何かを眺めるかのような視線である。
それが虚勢でないことに、パレスはようやく気が付いた。
「なんだ、お前は一体、何故そこま――ぐぉッ!!?」
鋭い痛痒が背中から胸へと走る、衝撃の正体を確かめるように視線を僅かに下げると、そこには淡い光を宿した刃が飛び出ているのが確認できてしまう。
何もおかしなことではない、パレスの背後にいたエリンが隠し持っていた刃で胸の中心を貫いた、ただそれだけのことである。
意味が分からなかった、エリンは黄金の魅力に汚染されてこちらの手中にあるというのに、なぜ自分に刃を突き立てるのか、パレスにはその答えがわからない。
そしてその答えは彼女を冷たく見つめる皇帝から齎される。
「エリンを支配して油断したようだな。愚か者め……もう一度言ってやる、この愚か者め」
自信満々に、決して揺るがない絶対を知っているかのように、それが自然の摂理であるかのように彼はこう言った。
「我が帝国の臣下が、貴様のつまらん洗脳に屈する筈がないだろう……身の程をわきまえろ」
戦いが避けられないのならば、犠牲が避けられないのならば、せめて初手はこちらから動きたい。
そんな考えで彼はここにいるのだ、決してエリンに誘導された訳でもなければ、油断して罠に落とされた訳でもない、彼は自らに意思でここに立ちパレスをおびき寄せる餌となったのだ。
「勝ったとでも思ったか? 貴様が愚かなおかげでようやく顔を出してくれたな、思っていたよりも馬鹿で助かったぞ」
ランポッサが指を弾いて何かしらの合図を送る、すると広大な地下空間が僅かに揺れ動き、天井に大きな亀裂が生まれる。
次の瞬間には大きな衝撃と共に日の光が差し込み、同時に大量の騎士や魔術師が雪崩れ込んで来た。
「さて始めようか……どれだけ馬鹿でも悪魔は悪魔、こちらは真心こめて戦うさ」
騎士の刃が光り、魔術師たちが力を高める、それは幾重の壁となってランポッサとパレスの間に分厚い壁を形成していく。
お互いの姿は見えなくなったが、それでも彼は黄金の悪魔に届くようにこう叫ぶ。
宣戦布告だ、そこにはお前を滅ぼすまで戦い続けるという意思を込めていた。
「歓迎しよう黄金の悪魔よ!! 我が帝国が、この麗しき黄金帝国が!! 持ちうる全てを持って貴様を討ち滅ぼす!!」
こうして戦いは始まった、パレスが思っていた形でないことは間違いないだろう。