商人と冒険者と娼婦 作:にやまな
そこは、ぬちゃりぬりゃりと、粘液を掻き混ぜるような音が響く空間であった。
触手が四方八方を埋め尽くしており、どこに視線を向けても肉の壁が広がっているのがわかる。ただ無秩序という訳ではなく通路のようなものや広がった空間なども存在しており、この肉の空間がアリの巣のような作りになっていることが僅かに窺えた。
実際に幾つもの通路や部屋のような場所があるのだろう、全てが触手や粘液塗れの肉で構成されていることを除けば城のような作りになっているのかもしれない。
もしくは要塞だろうか、どちらにせよ巨大な空間であることは間違いないだろう。
そんな肉の世界の最奥、悪魔にとって最も神秘が濃い場所にエキドナがいた。
「あはッ!! あはんッ!! あッ、あぁ、あんッ!! 我が父よ、そんな激しくッ、んんんッ!!」
薄暗いその場所ではエキドナの喘ぎ声が響いている、無数の触手を体に張り付けて貪られており、一見すると邪悪な何かに凌辱されているようにも見えるが、少なくとも彼女の声や表情にそういった気配はない。
寧ろ喜んでいるようにも見えた。秘所をこじ開ける大きな触手に絶えず突かれることも、花弁のように先端が広がった触手に乳房を包まれ舐めまわされることも、彼女に大きな快楽を与えている。
「あッ、ひやッ!? また大きく、んんんッ、どうぞッ、私の中にッ!!」
触手たちの動きが激しくより淫らになった、根元から大きな何かが競り上がってきているのか瘤のようなものが動いており、一際大きな動きと共に大量の白濁液を吐き出した。
秘所を弄る触手だけでなく周囲で肌を嬲る触手なども一斉にだ、まるで雨のように白濁した粘液が降り注ぎエキドナを汚していく。
「あはぁあああああッ!!」
塗りたくられる白濁液をエキドナは絶頂と共に受け入れた、あまりにも注がれる量が多かった為に彼女の腹部は妊娠したかのように膨れてしまっている。
そんな状態でありながら彼女は歓喜と甘い痺れに震えており、愛しい誰かとキスをするかのように舌を伸ばして触手を舐めまわしていた。
甘美な時間だ、己が仕える神に愛されたのだから、信者としてはこれ以上の快楽もない。
「はぁ、はぁ……ん、ふふ」
体に塗りたくられた白濁液を丁寧に舐めとって処理していく姿に一切の嫌悪はないようだ、それどころか極上の美酒を楽しむかのような雰囲気すらもある。
そうやって神の寵愛を肌や舌で感じ取っていたエキドナは、不意に視線を上げてたった今思い出したかのように他者の存在を認めた。
そういえばこいつらもいたな、そんな顔である。
触手や肉壁で形作られる広大な空間の中にはエキドナ以外の姿もあった、誰もが触手に捕らわれた姿だがエミリーとキャロルとシャルル、そしてミューの姿も確認できた。
突如としてエキドナが産み落とした神秘の塊が放出した触手の波に呑まれてそのまま捕まってしまったらしい。
強力な闇神殿と変わらないこの空間では上手く体も動かせないのか、大きな抵抗もできないまま触手に捕らわれてしまっている。
キャロルとエミリーは意識が無いのかぐったりとした様子で体の半分ほどが触手の大地に埋もれており、悪夢にうなされるかのように身を捩って無意識の内に触手から逃れようとしているようにも見えた。
それに対してシャルルとミューはまだ意識が残っているようだ、触手に絡めとられながらも睨むような視線だけはエキドナに向けられている。
前線に出れるだけの戦士であることから体力があるので、意識を保っていられたのはその辺が原因だろう。
「くそ……離せよ」
「うッ、あぁ……キャロル殿、エミリー、お気を確かに」
意識を保ったままだったシャルルとミューは両手を触手に絡めとられた状態でぶら下げられている、ギリギリの所で爪先が肉の床に届いている不安定な状態であった。
手枷であるかのように触手は両手を拘束しており、そんな状態で吊り下げられて体には粘液塗れの触手が纏わりついている。
衣服の隙間に入り込んで来るそれに二人は身震いしているようだ、生暖かい感触がどうにも慣れず蛸に纏わりつかれているような嫌悪感もあるのだろう。
普段の二人ならばこの程度の拘束ならば簡単に引きちぎれるのだが、闇神殿の内部のようになっているこの空間ではそこまでの力が出ないらしい。大きな倦怠感と疲労感が体に圧し掛かっているような感覚があった。
「ふふ~ん……嫌よ離すなんて、せっかく捕まえたんだから」
拘束されている四人娘の姿にエキドナはとても上機嫌な様子である。自分でも悪い癖が出ているとわかってはいるのだが、ここで殺すという選択肢を取れないのは彼女の弱点でもあるのかもしれない。
殺せる時に殺さないのは、回り回って自分の首を絞めることになる、実際にそれで苦しめられたのでエキドナとしては己の愚かさを理解もしているのだが、彼女の根底にある増やすという在り方がどうしても邪魔をする。
あれだけ自分を苦しめた英雄たちが残らず触手に群がられている様子はじつに素晴らしい、鼻で笑ってしまうのも仕方がないだろう。
彼女は今とても上機嫌である、それはそうだろう、英雄を屈服させて蹂躙することができるなどエキドナにとっては垂涎の状況なのだから。
ましてや抵抗勢力も無い、じっくり時間をかけて嬲り凌辱して面倒な神性を曇らし手中にすることだってできるだろう。
抵抗できない四人を前にして、エキドナの秘所は熱をもった。
纏わりつく触手や粘液を引きずりながら四人に近づいていくと、動けないことをいいことにシャルルの顎へと手を伸ばす。
触手に宙吊りにされている状態では顔を背ける程度の抵抗しかできず、エキドナがそれを逃す筈も無くグッと顎を押さえつけられてしまった。
とうとうエキドナを睨むだけとなってしまったシャルルの視線に、強者の余裕なのか更に機嫌をよくすると、そのままシャルルを引き寄せて唇を奪う。
「うむッ!? んん~~ッ!!?」
「シャルル殿!?」
突然の行動に驚いて身を捩るが逃がさないとばかりにエキドナは体を固定して口内を蹂躙していく。そんなことが十秒ほど続いただろうか、翻弄されるままだったシャルルは怒りで動揺を振り払って牙を向く。
「あら……生意気」
エキドナはようやく唇を離す、唇の端からは血が流れており、どうやら舌をシャルルに噛まれて出血してしまったらしい。
艶めかしく唇の端から流れる血を舐めとった彼女は、勝者の余裕からなのか機嫌を害した様子も無く、シャルルの顎を掴んだまま面白そうに見下ろしていた。
楽しくて仕方がない、そんな様子にシャルルは睨みつけることしかできない、彼女は敗者なのだから他にできることもないのだろう。
「でもいいわよ、嫌いじゃない」
エキドナの掌がシャルルの胸へと伸びていく、鎧の留め具を外して衣服を切り裂くと、中から現れた乳房を指先で弄んでいった。
「うッ……くッ……やめ」
「嫌よ、貴女の声がもっと聞きたいんだから」
大きく育った乳房を揉みしだく指先の動きは徐々に激しくなっていき、最後には頂にある桜色の突起を摘みあげてしまう。
「んッ」
「ふふ、敏感ね」
最初は優し気な動きであったが最後には鋭い爪を立てて引っかくような動作をすると、僅かにだがシャルルの胸に鮮血が流れて行く。
激痛というほどではないが、むず痒い感触があったのか、シャルルは表情を歪めて身を揺らす。
しかし両手は触手に絡めとられて宙吊りの状態だ、エキドナの手を拒むことはできなかった。
「シャルル殿から離れろ!!」
さて次はどこを弄ぼうかと白い指先が揺れ動いた段階でミューから怒気のこもった声が届く、彼女は彼女で宙吊りの状態でありまともな抵抗はできなかったのだが、ただ見ているだけはできなかったらしい。
「あぁ、そう言えばなりかけのエルフもいたわね。ふふ、良いわよ、代わりに今度は貴女を苛めてあげるわ」
矛先がミューへと向いたことで僅かに緊張した様子を見せるがそれも一瞬である、すぐに毅然とした態度を作るミューにエキドナは更に笑みを深めた。
楽しんでいるのだろう、そんな強気な相手を嬲れる状況を。
「エルフも良いわね、良質な魔力があるもの。我らが父を喜んでいるわ」
体を絡めとる触手がミューから魔力を吸い取っているらしい。おそらく魔術師であり豊富な魔力を有するエミリーも同様だろう。
この触手たちにとっては、魔術師と言うのは甘露のようなものなのかもしれない。
ただ吸い取られる側からしてみれば堪ったものではないだろう、どれだけ魔力を溜め込んでもすぐに奪われてしまう、なかなか現状を打開する為の活力が戻ってこないのだ。
「それになりかけも珍しいわね、いい器になりそう」
エキドナはシャルルにそうしたようにミューへと舌を伸ばす、背後から抱きしめるような形となり、そのまま尖った耳の裏やうなじを蹂躙していく。
「くッ……こんなことッ、無意味だ……何も吐きはしない」
「それで構わないわよ、別に尋問してるつもりはないもの……ただ楽しんでるだけ」
だとすると四人の立場は虜囚ですらない、ただの玩具といった所だろうか。
指先が股や胸に伸びる為に忸怩たる思いが込み上げて来る、仲間を助けることもエキドナを拒絶できるだけの力も無い自分を情けなく感じているのだろう。
ましてやエキドナは何らかの情報を欲している訳でもなければ彼女たちに何かを求めている訳でもない、言ってしまえば気まぐれでありそれ以上の理由はないのだ。
殺そうと思えばそうするだろう、少しでも天秤が傾けばそうなる可能性が高い。
そうしないのはエキドナの悪い癖だ、四人娘に玩具としての価値を認めている、もしかしたら将来に自分の首を絞めることになるとわかっていても、それをしない。
勿体ないではないか、これだけの英雄を嬲れる状況を簡単に終わらしてしまうなんて、しかも上手く神格や加護を引きはがせば更に面白いことになる。
これ以上ない器である、きっと孕ませることができれば強力な魔獣を作れるだろう。
嬲りがいがあって、将来的に手駒も増やせるのならば、エキドナは殺さないという愚行も容認する。
悪い癖だと彼女も思うが、孕ませ増やすというのは彼女の根底にある力だ、こればかりはどうしようもなかった。
「まぁじっくりやりましょう、孕ませる時間なら幾らでもあるし」
「は、孕ませるだと?」
「ふふ、そう、苗床になるのよ貴女たちは。せいぜい強い魔獣を孕みなさい」
「そんなこと、娼婦神の加護があればッ」
「そうね、簡単じゃないかも……でも良いじゃない、これから貴女たちは身も心もドロドロに犯しつくされるの、どれだけ持つかしら? その内、自分から孕ませてくれって懇願してくるかも」
もしそうなったらエキドナはこれ以上ないくらいに愉快な気分になるだろう。英雄を屈服させること程に楽しい娯楽も無いのだから。
「楽しみにしてなさいな……グチャグチャのドロドロにしてあげる」
耳元でそう囁かれてミューの体に隠しきれない悪寒が走った、言葉の中にある底知れない愉悦と悪意を感じ取ったのだろう。
「あッ……キャロル殿!? んぐッ!?」
エキドナの悪意に身を震わせていると、触手の空間が蠢いて四人娘たちに殺到していく。
意識を失ってされるがままのエミリーとキャロルは勿論、宙吊りにされているミューとシャルルも逃れる術はない。
触手に捕まって引きずられていくキャロルの姿を見て叫び声を上げるのだが、それすら許さないとばかりにエキドナは舌を差し込んでしまう。
「くそッ……うわ、離せッ!! エミリー、キャロル、ミュー!!」
シャルルもまた引きずられていった、最後まで抵抗しようとしていたが一瞬で触手の向こうへと消えていく。
エミリーとキャロルも似たような状況だ、この二人は意識を失っているので何の抵抗もできないまま引きずられていった。
「さぁ楽しみましょう……身も心も蕩け合って、理性も無くして快楽の沼に沈むのよ」
「やめッ……ひぅッ!? う、うわぁぁああああッ!?」
群がる触手にミューも消えていく、最後まで遠ざかっていくキャロルに手を伸ばそうとしていたが、それが叶うことはない。
「あは、あははははッ!!」
後に残るのはエキドナの愉快な笑い声だけであった。