商人と冒険者と娼婦 作:にやまな
かつてエミリーに魔法を教えてくれた人物は彼女にこう言った、魔道に果てはなくその道を進むのは暗闇をランタンも持たずに進むことに等しいと。
膨大な知識を習得して、一生では足らない程の時間を鍛錬に費やし、あらゆる事象を観測して、それらを一つに纏めて形と為す、極めようと思えば人生が二回あったとしてもまだ足りないだろう。
そんな魔術師たちが不老不死を求めたのも必然なのかもしれない、薬や奇跡や呪いや祝福を体に塗りたくり、或いは人間と言う形を捨ててまでそこを目指したのだ、本当に様々な方法を試しては失敗して、それもまた魔術師の歴史として記されている。
大半の魔術師が道半ばで没したのだが、ごく一握りの魔術師は不老不死という領域に辿り着いた者もいたらしい。
そういった者たちは迫害と嫉妬に追いやられて人知れず闇の中へひっそりと姿を消すか、逆に大きな混乱を巻き起こして歴史に名を残したりするのだが、エミリーはそんな不老不死の魔術師たちの最期を教科書の中でしか知らなかった。
誰もかれもが英雄に討たれたり、邪悪に転がったり、その最期は碌なものではないということは彼女にもわかる。
そんな魔術師にとって羨望と絶望の象徴のような不老不死だが、そこに至る為の道がエミリーの前にあった、ローレライから教えて貰った房中術は彼女によく合っていたからだ。
ローレライ曰、エミリーには非常に才能があるらしい、長ずればそれこそ不老不死へ至れる可能性があるくらいの才能が備わっていた。
不老不死の魔術師は過去に多く存在しており、その中でも房中術を駆使してそこへ至った魔術師の割合が高いのは、やはりその魔術の特性故だろう。
男と交わってその生命力を自分の力に変えることができるのでそこから不老へと辿り着き、膨大な時間を活用してその他の魔術を極めて不死へと辿り着く。
長い長い道のりになるのは間違いないだろうが、エミリーはその入口に立っている。
「シャルル、キャロル……今、時間は大丈夫ですか?」
ただ、残念と言うべきか幸いと言うべきか、魔術師の端くれであるエミリー自身はそこまで壮大な未来を思い描いている訳ではなく、房中術を深淵へ立ち向かう為の武器ではなく便利な魔術の一つくらいにしか認識していなかった。
或いは、心地いい快楽を得る為の道具のような認識なのかもしれない、邪悪に堕ちるよりはずっとマシな結末を迎えることだろう。
「おぉ、エミリー遅かったじゃないか、待ちくたびれたぞ」
「ん……暇だった」
エミリーが房中術を体で学んでいる間、シャルルとキャロルはやることもなかったので後部車両の自室で暇潰しをしていたらしい、だらしなく寝そべりながらチェスの駒を動かしており、他にも様々な小物が散乱していた。
聖都も近くなってきたので治安も悪くない、護衛役としての仕事もここまで来れば殆どないので暇だったのだろう。
そんな二人を見つめながらエミリーはニコッと笑う、そして車両の扉を閉めてしっかりと鍵をかける。
「魔力の知覚が出来る方法はわかったのか?」
「ええ、ご心配なく。ちゃんとローレライさんから教わってきました」
「……どうするの?」
「房中術というのがありまして……ええっと、それを使えば問題なく魔力循環が可能なのですが」
「房中術ってなんだよ? キャロルはわかるか?」
「ん……セックスの、魔術的な……表現?」
どうやら二人には上手く伝わらなかったらしい、魔術師ではないので仕方がないだろう。
「房中術というのは性交渉を行って様々な効果を引き起こす魔術の一種ですね、体調を直したり治癒力を高めたり医療にも転用できる魔術なんです」
逆に相手の生命力を吸い取って殺してしまうこともできるのだが、今は関係がないので二人には伝えない。
「ふ~ん、その房中術ってのを使えば私らにも魔力の運用ができるのかぁ」
「……つまりセックスするってこと」
シャルルとキャロルから、どこか怪しむような視線を向けらてしまう。
「な、なんですか二人とも!? 私にやましいことは何もありませんよ!!」
「ん……まだ何も言ってない」
「そうそう、なんかニヤニヤしながら部屋に入ってきたから少し怪しんだだけだよな……でも房中術かぁ、魔術師って変態が多いって聞くけどそんな魔術もあるんだな、妙に納得できたよ」
再度、二人から怪しむ視線を向けられた、今度は可哀そうな者でも見るかのような感情も交じってしまっている。
「つまりあれか、エミリーは私らとセックスがしたいと……」
「他意はありませんよ! これはとても古くからある儀式であり、先人たちが積み重ねた歴史と経験によって裏付けられた確かな成果があるものなんです!」
「魔術的な意味しかなく、一欠けらの欲望もないんだな?」
「も、もちろんですとも……シャルルは私をなんだとおもってるんですか!?」
「聖職者の皮を被ったド変態」
シャルルにハッキリとそう言われてしまうとエミリーは何も言い返すことができなかった、否定して欲しいのかキャロルに助けを求めるのだが、そんな視線からサッと顔を逸らされてしまった。
「なぁ正直に言ってみろって、本当に魔術的な意味しかないのか? 私らとまぐわう為の言い訳に使ってんだろ?」
「……ありませんとも、ええ、これは本当に必要な儀式なのですから」
「ん……目が泳いでる」
二人の視線は更に疑念が増した、しかしエミリーは一歩も引くことなく儀式の必要性を訴えていく。
「お二人は魔力の運用をまだ理解できていません、器を作ることも魔力の循環も本来ならばしっかりと訓練を積む必要があるんです。その工程を飛ばしていきなり循環させる方法が房中術ですね……そもそもお二人が魔術の訓練をしたいと言ったからこそ私一肌脱ごうと思ったわけでして……確かに私は少々ながら同性愛も嗜みますが、ここで私情を出すほど見境なしではありませんとも」
「だ、そうだぞキャロル」
「……まぁ、そういうことで納得しても良い」
シャルルとキャロルは同時に溜息を吐いて、とりあえずは納得することにした。
二人とも別にエミリーを嫌っている訳ではないのだ、同性愛にも一定の理解があり否定的な感情もない、何だったら両者共に同性愛を受け入れても構わないと考えているのだが、ニヤニヤウキウキしながら距離を縮められたならば少しばかり引いてしまうのも無理はないだろう。
女同士で肌を重ねることに積極的で、わざわざしっかりとした言い訳まで用意してくる周到さに呆れるしかなかった。
「つ~か、回りくどい言い訳しなくても……一発ヤラせろで良いんじゃないか」
「そ、そんなこと言えるはずが……いえ、ちょっと待ってください、本当にそういえば私を受け入れてくれるんでしょうか?」
「どうだろう、セックス自体は嫌いじゃないから、まぁ、その日の気分次第かな」
「キャロルも同意見ですか?」
「ん……私も嫌いじゃない、気分次第」
そこでエミリーは顎に手を当てて深く考え込み、二人の言葉を吟味して最善と思われる答えを導きだしていく。
色々な言い訳が思い浮かんで消えていくのだが、最後に残ったのはとても単純な言葉だった。
「お二人を愛したいです、閨を共にしてください」
「ついに本性を出したな……まぁ良いけどさ」
「ん……偶には女同士でするのも気晴らしになる」
その返答にエミリーは朗らかな笑顔を浮かべた、同性愛を受け入れながらもその在り方に悩んでもいるエミリーにとってハッキリと拒否されなかったことは救いでもあった、自分のコンプレックスが受け入れられたのだから二人の友人には感謝しかない。
エミリーは何でもかんでも難しく考えすぎる、シャルルがそう評するように他者の評価や感情を誰よりも気にして生きている為か、同性愛を嗜むことにも迷いがあった。
ただ二人の親友の前でならそこまで気にする必要もないのかもしれない、ありのままを受け入れてくれるのでエミリーにとってもありがたい存在なのだろう。
「あ、ありがとうございます! 私は本当に良い友人に恵まれました、今後ともよろしくお願いしますね」
「あ~……なんか軽はずみなことを言っちゃったかもな」
「……魔術の訓練だってことを忘れないように」
「それは大丈夫ですよ、私に全て任せてください。万事滞りなく魔力循環を行いますから」
三人の意思が固まったことで後部車両の大部分を占める寝床へと移動する、カーテンで仕切りを作るだけの個室でしかないのだが、今回はそのカーテンを取っ払って寝床をくっ付けて一つの大きなベッドを作る。
寝床に腰を沈めた二人を見てエミリーはニヤニヤした表情を隠すことなく表に出していた、その姿はまるで獲物を前に舌なめずりをする獣のようだ。
普段は真面目で神への祈りを欠かさない敬虔な聖職者でもある友人のそんな一面を見せられて、シャルルとキャロルはギャップと温度差に苦笑う、それでも突き飛ばして拒絶しないのだからこの二人もエミリーほどではないものの、これからの交わりを楽しもうとしているのかもしれない。
「んで、房中術でどうやってするんだ?」
「普通に肌を重ねるだけなので、お二人は何もしなくても大丈夫です」
「……服は?」
「それは脱ぐべきです、当然です!!」
鼻息荒くそう主張する友人に少しばかり怯えながらも二人は服を脱いでいく、そして下着も脱ぎ去って一糸まとわぬ姿になると、舐めるような視線を感じ取って自らの秘所を手で隠すのだった。
「あんまりジロジロ見るなって、恥ずかしいだろうが」
「まぁまぁ、女同士なんですから良いじゃないですか」
「お前が言ってもなんの説得力もないからな」
二人を見習ってエミリーも身にまとっていた法衣を脱いでいく、先程までローレライと肌を重ねていた為かまだ余韻が残っており、そこに更に熱が加わることを予想してか彼女の太ももは股間から流れる愛液によって濡れているようだ。
「エミリー……お前、もうぐちょぐちょじゃん」
「……期待しすぎ」
呆れたように、そして少しばかりの慄きが混じったかのように、シャルルとキャロルは股間を濡らすエミリーを見つめた。
「こ、これは、その……まだ房中術の影響が残っていて……すいません」
儀式が終わった後に体を清めたのだが、どうやらまだ影響が残っているらしい。
「まぁ、これはこれで良いんです、情欲は房中術を行う上でとても重要なものですから、これで準備も必要ありません」
体に残った熱を血の流れの様に動かして掌へと集めていく、そして彼女の指先はローレライを真似るようにシャルルの背中を撫でまわす。
効果はまさに劇的だった。
「ーーーーッッんきゅうぅーーーッ!?」
ただ指先で撫でられただけだ、それだけなのにシャルルは形容しがたい悲鳴と共に絶頂へと至ってしまう。
過程も工程も無視して、いきなり強制的な絶頂へと導かれて……いや、放り込まれてしまったのだ、何の準備も予兆もなく爆発した快楽は背筋を駆け抜けて受け入れられないほどの衝撃をシャルルの頭に突き刺してしまった。
互いに求め合い、呼吸や体温を合わせて至る絶頂とは大きく異なる、背後から殴られるかのような不意打ち気味の快楽は彼女がこれまで味わったことのない痺れでもある。
ビクビクと体を震わせながらベッドに沈み込んだシャルルを見て、エミリーは自分の指先を見つめながら首を傾げていた……どうやら想定よりも力の流れが大きかったらしい。
習得したばかりの魔術なので制御が甘いことは仕方がないとも言えるのだが、姉が指先一つで沈められた光景を見せつけられて、キャロルは恐ろしい何かを垣間見たかのように冷や汗を流して戦慄してしまっていた。
軽い気持ちで受け入れてしまったが、もしかしたら自分たちが相手にしているのは淫魔の類なのかもしれない、そんなことを思いながらベッドの隅へ後ずさるキャロルだが、獣が好物の獲物を逃がす理由がない。
「さぁ、キャロル、貴女もこちらにいらしてください」
「……ん」
それは不思議な声色だ、強く言われている訳でもないのに強制力がある、まるで魅了や支配の魔術でも掛けられているかのようにキャロルの体や魂を縛っている。
これもまた房中術の効果の一種なのだろう、それを行使するエミリーの発する体温や声や汗などがある種の媚薬のような役割を果たしてキャロルに影響を与えているのだ。
つまり、相手を酔わせることができる、それこそ魔性の女であるローレライのように。
「ふふふ、前から思っていたことだけどキャロルはお人形のように可愛いわね」
「んッ……ふッ……んッ、んんッ!」
シャルルを沈めたことでコツを掴んだのかキャロルに触れる指先は優しく甘い、しかしそこから流れる力は間違いなくキャロルの体を侵食しているのだろう、指先が揺れ動く度に彼女の幼い体はゾクリと震えることになる。
流れ込んでくるそれは毒と言うべきか薬と表現すべきなのか、どちらにせよキャロルの体に広がる何かは熱となって彼女の体と魂を縛っていく。
頭がボウっと霞んで思考が纏まらない、エミリーの指先だけを追い求めて視線は釘付けとなっている。
「胸もくびれもお尻も、小振りで可愛らしいです。こんなに華奢なのに逞しい男の人に抱かれるなんて大変よね」
だから今日は優しく愛してあげる、エミリーに耳元でそう囁かれると、熱っぽい吐息と毒のように染み渡る声によってキャロルは浅くだが快楽に震えることになった。
声と熱と指先だけで子宮が熱を求めてキュンっと引き締まる、男と交わって絶頂寸前まで愛された時のように、いやらしくエミリーの体を求めているようだ。
魔術師ではない、ましてや魔力の運用すら知らない二人は、エミリーからしてみれば盾も鎧も武器すら持たない隙だらけの存在だ、文字通り指先だけで制圧できてしまうのだろう。
熱と快楽に震えるキャロルの華奢な体を抱き寄せる、羽交い絞めにする形だ。
「んやぁッ……エミリー……これ、ダメ……うっッ……体、おかしい」
「おかしくなんてありませんよ、キャロルの体はとても素直です……ほら、これが欲しいんでしょう?」
人差し指がキャロルの目の前で揺れ動く、その行方を追って視線も右往左往して喉を鳴らす。
「ここが良いのかしら?」
その指先は僅かな膨らみしかない胸の先端にある乳輪を撫でまわした。
「んんッ!? んッ、んッ……ふぅ~、ふぅ~……う、ぁ」
「それとも、やっぱりこっちかしら?」
乳輪からあばらを撫でて舌に滑り落ち、へそを超えてその指先は股間へと潜り込む。
「やあぁッ!? ダメッ……摘まんじゃだめ!! やだッ……ぐりぐりしないで!」
あまり感情を表に出さず表情も変わることが少ないキャロルだが、自分の最も敏感な部分を弄ばれると首を左右に激しく振りながら走り抜ける刺激から逃れようと体を捩った。
男との交わりでもそこをいじられ舐められることもあったが、房中術で快楽が増幅されているので雷でも落とされたかのような刺激となって体中を走り抜けていく。
「あらあら、そうよね、やっぱりここよね」
自らの指先で悶え苦しむキャロルに気分を良くしたのか、エミリーは唇の端をペロリと舐めると今度は二本の指で挟み込んだ。
「んやぁぁッ~~!? ダメダメダメッ! やだ、こんなの……やだ!!----ッッんんんんん!!」
羽交い絞めの状態で指先は股間をいじりながら、ゾクリゾクリと体を反応させるキャロルの首筋へと舌を這わせると、抵抗虚しく幼い体は潮を吹いて快楽を爆発させるのだった。
あまりにも一方的で暴力的な快楽は簡単にキャロルの意識を深い沼へと引きずり込んでしまうのだが、がっくりと力を無くして項垂れる彼女の体をエミリーは容赦なく引き起こす。
房中術によって体中に魔力を流してキャロルの意識を覚醒させたのだ、寝起きのようにぼんやりとした瞳のキャロルは、肩を大きく動かしながら呼吸を繰り返して余韻を味わった。
「う……あ、あぁ……はぁ……はぁ……やだ……もう、許して」
背筋をゾクリとした感触が駆け抜ける、快楽とは違うそれは再びエミリーの指先が動き出したことによる恐れからだろう。
「ふふ、ごめんなさい、優しくするって言ったのについ激しくしちゃいました……お詫びにもっと気持ちよくしますから」
「えぇ? 待って、エミリー……ちょっと休ませて」
「ふふ……ダメです」
普段の真面目でしっかりとした表情とは程遠い、嗜虐的で蠱惑的な笑顔をエミリーは見せつける、その姿はまさに淫魔と呼べるものだった。
「でも私たちだけで楽しむ訳にはいきません……シャルル、そろそろ起きてください」
先程、加減を知らない未熟な魔術師の一撃によって、指一本でベッドに沈んだシャルルがその言葉でピクリと体を反応させた、既に魔術的な路がエミリーとの間で繋がっているので触れずともシャルルの体を操ることは容易いらしい。
意識を失っていたシャルルはエミリーに操られて目を覚ます、そして視界に飛び込んできたのは羽交い絞めにされて震える妹の姿だ。
「……キャロル、お前、大丈夫か?」
「はぁ……はぁ……もう、だめかも」
「エミリー……もうちょっと加減してやれよ」
「加減していますとも、でもお二人が可愛すぎるからつい我を忘れてしまって」
クスクスと、やはり淫魔のように笑うエミリーの顔はシャルルがこれまで見たことのない表情だった、思わず本当にこいつはエミリーなのかと疑ってしまうほどにかけ離れているのだ。
普段はもっと穏やかで神への祈りを欠かさない友人が、にちゃりと言う表現が似合うような笑顔をこちらに向けている、恐れるなと言うのは酷だろう。
「今度は三人で愛し合いましょうね……シャルル、こちらにいらしてください」
路を通って力が流れ込んでくる、それはシャルルの体を病のように蝕んで彼女の体や魂を縛りつけ、確かな強制力となってしまった。
抵抗しよう等という考えすら思い浮かばない、酩酊したように霞む思考のまま這いずるように二人に近づいてキャロルの体を前後から挟み込む。
珍しく涙目になっている妹の顔はとても可愛らしい、フルフルと弱弱しく首を振る姿も相まってシャルルもまた嗜虐的な欲望に囚われていた。
その考えや想いは普段の彼女からは縁遠い、魔術的な路を伝ってエミリーの考えや趣向が流れ込んできていることが原因だろう。
シャルルは両手でキャロルの頬を掴むとそのまま自分の唇へと引き寄せてキスをした、啄むような優しいものではなく舌を割り込ませて唾液を絡ませる激しいものだ。
「んむッ!? んぐ……んん、ちゅじゅる……んッ……んんんッ!」
「ちゅ……れる……ちゅ、ちゅ……んく……んむ……んぁ」
姉妹の激しいキスを眺めていたエミリーは満足そうに頷いている、どこか尊いものでも発見したかのようにご満悦の様子だった。
このまま眺めていたい思いもあるが、せっかく愛し合っているのだから自分も参加したい、だから彼女の指先はキャロルの股間と僅かな膨らみの先端をまたも弄ぶ。
「-----ッッんむん!?」
正面からは姉が口内を犯し、背後からは友人が股間と乳首を弄り回してくる、二人の凌辱者に挟まれているキャロルはこの場で最も弱い立場にあるのだろう。
シャルルの舌が自らの舌を絡めとる度に、エミリーの指先が敏感な部分を挟む度に、絶頂に体をガクガクと反応させて苦しみ意識を失うのだが、その度にエミリーによって覚醒させられて一向に休むことが出来ないらしい。
「----ッ! -----ッッ!」
このままでは気持ちよくて死ぬ、白目をむきながらも必死に逃げようとするのだが前後から挟まれた状態ではどうしようもなかった。
ジタバタ暴れながら何度も何度も痙攣して、終わることのない絶頂を経験しながらも気を失うこともできない……ここは淫獄だ。
「あぁッ! ひゅぐぅ、これ、凄い……やぁ、やあぁ……これ、またイッちゃいます!」
だが淫獄にいるのはキャロルだけではない、彼女を背後から抱きしめて指先で愛撫していたエミリーもまた絶頂を感じ取っている、房中術で作った路を伝ってキャロルの快感が逆流するように流れ込んできている。
「んんんんッ!! んんんんんんん!?」
それはシャルルも同じだ、キャロルからエミリーへ、エミリーからシャルルへ……そしてシャルルからキャロルへと快楽は循環しているのだ。
心も体も完全に溶け合って思考も交じり合う、この快楽はどこからやって来たのか、この痺れはどこから生まれたのか、この絶頂は誰のなのか。
身体と言う境界線は既に無くなっている、魂もまた溶け合って、思考や記憶が快楽と魔力の循環と一緒に互いに流れ合って同化していく。
相手が何を思い、どんな経験をして、どう生きているのか、何を大切にしているのか、ここまで混ざり合えば最早三人ではなく一つの生命体であり個人とさえ言えるだろう。
「あッ! アッ! あぁッ! いく、イクイク、またーーーーッッんくんんんん!!」
またエミリーから生まれた絶頂が二人へと伝播した。
「--------ッッ!!」
その快楽の津波を受け止めて挟まれたキャロルは腰が折れるのではないかと思う程に仰け反って絶頂すると、それがまた二人へと流れ込む。
「ぷはッ! あッくッ! うぁぁ!! ダメ、これ、帰って来れなくなる! やだ、やだ! 誰か助けーーーーーうやぁぁぁあぁあああ!!?」
キャロルの絶頂を受け止めてシャルルもまた体を震わした、その痺れがまた二人へとぶつけられて、それが自分へと帰ってくることになるのだ。
快楽を投げ合い押し付け合う、脳が焼き切れるのではないかと思う程の熱量が三人の体を絶え間なく駆け巡り、そこに微塵も隙間が存在しない。
押し付けても押し付けても路を伝って津波の如くやって来る絶頂はどんどん膨らんでいき、三人の少女の体だけでは受け止めきれない程に高まった時に、それはやってきた。
誰の頭の中で起こったのかわからない、二人に挟まれているキャロルかもしれないし、背後のエミリーなのかもしれない、シャルルという可能性もある。
いや、誰かではない、三人は完全に溶け合っているのでこれは彼女たち全員の頭で鳴り響いた音なのだろう。
「プツン」という限界まで糸が引っ張られて断たれてしまったかのような音が、全員の頭の中で生まれたので。
そこが限界の限界、それ以上先は精神の崩壊だ、ある種の防衛本能が最後警告としてそれを鳴らしたのかもしれない。
「「「やぁぁぁああぁぁぁぁああ!!!?」」」
最後の絶頂は三人同時だった、幸いにもその音の先に転がり落ちることなく道は断ち切られたのだった。
キャロルは意識を失った、シャルルも意識を手放した、ただ魔術師であるエミリーだけは房中術による耐性があったのかなんとか踏みとどまっているらしい。
それでも絶頂につぐ絶頂は少女の体を前後不覚に落とし、まともに立つことさえできないままベッドに沈めるのだった。
「はぁ……はぁ……ふ、ふふふ」
同じように倒れ伏している友人の横顔を眺めながらエミリーは笑った、思っていた以上の快楽を得られたこともそうだが、魔術師として一つ成長できたという確かな実感が彼女にはあるのだろう。
エミリーの両手は二人に伸びてその体を両手に抱き寄せる、右手にはシャルルを、左手にはキャロルを手繰り寄せて両脇に姉妹を侍らす。
ぐったりしたまま意識を失っている二人はエミリーの鎖骨を枕にしたままなすがままだ。
「ふふ、シャルルは綺麗よ」
エミリーの唇がシャルルのおでこに吸い付いてちゅっと音を立てる。
「キャロルは可愛らしいわ」
そう言って今度はキャロルのおでこにキスをした、そんなエミリーの顔はとても満足げなものだった。
彼女の中にあるのは確かな万能感だ、今なら何でもできるような根拠のない自信がある、炎の魔術を始めて行使した時もその巨大さに魅せられて似たような心情になっていたのだが、今はそれ以上だ。
おそろしい魔術を知ってしまったという恐れはない、彼女の中にあるのはこの力をどう運用するのかという未来予想図だけだった。
この魔術は自分によく噛み合っている、まだまだ少女の領域をでないエミリーは房中術の高揚感も合わさって未熟故の万能感に酔っており、端的に評価すれば調子に乗っているのだろう。
そんな彼女の尻を叩くかのように、鉄槌を下すものがいた。
「……エミリー」
「あ……シャルル、起きたのですね。ふふ、よかった、これでまた楽しめます」
淫魔のような笑顔を向けてくるエミリーの両肩を、シャルルは伸ばした両手でがっちりと掴んで離さない。
「シャルル? どうしたのですか?」
「ふん!!」
返答は頭突きで返された、額と額が勢いよくぶつかり合って鈍い音が室内に響き渡り、エミリーは大きなタンコブを作って意識を失うのだった。。
「このド変態」
「すいません!! 本当にすいません!!」
「ん……調子に乗りすぎ」
「うぅ……違うんです、正気じゃなかったんです!」
エミリーは二人の友人から説教されていた、ジンジンと痛む額を床に押し付けながら許しを願うかのように祈りを捧げており、そんな彼女をシャルルとキャロルは呆れたように見下ろしている。
呆れと、少しばかりの侮蔑と恐怖が混じった視線だ、性的な趣向に関して少しばかり温度差を感じるエミリーであったが、その温度差が二人の予想よりもずっと離れていたので引かれているらしい。
何より房中術という魔術を知った彼女は、最早悪魔の一員とさえ言えるような恐ろしさを秘めている、このまま調子に乗られたままではマズイと思ったのか、二人による折檻は厳しいものになるだろう。
額のタンコブはシャルルが、キャロルからはお尻を数発叩かれているようだ。
「房中術って魔術は恐ろしいのな、おかげで死にかけたっての」
「ん……本当に苦しかった」
「……すいません」
「反省しろ反省!! そして二度と調子に乗るな、ワタシらはエミリーに殺されそうになったんだからな」
「……房中術は……うん、禁止した方が良い」
「そ、そんな!? せっかく魔術の深淵を垣間見たというのに!」
「はぁ、それで殺されたらたまったもんじゃないっての」
「……残念そう、本当に反省してる?」
「しています! 恥ずかしいぐらいに調子に乗っていた自覚もあります、これからは本当に気を付けますから許してください!!」
姉妹は「どうする?」とでも言いたげな視線でアイコンタクトをすると、同時に大きな溜息を吐くのだった。
「まぁ……おかげで魔力の知覚っていうのもできたからな」
「ん……罪は功績で打ち消された」
どうやら裁判の結果は無罪となったらしい、許しを得られてエミリーはようやく床から顔を上げた。
「ゆ、許してくださるのですか?」
「……エミリーが、淫魔であることは変わらないけどね」
「あぁ、完全に邪悪な魔術師だったよな、こえーよコイツ」
シャルルは自分の指先を見つめて集中すると、そこに収束された魔力をデコピンでエミリーのタンコブ向けて弾いてみせる。
キャロルも真似して同じように収束した魔力をエミリーへとぶつけている、不可視の力の流れは前髪を揺らすことくらいしかできないが、それでも以前はこんなことすらできなかったことだ。
魔術とさえ呼べない力の放出でしかないが、確かな一歩であった。
「とりあえず、房中術を使う時は注意してくれよ? 私は魔術とかあんまり詳しくないからわかんないけどさ、危ないもんだってことくらいは理解できるぞ」
「はい、気を付けます……本当に、本当に反省していますから」
「ん……ヤリすぎたら死ぬ、注意してね。私たちも監視するから」
「重ね重ねご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ありません……これからもどうかよろしくお願いします、未熟な私を見捨てないでください」
涙目で縋られて、二人はまた大きな溜息を吐いた。
もしかしたらエミリーは自分たちがしっかりと手綱を握らなければ、いつか暴走して本当に邪悪な魔術師になるかもしれない、そんな心配が二人にはあるのだろう。
ちゃんと見張っておかなければならない、シャルルとキャロルは決意を新たにするのだった。
裁判が終わったので三人は情事の事故処理に奔走することになる、色々な体液でべとべとに汚れたシーツを取り換えて、窓を開いて籠った熱や匂いも入れ替える必要があるだろう。
エミリーはタンコブに治療魔術をかけながらガラス窓を開く、すると春の暖かな風と共に外に広がる光景が飛び込んできた。
「あ、聖都リーグロンデルが見えましたね」
それが春風のキャラバンの、次の目的地である。