※この作品はR-18です。

商人と冒険者と娼婦   作:にやまな

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第十四話 祝祭に向けて エミリー編 中

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 祝祭に向けてエミリーがやるべきことは多岐に渡る。

 

 

 

 日々の公演を始めとして書類や帳簿の管理に精査、演出役として舞台で活躍することは勿論のことそれ以外にも仕事は多い、貿易品の護衛や取引の為に聖都の商人や他所のキャラバンとの折衝もあれば、派閥や広場を間借りする為の挨拶回りに加え、夜には娼館に出て働いているのだから忙しいという一言に尽きるだろう。

 

 

 

 それ以外にも細々とした仕事が多いエミリーなのだが、今はそれらの基本業務に加えて娼婦の神殿への出向という仕事もあった。

 

 

 

 春風のキャラバンがそちらの儀式再現を手伝うことになったので細かな打ち合わせを行う代表者に彼女が選ばれた訳だ、本来ならば組織を代表しての立場となるのでローレライかキララ。あるいは他の経験豊富な団員が出向くことが基本であったのだが、一人前と認められたことで今回はエミリーはその折衝役となったらしい。

 

 

 

 自分一人で、という不安もあったがいつかはやらなくてはならないことなので、覚悟を決めてエミリーは一人で娼婦の神殿とキャラバンの間に立っているのが現状である。

 

 

 

 今日もまた同じだ、昼に公演を合わらせてラシュリーとミカエラに雑用を奪われて、彼女は娼婦の神殿へ来ている、ここでやるべきことは儀式再現を行う上で必要な細かな手順や注意点だろう。

 

 

 

 この儀式はかつて始まりの魔術師と呼ばれた人物が行った大規模な魔術的儀式を再現しているので、言わば奉納の踊りや戴冠式のような特別な時間を形成する必要があった。

 

 

 

 王冠を投げ渡して「今日からお前が王様だから」では意味がなく、神々の前で祈りや舞を奉納せずにお茶しても締まらないだろう。

 

 

 

 なのでこの儀式再現も単純に人数を増やして乱交、という訳にはいかないということだ。

 

 

 

 指先から、首の角度、衣装から化粧、そして踊り、一つ一つの動作や形に意味があり、積み木を組み立てて大きな塔を作るかのような慎重さが求められることになる。

 

 

 

 エミリーは娼婦の神の神殿長である女性に教えられた通りの舞を緊張しながらも披露しているようだ、まだぎこちなさが残る動きであったが、神殿長は全ての動作を終えた彼女に拍手を送るのだった。

 

 

 

「とてもお上手です、まだ初めて数日とは思えません」

 

 

 

「ありがとうございます、ですがまだ至らない箇所も多いかと」

 

 

 

「それでも数日でこの完成度ですもの、十分すぎるほど……後は細部だけですので細かな調整だけで済むでしょう」

 

 

 

 神殿の長はそう言って微笑んだ、エミリーもまたつられて微笑んで見せた。

 

 

 

「今回はこちらの依頼を引き受けてくださり、本当に感謝しているんですよ。エミリー様のような若くて経験豊富な方がいらしてくれて助かります、このようなことに巻き込んでしまって心苦しい限りなのですが……」

 

 

 

「いえ、そんな、我々はしっかりと報酬を貰う立場ですので心苦しく感じられる必要はないかと……それに私個人としても儀式再現に興味がありましたので、とても有意義な時間を過ごせています」

 

 

 

「そうですか? そう言ってもらえるのならばこちらも嬉しいですね」

 

 

 

 嘘ではない、学術的な興味から娼婦としての興味もある、言葉にはしないがエミリーはセックスを好んでいるのだから。

 

 

 

 神殿長は休憩にしましょうと言ってからエミリーにお茶を振る舞ってくれた、そして後方に振り返ると神殿の間を覗き込むような視線を見つけて手招きをするのだった。

 

 

 

「マリー様もいらっしゃいな、そんな所で盗み見しなくとも堂々と見学なされて構わないのですからね」

 

 

 

「……あ、ありがとうございます、神殿長」

 

 

 

 エミリーの舞を扉の隙間から見ていた瞳はマリーのものであった、彼女は観念したのか顔を赤くしながらこちらに歩いて来る。

 

 

 

「すいません、盗み見るつもりはなかったのですが、なんだが神聖な雰囲気があって入室しづらく感じてしまったんです」

 

 

 

「良いんですよ、さぁ、マリー様もお茶をどうぞ」

 

 

 

「いただきます……あ、こちらは生命神の神殿からの感謝状とお土産でございます、お納めください」

 

 

 

 席につくときにマリーが手渡したのは書類と革袋だ、それらを受け取った神殿長は祈りを捧げてから受け取るとマリーに一礼をした。

 

 

 

「生命神の神殿でも意見が分かれていると聞きましたが……纏まったのですか?」

 

 

 

「はい、その、なんとか……聖女として処女性を守ることも大事ですけど、やはり私は魔力がどうしても少ないので、こちらで面倒を見て貰えれば一つ成長できるかと……その、ご迷惑をおかけします」

 

 

 

「こちらはなにも問題はありませんとも、しかし本当によろしいのですか? 魔力が少ないといってもマリー様はまだ成長期、このまま様子見でも私は問題ないと思うのですが」

 

 

 

「生命神の神殿でもそういう意見はありました……ただ、私は数年前から魔力と器の拡張が打ち止めになってしまったようなんです、おそらくはもう……」

 

 

 

「そう、ですか……そちらの方針はわかりました、しかしマリー様のご意思は問題ないのですか?」

 

 

 

「私は、はい……神の僕として生きることを決めております、一人でも多くの方を癒せるのならばその方が……も、もちろん! こちらで働く上で経験不足なことも自覚していますが、今よりも成長できるのなら、はい」

 

 

 

「そうですか、わかりました……生命神の神殿に返答を用意しますので、少しだけ席を外しますね……ああ、そうだエミリー様、こちらのマリー様にキャラバンのお話を聞かせてあげてくださいな」

 

 

 

「わかりました、お任せください」

 

 

 

「マリーさま、こちらはキャラバンから来られている……あら、お二人は面識が?」

 

 

 

 二人が微笑み合っている姿を見て、神殿長はそんな疑問をぶつけてくる。

 

 

 

「はい、数日前に少しだけ縁がありまして……エミリー様、あの時は本当にありがとうございます」

 

 

 

「ほんの少しだけお手伝いさせて貰っただけですよ、どうかお気になさらず」

 

 

 

「そんなことはありません、エミリー様が魔力を分け与えてくだされなければ、あの大工の方々たちを救えなかったでしょう、感謝してを全く足りません」

 

 

 

「あぁ、そう言えば大勢のケガ人がでたと聞きましたが、それをお二人で癒されたのですね」

 

 

 

 神殿長の女性は二人の言葉に納得したのか、大きく頷いてその場を後にするのだった。

 

 

 

 二人だけになったエミリーとマリーはまた微笑み合ってお茶が置かれた席に付く。

 

 

 

「改めてお久しぶりですエミリー様」

 

 

 

「はい、マリー様もお久しぶりです……と言ってもほんの数日ぶりですけどね」

 

 

 

 お茶を飲んで一息つくとマリーは僅かに顔を赤くして視線を彷徨わせてしまう、おそらくエミリーが纏っている儀式用の衣装を直視できないのだろう。

 

 

 

 彼女が着用しているのは儀式で用いられる歴史と伝統ある装いではあるのだが、目的が目的なだけに男の劣情を誘うように薄着であった、エミリーが娼館で客引きを行う時のように、下着と向こう側が透けて見える薄い布地のようなあからさまな恰好ではないものの、儀式の衣装もやはり肌色が目立つかのような構造だった。

 

 

 

 胸や秘所などの大事な部分は隠しているものの、へそや鎖骨などは露出しており背中部分も一面肌色だ、足もむき出しにされており白い肌がよく目立つ。

 

 

 

 大事な部分を隠す布地はキラキラと輝きながら、金糸と銀糸で細やかでありながら精巧な意匠が作られており、そこに儀式用の小道具や装飾品などを身に付けて神殿で舞えば、なんとか儀式になるだろう。

 

 

 

 これが神殿であればそういう認識を持つことができるが、この格好で外を出歩けば間違いなく客引きの娼婦と間違えられてしまうだろう。

 

 

 

 だからマリーも視線の持っていき場がないのか、キョロキョロと瞳を彷徨わせながら顔を赤くしている……しかし興味自体はあるのかエミリーの衣装に釘付けになったりもしているようだ。

 

 

 

「だ、大胆な衣装です!」

 

 

 

「そうですか? 豪華だとは思いますが、そこまで大胆ですかね」

 

 

 

 この辺りの感覚は彼女が娼婦として働いているからなのか、下着同然の姿で男を誘う格好に慣れているが故に、今の衣装は彼女にとってそこまで大胆なものであるという認識がないのだろう。

 

 

 

「大胆です、とっても……うわぁ、こ、こんな格好で……娼婦の神殿の儀式再現は知っていますが、このような装いなのですね」

 

 

 

「ふふ、私も本で読んだことがあるだけで実際に見たのは最近になってからなんです、長年に渡って受け継がれてきた物のようですし、それに袖を通すことができるのはとても光栄だと思います」

 

 

 

「あ、この衣装を纏っているということは、その、エミリー様は……えっと、儀式に参加なされるのですか?」

 

 

 

「ええ、こちらの神殿が人手不足ということで私が属しているキャラバンに依頼があったんです」

 

 

 

「キャラバン……あぁ、そう言えば、エミリー様は旅の一座におられるのでしたね」

 

 

 

「興味がおありですか?」

 

 

 

「はい、あります、世界中を旅されているんですよね、私はこの聖都で生まれて暮らしているので外に出たことがないんです」

 

 

 

 マリーの瞳が輝いた、どこか憧れの女性を見るかのような表情にエミリーは少しだけ困りながらも、せっかくなので旅の話をすることになった。

 

 

 

 魔術師の街と呼ばれる場所で生まれて、炎を柱とする魔術師の派閥に属した修業時代、そこからキャラバンに入るまでの経緯や旅の話、そしてこれまで経験した戦いや危険な状況などを説明する度に、マリーの瞳は輝いていく。

 

 

 

 神殿で育った彼女にとって外の世界は完全に未知のものなのだろう、寝物語の冒険譚を聞くかのような感覚なのかもしれない。

 

 

 

 塩の海賊や武神カムラーンとの戦いや、これまで渡り歩いた街や都市の特徴や歴史、そこで働いた経験など、全てがマリーにとっては新鮮なのだろう。

 

 

 

 色々な話を聞かせたが、マリーが一番興味を引いたのは北の国での仕事の話だった。

 

 

 

 深い雪に閉じ込められてどうしようもなくなった時、なんとかそれを超えようと冬の砦で娼婦として働いた時の話であったのは少々意外でもある。

 

 

 

「そ、それで、エミリー様もその砦で娼婦として働いたのですよね?」

 

 

 

「はい、それまでは娼婦の経験がなかったので少しばかり緊張しましたが、友人が一緒だったのでなんとかなりました」

 

 

 

「うわぁ~……凄いです、エミリー様は大人の女性なのですね」

 

 

 

 二人の年はそう大きく変わらないが、確かに性経験という部分では大差があるのかもしれない。

 

 

 

「大人なんて、そんな……まだまだ未熟ですよ」

 

 

 

「それでも私よりはずっと大人です……年齢も近いのにあれだけ豊富な魔力も持っていて、しかも世界中を旅される冒険者で、その、娼婦としても働かれているなんて……」

 

 

 

 そこでマリーは少し視線を下げて悩みような素振りを見せると、意を決したかのようにこう尋ねてくるのだった。

 

 

 

「あ、あのエミリー様! その、宜しければ娼婦の仕事に関して詳しく教えて貰えないでしょうか?」

 

 

 

「それは、構いませんが……興味がおありなんですか?」

 

 

 

「興味というか……その、これから必要になると思うので」

 

 

 

 それは生命神の神殿に所属している彼女が、この娼婦の神殿にいることの理由なのかもしれない。

 

 

 

「その、ご存じだと思いますが、私は魔力が少なくてあまり大勢の方を癒すことができません、どれほど強力な癒しの魔術を使えたとしても一日に使える魔術は数回だけなんです」

 

 

 

 それはわかっていた、だからこそエミリーが魔力を分け与えることであのケガ人たちを癒すことができたのだ。

 

 

 

「まだ成長期だという意見も神殿内でありますが、でも数年前から魔力も器も全く大きくならないのです」

 

 

 

「それで娼婦の神殿に……あ、もしかして房中術を学びに?」

 

 

 

「はい、こちらの神殿長は房中術に深い理解があるということなので、お世話になろうかと」

 

 

 

 魔術師として更なる高みを目指したいということだろう、房中術を知って実際に魔力もそれを貯蔵する器も大きく拡張されたエミリーからしてみれば、その効果をしっかり理解できているので否定などできない。

 

 

 

 きっと彼女も悩みに悩んだ結果の答えなのだろうと察することができる、癒し手として更なる成長をしたいという思いは、魔術師として様々な経験や知識を蓄えたいというエミリーにも通じる所があった。

 

 

 

 ならばエミリーとしては嫌とは言えない、純粋な瞳で見つめられれば拒否などできそうにないだろう。

 

 

 

「わかりました、私に教えられることならばなんでもお聞きください」

 

 

 

「ありがとうございます、ええっと、何から聞けば良いのか……あ、そうだ、やっぱり初めての時は、その、痛みがあると聞きますが……どれほどのものなのでしょうか?」

 

 

 

「え、あぁ、そうですね……私の時は少しだけ苦痛があったかと」

 

 

 

「や、やっぱりそうなんですね」

 

 

 

「ですがとても慣れた方だったので、最初だけですね。後は……その、溶けるような快楽を……はい、感じました」

 

 

 

 喋っている間にエミリーも羞恥が大きくなってきたのか顔を赤くしていた、他人に自分の性経験を説明するような状況が特殊なので仕方がないだろう。

 

 

 

 しかし聞かされている方のマリーは更に顔が赤い、両手で顔を覆い隠しながら「おぉ」とか「うわぁ」と呻きながらもしっかり耳だけはエミリーの言葉に傾けている……彼女も興味が大きいのだろう。

 

 

 

 それからは、お互いに顔を赤くしながらも赤裸々にセックスの話を続けることになる、印象に残っている交わりや男性のこと、最も心地よかった快感や、男性を喜ばせるテクニックなど様々だ。

 

 

 

 まだまだ娼婦としては成熟には程遠いエミリーだが、それでも拙いなりにこれから娼婦として働くであろうマリーに自分が知る限りの説明をしてあげた。

 

 

 

 行為の時は緊張しないこと、体を固くすれば苦痛が大きくなるので脱力が重要等と、自分の経験談だが決して無駄にはならないだろうと彼女は考える。

 

 

 

 目の前の少女がこれから男と交わるのかと考えると、エミリーは鼻息が荒くなって興奮してしまうのだが、本人に自覚はないらしい。

 

 

 

「あら、とても楽しそう」

 

 

 

 席を外していた神殿長が二人の前に帰って来る、彼女は手に持っていた封筒をマリーに差し出して席につく。

 

 

 

「こちらを生命神の神殿長に渡してください」

 

 

 

「わかりました、お預かりします」

 

 

 

「ふふ、お二人はとても会話が弾んでいましたね」

 

 

 

「はい、その、恥ずかしながら、娼婦として働く上で不安もありましたのでエミリー様の経験を聞かせてもらいました」

 

 

 

「ああそうね、やはり初めてはどうしても不安が付きまとうものよ……マリー様が働く上でしっかりと補助するつもりではあるけど、こればかりはね」

 

 

 

「簡単な仕事ではないということはわかっていたのですけど……」

 

 

 

 悩みと不安を拭い去れないマリーに、彼女の身柄を預かることになった神殿長は顎に手を当てて深く考え込む。

 

 

 

「そうねぇ……いきなりお客様の相手をするよりは、一度娼婦が働いている所を見学した方が良いかもしれないわね」

 

 

 

「け、見学ですか?」

 

 

 

「ええ、男女の交わりというものは簡単なことではないから、心構えや予行演習は必要でしょう? 言葉で説明するのも良いけど目で見てみるのも重要よ……でも困ったわね、今は忙しい上に人手が足りなくてね」

 

 

 

 そこで神殿長の視線はしばらく彷徨ってエミリーに辿り着く。

 

 

 

「エミリー様、宜しければこちらのマリーに娼婦の仕事を見学させてくれませんか?」

 

 

 

「わ、私がですか!?」

 

 

 

「はい、本来ならばこちらの娼婦がマリーに仕事の手ほどきをすることが筋なのですが、私は祝祭に向けた神殿の会合で忙しくて時間が取れそうにありません。それに加えてここの娼婦の多くが未亡人や孤児が多いのです……彼女たちは、普段はそれぞれ別の仕事をしていてやはり時間はさけません」

 

 

 

 この娼婦の神殿が未亡人や孤児の救済場所であり娼婦として働いてその立場を手厚く保護していることはエミリーも知っている、彼女たちの多くが兼業娼婦であり毎日神殿に顔を出す訳ではなく生活に困ったら娼婦として働くことが基本となっている。

 

 

 

 だからなのかこの神殿は慢性的な娼婦の人手不足が続いている、弱者救済として娼婦を守ることはしても娼婦を働かせて利益を上げる「店」ではないのでこればかりはどうしようもない。

 

 

 

 今日は神殿で娼婦として働いて欲しいとお願いすることはできても、働けと命令することはできないのだ。

 

 

 

 優先すべきは利益ではなく娼婦として働かなければならないものの救済、そして祈りである。

 

 

 

 専業娼婦がいないので人手不足は仕方がないだろう、だからこそ神殿長はエミリーに頼ったのかもしれない。

 

 

 

「エミリー様は経験豊富なようですし、マリー様に是非手ほどきをして欲しいんです。当然ながら無報酬と言う訳にはいかないのでしっかりと報酬は容易致します……そうですねぇ、貴女は魔術師とのことですし、こちらの神殿に保管されている魔術書などの閲覧権限などはどうでしょうか?」

 

 

 

 エミリーは耳を疑った、娼婦の神殿にある魔術書とはすなわち房中術を柱とする魔術師の派閥が書き上げた門外不出の物であるからだ。

 

 

 

 それを部外者であるはずの自分が見れる、本来ならば高額の寄付を行うか神殿に属して位を上げる必要があるのだが、それを見せてくれるのだという。

 

 

 

 正直に言えば喉から手が出る程に望外の展開だ、しかしエミリーは興奮をなんとか引き留めて冷静さを取り戻す。

 

 

 

「よ、宜しいのですか? 部外者に見せて良い物ではないかと」

 

 

 

「あぁ、それはご安心ください、本当に危険な魔術書に関しては強力な呪いがかけられていて簡単には見れないようになっているので、エミリー様が見れるのは房中術の基本と応用だけですね、それでもとても有意義なものだと思いますよ」

 

 

 

 確かに、まだ房中術の基本しかしらない彼女にとってそれらは必要なものだろう、独学で学ぶよりも先人たちの残した歴史を見ながらの方が有意義だ。

 

 

 

 本当に危険な知識を見れないのは残念ではあるが、それを知るということは房中術を柱とする魔術師たちから命を狙われることになるので寧ろ見れないのならば安心できる。

 

 

 

「とても光栄なことだと私は考えます。わかりました、私でよければマリー様に娼婦の仕事の手ほどきを行います」

 

 

 

「マリー様もそれで問題ありませんか?」

 

 

 

「は、はい! エミリー様なら信頼できますし、問題がないのであれば教えて貰いたいです」

 

 

 

「ふふ、わかりました。ではお客様が来られたら部屋をお貸しますので、その時に声をかけさせてもらいますね」

 

 

 

 神殿長の女性が懐から取り出した物は小さなカギだ、それをエミリーに手渡して来る。

 

 

 

「こちらが書庫のカギとなります、好きな時にいらっしゃってください。あぁ、分かっているとは思いますが神殿の外に持ち出すことは禁止です、メモに記すのも禁止されています……理由は言うまでもありませんね?」

 

 

 

「はい、ご安心ください、神々に誓って禁足事項を乱すようなことはしません」

 

 

 

「貴女を信頼します。ではマリー様のことをよろしくお願いします」

 

 

 

 神殿長はそう言い残してその場を去った、残された二人は少しだけ顔を赤くして照れながら視線を重ねる。

 

 

 

「よろしくお願いいたしますエミリー様、勉強させてもらいますね」

 

 

 

「そう言われるとしっかりできるか不安になりますが、精一杯務めさせてもらいます、こちらこそよろしくお願いしますね」

 

 

 

 思わぬ形で魔術師の記録に触れることができたエミリーは、期待に応える為にもまずはマリーの手ほどきを開始するのだった。

 

 

 

 目の前にいる美しくて純粋な少女が男に跨って喘ぐ姿を想像しながら、彼女は唇の端をペロリと舐めていることに気が付いていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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