商人と冒険者と娼婦 作:にやまな
本とは無数の情報の集合体であり、そこに記された文字は人によっては途方もない価値へと変化する。
たった一行に抱えきれない程の黄金を用意して知ろうとする魔術師もいるらしい、少なくともその人物にとってそれだけの価値があるということなのだろう。
そしてその本を持つ側もまたそれだけの黄金を用意されても決して相手には開示しない、自らの手元にある情報が黄金には代えられない価値があると信じているからだ……それ故に両者は殺し合い、果ては両者が属している勢力が殺し合った。
こうしてまた禁忌と呼ばれる魔術書が誕生することになる、おいそれと外へ出すことのできない技術や魔術が記されたそれらの本は、強力な呪いや封印と共に神殿の奥深くへと眠ることになる、真に正しい者へと継承させるその時までその本が開かれることはない。
もし仮に、相応しくない者や手順を無視した者がその本を開こうものならば、技術と知識と歴史の守護者が立ちはだかりその命を狙うことになるだろう。
無知な者はそれでも知識を求める、才能のある者は傘下に入ることで位を上げて正統な手段で求め、真に力ある者は戦いによって強引に奪い取る……そして理性と良識と知恵のある者だけは適切な距離を置く。
エミリーはまさにそれだった、知ってはならない技術は決して触れようとしない、自分の命が大切だということもあるのだが、しっかりと分を弁えるということを知っているからだ。
それは魔術に対する姿勢にも現れている、多くの魔術師がこの世の真理と法則を解き明かして己が知識によって無知を征服することを喜びにしているのだが、彼女はそこまで魔術師らしくない。
エミリーが魔術を扱い、その知識を求めるのは、端的に表現するならば生きる為だろう、それ以外の理由は薄い。
生きる為に、生活の為に、魔術という手段を用いる……それは一般的な魔術師の価値観とは大きくことなる。
魔術師であるということを価値観の中心に置くことが基本であるというのに、エミリーはその基本から大きく外れてしまっていることが現状であった。
だからなのだろう、彼女は舞台で見世物のように魔術を扱うことに躊躇は無い、本当に魔術師らしい魔術師からしてみれば神秘の力が大衆に見世物として振るわれると眉間に皺を寄せても仕方がない状況であるのだが、エミリーにはその誇りと神秘の体現者であるというある種の傲慢さが無い。
魔術はあくまで生きる為の手段でしかないのだろう、だから彼女は真に危険な知識から距離を取る、興味が無いかと問われたならば少し悩むくらいの迷いはあるが、理性と分別が禁忌からしっかりと視線を逸らしてくれるのだ。
仮に知るとしても、それは正当な手段であることだろう、それがエミリーの魔術師としての生き方である。
今回はその機会に運よく恵まれたことになる、エミリーは無数に並び立つ本棚の中から一つを選び出して掌に包まれていた鍵を差し込むと、物理的な施錠と共に魔術的な封印が解けた感覚が伝わった。
彼女がいるのは娼婦の神殿の最奥にある図書室だ、そこには無数の本棚と魔術書が保管されており、彼女は暇を見つけてはそこに入り浸っている。
本当に危険な知識はここにない、どこにあるのかも知らない、興味がないと言えば嘘になるが知ろうとは思わない、ここにあるのは比較的安全な魔術書なので彼女も肩が軽いようだ。
本棚から取り出した一つの本を眺めていたエミリーは頬ずりしたい気持ちを抑えながらも、魔術書を開いて中に記された知識を頭の中へと移していく。
ここ最近の日課となったこの図書室での勉強もこの本で最後になることに寂しさを感じながらも、一行たりとも無駄にはしないという覚悟と共にページを捲っていく、娼婦の神殿にある魔術書なので中に記された技術と知識は房中術に関するものが殆どなのだが、それでも垂涎ものの内容であることは間違いないだろう。
ページを一枚一枚捲っていき最後までたどり着いた瞬間に、エミリーはほうっと溜息を吐いてから魔術書を元の場所へと戻す。
「エミリー様、なんだか寂しそうですね」
「えぇ、とても幸福な時間が終わってしまったので……少しだけ」
図書室の入口にはマリーの姿もあった、どうやらエミリーの勉強が終わるのを見計らってやって来たらしい、彼女の手にはお盆がありお茶と菓子が乗せられている。
「ふふ、おつかれさまでした、お茶でもいかかですか?」
「はい、ありがとうございます。いただきますね」
二人は図書室の角にある休憩所に腰を落ち着けてお茶を飲む、そしていつものように歓談に興じる、エミリーがこの娼婦の神殿に出向するようになってからよく見るようになった光景だった。
娼婦としてマリーの教育係を引き受けて数日、まだ本番を行ってはいないが教えるべきことは教えていた、ただあくまで口頭での説明でしかないので実際に使えるかどうかは別問題だろう。
エミリーもいきなりベッドの上で男を喜ばせろと言われても困る、処女であるマリーならば更に困難だ、だから事前練習や見学が必要になる……そして実践の時はすぐそこまで近づいていた。
エミリーの目の前で優雅にお茶を飲む美しい少女は、普段の法衣ではなくいやらしい下着と向こう側が透けて見える薄い布地を纏うだけの娼婦らしい恰好をしていた、この後に行う本番に向けた準備はもう終わっているらしい。
エミリーもまた大きなマントの下には似たような下着姿である、仕事が始まるまで手持無沙汰になっていたのでこの図書室に来ていたようだ。
「も、もうすぐ本番になりますね……」
緊張と羞恥からマリーの顔は赤い、落ち着きなく視線を右往左往させている様子をエミリーは微笑ましそうに見守っていた、彼女も自らの初体験の時は似たような状況であったと思い出して苦笑いも浮かべる。
「やっぱり不安ですか?」
「はい、色々と教えて貰ったんですが……どれだけ準備しても不安は拭えません」
無理もないだろうとエミリーは考える、不安に思うなと軽々しく言えるような状況ではないので彼女も気安い言葉はかけられない。
自分に出来るのは少しでも苦痛を軽くすることだけだと言い聞かせながら、少しでも相手の不安を減らそうと落ち着き払った姿勢を崩さないことだろう。
余裕と落ち着きを持った先輩が一緒にいる、それはきっと心強いことなのだから。
「大丈夫ですよ、私も熟練の娼婦とは言えませんがそれなりの経験がありますから、上手く誘導しますので」
「エミリー様が一緒ならば心強いです……その、無作法をするかもしれませんが」
「ええ、しっかり補助します、だから緊張なされないで」
難しいだろう、どれだけ優しい言葉をかけようともマリーの緊張が無くなるとは思えない、だが気休めぐらいにはなるだろう。
娼婦の神殿が娼館になる夕暮れの鐘が鳴り響く、それはつまり彼女たちが娼婦として働く時間を意味する。
美しい鐘の音が聞こえるとマリーの体がビクッと反応するが、そんな彼女を落ち着かせるようにエミリーは震える手を取ると、そのまま手を引いて図書室を後にするのだった。
掌から伝わる温もりに少しだけ安心したのか震えは収まった、二人はそのまま手を繋ぎながら神殿の内部にある仕事場へと向かう。
神殿に広がる幾つもの個室の一つに本日の客が待っていた、この聖都で活躍する若商人なのか商売神の聖印を首にかけた青年であり、二人の少女が部屋に顔を出すと照れたような表情を見せてくる。
「あ、こ、こんにちは」
「ふふ、こんにちは、私はエミリーと申します」
「マ、マリーと申します!!」
「本日はご指名ありがとうございます、精一杯、夜伽を務めさせてもらいますね」
「よろしく頼むよ、えっと……二人同時、ということなのかな?」
若商人らしき男性は困惑気味だ、指名した若い少女はまだわかる、自分が受付で説明された通りの相手なのでここにいることに不思議はない、問題なのはその後ろに隠れるようにしながらも顔だけはこちらに向けてくるもう一人の少女の存在である。
「こちらのマリー様はまだ娼婦として働いたことがなく、本日が初めてのお勤めとなります。ですのでお客様にご迷惑をかけない為に私が補佐いたします……あぁ、ご安心ください、研修となりますので料金やチップは一人分ですから」
「おお、そうなのか、なんだか得した気分だな」
「ええ、楽しまれてください」
エミリーは寝床に客の男性と共に腰かける、相手の脇にすっぽりと収まるような姿勢で体重をかけると、そのまま指先で相手の胸元をいじり始めた。
「逞しい体をなされていますね、鍛えられているのですか?」
「商人はペンを握るだけじゃないってことだ。荷運びとか結構な重労働でね、うちの商会はまだ人も少ないからできることは全部自分でやっていると自然に体を鍛えられるさ」
「それは大変、なら今夜くらいはしっかりと癒しを得なくてはなりませんね……ああ、そうだ、喉は乾いていられませんか?」
「ワイン……いや、蒸留酒を貰いたい」
相手も少しばかりの緊張があるのか酔いに任せたいらしい、エミリーの視線に教えられてマリーが部屋の隅に果物と一緒に置かれていた酒類の中から蒸留酒を取り出す。
ワインと違ってグラスに注いで飲み干すようなものではないので、小さなコップに僅かばかり注がれた琥珀色の液体を男性は一気に飲み干した。
それを追いかけるようにエミリーも喉を焼くような液体を腹部へと落とす、酒の味や良し悪しの差がわからない彼女の好みとしてはもっと甘口な酒が望ましいのだが、客に合わせることもまた娼婦の仕事であるので付き合うしなかい。
熱が腹部から全身に広がっていく、それが酔いとなって頬を赤く染めると、エミリーと客の男性はどちらともなく唇を重ね合わせるのだった。
「ん……ふ……んむ」
「わぁ……」
ベッドの近くにある椅子に座って二人の交わりを観察していたマリーの声が部屋に響く、彼女は酒も飲んでいないのに顔が真っ赤になっている。
「ん、んん……んッ……うん……はぁ」
唇を離すと唾液の橋が伸びてプツリと途切れた、エミリーはそのまま体重を相手に傾けると押し倒すかのように寝床へ倒れ込む。
「さぁ、マリー様もこちらへ……」
「は、はい!!」
「あ、あの……」
「あぁ、ご安心ください、私たちが奉仕いたしますので」
そう言って慣れた手つきで男性のズボンをずり下す、キスによって既に固くなっていた肉竿が二人の前に現れると、エミリーは小さく微笑んで舌を伸ばす。
慣れた舌遣いだ、蒸留酒が僅かに混ざった唾液を相手に塗りたくるかのように舌先を蠢かす姿は熟練の娼婦と言えるだろう。
根元を中心に攻めながら片手で睾丸を包むかのように弄び、相手が痛がらないように優しくマッサージすると客の男は耐えきれないかのようにうめき声を上げた。
「れる……ちゅ、ちゅ……ん……んん……ふぁ……ほらマリー様も、教えたとおりに奉仕を」
「は、はい! えっと、失礼します……」
先輩娼婦の舌遣いに男性以上に翻弄されていた聖女も、固く聳え立つ肉竿へと唇を近づけていく。
エミリーと違って経験の無い口での奉仕はやはり拙い、しかしそれでも事前に教えられていたように舌や唇を動かしている、相手の性器を口に含むという拒否反応は心構えがあったのか少ないらしい。
根元を攻めるエミリーとは違ってマリーの唇は肉竿の先端へと集中しているようだ、震えながらも唇は鈴口へと吸い付き、小さな尿道をこじ開けるかのように舌をグリグリと差し込んで唾液を塗していく。
「んちゅ……はぁ、お上手です、そのまま亀頭を口に含んでください……決して歯を立てないように」
「んんッ……ふッ……こうでしょうか……はぁ、あむ」
「えぇ、そのまま舌で先端を刺激しながら唇で全体を……はい、お上手ですよ」
「んん~……んんんッ……ん、ん……ふぅ~……んん」
上手い、とエミリーは思った、冬の砦でキャロルが同じように口での奉仕をしているのを見て、彼女も見よう見まねでやってみたのだがここまで上手く出来ていたとは思わない、出来たとしても後半になってからだろう。
それに比べればマリーの舌先は初めてにしては巧みだ、少しだけ恐ろしさが残っているようだが男性器を舐める躊躇も少なく、鼻息を荒くしながら興奮を上手く大きくさせていく。
「う、んん……ちゅ……れる……じゃあ、次は、舐めながら自分を慰めましょう……しっかり濡らしておかなければ、苦痛が大きくなるので」
唇での奉仕を続けながらも指先は自らの秘所へと伸びる、既に熱を持ち始めていたその場所は僅かに湿り気を帯びており、人差し指と中指を慎重に差し込んで膣口を広げると愛液が零れ落ちていく。
指先はそのまま小さな円を描くかのように敏感な肉豆を弄り回す、するとビリビリとした鋭い刺激が大きく膨らんでいき、思わず甘い声が零れ落ちるのだった。
「あッ、ふッ……んん……あ、ちゅ……ちゅ……れる……んんんッ!」
自らを慰めながらも男への奉仕は忘れない、そして視線でマリーに続くようにと背中を押しながら中指を深く差し込んだ。
エミリーは少々ながら刺激が少ない……物足りないと考えながら膣をかき混ぜている、自慰をすることは少ないが経験が皆無ということはない、娼婦として働いているとやはり指だけでは刺激が少ないと感じてしまう。
目の前にある肉棒を突き込まれたい、押し倒されて両手を固定され、体重をかけられて犯されたい、じれったい快楽を感じる度にそう思った。
最初に比べれば随分とセックスに素直になったものだと考えながら肉竿を舐め回す、そんな彼女とは正反対にマリーは舌と同様に指先も動きがややぎこちない。
きっと自慰の経験も少ないのだろう、神殿暮らしだからなのか機会も少ないはずだ、こうして娼婦として働くような機会が無ければずっとそんな生活を送っていたのかもしれない。
エミリーは慰めることに苦戦している……いや、慣れていない聖女の背中へと掌を置いて神経を繋ぐかのように魔術的な道を形成していく。
彼女も魔術師なのでエミリーがしようとしていることを気が付いた、少しだけ怖がっているようだがエミリーと視線重ねると、安心したかのようにこくりと頷く。
すると次の瞬間に、背中からぽうっと熱が生まれて広がっていく、それが全身へと広がっていくと心地いい酔いに体を任すかのように思考がぼやけていった。
「あッ……ん……ふぅ……ふぅ」
後はもう指先も舌先もぎこちなさが消えていく、視線にも熱が宿り少しだけあった恐ろしさや躊躇も消えて目の前の亀頭へと釘付けになる、自らの秘所に伸びる指先も激しさが増しているようだ。
図書室で得た房中術の技術を用いてエミリーは相手への干渉をより深くすることができていた、今までは吸収や循環による生命力の摂取や表面的な体への干渉が限界であったが、だが現在はそれこそ魂への直接干渉による掌握も可能かもしれない。
つまりは洗脳だ、魂を掌握すれば相手を操り人形にして自分の好きなように動かすこともできるだろう。
より深く、より濃く相手への干渉を強めることができるのだ、これまでも似たようなことは出来たのだが図書室の知識によってより振るえる力が大きくなった。
房中術で干渉して相手を揺り動かす、例えば勇気づけたり、例えば落ち込ませたり、もしくは五感を鋭くしたり……そんな次元の話ではない。
今ならば空を赤いものだと疑いも無く認識させることができるだろう、目に映る全てが巨大に見えたり、存在しないはずの山があると対象に誤認させたり……あるいは永遠に目覚めることのない眠りに落とすことも可能なのかもしれない。
マリーにかけた術はそこまで凶悪なものではなかった、少しだけ精神に干渉して恐怖を和らげ、興奮を増幅させただけだ。
後は神経への干渉だろうか、初体験の痛みを少しでも減らす為に体の緊張を消し去る……まだ房中術を収めてそう長い時間が経っていないがなんとも慣れたものだ、ローレライがここにいたら少しだけ呆れたような表情を浮かべたかもしれない。
しかしどうであれエミリーは善意からの行動を基本としている、悪意ある者が扱えば被害の大きい力であっても、彼女ならば大丈夫だろう。
おそらくは、という言葉は必要だろうが。
「あぁ……緊張もほぐれてきましたね、そろそろ次に向かいましょう」
「はい、絶頂……させるのですね」
二人の少女は頬がくっつきそうな距離まで顔を近づけて亀頭を舐る、二つの舌が唾液を塗しながらいやらしく蠢いて先走りの汁を舐めとりながら男を攻めていく。
耐えきれず、といった感じで男は呻くと、二人の顔に精を放つ。
「あッ!? ひゃ!? 熱ッ!」
「あ、零してはダメですよ、しっかりと舐めとってください……ん、ちゅ」
「はい……あ、ん……ふぁ、凄い匂いです……ん、苦い……」
「ふふ、これが不思議と癖になるんですよ」
エミリーの指先がマリーの頬にこびり付いた精液を掬い取ってそれを彼女は口に含む、お世辞にも美味しいとは言えない青臭さと苦みが口内に広がるが、生命力の塊とも言える白い液体は今となっては大好物とさえ断言できてしまう。
精液を摂取すると腹部が熱を持つ、それが魔力へと変換されてまた器が満たされていく。
マリーも同じ感覚を味わっているのだろう、へその少し下辺りを撫でながら熱にうなされるかのように頬を赤くしていた。
「ん……これは、心地いいですね」
「えぇ、魔術師ならば一度これを知ってしまえば止められなくなるんですよ」
そしてエミリーとマリー、二人の魔術師の視線は寝床で荒い呼吸を繰り返す男へと向けられた、未だに絶頂の余韻が抜けきっていないのか体が震えている。
熱っぽい視線に晒されて男性は少しだけ背筋を恐怖で震わせた、何故か言葉にできない不安が胸に去来したのだ。
「ふふふ、ではいよいよ本番ですね……まずは私が手本を見せますので、マリー様は見学を」
「はい、勉強させてもらいますね」
「あ、いや、ちょっと休憩を……」
「何をおっしゃられるんですか……これからが本当のまぐわいなんですから」
ぺろりと唇を舐めたエミリーが男の両肩に手を置いて体に跨った、対面座位の形で寝床に落ち着くと彼女の唇は相手の鎖骨に吸い込まれていく。
「うッ、ぐうぅ!!」
それはキスをするというよりは噛みつくと表現した方が良いのかもしれない、僅かに歯を立てて肌を引っ掻いたのだから。
しかし痛みはない、寧ろそこから広がったのは甘い痺れだ、ゾクゾクと背筋を走り抜けてまた男性の体が震えた。
歯を立てながら舌は肌を撫でる、その度に男の体はビクつく。
第三者がそれを見れば男女の交わりというよりも、吸血鬼が血を求めて男を捕食しているかのような光景であったことだろう、実際にそう大きな違いはないのかもしれない。
エミリーは僅かに肌から染み出て来た血を舌で弄んでいる、精液とはまた違った味わいとコクを感じ取るとまた彼女の体が熱を宿す。
彼女が唇を離すと男性の鎖骨や首筋には幾つかの鬱血痕が残されていた、それを見てなんとも言えない征服感を感じながらエミリーは微笑むのだった。
精液も魔術師にとって重要な要素だが、血液もまた大きな意味を持つ、図書室にある魔術書から血を房中術に応用する技術があったのでこうして試しているのだろう。
口内に僅かに残った精液と、摂取したばかりの血液を、舌で混ぜ合わせて桃色の液体にして喉へと落とす。
「ふあぁッ! んッ、んんッ、んんんんッ!!」
すると燃え上がるような熱が広がって、それだけでエミリーは絶頂へと至ってしまう。
体中に広がった魔力の流れは凄まじい、自分の中にある器が拡張されたかのような感覚に打ち震えているようだ。
吸血鬼が血を求めるのが今ならわかるとエミリーは思った、ただ単純に食事の為だけではないのだと、そして吸血鬼が総じて房中術に長じる理由も理解できてしまった。
この効率と快楽を知ってしまえばもう戻れないだろう、エミリーだってその確信があるのだから。
「はぁ~……はぁ~……ふ、ふふ、それじゃぁ、いきますね」
自分の舌で快楽のあまり涎を垂らしながら震える男性に微笑んでから、エミリーはゆっくりと腰を下ろして男の象徴を自分の最も深い場所に迎え入れる。
「うッ……あ、はぁん!」
ギュッと膣口が閉まって肉竿をシゴキあげられると、まだ挿入したばかりだというのに射精に向けて脈動する男を彼女は房中術を使って強制的に栓をしてしまう。
射精したくても射精できない、快楽は爆発寸前だというのに何故か吐き出せない、そんなジレンマに落とされながら男性は噛みしめながらなんとか耐えているようだ。
「あッ……アッ……ああッ……んッ……ん……あ、はぁ」
それほど激しい交わりではないのだが亀頭が最奥へ到達する快楽はすさまじい、根元まで包み込んで亀頭まで引き抜きまたねじ込む、そんな単純な行為を単純な動きで繰り返す……それだけなのだが絶頂への道のりはとても簡単なものだった。
エミリーは自分が絶頂する瞬間まで男の快楽と体を掌握しながら快楽を増幅させていく、どれだけ腰を動かしても射精することのできない男を見下ろす彼女はなんともいやらしい顔をしていたことだろう。
子宮から伝わる熱だけではない、背筋を震わせる甘い痺れは男を完全に支配下に置いているが故の快楽だ。
エミリーはまた男の鎖骨へがぶりと歯を立てる、肉を食いちぎるほどの勢いはないが鬱血痕から更なる血を摂取するには十分な勢いだろう。
「ちゅ、ちゅる……あん、れる……ふぁ、あぁ~! あぁ~! やッ、気持ちいい……あッ、アッ……あぁ!!」
やはり痛みは無い、ほんの一滴の血を奪われた男性は過呼吸になりながらエミリーの腰を掴んで最奥を打ち付けるのだが……やはり射精することはできない。
「ああああぁぁ……これ良い、良いのぉ……あ、あ、あぁッ!」
「た、頼む、出させてくれ!! 頼むから!!」
「あッ!? そんな激しく、あんッ!! も、う……ふ、ふふ、じゃぁ一緒にイキましょう!!」
エミリーは自分が絶頂する瞬間に合わせて男の肉竿にかけていた拘束を解く、そして快楽の爆発を相手と合わせながら自らも絶頂するのだった。
「------ッッんんんんんんん!!」
頭が熱と痺れで真っ白になる、涎が零れることも気にせず白目気味の表情を浮かべながら両者は寝床に倒れ込む。
この瞬間が好きだ、大好きだ、エミリーは幸福を噛みしめるようにそう思う、快楽でふやけきった表情と共に。
「あ~……あ~……はぁ~……はぁ、んッ……ん……あ」
絶頂の余韻に浸りながら徐々に引いていく快楽の波を残念に思いながらも、視線は部屋を彷徨って椅子に座ってこちらを観察していたマリーを探し出す。
彼女は耳まで真っ赤な顔を両手を使って隠しているようだ、しかしよく見ると僅かに空いた隙間から美しい青い瞳がこちらをしっかりと窺っていることがわかる、そしてもじもじと足をすり合わせながら少しだけ前かがみになっていた。
ふう、ふう、と荒い鼻息がエミリーにも届く、先程に結んだ魔術的な道から伝わる彼女の興奮は凄まじく、椅子に置かれたクッションは既に愛液でドロドロに汚れているようだ。
おそらくは道を伝ってエミリーと客の男性の絶頂を感じ取ったのだろう、指の隙間にある潤んだ瞳は聖女らしからぬ熱を宿しており、破裂寸前の興奮は今すぐに男を欲していた。
「ふふ……さぁ、マリー様……こちらにいらしてください」
「はい……それでは、お邪魔しますね」
男性の「いや、ちょっと待って……」という呟きは二人には届かない、欲情に支配された二人の少女は寝床で腰砕けになっている男に体重をかけるだけだった。
「痛みは可能な限り減らしますので、安心してください」
「よろしくお願いしますね……はぁ、あッ……ん……あ……あぁッ!?」
マリーは客の男に跨って興奮の象徴を受け入れていく、エミリーはそんな彼女を背後から抱きしめる形で補助している、そしてうなじにキスをしながら右手は胸へ、左手は秘所へと伸びていく。
「綺麗ですよ、マリー様……はぁ、こんなに濡れて」
「んッ!? やぁ! エミリー様、そんな場所を弄っちゃ……あッ!!」
「大丈夫ですよ……ここはとっても心地いいですから、ね」
うなじを舐りながらエミリーは男を咥え込むマリーの秘所を弄ってそこにある液体を掬い取る、愛液と精液と破瓜の血が交じり合った淫靡な粘液は糸を引いて艶めかしく彼女の指を汚していた。
「ふ、ふふふ……ふふふふふふ、うふふ」
処女の血と愛液、そして男の精液を指で混ぜながら弄ぶ……なんとも淫靡な表情で。
彼女はそれを悦りながら極上の美酒を飲むかのように口に含む、そして体中に広がる魔力と熱を感じながら笑顔を浮かべるのだった。