商人と冒険者と娼婦 作:にやまな
扉の先に広がっていたのは異臭とカラフルなキノコやカビが蔓延する腐海であった。
生モノを湿気の多い場所に放置しておけばこうなるのだろうが、森林全体がこのような状況になるのは珍しいだろう。
葉は落ちて丸裸になった枝がよく目立つ、そして白蟻に貪られたかのように穴だらけの木々が幾つも確認することができる、そのどれもが例外なく腐れ落ちているようだ。
死んでしまった森、そう表現するほかない。
毒気のある空気が蔓延している訳ではないようだが、いつまでもここに滞在したいとは思えなかった。
「うッ……これは、厳しいですね」
エミリーも眉をひそめて口元を隠す、しかしそれだけで突き刺すような異臭を防ぐことはできないだろう。
「…………」
やはりキャロルは無言だ、光のない瞳でフラフラと歩いている。
そんな二人を横目にシャルルだけが足取り確かに歩いていた、環境に適応した訳ではないが可能な限り口での呼吸を心掛けており、なんとか踏ん張れているらしい。
それでもギリギリだ、こみ上げてくる嘔吐感をなんとか抑え込んでいるのだった。
バッカニアとリンダも堪えている、それは探索者としての意地であり無限城では注意力の散漫が死に繋がると理解しているので視線や耳は常に警戒状態にあるのだ。
臭くて堪らない、だがそれでも進んで行かなくてはならない。
「出入り口の扉の位置と進んだ距離をしっかり覚えておかないとな。リンダ、頼めるか?」
「一定間隔で印をつけておきますわね」
バッカニアの言葉に従ってリンダは近くの腐った木に短刀でバツ印を刻み込む、周囲が見渡す限り腐った木々なので、あの図書館のように方向感覚が薄れてしまうのだ、目印や目標もなく歩けば簡単に迷子になってしまうだろう。
この腐海で、それはあまりにも残酷な状況である。
「さてさて、一体何が待っているのやら」
「この環境を作った主、或いは原因ですわね……このキノコとカビの山はさすがに異常ですもの」
「これなら無限城の環境を研究してる魔術師でも連れて来ればよかったかもな」
「確かに、あの人たちはちょっとした植物の種や花なんかで興奮されますものね」
そんな人物の護衛を引き受けた経験があるのか、二人は同時に幾人かの魔術師の顔を思い浮かべる。
「私らからすれば只の植物や花でも、あの連中にとっては価値があるんだろ……確か大昔に絶滅した植物だとか何とか騒いでたじゃないか。ここもそいつらからしてみれば興味深い場所なんじゃないかな」
「この腐海も特殊な環境ですもの、素人にはわかりませんが珍しい植物だったりもあるのかもしれませんわね」
例えば至る所に生えている色とりどりのキノコも、もしかしたら植物学者にとっては垂涎の物なのかもしれない、五人には理解できない感覚だが価値観というものは人それぞれである。
だが彼女たちにとってはキノコやカビや植物の種類などあまり意味がない、図書館にある魔術書のようにわかりやすく価値のある物を欲しているのだから。
この腐海も金銭的な価値を感じられないのならばそこまで執着する必要も無い、地図を埋めたら情報を売って二度と立ち入ることはないだろう。
ある程度の調査をして情報を集めたら帰還する、そんなことを考えながら腐葉土の大地を踏みしめて進んで行くこと三十分、帰り道を示す印が三十個目になった所でバッカニアが瞼を細めて深いの先を睨んだ。
「誰かいるな……人だ」
足を止めてメイスを握る、視界に入った何者かを警戒しているのか足取りは慎重そのものであり足音が消えていた。
そしてそれは相手側も同様である、武器を構えながらジリジリと両者は近づいていき、ようやく顔が認識できる距離まで接近すると彼女は安心したように溜息を零す。
「バッカニアとリンダのチームか、こんな所で出会うとはな」
五人の前に現れたのは別の探索者チームである、戦士と斥候が魔術師を護衛するという基本的な形であり人数は十人、リーダーらしき全身鎧の男が握っていた剣を鞘に戻して警戒を解いた所で、バッカニアもメイスを腰にぶら下げてみせる。
争う意思はなく、意味もない、女が探索業や傭兵業なんてと舐められがちな立場にあるのだが、先程の図書館で出会った探索者のように全ての者が彼女たちを下に見ている訳ではないようだ。
「アンタたちの方こそ、随分と早くここまで来たんだね……てっきりこの区画は私たちが一番乗りかと思ってたんだけどさ」
「皆さんも図書館の扉から来られましたの?」
「図書館? いや、俺たちは別の扉からここに来た……新区画の探索をしていてここを見つけたんだ、初めて見る場所だったから調査していたんだが臭くてたまらんのでな、そろそろ帰ろうかと話していたんだ」
「別の出入り口があるのか、まぁ広そうな空間だし不思議でもないけど……その扉はどの辺にあるんだよ?」
「別に教えても構わんが、代わりに君たちが持っている情報を教えてくれ。図書館と言ったけど、金目の物はありそうかい?」
「あるよ、本が山のようにね」
「ほう、それはありがたいな、この腐海よりもずっと楽しそうだ」
彼らも腐臭の中を捜索することに参っていたのかバッカニアの話を聞いて笑顔を浮かべた、そして指さすように五人が来た方向とは真逆を指さす。
「我々が来たのはあちら側だ、足跡は残っているだろうし木に目印も残してあるから迷うこともないだろう、暫く進めば扉が見つけられる筈だ、その先は新区画の城内になっている」
「私たちも似たようなものですわね、足跡と目印を残してありますわ」
「その先に図書館があるんだな、金目の物も多そうだ。今度お礼に一杯奢ろう」
「あら、一杯だけですの?」
「おいおい、こっちだって別の出入り口を教えただろう……まぁそっちは価値のある物はないが、だからこそ一杯奢るのさ」
全身鎧の男はそう言って仲間の探索者たちに指示を出す、腐海の探索に嫌気がさしていた彼らは図書館に続く扉があると聞かされて大いに盛り上がっているようだ。
こんな所はさっさとおさらばしたい、そんな思いが顔にも動きにも滲み出ており、よほど腐海の探索が堪えていたと思われる。
だがそんな彼らの意識と熱意に水を差し、後ろ髪を引っ張る存在がこの場所はいるのだった。
それをどんな言葉で表現すべきか探索者たちにはわからなかったことだろう、生まれてこの日まで聞くことのなかった音であり、大気を振るわせて臓腑にまで響き渡るかのような重低音がその場にいた全員を包み込む。
「---------」
大気と臓腑を振るわせる叫びは意味のある言葉ではなかった、何もかもを押し流す暴力性を持ってただ放出される音響であり、大声であると言ってしまえばそれまでなのだが度が過ぎれば立派な凶器でしかない。
実際、その咆哮を受けた探索者たちの多くが一時的に聴覚を封じられてしまい、音と振動によって揺り動かされた脳によって乗り物酔いにも似た症状になってしまっている。
やがて、重く分厚いそれがようやく収まった時、彼らの耳が聞き取るのは甲高い耳鳴りだけであり、まともな音を認識することができないでいた。
「うッ、ぐッ……いきなり、何だってのさ」
前後不覚に陥ったバッカニアの体がぐらりと揺れる、なんとか近くの木を支えにして転倒は回避するのだが、そのままズルズルと崩れ落ちていき膝をついてしまった。
「……あぁ、こりゃまずいね」
探索者のカンであり、虫の知らせのようなものなのか、座り込んでしまった彼女のうなじがチクッとした感覚を訴えてしまう。
嫌な感覚である、あまり経験したことにない不安感が腹から込み上げても来た。
そして酒場で聞いた不確かな情報を思い出す、忘れていた訳ではないがその咆哮を確認したのは新区画の深部でありこの場所ではないので油断してしまったのだろう。
広い範囲を練り歩く存在なのか、それともこの腐海が深部にまで到達する程に広大なのか、どちらにせよバッカニアはチームを率いるリーダーとしてやるべきことがある。
「全員逃げるよ!! 走るんだ!!」
意地と忍耐でいち早く回復した彼女は立ち上がってそう叫ぶ……が、その声は仲間に届くことはなかった。
相棒のリンダ、そして新入りの三人娘、知り合いの探索者たち、その誰もが酷い耳鳴りに体をその場に縫い付けられてしまっている。
回復するまでもう少し必要だろう、特に五感の鋭いキャロルにいたっては意識を失ってしまったのか腐葉土に顔から突っ込んでしまっているようだ。
バッカニアは近くにいたリンダに手信号を送る、事前に示し合わせていた訳ではないが彼女たちは長い付き合いなのでそれだけでも意味は通じるという信頼がある。
リンダはそのサインに頷きを返してくれた、そしてフラフラとした足取りながらもなんとか歩き出すのだった。
そしてまずはエミリーとシャルルに駆け寄る、耳鳴りと眩暈によって混乱していた二人の頬を彼女は強引に引っ叩くと、そのまま立ち上がらせて背中を押していく。
バッカニアは気絶していたキャロルを抱き上げているようだ、華奢な体を両手に持って黄金の弓を首にかけるとそのまま走り出す。
敵の姿も確認できない、どれほどの脅威があるのかもわからない、それでも全力でその場を後にするほどの不安感があり、その判断が間違いではなかったことは振り返ればわかるだろう。
キャロルを抱えながら逃げ出すバッカニアは、その途中で思い出したかのように振り返って背後を見渡すと、そこには逃げ遅れた探索者たちの姿があった。
そう、あった、だ……十人ほどいた彼らの半分は既に姿はなく、耳鳴りと眩暈で前後不覚になっていた彼らは近づいて来た何かによって粉砕されてしまったのだろう。
全身鎧の男が何かによって吹き飛ばされているのが確認できる、それは横薙ぎされた巨大な尾であった。
固く強固な鎧は中の肉体を守ることなくひしゃげてしまったのか、男の体は鎧ごとへの字に曲がってそのまま腐海の奥へと消えていくのだった。
大きな尻尾はそのままうねって大地を叩く、そこには茫然自失となっていた魔術師らしき者がいたのだが、勢いよく振り下ろされた大きな質量に押しつぶされて赤いシミとなってしまう。
その姿を彼女はしっかりと観察していく、大きさは勿論のこと、形に色、長さに高さ、知るべき全てを記憶しようと注視する。
それは巨大であった。
それは鈍重であった。
そしてその体は、どこもかしこも腐っていた。
ドラゴン、そう呼ばれる姿がそこにはあった。
かつては鋼を弾いていたであろう鱗は既になく、体表に広がるのは毒々しい粘液の滴る腐肉である、背中に生える巨大な翼に風を受け止める膜もない、ただ皮がぶら下がる骨だけが意味もなく羽ばたいている。
あれでは飛べないだろう、そして腐った体では巨体を上手く動かすこともできない筈だ、それでどうやって動くのかと考えれば、答えは相手が教えてくれた。
ドラゴンの手足は体と同じように腐ってしまっている、特に後ろ脚の腐食が酷く右足は完全に存在しない、健在な左足も完璧には遠いようにもバッカニアには感じられるのだから完璧には届かない。
そんな状態の頂点捕食者は両手をバタつかせながら泳ぐように体を動かしていく、地面に腹を付けながら匍匐前進で移動するのだ。
腐った体では美しく飛ぶことも鋭く駆けることもできない、なので苦肉の策なのか両手で体を前に動かすことにしたのだろう。
腐りながらも健在な両手で地面を掘るように進む姿は頂点捕食者としても威厳も迫力もない、腐肉の壁が迫りくるかのような嫌悪感の方が強いのだ。
そして何よりも匂いが酷い、この空間全域に広がるとてつもない異臭の元凶はどうやらこのドラゴンらしい。
目の前の探索者たちを一通り踏みにじった腐竜は、次の獲物を探すかのように首を左右に動かして、その瞳がバッカニアを捕らえるのだった。
瞳に熱はない、腐って網膜を失っているのか爬虫類的な縦に割れた瞳孔もなく、黄ばんだ眼球を埋め込んだかのような状態であり、やはり体と同様に腐っておりどす黒い粘液を涙のように流している。
そんな状態で獲物を見つけられるのだろうか? そんなことをバッカニアは考えるのだが、どういう訳かドラゴンは腐った瞳であってもしっかりと彼女を認識しているらしい。
地面を掘削するかのように接近してくるドラゴンから逃げるように彼女も走り続けていく、華奢な体とはいえ人を抱えながらの疾走なので鋭い走りとは言えないが、探索者たちが弄ばれている間にある程度の距離を確保できていたことが幸いとなった。
「バッカニア!! 急いでくださいませ!!」
図書館へと通じる扉は既に開かれており、無数の本棚が並ぶ空間からリンダの声が届く、その後ろにはシャルルとエミリーの姿も確認できる……どうやら彼女たちは無事に退避できたらしい。
自分たちもと、酸素を渇望する体に鞭をうちながらバッカニアは更に力を込めて駆けていく、そんな彼女の背後ではドラゴンが匍匐前進しながら今も距離を縮めている。
相手の方が早い、このままではギリギリ間に合わないかもしれない、背中に感じる腐臭と迫力にそんなことを思い最悪の状況を想定するのだが、バッカニアもキャロルもドラゴンの腕に押し潰されることはなかった。
扉の向こうに祝福の輝きが溢れたのだ、それは波動のように広がって勢いよく腐海へと流れ込んでくる。
祝福の力は信仰深い神官が祈願することで賜ることができる、しかし天剣に認められて聖騎士となった者はその肉体に祝福を宿して自在に操ることができるのだ。
だからこそ彼らは聖なる騎士と呼ばれることになる、シャルルの宿す輝きは大火と呼ぶにはまだ柔らかいがそれでも確かな輝きであった。
「戦神よ、戦場の王よ……この身に加護を与えたまえ」
仲間の危機的な状況にいい加減なことはできないと思ったからなのか、普段は雑な祈りで済ましているシャルルも今回ばかりはしっかりと神に祈りを捧げているらしい、強く深い祈りは彼女の輝きを更に大きくしていく。
そして祝福の波動がシャルルを中心に放たれた、人には無害なそれはバッカニアと抱えられているキャロルを通り過ぎると、そのすぐ後ろにまで迫っていたドラゴンの体へとぶつかるのだった。
ジュっと、何かが焼けるかのような音が広がった、そしてただでさえ腐りかけていたドラゴンの体に火傷のような跡が無数に刻み込まれていく。
腐った体に真新しい火傷、それらが与える衝撃は想像を絶する激痛となって巨体に突き刺さっていく。
まだ痛覚が残っていたのかドラゴンの巨体が祝福の波動に悶え苦しんでいるのがわかる、それによって生まれた大きな隙によってバッカニアとキャロルは図書館の扉へと滑り込むことができた。
「扉を閉めるんだ!!」
バッカニアがそう叫ぶ、言われるまでもなくリンダは扉を閉めようとするのだが、空間を分ける扉を閉ざす寸前にドラゴンの大きな手が伸びる。
完全に空間を分ける前に突っ込まれたそれはドア枠に腐った皮膚を削ぎ取られながらも、異臭をまき散らしながら図書館へと進入してくるのだった。
勢いよく開かれた扉に押されてリンダが吹き飛び本棚へと突っ込んだ、しかしそのおかげで掴まれることなく逃れることができたらしい、ドラゴンの爪は獲物を捕らえることなく右往左往するだけで空ぶるだけである。
「このッ! あっちに帰れよ!!」
まるで扉から竜の腕が生えるかのような光景である、獲物を掴み取ろうと暴れまわるそれを祝福の力を宿したシャルルの剣が切りつけていく。
ドラゴンの体からしてみれば小枝程度の刃であり大きな脅威ではないだろうが、祝福の輝きを宿した剣は致命的とも言える程に不浄な体と相性が悪い、突き刺さった個所から広がる熱は激痛となってドラゴンを蝕むのだ。
これは耐えられないとばかりに手が引っ込む、その隙を見逃すことなくエミリーが扉を閉ざして空間を分けるのだった。
「リンダ、無事か?」
「えぇ、なんとか……本棚がクッションになりましたわ」
幾つかの本棚がドミノ倒しのように崩れている中心にリンダの姿がある、扉に吹き飛ばされた衝撃でそうなってしまったのだが彼女は鼻血だけで済んだらしい。
「リンダさん、治療いたします。鼻の骨は……よかった、折れてはいないようですね」
「お願いいたしますわ」
ドバドバと鼻から血を流すリンダにエミリーが治療魔術をかけていく、そんな二人を守るようにシャルルが剣を構えたまま扉を睨みつけている、どうやらまだ警戒心を緩めてはいないらしい。
「バッカニア、キャロルは大丈夫なのか?」
「ああ、なんとかね。怪我もなさそうだし、どうやらドラゴンの咆哮で気絶してしまったらしい」
「はぁ~……良かった、妹を助けてくれてありがとな」
「これでもチームリーダーだからね……それに礼ならこっちが言うべきさ、さっきの光は祝福の力だろ? 祈願もなく扱うだなんてシャルルは聖騎士だったのかい?」
「う~ん、聖騎士って訳ではないんだけどさ、聖都で毎年やってる祝祭の儀式でなんか天剣に認められたみたいで……」
「へぇ、それで認められたのに聖騎士にならないなんて珍しい奴だね、聖騎士団なら給料も良いし安泰だってのに」
「そう言われたけど、ワタシは騎士って柄でもないからさ、キャラバンとの契約も残ってたし……それに妹もいるからさ」
シャルルは意識を失って寝かされている妹の傍に座ると、その頬を指先で僅かに撫でる。
無意識の内に祝福の力を流しているようだ、淡い輝きと熱が指先から妹の体を温めていく。
「まさか本当にドラゴンに出くわすことになるなんて……これは大変ですわね」
治療を終えたリンダの言葉に全員が頷いた。
「確かに、あれは厄介だ……どうしたもんかね」
「強敵を発見した場合は探索者の方々で討伐隊を編成するのでは?」
「それは状況によりますわね、迂回できるようならば放置もありえますもの」
「でも相手はドラゴンなんだ、そう易々と出会える相手じゃない……まぁ、学者連中がどんな反応するかだね」
好奇心と探求の為に命を軽々と捨て去る者が多い、そんな魔術師たちが腐っているとはいえドラゴンを前にすれば必ず興味を示す筈である。
「もし戦うことになるのなら、炎の騎士以来の激戦になりそうだ」
魔術師たちの方針次第ではあるが、バッカニアは既にドラゴンと戦うことになるという確信を持っているらしい。
数と、質と、物量で押しつぶすことになるだろう、炎の騎士と同じように大量の出血を強いられるだろう。
チームリーダーとしてどう立ち回るべきか、どう仲間を生かすべきなのか、そんなことを彼女は思うしかない。
新しい仲間は頼りになるが怪我をさせることはできないのだ、必ず返さなければならないだろう。
それがリーダーとしての責任であるとバッカニアは考えている、少しだけ重荷になっている自覚はあるのだが、別に嫌という訳ではない。
「さて、今日はもう帰ろうか……ドラゴンに関しては酒場に情報提供しよう。討伐するにしろ迂回するにしろ、全てはそれからさ」
どうなるにせよリーダとして最善を尽くす、そんな思いを胸に彼女は仲間を率いていくのだった。