※この作品はR-18です。

商人と冒険者と娼婦   作:にやまな

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エピローグ 英雄の輝き

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 激震に揺れ動く無限城は巨大な嵐にその身を削れらていた、物理的にも魔術的にも強固な作りなのだがこの嵐はそんな想定を上回るほどの猛威となっているのだろう、風と共に渦巻く雹や雷が研磨するかのように城壁を削っていく。

 

 

 

 水でさえ時間をかければ岩を削り落とすのだ、この暴風は様々な瓦礫を巻き込んでいるので強力な鑢のようなものなのかもしれない。

 

 

 

 長い時間をかけて制作して、始まりの魔女の技術者としての凝り性も手伝ってか未だに完成していない無限城は、哀れにも嵐にその身を削られて半壊状態になっていた。

 

 

 

 それでも嵐は止まることなく吹き抜けていく、削り取った無限城の残骸を吸収して更に凶悪になったようにさえ思える。

 

 

 

「全く、ここまで形にするのにどれだけの時間と資源を消費したことか……」

 

 

 

 始まりの魔女は自らの最高傑作が壊されている状況を嘆く……しかし表情は特に変わった様子もなく人形のように熱を感じさせないものだった。

 

 

 

 虹色の瞳に映るのは半壊しながらも落ちることなく空中に留まる無限城であり、それを今も貪るかのように破壊する巨大な嵐であった。

 

 

 

 その風に弄ばれる三人の少女の姿を発見して、咄嗟に守りの魔術をそれぞれに与えた後に引き寄せようとするのだが、それは暴風に阻止されてしまう。

 

 

 

 巨大な城と巨大な嵐がぶつかり合う空では、人間など簡単に振り回されて暴風に弄ばれるだけなのだが、始まりの魔女は足場のない空中に一歩踏み出すと、そこに見えない階段があるかの如く平然と空を進んで行く。

 

 

 

 風に吹き飛ばされることもない、規格外の暴風の中にありながら彼女の周囲だけは風が凪いでいる。

 

 

 

 無限城が今も壊されている真っ最中だというのに彼女は特に焦った様子もなく空を歩いていく、そして嵐の中心に向かって手を伸ばすのだった。

 

 

 

「……静かになさい、ここは生命のゆりかごです。みだりに壊していい場所ではない」

 

 

 

 全てを押し流す風をものともせずに始まりの魔女は魔術を行使する、最古であり最新の魔術師でもある彼女が掌を嵐の中心にかざすと、ただそれだけで嵐と無限城の間に巨大な魔術の力場が形成されていく。

 

 

 

 六角形で半透明の壁が無数に連なることによって阻まれ、ようやく嵐は城を貪ることをやめたようだ、

 

 

 

「████████████!!」

 

 

 

 風を束ねて支配する黒い胎児の叫びを聞いて始まりの魔女は僅かに表情を崩す、そして悍ましい天使に憐れむかのような視線を向けると彼女は魔力をほとばしらせていく。

 

 

 

 すると彼女の体は熱を吐き出した、それはエミリーたち炎の魔術師が得意とする炎の魔術であり、大量の火花と灰をまき散らしながら熱を収束させていくとやがては熱線へと変化する。

 

 

 

 放たれた熱線は十本、一つ一つが必殺の威力を誇るそれが黒い胎児へと殺到するのだが、風の結界によって阻まれてしまう。

 

 

 

「……なるほど、魔王の因子を持った悪魔ですか」

 

 

 

 これだけの嵐を支配するには巨大な力が必要になってくる、そこらへんにいる矮小な悪魔ではまず無理だろう。

 

 

 

 魔神の寵愛が深い魔王とその直属の眷属以外には考えられない、かつての大戦で勇者と共に根絶やしにしたつもりであったが、どうやら生き残っていたらしい。

 

 

 

 しぶとい、そんなことを思いながら始まりの魔女は再び魔術を行使した。

 

 

 

 すると吹き荒れる暴風が緩やかになっていく、黒い胎児から始まりの魔女へと嵐の支配権が移っていくかのようだ。

 

 

 

 両者の間で主導権を奪い合う綱引きは一瞬の膠着しか生まれない、黒い胎児は巨大な何かに引きずられるかのように嵐を奪われていく。

 

 

 

「████████████!!」

 

 

 

 このままでは嵐を奪われてしまう、焦りからか黒い胎児は耳障りな叫びをあげるのだが、そんなことは関係がないかとばかりに始まりの魔女は無慈悲に綱を引くのだった。

 

 

 

 しかし我が子の危機を見過ごす母親はいなかった、徐々に緩やかになっていく嵐の中に生まれた新しい力の流れが始まりの魔女へと向かう。

 

 

 

「子供の晴れ舞台を汚さないでもらえるかしらぁ!!」

 

 

 

「あぁ……覚えのある顔だ……厄介な相手が生き残っていたようですね」

 

 

 

 エキドナは魔王と呼ばれる存在の中でも最弱の相手だと彼女は記憶していた、殴り合いも魔法の打ち合いも大したことはなく一対一ならばそれほど脅威でもないのだが、エキドナの特性として眷属を増やすという側面がある。

 

 

 

 質ではなく数を頼りにする相手ということだ、放置しておけば発情期のネズミのごとく倍々に増えていく、力は弱くともその能力がただただ厄介である。

 

 

 

 そしてエキドナの存在によって相手の思惑も凡そを察することができた。

 

 

 

「狙いはこの地の魔力か……」

 

 

 

「ええ、お察しの通り、ここには食べきれない程の魔力に満ちているもの……国を落とすよりも効率的でしょう?」

 

 

 

「まぁ否定はしません……ですが」

 

 

 

 次の瞬間、始まりの魔女の背後に無数の黒い穴が渦巻きながら現れた、そしてその中から鈍色の輝きを放つ翼を持った鎧騎士たちが次々と放出されていく。

 

 

 

「軽々と超えられると思われるとは……どうやら躾が足りなかったようですね」

 

 

 

「あらあら、貴女に殺された覚えはないのだけど……いつも勇者の後ろでチマチマと魔術を唱えていただけの貴女にね」

 

 

 

 エキドナの持つ深紅の瞳が、燃えるように輝いた。

 

 

 

「私が戦うまでもなく勇者が真っ二つにしてしまいますから……あぁ、でも最弱の魔王相手ならば私程度でも十分でしょう」

 

 

 

 そして始まりの魔女の持つ虹色の瞳も輝きを宿す。

 

 

 

「……死にたいようね」

 

 

 

「死ねるのならば私もそうしたい、死はまだ経験していないので……ふむ、未知を既知とする、素晴らしい。惜しむらくは貴女では実力不足というーーー」

 

 

 

 始まりの魔女が言い終える前に両者の中間地点で不可視の力場がぶつかり合った、魔眼から放たれた力が衝突したことによって衝撃が周囲に拡散されていく。

 

 

 

「よく回る舌だこと」

 

 

 

「事実をそのまま伝えているだけです」

 

 

 

 今も始まりの魔女の背後にある穴から大量の鎧騎士が放出されている、ゴーレム故に疲れることも恐れることもない究極の軍隊が今も増えているのだ。

 

 

 

 数をぶつけ合う戦いはエキドナの得意分野なのだがお株を奪われた形である、それが悔しかったからなのか対抗するかのように悪魔も自らの眷属を操っていく。

 

 

 

 城に放出された触手群が重なり合って巨大になると、半壊した無限城を足場にしながら空中を歩く始まりの魔女へと手を伸ばす、それを迎え撃つのは翼を生やした鋼鉄の軍団である。

 

 

 

 ゴーレムたちは触手を切り裂き、触手もまたゴーレムたちを飲み込んでいく。

 

 

 

 どちらも決め手に欠けているので消耗戦になるのは避けられないだろう、それを横目にしながらも決め手になりえる始まりの魔女とエキドナは互いに距離を取りながら警戒を怠らない。

 

 

 

 嵐の王とエキドナが始まりの魔女と睨み合う形を崩したのは、もう一人のエキドナの存在だった。

 

 

 

「……二人?」

 

 

 

 それは始まりの魔女の記憶にない存在だ、鏡合わせのように瓜二つの姿をしているもう一人のエキドナは、腹部を大きく膨らましてあざ笑うように見下ろしてくる。

 

 

 

 最初は幻術かと思ったがそこに魔術的な力は感じない、つまりエキドナはもう一人いる……かつて勇者が真っ二つにした時は無数の配下を従えながらも一人しか存在しなかった筈なのだが、今はどうやら違うらしい。

 

 

 

 あの戦いから何らかの形で分裂したのだろう、驚きはあるがそれだけだ、やるべきことは何も変わらない。

 

 

 

 エキドナの片割れは腹部が膨らんでおりそれなりの魔力を奪われたようだが、無限城に満ちる魔力の十分の一にも届かないはずである。

 

 

 

「お姉さま、とりあえず一体分は確保できましたわ」

 

 

 

「ふふ、よくやったわ、でもそれだけじゃ全然足りないわよ」

 

 

 

「どれだけ奪えるかしら?」

 

 

 

「さぁ、アイツ次第よ……」

 

 

 

 手を繋ぎ合って頬を引っ付けるエキドナはクスクスと笑った。

 

 

 

 そんな彼女たちに始まりの魔女は魔術を放つ、しかし嵐の王が支配する暴風に阻まれてしまう。

 

 

 

「はぁ……長期戦になりそうですね」

 

 

 

 殺しきるには相手にやる気がなさすぎると彼女は感じた、距離を置いて危険から遠ざかっており勝利に手を伸ばそうとする意志が薄い。

 

 

 

 それもそのはず、エキドナたちの目的はこの地に流れる魔力であって始まりの魔女を殺すことではない、隙あらば殺すことも狙うだろうがそれは最終目標ではないのだろう。

 

 

 

 満腹になるまで魔力を取り込んだら即座に撤退する筈だ、だからこそ必殺の領域まで踏み込むことはない。

 

 

 

「ならば……」

 

 

 

 届かぬ位置に相手がいるのなら、その位置まで手を伸ばせば良い……殴れぬのならば殴れるようにすれば良いという雑で豪快な考えなのだが、実際にやるのは難しいだろう。

 

 

 

 だが、それを形にするのが……できるのが彼女であった。

 

 

 

 始まりの魔女が無限城に手を伸ばしてかざす、そして虚空を握りしめると同時に巨大な建築物が形容しがたい破砕音を上げながら崩れていった、無限城全体からしてみれば五パーセントにも満たない量ではあるが、それでも山程という表現がよく似合う。

 

 

 

 実際に、その質量をエキドナたちは見上げている、ポカンとした表情で。

 

 

 

「まぁ既に半壊していましたからね……これくらいは誤差の範囲でしょう」

 

 

 

 そう言って彼女は自らはぎ取った無限城の残骸をエキドナたちに投げつけるのだった。

 

 

 

 投石という規模ではない、まさに山を投げつけるかのようだ、大きく重たいそれを防げる術などこの世には存在しないだろう。

 

 

 

 風の結界も、城壁も、魔術も、悉くを押しつぶせるだけの質量があるのだ、防ぐことは叶わない。

 

 

 

「このッ!! 滅茶苦茶な奴ね!!」

 

 

 

 嵐の王が展開する暴風であってもこれはどうしようもなかった、多少は削れても全てを壊すことは難しい、エキドナたちは逃げるように距離を取ろうとするのだが、それを逃がすような相手ではなかった。

 

 

 

 始まりの魔女が今度は大地へと手をかざす、そして何かを掴み取るかのような動作をすると、彼女は地面を引っこ抜いて見せる。

 

 

 

 そちらも大質量であった、引き抜いた後には巨大なクレータが残されておりその規模は数キロ単位にも上るだろう。

 

 

 

「「はぁ!?」」

 

 

 

 上からは無限城の残骸が落ちてきて、下からは大量の大地が上って来る、その中間にいるのがエキドナたちである、あまりにも広範囲に過ぎる攻撃方法に二人して驚いてしまうのも納得であった。

 

 

 

「これで殺せるのなら楽なのですが……まぁ、最弱であっても魔王は魔王、期待薄ですかね」

 

 

 

 巨大な残骸と巨大な大地に挟まれたエキドナたちだが、虹色の瞳はその中にある魔王の気配が消えていないことを見通していた。

 

 

 

 即座に追撃に移る、魔王を挟み込んだ残骸と大地を圧縮するかのように固めて更に押しつぶすのだ。

 

 

 

 そんな状況では生存などあり得ないのだが、始まりの魔女は魔王が死んだとは欠片も考えていないらしい、油断なく魔力を高まらせながら次の魔術を準備している。

 

 

 

 予想は正しかった、圧縮されて満月のように丸くなって空に浮かぶ檻が、とてつもない暴風と共に砕け散ってしまったからだ。

 

 

 

「████████!!」

 

 

 

「「警戒して距離を置いていたというのに……簡単に超えられてしまったな」」

 

 

 

 月が砕けて中から姿を現したのは融合して大人の姿になったエキドナであった、彼女を守るかの様に吠える黒い胎児も健在らしい。

 

 

 

「「勇者でもなく、半神でもない、だというのに振るう力は巨大に過ぎる……この世の理から逸脱しているな」」

 

 

 

 ある意味では勇者以上に奇妙な存在である、神の加護も奇跡も神性も持っていないというのに、持ち合わせる力は魔王を追い詰める程である。

 

 

 

 人でありながら人の領域を軽々と超えていく姿は、人間と言う種の設計に何かしらの不具合が生じているのではと疑ってしまう。

 

 

 

 異常者、逸脱者、或いは人という種族の中にあるバグのような存在、それが始まりの魔女であった。

 

 

 

「「だがまぁ、お前を殺せば色々と捗りそうだ……武神よりはまだ楽かろう」」

 

 

 

「……無意味なことですね、仮に私を処理できたとしても、大いなる流れは変わることはありません」

 

 

 

 虹色の瞳がここではないどこかを眺めた、それは過去であり現在であり未来なのかもしれない。

 

 

 

「撒いた種が花となり、大樹となった……素晴らしいことだ。突出した者はいなくとも平均が高い、かつてと比べれば誰もかれもが大魔術師なのだから……ここで私が死のうとも意味がありません、この時代に生きる者をあまり舐めない方が良い」

 

 

 

 自分の教えを受け継いだ弟子たちがこの時代にも生きている、数を増やし質を高めてそれでも満足することなく高みを目指している……だから彼女は何も心配はしていなかった。

 

 

 

 どんな障害も、どんな脅威も、弟子たちが超えていってくれる、最古の魔術師としてこれほど満足できる未来はないだろう。

 

 

 

 だから彼女は人形のように感情を感じさせない表情を崩して笑って見せた、エキドナの思惑や行動など何の意味もないとあざ笑うかのように。

 

 

 

「哀れなことだ、死にぞこないの無駄な足掻きほど見苦しいものはない……見栄を張らずに世界の隅っこで震えていればいいものを」

 

 

 

 エキドナから漆黒の波動が吹き荒れた、魔神の加護を乗せたそれを始まりの魔女は魔術の壁を作って防ぐのだった。

 

 

 

 安い挑発だと彼女自身もわかっていたが相手が乗ってくれた為に戦いやすくなった、姿形や数が変わったとしてもそういう所は記憶されたまま変わらないので随分とやりやすい。

 

 

 

「もうしばらくは付き合ってもらいましょうか、私も長く思考の海で眠っていたので本調子ではない……錆び落としには丁度いい」

 

 

 

 怒りに任せて突っ込んでくるエキドナの頬を魔術で強化した拳で殴り飛ばしながら、最古にして最新の魔術師は体を解す。

 

 

 

「あぁ、全力で殴れば大体のことが解決するとは……勇者の言葉でしたか」

 

 

 

 初めて聞いた時は何を言っているんだコイツと思ったものだが、年齢を重ねていけば少しだけ理解できるようになった、確かに立ちふさがるものを殴り飛ばせれば問題の多くが解決するのだ。

 

 

 

 魔王が相手だってそれは変わらない、嵐の王だって同様だ、それを為せるのが彼女であった。

 

 

 

 大量の魔術を行使しながら魔力で体を強化していく、そして眼前のエキドナを殴りつけながら始まりの魔女は久しぶりの戦場を駆けていく。

 

 

 

 誰にも知られることのない、誰にも語られることのない、魔王と始まりの魔女の戦いはそれから二日に渡って繰り広げられたとされる。

 

 

 

 そしてこの戦いを始まりとして、最悪の時代は幕を上げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日、世界中で多くの流れ星が観測されたという、空を見上げると次々と流れていく無限城の残骸が淡い光の尾を引きながら散ったからだ。

 

 

 

 美しい光景だと思った者も多いだろう、同時にこれは凶兆だと叫ぶ者もいた、違和感を感じて調査するように命じた王もいれば、明日は良いことがあるかもと楽観的に笑う政治家もいる。

 

 

 

 しかしその流星群が最悪の時代の始まりだと察した者は一人もいない、激動の産声だとは知らないまま眺めるだけであった。

 

 

 

 夜が太陽を隠してしまうように暗闇が広がっているのだ、それは恐怖であって狂気であって悪性であり、どうしようもない程にどす黒い存在である。

 

 

 

 だがそんな現実を知っても始まりの魔女は心配ないと一言で断ち切るだけである、何故なら彼女は知っているからだ、夜であっても輝く黄金の月があることを。

 

 

 

 夜を切り裂くのは月だけではない、例え小さくとも星々が束になれば暗闇すら遠ざけることができるのだろう。

 

 

 

 激動の時代だからこそ、英雄と言う星々が一際輝くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はッ!! 面白れぇ!! 何か起こりそうじゃねえか!」

 

 

 

 竜殺しの英雄であるカムラーンは空を見上げて笑った、理由はわからずともうなじを突き刺す刺激が激動の時代の到来を知らせてくれるのだ。

 

 

 

 ならばそれは戦いの時代になる、彼が求める闘争はより満たされるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

「おぉ、これは美しいものだな!」

 

 

 

「はぁ……聖アントニウス、何故貴女はそう楽観的なのですか……私は少しだけ不安になります」

 

 

 

 聖都では聖騎士たちが復興に奔走しながらも次なる戦いの予感に備え。

 

 

 

 

 

 

 

「提督、空がえらいことになってますぜ!」

 

 

 

「ああん!? 今はそんなこと放っておきな! 目の前の相手に集中するのさ!!」

 

 

 

 海ではキグナス率いる艦隊がサハギンの群れと戦っていた、流星群はそんな彼女たちの上にも流れている。

 

 

 

 

 

 

 

「帝国三騎士に命じる、原因を早急に調査せよ」

 

 

 

 大陸最高峰の大帝国を背負う皇帝は静かにそう命じた。

 

 

 

 

 

 

 

「若様……これは一体どうしたのでしょうか?」

 

 

 

「不明だ、しかし星の輝きが危うい……嫌な気配がするよ」

 

 

 

 人里離れた樹海の奥地にあるエルフの国でも、嫌な予感に顔をしかめる者がいる。

 

 

 

 

 

 

 

「……ローレライ、あの子たちとの契約書の方は無事かしら?」

 

 

 

「大丈夫です団長、消滅していません……契約神の繋がりは今もありますのでーーー」

 

 

 

「あの子たちは生きているということね……はぁ、それなら少しだけ希望が持てるわ」

 

 

 

 半壊した無限城の下ではキララたちが脱出の準備を整えていた、行方不明になった仲間を探す為にキャラバンは次の街へと進んで行く。

 

 

 

 

 

 

 

「はい、神様……必ずや使命を果たします」

 

 

 

 生命神の神殿では聖女であるマリーが啓示を受けて覚悟を示した。

 

 

 

 世界は流転し激動の時代を迎えることになる、星はただ輝くだけであり、ただ鮮烈であるだけだ。

 

 

 

 無名の勇士が剣を持ち、有名な魔術師が知恵を出す、英雄の蕾は花開き、大器を持つ子供が産声を上げていく……やがてそれは満天の星のように夜空を埋め尽くすことになるのだろう。

 

 

 

 そんな星々の一つ、未だ未熟なれど英雄の輝きを持つ三人の少女もまた、暗闇を彩る星の一つであった。

 

 

 

 

 

 

 

「……どこだよここ?」

 

 

 

 シャルルは流れ星に運ばれた先で目を覚ます、彼女が落ちた場所は人の気配のない平原なのだが遠くの方に街の明かりが淡く輝いている。

 

 

 

 状況はさっぱりわからないが一先ずそこを目指してみようとシャルルは歩き出す、その身に宿した祝福の力を頼りにしながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ッ!!」

 

 

 

 キャロルは黄金の弓を片手に持ちながら深く暗い樹海を駆け巡る、背後から近づいて来る足音から遠ざかるように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「炎でもなく火でもなく、灯の魔術を学ぶのですね……承知しました」

 

 

 

 エミリーもまた流れ星と共に落ちた先で孤立していたが、クレーターのど真ん中で蹲るように祈りを捧げており、どうやら神との対話を行っているらしい。

 

 

 

 

 

 小さな三つの星は孤立しながらも、その英雄の輝きを大きくしていく。

 

 

 

 それは最悪の時代を照らす一際大きな星となるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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