ヒュプシュブリューメン ~可憐なる花たち~ 作:ろっくLWK
episode 1 白皙の芳香 ― アイリスディーナ・ベルンハルト1
たっぷり十秒ほどの沈黙。それからようやく、……は? とテオドールは声を洩らす。
「と、突然何を言い出す!?」
こちらの驚愕ぶりに対し、アイリスディーナは冷ややかとさえ形容できる無表情さでにべもなく告げた。
「古来より『
「そっそれは! ……つうか、そんなのあり得ないだろ。俺にとってリィズは義理とは言え妹だ。それ以上でも以下でもない!」
「だから、その意識こそがまさに格好の獲物になるという話なんだ。私の説明だけでは少々拙いところもあるだろう。ここから先は同志中尉から説明してやってくれ」
了解した、とグレーテルが一歩前に進み出る。
「そもそも情交というものは、必ずしも性的欲求によってのみ成立するものでは無い。相手の想いに応えるため。恩義を果たすため。家格や社会的立場を保全するため。さしずめ少尉たちの関係性に当てはめれば、家族としての繋がりを守りつつホーエンシュタインの血筋を残すため――といった理由でそういう間柄となることも、十分に考えられる」
それは。臓腑を突かれるような思いにテオドールの足が竦む。言われてみればその通りだ。もしも仮に自分がリィズと結ばれ子孫を残したとすれば、それは自分に良くしてくれた義父と義母に対する最大の孝行であり、今の自分に出来る唯一の恩返しということにもなる。当人同士にそのつもりが無くとも、他人からはそう見られたっておかしくない。
「そこに
要はそのぐらいの誘因力がある、ということをグレーテルは言いたいのだろう。今のテオドールには、彼女の言い分を払いのけられる材料など無い。元々リィズには
「そこで同志大尉自ら身体を張ることで、少尉が易々と篭絡されないよう鎖を付けておこうというわけだ。無論、連中の策謀に対抗するための政治的指導も兼ねてな。言っておくがこれは私の発案によるものではない。そうするのが最善、と大尉が自分で判断した事だ」
「だ、だからってそんな理由でいいのかよっ! アンタ……は……っ!?」
荒げようとした声が喉の奥へと引っ込む。ついさっきまでBDUに身を包んでいた筈のアイリスディーナはいつの間にやら、ベッドの上であられもない下着姿となっていた。
「良いも悪いもない。私は党と国家、そして
ごくり、とテオドールは唾を呑む。いつぞや温泉でも垣間見たアイリスディーナの白く透き通る素肌。このご時世にしてはやけに派手なレースが奢られた白のブラジャーは、内側から盛り上がった豊満な乳肉のせいで今にもはち切れそうになっている。細やかな腰回りを取り巻くガーターベルトは滑らかなふとももを覆う白色のストッキングを連結していて、その狭間にはこれまた純白のショーツが窮屈そうに張り付いていた。
「それに以前ホーエンシュタインも言っていたしな、貴様は私のような女性が好みのタイプだ、と。であれば貴様に鎖を付けるのは、まさに私にこそうってつけの任務。そうは思わないか、少尉?」
妖艶な表情を浮かべるアイリスディーナがそろりと足を組み替えた。形良い太ももの間隙に覗く
「本当に正気なのかよアンタ。アンタは自分の目的のためなら、誰とでもその、こんなことまでするってのか」
「――幻滅したか?」
「いや、それは無い。無い、が……」
シーツの上にさらさらと金色の長髪が踊る。彼女への思慕をテオドールが自覚したのはつい先日のこと。それ以前にも彼女とそうなることを、自分は夢にまで見てしまったほどだ。あの夢と程近い状況がすぐ目の前に、手を伸ばせば容易に掴める距離にある。その現状があまりに信じられなくて、頭がクラクラしてくる。
「言っておくが任務である以上、この場には政治将校殿にもご同席願うこととなる。私たちの行為があくまで任務上のものであって不審な点など一切無い、ということを証明して貰うためにもな。つまり個人的な情に基づくものでない以上、貴様に拒否権は無い。――さあ腹を括れ、テオドール・エーベルバッハ」
そうとまで言われても、正直まだ葛藤はある。自分がアイリスディーナを女性として好いているのは確かだ。東洋には『据え膳食わぬは男の恥』なんて言葉もあると聞く。それに忠実な行いをすることが任務を達成することと同義なのであれば、軍人として男として、迷う理由などこれっぽっちも無いことだろう。だが、けれど、それなのに。こんな理由で尊崇の対象を穢してしまっても良いものかと、テオドールの逡巡は否応なしに深まってしまう。
「どうした? 棒立ちのままで。もしかして貴様、こういう場面で女をリードした経験が無いのか?」
「うぐ。そ、それは」
図星を指され、テオドールは返答に窮してしまう。――と、それを見たアイリスディーナが「フフッ」と、
「全く、しょうのない奴だな。まあ女に苦手意識もあったみたいだし、そうなのだろうとは薄々予想していたが」
やめてくれ。そんな言葉が喉から飛び出そうになる。自分が童貞だという事実をアイリスディーナに見破られるのは、男としての
「そう固くなるな。まずは服を脱いでこっちに来い」
「あ、ああ……」
命ぜられるがままにおずおずとBDUとインナーを脱ぎ、パンツ一枚の恰好になる。目の前に展開されたアイリスディーナの美貌とこれからへの期待感のせいで、股間の薄布は既に大きく盛り上がっていた。
「ほう。意外と逞しいのだな」
「い、言うな……ッ」
「私は身体つきのことを言ったんだが、貴様はどこの話をしていると思ったんだ、んん? ――まあ確かに、
「遠慮はするな。まずは慣熟訓練と思って、貴様のしたいようにしてみる事だ」
後ろ手をついて、アイリスディーナがその見事な胸を張った。たぷたぷと揺れるその双丘は、ひと房でも彼女の頭蓋をすっぽり埋め尽くせるほどの圧倒的なボリュームを誇っている。本当にいいのか。そんな気持ちとは裏腹に、己の両手はまっすぐそこへと伸びていった。
「――んッ……!」
乳房を手のひらで包んだ途端、アイリスディーナの体が小さく震える。その大きさと感触に、テオドールは腹の底から驚嘆した。何だこれは。手のひらに全然収まらない。いつぞや彼女の胸に抱かれて泣いたときよりも、この手の内にあるものは遥かに柔らかくて温かかった。それを下から支えるように掴むこの指が、ほんの少し力を入れただけでいとも容易くたわみの奥へとめり込んでゆく。
「ふふっ。どうした? 胸を掴んでそれでおしまいか」
「お、終わりじゃない、が――」
次にどうすればいいかなんて全く思い浮かばない、それが偽らざる本音だ。微かに指を動かしただけでぐにゅぐにゅ動く乳房はずしりと重く、それでいて言いなりになどならないとばかり、圧巻の弾力を指先へ返してくる。想像を遥かに超えたその感触を、気付けばテオドールは夢中で揉みしだいていた。
「んっ、あ、ぅん……。くすっ、胸ばかりそんな夢中で弄って。それは貴様の趣味か?」
「いやっ、趣味ってわけじゃない」
「だったら他のところにも触れたらいい。例えばそう――唇とか」
誘うようにそう言って、アイリスディーナは己の唇をついと指でなぞった。リップを乗せた艶やかな唇。そう言われれば、とテオドールは気が付く。異常事態の連続にすっかり思考が凝り固まっていたせいで物事の順番を間違えていた。弾力に満ちた魅惑の膨らみから手を離せぬままで首を伸ばし、テオドールはアイリスディーナの頬を辿るように顔を寄せる。
「ふぅっ。くすぐったいぞテオドール。……んっ、くちゅ」
ロングの金髪から漂う、えもいわれぬフルーティな香り。それを嗅ぎながらアイリスディーナと口づけを交わす。……甘い。唇の感触が心地良い。薄く紅色を差したアイリスディーナの頬に見とれながら、テオドールは存分に彼女の唇を堪能する。二人のファーストキスは次第に情熱の炎に炙られ、ちゅぱちゅぱと唾液をすする音を強めていった。
「んふ、あむ……んく、ちゅうっ。んあ、れるっ。ちゅく、ぷちゅ」
舌を差し入れ口中をかき回す。それに応えたアイリスディーナの舌が、ねろりと絡み付いてきた。脳髄を溶かされそうになる感覚。アイリスディーナの呼気を浴びながら、なおもテオドールは己の舌で彼女の口腔を侵略しようと努める。
「んんっ、んんむッ。――ぷは。……ん、キスは及第点といったところだな。では次は脱がせ方だ、ブラホックの位置は分かるか?」
「ああ。え、えっと……」
「そっちじゃない。前だ」
背中に回そうとした手を、アイリスディーナの手が戒める。二つのカップの間にあるか細い繋ぎ目。そこを両手で方々につねると「ぷちん」という音と共にホックが外れ、カップに遮られていた巨峰が勢いよくまろび出た。その威容にテオドールは息を呑む。
「――綺麗だ」
それは極めて率直な感想だった。これほどの大きさであるにも関わらず、少しの垂れもない盛り上がりぶり。張り詰めた乳房の先端に居座る、これまた不似合いなほど
「……あぁぁ、」
そこを軽くつまんだだけで、アイリスディーナはぴくぴくと身体を震わせた。乳房そのものの弾力も目を瞠るものがあったが、乳首はもっとすごい。ゆっくりと捻って乳輪をなぞり、ころころと乳首を転がすと、硬くしこった感触に指先が跳ね返される。
「んっ。あっあ……ふうっ。ん、んふ、くぅ……っ」
桜色の突起を引っ掻いたり扱いたりすると、アイリスディーナは敏感に身をくねらせ、徐々に喘ぎの吐息を強めてゆく。まるでそこが官能のスイッチであるかのように、テオドールの入力に対してアイリスディーナの身体は
「くぅっ。ふぁ、あんっ。――どうだ、私の胸は?」
「どうだ、って言われてもな。文句のつけようも無い。見てるだけでも勝手に涎が湧いてくる」
「なら、直に味わってみてくれ」
たぷん、と波打つ肉の塊。誇示するように目前で揺れる乳首。それにテオドールは即座にむしゃぶりつく。ぷりぷりと蠢くその口当たりは未だかつて経験したことの無いもので、なのにどこか懐かしささえ感じる不思議な感触だった。過度な興奮のせいで己の鼻息が荒くなっているのに気付いても、今はそれを抑えられそうも無かった。
「ん、あっ。そう、そのまま舌で捏ねるように舐めて……はぅっ。筋がいいぞ。やはり一流の衛士たるもの、何事に於いても飲み込みが早いものだな。んんっ、」
しゃぶりやすいようにという配慮なのか、アイリスディーナが腕でテオドールの頭部を保持する。いや、ほとんど乳房に押し付けるような体勢だ。顔一面を覆いつくす真っ白な乳房に呼吸を圧迫され、テオドールは息継ぎをするようにしながら乳首を舐め転がす。
「あぁんっ!」
ちゅぶ、と音を立てて強めに乳首を吸うと、彼女は両肩をすくめて短い嬌声を洩らした。その声色も弾む吐息も、露わになった乳房も、何もかもが普段のアイリスディーナ・ベルンハルトとはかけ離れている。それがテオドールの興奮をより強めていく。もう片方の手で裸の乳房を揉み、彼女の反応を窺いながら二つの乳首を責め立てると、アイリスディーナは極めて敏感に身体を揺れ動かした。
「あぁっ、んうぅっ……これほどまでにがっつくとは、そんなに私の胸が好きか。それとも単に金髪で巨乳だから、というだけか?」
「ぷはっ。だから別に、金髪とか巨乳なんて関係ない。
「そうなのか。それは少々残念だな。――テオが気に入ってくれるなら、と私も嬉しかったのに」
え? と脳が一瞬思考停止する。その間隙を突くように、アイリスディーナはテオドールの顔を両手で掴み、熱いキスを浴びせてきた。
「んちゅ、んんッ、ふ――くちゅ……」
「はぁっ……ど、同志大尉……」
「何だ、台無しだぞ。こういう時に女をどう呼ぶべきか、貴様だって知らないわけじゃないだろう」
「あ? いやえっと……」
「アイリス。……今はそう呼んでいい」
愛称呼び。それを彼女が許可してくれたことに、テオドールの胸はジンと熱くなった。再びキスを交わしながら手を少しずつ下へと這わせてゆき、まずはショーツの表面を丹念に撫でさすっていく。
「んぁ、ああん……ふふ。いやらしいぞ、その手つき」
「だって……感触が良すぎる」
柔らかに引き締まったアイリスの足腰。けれど臀部はたぷたぷと波打つほどの肉感で、あたかもそこにもう一式の乳房を取り付けてあるみたいだ。それに吸い付くようなこの瑞々しさも、想像の遥か上を行くものがある。揉んでいるだけで昂揚するテオドールの心理を、恐らく彼女は見抜いていたに違いない。
「そんなところ、執拗に触ったって面白くもないだろうに。――それとも興味があるのか?」
「ある、って言ったらどうするんだ」
「だったら……私のケツを舐めてみろ」
吶喊の際の決まり文句を口にしつつ、アイリスが背を向ける。それはショーツをはぎ取れ、という号令に等しかった。指を掛けてショーツをずりおろすと、ほわりと温かい熱気と共に彼女の豊かなお尻が曝け出される。丸々と隆起したその表面をさっそく舌でなぞると、淡雪のように白く軟らかい皮膚はくにんと容易く歪んだ。
「ん、あぁっ。……こら、本当に舐めるやつがあるか」
「す、すまん」
「舐めろと言ったのはそこじゃなくて、ここだ。……ほら、」
アイリスの両手が尻肉を押し広げる。くぱ、と生々しい音と共に開帳されたそこに咲くのは、全くのピンク色に染め上げられた彼女の麗しき花弁。これが女の秘所。初めてそれを目の当たりにしたテオドールは、脳にぐらりと立ち昇った劣情のせいで一瞬我を忘れてしまう。
「敏感な場所だから、あまり乱暴にするなよ」
「わ、分かってる。……なるべく加減する」
「ん――ぅあああっ、」
ぴらりとした柔ひだを舌でなぞる。あまりの興奮に五感が麻痺しかかっているのか、味もにおいもほとんど感じない。その代わり、舐め続けるうちに奥から湧いてきたぬるぬるの愛液が醸す刺激は、己の男性自身をより硬く屹立させていく。
「んぁっ、あう、くあぁっ! あ、舌をそんな、ぱたぱたさせてっ。これではまるで貴様の方こそが犬みたいだな……ッ」
「ジョークのつもりなら笑えないぜ。それとも何か? お得意の
「ん? ああ、まあ貴様の好む話かどうかは分からんが――こんな小話を知っているか?」
幾分声を上擦らせながら、それでも努めていつもの調子で、アイリスディーナは語り始めた。
「欧州各国の男たちが集まって、妻の尻をどう誉めるべきかを競い合った。まず初めにイタリア人はこう言った、『その重たい尻に敷かれるのが長年の夢だったんだ』。次にフランス人はこう言った、『我が国が誇る
「その答えは?」
「こいつは熟れた桃みたいでとても美味しそうだ、少なくとも我が国の料理よりはね」
「……ぷっ、」
それはハードルが低すぎるだろう。軽妙な落ちを披露したその
「さて、私の尻を貴様ならどう誉める?」
「そうだな、フランス人もいい線いってるが……俺ならこう言うな、『君のお尻の美しさたるや、あたかもイズンの林檎のようだ』と」
「……まあ、貴様なりにはよくやった、と言っておこう」
それはつまり、評価としては微妙ってことか。小話の回答でアイリスを喜ばせることは出来なかったが、落胆する代わりにテオドールはつるつるのお尻をまさぐりながら舌の動きを再開し、丹念に割れ目を舐ってゆく。
「んぁぁ、ふぁうっ。あ、あ、んんっ……いいぞ、いい……っ。もっと音を立てて、これ見よがしに私をなぶり尽くせ……っ!」
アイリスが仰向けに寝転がり、その股を大きく開いた。その付け根に顔を埋め、要望通りじゅぷじゅぷと愛液を啜る。
「あぁ……ッ。テオドールッ。もっと奥へ、舌を……挿れてっ……」
ぴったりと閉じた花弁。そこに舌先を潜らせると、グツリと籠った熱気が出迎えた。この濡れ具合といい体の反応といい、アイリスがかなり感じているのは間違いない。受け入れの準備はとっくにできている筈……だが、いつそっちへ移行すればいいのか、そのタイミングがどうにも分からない。
「あ、ん、んああぁっ。いいぞ、体が、切なく、なってきたっ――それ、が、欲しい。テオドールのッ……」
アイリスの手がテオドールの下着の裾に掛かる。ずるり、と脱がされ飛び出る愚息。アイリスへの愛撫を通じてギンギンに硬くなったそれを、細く冷たいアイリスの指が包み込む。
「ふふっ……こんなに赤く張り詰めて、たらたらと涎のように
「聞くな。もう分かってんだろ、アンタなら」
「そうか……ふふふっ」
「何が可笑しい?」
「いや、何でも。さあ私に見せてみろ、テオドール・エーベルバッハの逞しさを」
挑発的な誘い文句。それにいきり立ったテオドールは、自らの肉竿をアイリスの花弁へと宛がう。
「もう少し下だ。そこから角度を付けて……あ、そこ。……熱い、な、テオドールの先端」
「……アイリス? 震えてるのか?」
本当に微かな違和感。だが幸運にもテオドールはそれを察することができた。その可憐な唇からふうふうと吐息をこぼすアイリスは、しかし「いいや」とかぶりを振ってみせた。
「これは女の期待だ。……あまり焦らすな。躊躇せず、一撃で仕留めてみせろ」
「良く分からんが……なら、行くぞ」
とぷり。亀頭がぬるぬるの花弁に沈む。初めてのセックス。それに身を震わせつつ腰を押し進めるうちに、途中で何かが竿の先に引っかかった。薄膜のようなその抵抗感に戸惑うよりも先に、亀頭の先から押し寄せる快感に呑まれてしまったテオドールは、「うお、」と衝動的に腰を突き出してしまう。
「んああぁ……ッ!!」
ぐい、とねじ込んだ亀頭が感じ取る破断の感触。それと同時にアイリスが甲高い声を上げた。今のはまさか。ぱくぱくと開閉するアイリスの口元へ、テオドールは咄嗟に耳元を近づける。――部屋の隅でこちらを監視するグレーテルには聞こえぬほどの小さな声で、キスを交わし合うフリをしながら、二人はぼそぼそと会話を紡ぐ。
「……あ、あ、テオっ。――うれ、し、い……」
「アイリス? お前、まさか……」
そうだなんて思いもしなかった。
「――
「……私は体制派の英雄扱いだったからな。女の操は今日この時まで、どうにか守り通すことが出来た。尤もいつどうなるか分からない身の上、いつかは無惨に散らされることも覚悟していたが……こうしてちゃんとテオに捧げられた。女として、これ以上の喜びなど無い」
「そんな……それなのにお前、どうして俺なんかに……」
「鈍いやつめ……まだ気付かないのか? 貴様も知っている筈だ、私がこういうやり口をする人間だということに」
あ、とテオドールの喉が鳴る。そうだ。アイリスディーナ・ベルンハルトは、この女はいつだって、任務の中に理想や私情を織り交ぜてきた。それも極めて巧妙に。他者がそれと気付くことの無いように。だからカティアの亡命はあっさり認められた。教条主義的なグレーテルとも折り合いをつけてきた。そして頑なだった自分でさえも、遂には絆される結果となったのだ。ということは。アイリスがここまでする、その意味は。
「私だって女だ。好きでもない男に抱かれたいなどとは思わない。特に、
「あ、アイリスっ。俺は……俺も、お前のことが……!」
「言うなテオ。それを言ってしまえば、お前も私も今まで通りではいられなくなる。……ここにはイェッケルン中尉もいるんだぞ」
テオドールの唇に人差し指を当て、それをアイリスは自らの唇へと運ぶ。
「これは私たち二人だけの秘密だ。――テオのその気持ちは言葉でなく、行動で示してくれ」
「アイリス……」
「私はそれで十分……いや、身に余るほどだ。お前は私の希望、なのだから」
その一言を合図にするかのように、アイリスの腰がぐちゅりとテオドールの肉竿にかぶり付いた。体温と愛液に塗れた粘膜の蠕動が肉竿の半分ほどまでを覆い、その熱烈さにテオドールは苦悶の声を上げる。
「くお……ッ」
「――さあ、身をもって知っただろう? 『
彼女が気持ち大きめに声を張ったのは、『これはあくまで鎖付けである』とグレーテルにアピールするためだ。そうと悟ったテオドールはアイリスの目論見に乗るかのように、腰を大きくグラインドさせ始める。
「んっ、んぁうんっ。なかなかやるな……っ。その調子で
アイリスの中はとろとろに熱くて、埋没した肉竿が今にも溶けてしまいそうだ。のんびりしていては先にやられる。かと言って腰を動かす度、高濃度のウォトカを流し込まれた時のような酩酊感が全身を襲う。つまりはどちらにしても、昇り始めた己の性感を抑え込むのは到底難しいことだった。
「ぅあ……あっ、ああっ、ああああっ。い、いいぞっ。貴様の熱いペニスが私の中を引っ掻いて、弱いところに当たっている。そこを重点的に突け……っ」
「ああっ。――し、しかしこれは……!!」
気持ちいい。想い人とのセックスであること以上に、アイリスの中はあまりに具合が良すぎた。何も考えなくても勝手に腰が動いてしまう。それがアイリスの反応を強め、気持ち良さを数段増幅させてゆく。快感の応酬、とはまさにこのことだ。
「はぁっ……ああんっ、あうっ! あっあっ……いいっ、すごく気持ちいいぞテオドール、その調子だっ。ああっ、ふあぁぁんっ!」
肉竿をきゅるりと取り巻く肉襞は別の生き物みたいで、あらゆる角度から予測不可能な快感を与えてくる。きつく締まる膣口に雁首を捉えられる度、陰嚢をグツリと直撃するかのような吐精欲に駆られて腰が抜けそうになる。その只中をひたすら往復させていると、同調して弾むアイリスの肢体が目に眩しい。喘ぐ声が鼓膜をくすぐる。彼女の甘い香りが鼻腔に響く。啄んだ乳首が芳醇な味わいを放つ。この手に抱くアイリスの肉体は今、テオドールの心と体を文字通り支配していた。
「あ、ん、胸、胸ももっと、弄るんだっ。うあ、あ……そうっ。腰をリズミカルに動かしながら、胸はやさしくっ。――あああっ、体が熱くなる……ペニスが中で、暴れ馬みたいに、跳ね回ってるっ」
もっと奥深くまで繋がりたい。その思いは自ずと腰同士を密着させ、膣奥をひたすら穿つ動きへと己の律動を変化させる。ぷにゅんと柔らかい肉の厚みは、そこが
もし、アイリスが妊娠したら。テオドールはそんな夢想を頭の中に描く。それが彼女の本意でないことは承知している。だがもしアイリスがその大望を叶える日が来たら。その末に家庭を築き、子を儲け、二人でその子を育ててゆく。それは今まで考えもしなかった希望の景色だった。
かつて自分を薄暗い孤児院から引き上げてくれた、家族のぬくもりと安らぎ。それを与えられる立場に自分が立つ。アイリスと二人でその夢を実現できるのなら、自分に出来ることは何だってやり遂げてみせる。愛しきアイリスを、この手に抱く女を守り抜いてやる。そんな思いがじわじわと、テオドールの内側に溢れ出す。
「あッ! ――いいっテオドールっ、頭に火花が散るようなこの感じ……あんっ、私ももう、そろそろだっ……私より先に、逝くんじゃ、ないぞっ……」
「うあぁッ、アイリスまだかっ? 俺だってもう、っく――!」
「はぁ、はぁっ、ふぁ……い、今だっ。ぎゅって抱きしめて、ぇぇぇっ……! ああぁんっ」
力強い抱擁。情熱的な律動。アイリスの求めはもう分かっている。だからその口を己が唇で塞ぎ、テオドールもまた迫り来る限界に向けて腰の動きを加速させる。
「んうぅ、あむっ……うあ、あっ、あ、あ、……あううぅぁぁあ~~~ッッ!!!」
ひと際の感泣。彼女の甘美な歌声に合わせ、テオドールは溜めに溜め込んだものを解き放つ。
「アイリスっ……!!」
びゅるるっ、とすさまじい勢いで噴出し膣奥へと注がれてゆく精の奔流。ひとしきりを出し終えるまで腰を揺すり、竿の中の一滴まで漉し取るようにして。――アイリスと重なり合う余韻のひと時を、テオドールはたっぷりの陶酔に溺れながらしばし堪能する。
「……ふぅ、ふぅ、ああっ……。――っふふ、さすがはエーベルバッハ。戦術機のみならず、私のこともまずまず上出来に乗りこなせたようだな」
「その言葉ありがたく頂戴するぜ、アイリスディーナ・ベルンハルト」
「だが結果は同着、といったところだ。これでは本職の色仕掛けを退けるには到底至らないだろう。今後も暇を見てたっぷりと『指導』してやるから、覚悟しろ」
「ああ……上官命令だからな。気の済むまで存分に『指導』を頼む」
これで自分は完璧に、アイリスディーナという名の鎖で繋がれてしまった。けれど悪い気はしない。離れがたい感情を胸に抱きつつも身を起こして腰を引き、ぬちゅり、と淫靡な音を立てて抜き取った肉竿。そこには白濁した精液に混じって、アイリスの散らした純潔の跡が赤くこびり付いていた。それを
「さて、実際に味わってみたことで、これに抗うには不屈の精神と強い意志が必要である事が貴様にも分かったと思う。――そこで第二問だ。今度は逆に、貴様が相手を篭絡してみせろ」
「……逆に?」
「そうだ。
「いや、理屈ではそうだろうが、篭絡って――どうすればいいんだ」
そもそも圧倒的に経験不足な自分にそんな芸当が出来るとは到底思えない。そんなこちらの思惑を見越してか、アイリスがクツリと喉を鳴らした。
「出番だぞ、同志中尉」
「――なッ!?」
仰天したテオドールは背後のグレーテルを見やる。……その時彼女は何を思ってそこに佇んでいたことだろう。これまたいつの間にやら、グレーテルはとっくの昔にBDUを脱ぎ捨て、その柔肌によく映える黒のランジェリー姿となっていた。