※この作品はR-18です。

ヒュプシュブリューメン ~可憐なる花たち~   作:ろっくLWK

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episode 2 開けき蕾 ― グレーテル・イェッケルン

 

 

 あられもない姿のグレーテルがもじもじしながらこっちを凝視している。それを前にして、依然テオドールは理解が追い付いていない。あの教条主義の体現者みたいな政治将校殿が、どうしてこんな格好をしている? その意図は何だ? 全てを図りかねるテオドールのことを傍から揶揄するように、アイリスディーナは小さく鼻を鳴らした。

 

「存外可愛い趣味をしているだろう? 我らが政治将校殿は」

 

「あ、いや、それは確かに――じゃなくて! どうしてそうなるんだ」

 

「同志中尉には仮想敵(アグレッサー)を務めてもらう。一見してまるで敵意の無い、無垢で純粋に貴様を慕う同年代の女――というのが設定条件だ。そんな女を抱くことで自分の虜にする。あくまでも演習である以上、中尉がそう自己判定するまでが今回の目標となるが」

 

「んなこと言われても……」

 

 テオドールは大きく狼狽した。自分にだって貞操観念というものがある。成り行き上とは言えアイリスと交われたことはある意味望み通りと言えるが、グレーテル相手となるとその限りでは無い。そもそも向こうだって、本心から望んだことでは無い筈だ。あくまで任務だから仕方無く。そのためだけに卑しくも政治将校であるグレーテルが体を開く、というのはこれまでの経験から言って、アイリスがそうする以上に考え難いことだった。

 

「そう怖い顔をするな。これも勉強だよ、同志少尉」

 

 柔らかく微笑みつつ、アイリスはティッシュで己の恥部からこぼれた精を拭き取った。それに混じる赤いものを注意深く、シーツに染みさせないようにして。

 

「――これ以上は中尉の口から直接告げた方がいいだろう。私は休憩する」

 

 おもむろにベッドから立ち上がったアイリスはグレーテルへと近付き、彼女の小さな背をそっと押した。

 

「さあ、イェッケルン中尉」

 

「あ、ああ……」

 

 恐々と近付いてくるグレーテルの表情には、明らかにそれと分かるほどの抵抗感が滲み出ていた。当然だ。さっきのアイリスの話じゃないが、いくら党と国家のためとは言え、好きでもない男に抱かれることを望む女などいやしない。それなのにこんなことをするだなんて――まさかアイリスに何か弱みでも握られているのでは? 訝しむテオドールをよそに、グレーテルはとうとうベッドにまで上がり込んできた。

 

「え、エーベルバッハ。その、何と言うか、私はだな……」

 

「……無理するなよ。アンタ、そういうガラじゃないだろ」

 

「む、無理などしてないっ! これは任務上必要なことであって……そう、我が666中隊のためなのだからっ。大尉がああして体を張ってまで貴様を教育してみせた以上、政治将校である私がそれと同じことを出来ないのであれば、ひいては党の威信に関わる!」

 

 別に関わりゃしないだろう。どうにもこうにも無理くり理屈を捏ねているような感がして、テオドールは閉口してしまう。

 

「わわ私だって別に、率先して風紀を乱すような真似を奨励しているわけでは無いぞ。だからこそこの部屋を同志大尉と貴様に開放し、こうして事に及んでいるんだ。それもこれも全ては貴様に政治的指導を施す意義を感じてのこと。それに先ほど大尉も言っていただろう。これが『蜜の罠(ハニートラップ)』対策の為の訓練である以上、この場において貴様に拒否権は無い!」

 

「いや、俺に無いとしても、アンタにはあるんじゃないのか……?」

 

 そもそもこれの何が政治的指導なのかさっぱり分からない。性(・)事(・)的(・)指(・)導(・)、というならまだ理解できなくもないが。

 

「つべこべ言うな! これ以上の問答は抗命と見なすぞ。私の納得のいく回答を示せるまでは、貴様をここから解放するわけにはいかないのだからな。覚悟を決めろエーベルバッハ!」

 

 ――無茶苦茶だ。思わずテオドールは嘆息を洩らしてしまう。これでは本物の尋問とほとんど変わらない。スチールデスクに着座したアイリスが何も言わないのを見て、これはいよいよ腹を括るべきだとテオドールは推量した。

 

「……じゃあ」

 

「わ、きゃ、」

 

 グレーテルの腕を引き、その小柄な身体を抱き込む。意外というのも失礼だが、華奢な体形のグレーテルも肌の質感はしっかり女性らしかった。

 

「あ、あのっ。一つだけ良いか、少尉……?」

 

「何なりと、同志中尉殿」

 

「さ、さっき同志大尉と交わしていたように、私のこともその、グレーテルと呼んでくれ。その代わり、私も貴様のことを……テ、テオドール……と呼ばせてもらう。いいな?」

 

「……それはこの任務中だけか?」

 

「ばっ、馬鹿! そんなの当たり前だろうっ。平素私をファーストネームなどで呼んでみろ、即刻強制労働送りにしてやるぞ!」

 

「分かってるって、冗談だ。そんなこと言われたら怖くなっちまうからやめてくれ。それと色気も無い」

 

「な、あっ……!?」

 

「理由はどうあれ肌を合わせるんだ。だったら、プライベートでもそういう関係を期待しちまうのが男女の仲……ってモンだろ?」

 

 歯の浮くようなことをあえて臆さず述べてみる。それが任務なのだ、今はこのグレーテルを篭絡するよう振る舞うのが己の為すべきことなのだ……と己に言い聞かせながら。

 

「任務もいいが、いざそうするとなったら俺だってそうそう簡単に割り切れやしないんだ。『情』ってものをアンタに期待してもいいのか? 俺はそう訊いている」

 

「……フン。同志大尉を抱いたお陰か、女の扱いに少しは自信を持ったようだな。まあ口説き文句は合格、としておいてやる」

 

 そっぽを向いたグレーテルの耳が赤い。それを見とがめたテオドールは彼女の顎に指を掛け、グイとこちらへ向けさせる。

 

「……ッ!」

 

「近くで見るとアンタ、けっこう美人だよな」

 

「うぅっ!? それは馬鹿にしている……のかっ?」

 

「いいや。普段は凛々しい将校ってイメージがあったからな。再評価っていうか、改めてそう思ったって話だ」

 

「……着飾るのはあまり趣味じゃないんだ。そんなの任務に必要無いし、第一私には似合わないしっ……」

 

 そうは言うものの、だ。テオドールは記憶にあるグレーテルの常日頃を振り返る。政治将校らしく隙を作らないようにしている彼女は言動のみならず、その容姿にも気配りを怠らない。元々整った顔立ちは薄化粧を施しただけでも十分艶やかに見える。生真面目さを強調する無骨なメガネが玉に瑕――ではあるが、それも見方を変えれば歳相応の娘らしさを残していると言えなくもない。

 

「そんなことは無い。アンタの女らしいところ、もっと俺に見せてくれ。グレーテル」

 

「あ――。テ、テオ……ドール……んっ、」

 

 グレーテルの手のひらがこちらの頬に添えられる。そのまま引き寄せ合うように、二人は唇を重ねた。リップから香る葡萄のような爽やかさ。それは彼女の気性に相応しく、切なさにも似た甘酸っぱさをもたらす。

 

「んむっ……ん、んぅ……あふ、ちょ、ちょっと待って。息がっ……」

 

「鼻ですればいいだろ」

 

「それは何と言うか、はしたない気がする……」

 

「変なこと気にするなよ、多少顔に息が掛かったぐらいで萎えたりしない。むしろグレーテルのいい匂いがして気分がそそられるぐらいだ」

 

「――~~~っ! 今のは減点だ、少々気障(キザ)が過ぎ……ッ、あ、ちゅくっ……」

 

 長くなりそうな文句をキスで塞ぎ、グレーテルの長い黒髪をさらさらと撫でさする。困ったような形に歪んだグレーテルの瞳がゆるゆると閉じ、そのまま二人はしばし接吻のひと時を堪能し合った。

 

「髪、ツヤツヤだよな。こんだけ長けりゃ手入れも大変だろ?」

 

「……ま、まあ。前線ゆえ物資に不足はあるが、それでもシャワーの度にきちんとトリートメントしてはいる。どうせ花っ気が無い、と皆には思われているのだろうが」

 

「そんな事ない。清楚な感じでグレーテルに似合ってるぞ」

 

「世辞なんていい。――どうせ金髪の方が好みなくせに……」

 

 そんな不服げな一言がグレーテルの口から転げ落ちる。――これも仮想敵(アグレッサー)としての演技ってやつか? もう一つ判断を付けられなかったテオドールは、ひとまず本来の目的に立ち返って前戯を始めることにした。

 

「ん……あ、」

 

 ブラの表面をひと撫でしたとき、グレーテルの身体はピクリと揺れた。親指と人差し指で挟み込めてしまうほど控えめなその胸を、まずはじっくりとまさぐっていく。

 

「あ……あっ、テオドールその……っ」

 

「どうした?」

 

「あ、いや、何でもない……あ、う、ああんっ……」

 

「……怖いか?」

 

「怖くは、ないっ。ただその、そんな風にされると体が熱くて……心臓がドキドキして、張り裂けそうで……っ」

 

 要は緊張してるってことか。そうと判断して、テオドールはもう一度キスを浴びせる。随分慣れてきたのか、舌を差し込んでもグレーテルに拒否の行動は見られない。それどころかこちらの胸板に手を乗せ体重を預けるようにして、今度はグレーテルの方から身を寄せてきた。

 

「んむっ。ちゅ。んちゅうっ。――ぷは、てお、ろーるぅ。ぷちゅちゅ、」

 

 そのうち熱に浮かされたように、グレーテルの目の焦点がぼうっと定まらなくなってきた。そろそろ頃合いと見ていいか。アイリスのブラのホックは前面にあったが、グレーテルのは恐らく背中側にありそうだ。――案の定指に引っかかったその噛み合いを、テオドールは両手でぷつりと解く。

 

「――やぁ……」

 

 はらりと綻んだ薄布。その内側に手を差し入れた時、グレーテルは悲鳴ともつかぬ微かな呻きを上げた。小ぶりではあれど柔らかく、それでいて確かな弾力を感じさせる生の乳房。それを優しく揉んでやると、グレーテルの頬がいよいよ紅潮と言って良い按配に充血する。

 

「あっ、んああっ。テオドールの指、かたくて、あったかい。たぷたぷ揺すられるの、いいっ。こんな、こんなに、小さいのにっ」

 

「大きさなんて気にするかよ。形も綺麗な上に、プニプニでいい弾力だ。――乳首だって、ほら」

 

「あぅあああぁあっ。ダメ、そんな、いきなり……激しっ――!」

 

 そんな制止も意に介さず、指先でぷるぷると乳首を弄ぶ。それに過敏な反応を示すグレーテルの身体。己の身に注がれる快感を受け止め必死に声を堪えようとする彼女の慎ましさが、さっきからどうにも可愛くて仕方ない。ランジェリーの裾に手をかけ上に捲ると、こちらの意図を察知したグレーテルがブラごとその全てを脱ぎ去る。ふわ、と広がった黒髪の艶深さが、テオドールの網膜に鮮烈な影を宿した。

 

「……うう、あぅ……」

 

 曝け出されたグレーテルの胸は、こうして改めて目視してみても、アイリスの大きさには遠く及ばないものだった。だがその控えめさこそが逆にグレーテルらしくて、彼女の乳房をもっとじっくり堪能してみたいという衝動に駆られる。

 

「ひゃぅんっ!」

 

 ぴとり、と舌を乳房に付けただけでグレーテルの身体は大きく跳ねた。何をするつもりなのか、という彼女の目つきに答えを示すかのように、テオドールは乳房全体をゆっくりと円状に舐ってみせる。

 

「んぁぁ、くすぐったい。何でそんな……あ、あ、そこに息を掛けるのはっ。やだ、何これ、こんなの、初めてっ……!」

 

 舌先を一瞬だけ乳首に掠らせ、その少し上で舌をくねらせながら吐息を吹きかける。それに焦らされたグレーテルの身体が少しずつ前にせり出し、やがては自ら乳房を差し出すような恰好になった。

 

「何だよ、自分から胸押し付けてきて。意外といやらしいんだな」

 

「ち、ちち違っ、そんなんじゃ――あっ!? す、吸い付いてるっ。テオドールに、私の胸、吸われてるぅぅっ……も、もどかしい……っっ。あぁぁ……あう、んはぁぁあうっ」

 

 がくがくと上体を揺すり、湧き上がる快感にグレーテルが身悶えする。小さい胸は感度が良いとは聞いたことがあるが、それにしてもここまでとは。このいじらしい姿勢も含め、アイリスとは何もかもが正反対だ。そんなギャップを覗かせたグレーテルの姿と嬌声に、テオドールは却って劣情を掻き立てられてしまう。

 

「――乳首勃ってるぞ。興奮してきたか?」

 

「はぁっ、はぁっ。……バカっ、女にそんなこと言わせるなァ……っ!」

 

「気持ち良かった、ってことだな。それは」

 

「んぅぅぅ……――だ、だって、テオ、にされてると思ったら……」

 

「ん? 小声過ぎて聞き取れなかった。何だって?」

 

「――あ、いや何でもない! や、何でもなくは無いがその……そうだ、こういう状況設定なんだ!」

 

「……はあ」

 

 何だか良く分からないが、とりあえず向こうがその気になっているのならこちらにも否やは無い。テオドールは前戯を再開しつつ、その責めをより過激なものにしていく。片方の乳首を吸いながらもう片方を捏ね、空いた手を腰から尻へ、そして太ももの内側へと滑らせて。

 

「ん、あぅぅ……!?」

 

 指先に捉えた熱源。シルク仕立ての黒いショーツは既にじんわりとした染みを作り始めている。その中心をぐりぐりと指で押し込むと、グレーテルの身体は電気を流したかのように打ち震えた。

 

「あっ、あうっ。くぁ――か、体に、力がっ……ままならない……ッッ!」

 

 くたりと力の抜けたその体を、テオドールはおもむろに横たわらせた。ショーツの上から恥丘を撫でつつ、みぞおちから小さくくぼんだ臍周りを舌でなぞってゆく。その全てにグレーテルは逐一敏感な反応を示し、やがて黒い生地の内側からくちゅくちゅと湿り気の強い音を鳴らし始める。

 

「ぅあああっ、あ、はぁぁ……な、何よこれっ……!? こんなの……事前の想像よりずっと……うぁぁあうっ」

 

 グレーテルがガクガクとその身を震わせる。その隙を窺って彼女のショーツの裾に手を掛けずらすと、内側からむわりと微かな湯気の立つような錯覚があった。本人の性格同様、固く閉じた秘裂。その奥からこんこんと湧き出る愛液は、彼女がこれまでに味わったであろう快感の度合いを物語っていた。

 

「べちょべちょだ……意外と濡れやすいんだな」

 

「うあっ、そんなこと知るかぁっ……! こんなになるなんて、自分でも、知らなくて――!!」

 

「……知らなかった?」

 

「うぅ、その、……無いんだ」

 

「あ?」

 

「~~ッ! 弄った事が無いんだ! 自分でもッ!!」

 

 ……何? 突然の告白に、テオドールはしばし呆気に取られてしまった。

 

「あ、あうぅ……だって、仕方ないだろう! 私は政治将校として軍の規律と公序良俗を取り締まる立場なんだっ! その私がこんな、性欲なぞに塗れて己を乱すわけには……あぁっ」

 

 グレーテルの顔は真っ赤で、今にも泣き出しそうなほどに崩れ切ってしまっている。これすらも仮想敵(アグレッサー)としての演技……とはとても思えない。もしそうだとすると今言ったことも全部事実で、それはつまり、グレーテルもまた『初めて(バージン)』という事になるのではないか? ここから彼女をどう取り扱うべきか、テオドールの逡巡がしばし続く。

 

「……? どうした、手が止まっているぞ……同志少尉」

 

「いや、そんなこと言ってる場合じゃ――」

 

「……ここで辞めると言うならそれでも構わないが、その場合、貴様は『蜜の罠(ハニートラップ)』への陥落を免れなくなる。その結果、貴様は貴様の大切な義妹(リィズ)を守れなくなるぞ」

 

「――っ!?」

 

 予想外の角度から肝を抉られ、テオドールは言葉を失う。その隙を突かんとばかり、グレーテルが畳み掛けてきた。

 

「貴様も衛士なら分かっている筈だ。何かを守るには、盾だけでは足りない。時に敵を払う武器が、それを扱いこなすだけの技術が、そして柔軟かつ深慮な思考と知恵が必要となる。――私と同志大尉が何のためにここまでしているのか、その意味を良く考えろ。私や大尉が貴様に求めている事と、貴様が実現したいものの為に習得すべき事は、一致している筈だ」

 

 そうだ。リィズがもしも本当に国家保安省(シュタージ)の狗だったとしたら。その場合、全てはアイリスとグレーテルの予見した通りとなる。自分は為す術もなくリィズに取り込まれ、あるいはリィズを抑えられなくなり、それが結果的に自分自身の――ひいては中隊そのものの破滅という結果を招く事となるだろう。そうならないためには今ここで、それに抗えるだけの『力』を手にしなければならない。

 何もかもを守ることは出来ない。この手から零れ落ちるものを、時として諦めざるを得ない瞬間は来てしまう。圧倒的な絶望の只中にあって、それは確かに真実なのだろう。かつて自分がそれに屈したように。でも、それでも。少なくとも今はまだ、それらが目の前にあるというのなら。その全てを獲りに行く。その道を選ぶことには、このちっぽけな命を懸けるだけの価値が、確かにある。

 

「独り善がりに陥るな。掲げる剣の切っ先、その向ける先を誤るな。その手で救えるものを見失うな。――私が言いたいのは以上だ。どうする、テオドール・エーベルバッハ」

 

「……分かった。アンタの覚悟も、俺自身の覚悟も、もう惑わせはしない」

 

 グレーテルの股に割り込み、亀頭を膣口にあてがう。グレーテルの身体はアイリスがそうであったのと同じく……いやそれ以上にか、ハッキリと分かるほど強く震えていた。それをアイリスは『期待』だと称していたが、グレーテルの場合は果たしてどうか――彼女の意志の強さに心からの感謝を抱きつつ、テオドールは腰を突き出す。

 

「――んくぅぅっ……!」

 

 想像よりもずっと、グレーテルの中は狭苦しかった。角度が悪いのだろうか? 腰の位置を調整しながら少しずつ侵入を続けるうち、スクリュー気味に抉り込まれた亀頭の先が薄膜のようなものに阻まれたのを感じ取る。行くぞ、なんて言葉は掛けない。腰を溜めてもう一歩を突き進めた時、ぶちん、と破瓜の瞬間が訪れた。

 

「あァッ!! ……うぁ、あ……入ってる……テオドールが、中に……」

 

「痛いか?」

 

「だいぶ、な。……だが耐えられないという程じゃない。このぐらいなら――あ、……?」

 

 ツウ、とグレーテルの頬を伝う一筋の雫。それは次々と彼女の眦から溢れ出し、枕元を濡らしていく。

 

「お、おかしいな。別に痛くて泣いてるんじゃないんだ。ただ理由(わけ)も無く胸が熱くなって、何かが目に沁みて……。あれ、何で……ど、どうして……?」

 

 泣きじゃくる子供のように、頬の涙をごしごしと拭うグレーテル。その様子をスチールデスクから眺めていたアイリスが、やれやれ、と嘆息をこぼした。

 

「全く素直じゃないな、我らが政治将校殿は。そうは思わんか? 同志エーベルバッハ」

 

「あ? ああ、まあ、そこはかとなくは……?」

 

 何故そんなことをアイリスが尋ねたのか、今一つ理解の及ばなかったテオドールは曖昧な返事をする。

 

「……ハア。女心が分からないのは大きな減点だぞ、少尉。せっかく中尉が勇気を振り絞ったというのに」

 

「ど、同志大尉ッ、口を慎めぇッ!! それは言わない約束の筈だぞ!」

 

 何故かグレーテルが声を荒げる。一体全体、何のことかサッパリ分からない。そんなテオドールを置いてけぼりにしてアイリスは「うふふっ」と愉快そうに唇を震わせ、それからデスクの椅子に深々と座り直した。

 

「まあ、いずれ分かる日も来るだろうさ。今は同志中尉を篭絡することに専念しろ。――それが全てを満たすことへと繋がってゆくのだから」

 

 それはどういう意味なんだ。そう訊ね返したいのは山々だが、しかし今の自分にアイリスがまともな返答を寄越すことは無いだろう。何となくだがテオドールはそう察した。それよりも今は二人の言う通り、自分の為すべきことを為さなければ。膣奥までの到達を完了し終えたところで、テオドールは内部をほぐす感覚でゆっくりと腰を前後に振る。

 

「ふあっ!? あう、くはっ。ふうぅぅんっ……な、中がっ。かき回されてっ。内側から、押し潰されてる、みたいなっ。うぁ……あ、あふぁぁっ」

 

 グレーテルの膣内はかなり締め付けが強く、肉竿を抜き差しするだけでも一苦労という具合だ。それでも抽挿を繰り返すうち、次第にほぐれてきた膣壁がやんわりとテオドールを受け入れるようになってきた。それに従ってほんの少し腰の動きを速めると、グレーテルの喘ぎにも甘い色が混じり始める。

 

「んっ、んうっく、ふぅっ、んあ、あふ……ぅあぅぅ、あっ、ぁん……うああ……あんんっ」

 

「声、我慢しなくていいぞ。――それとその眼鏡も、外したらどうだ?」

 

「ん、んぁ、メ、ガネ……?」

 

 グレーテルがいつも掛けている角ばった眼鏡。それはさっき流した涙のせいでずぶ濡れになり、レンズもすっかり濁ってしまっていた。気を利かせて眼鏡を外そうとしたとき、「あ、や、」とグレーテルが慌てふためく。けれど自分が眼鏡のツルに手を掛けても、それを阻むような動きを彼女が見せることは無かった。

 

「……っ、」

 

 テオドールは目を瞠った。裸眼姿のグレーテルは、こう言っては失礼に当たるのだろうが、普段の彼女からは想像もつかないほどに可憐で美形な顔立ちをしていた。怯えたように目を見開くその相貌は、確かに窮屈なほど怜悧で生真面目な彼女の造形そのものではありながら、ほんの少しカティアを彷彿とさせるあどけなさを覗かせてもいる。

 

「や、やめろっ。眼鏡を外したときの自分は、あまり好きじゃないんだっ……!」

 

「……やっぱり美人じゃないか。少し照れたところも可愛いぞ」

 

「な、何を言って――んむっ、ん~~ッ!」

 

 それ以上の問答をキスで封じつつ、湧き上がる純粋な欲求に従って肉竿をぐちゅぐちゅと前後させる。初めは抵抗の意思を見せていたグレーテルも、何度も繰り返し浴びせたキスの味にすっかり酔い痴れたらしく、やがてはテオドールの身体を抱き寄せ自ら唇をねだるようになった。

 

「はむ、んぁっ、ちゅ、ちゅぅ……テオドール、もっと。ちゅっ――」

 

 とろとろの表情で何かを訴えるように、グレーテルがこちらを見上げている。それに堪え難いほどの色気を感じてしまったテオドールは、彼女の乳房を揉みしだきながら腰のピストン運動に専心する。

 

「んぁっ、あうんっ、ふあぁっ! いい、気持ち……いいっ。あ、あんっ、テオドールっ、テオドールぅぅぅっ」

 

「グレーテル。今のアンタ、可愛くて、女らしくて、すごく色っぽいぞ」

 

「あん、やだぁ、そんなこと言わないでぇっ。今言われたら私は、私はぁっ……!」

 

 結合部から溢れた愛液が白い泡となってグレーテルの柔らかな尻に垂れ落ちる。唇同士が触れ合うまで、あとほんの数センチ。抽挿の律動を続けながら、テオドールはその距離でグレーテルと見つめ合う。

 

「……テオドールっ」

 

 何かを欲しがるようなグレーテルの視線。それはきっとこれなのだろう。当たりを付けたテオドールは、彼女の蒼い瞳をまっすぐに見据えながら甘やかに告げた。

 

「……好きだ」

 

「――ッッ、」

 

「愛してる。グレーテル・イェッケルン」

 

「あ……あぁぁあっ……」

 

 グレーテルの表情が悦びに綻ぶ。どちらからともなく触れ合う唇。涎を引いてそこから顔を離したテオドールは、グレーテルが再びぽろぽろと涙をこぼすさまを、しかと確認した。

 

「もっと気持ち良くなってくれ。もっとオレを感じてくれ。俺もお前を感じたい」

 

「あっ、テオドールぅ。もっとぎゅってしてっ……ぎゅうって強く抱き締めてぇぇっ! テオドールぅぅぅっ!」

 

 求め通り、テオドールはグレーテルの細い体をきつく抱き締める。肉竿をぐりぐりと膣壁へなすり付け、乳房の頂点を舐り、滑らかなお尻を揉み回し。思いつく限りのことはやった。あとは先に逝かせることさえできれば、それをもってグレーテルは合格判定を出してくれるだろうか。

 

「うぁあっ、お腹すごいっ。太くて……かたくて、あっついのっ。こんなの、だめっ……一度知っちゃったらもうっ、だめぇえぇぇぇえっ!!」

 

 グレーテルの胸を腋から持ち上げてギュウと絞り、乳首をひたすら優しく捏ねる。以前は女らしさなんて微塵も感じさせなかったというのに、今のグレーテルはどこもかしこも『女』の性で溢れ返っている。それを愛しいと思う気持ちが『男』の性として、テオドールの内にも当然のように湧き上がっていた。

 

「ふわぁぁ、あうぁあっ……何これ、何か来てるぅぅっ。怖い、怖いテオドールぅっ! おかしくなる、私、おかしくなっちゃうっ!! ああんっ、あっ、――やあああぁぁぁっ……!!」

 

 グレーテルの全身がビクビクと震え、硬直した。それとは対照的に熱く絡みうねる膣肉。テオドールはなおも腰を動かし、硬く張り詰めたピンク色の乳首を甘噛みしながら、とっくに果てたであろうグレーテルにぶちゅぶちゅと快感の楔を打ち込んでいく。

 

「うあっ……んんあんっ、もう、らめ……テオ、これ以上、きもちいいの、らめなのっ……もう許してっ……おねがい、おねがい、らか、らぁっ」

 

 達し切ったグレーテルがほとんどうわ言のように喘ぎを垂れ流す。たっぷりと涎をまぶした乳房から顔を離し、テオドールは己の限界へ向けて肉竿の抽挿を激しく繰り返した。許容量を超えて嬲られ続けるグレーテルの身体が、嬌声と共にさらに大きく跳ね回る。

 

「あ、また、くるっ……大きいの、くるぅぅっ……お願いテオぉ、もうやめてぇぇえぇっ……ああ……ああああっ、うあぁあぁあぁあん……」

 

 涙と鼻水と涎を垂らしてがくがくと顎を震わせるグレーテルは、もう完全に自我というものを失ってしまっているかのようだ。一度は緩みかけた膣が再びきつく締まり、肉竿から精を搾り尽さんとしてギュウギュウとまとわりついてきた。

 

「あぁやめっ、おねが……テオぉぉ、ぅああっ、わあああ……――ふああぁあぁぁあぁぁぁあんんッッ!!!」

 

「――くうっ!!」

 

 さらに一段収縮した膣の最奥に亀頭を押し込み、テオドールはそのまま絶頂を迎える。どくどくと注いだ精液はグレーテルの胎内を隅々まで冒し、内壁を突き破って子宮まで届かんというほどの勢いだった。

 

「……はぁぁああぁ、ああっ、あった……かい……」

 

 ひとしきり射精を終えたテオドールは、汗だくの身をグレーテルに被せてしばし放心する。荒く吐息をつくグレーテルもまた、茫洋たる恍惚にすっかり溺れ切ってしまっているみたいだった。

 

 

 

「……んぅぅ…………テオ……わら、ひ、も……――、……き…………」

 

 

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