「おはよう」
目の前から廊下を歩き通り過ぎていく少年。今から建築の仕事に行くらしい。シスターから聞いた。ディリャ=ペサの話になると彼女は嬉しそうに饒舌になる。まるで自慢の弟といった所だろうか。
シスターが言う将来有望という腕前は、さり気ない教会にあるベンチなどを作った痕跡から頷けた。悪くない素材。是非とも仲良くなっていたい所だが。
また無視された。
ディリャ=ペサとは、どうも気が合わない。と、解釈づけても良いものか。
モヤモヤする。
ため息をついて休憩室に向かうと、シスターがお茶を片付けていた。もしかして今までペサと飲んでいたのか。
「シスター…ペサと、とても仲がよろしんですね」
シスターが言葉を聞いて嬉しそうに頷く。
「でも、オレ……私はどうも彼とは未だ気があいません」
「あら……なぜかしら、オロ君が来る前に神父様と三人で貴方の話をしていた時はそうでも……」
「……私の話をですか?」
「ええ、新しい子の履歴は一応、ワタシと神父様と年長者のペサが一度目を通すことになっているから……」
――……あ、理由が分かった……
*
手を引かれ連れられて、ビクビクしながら宿舎の中へ入っていく。何人かすれ違った子供達は何も言わず無言で避けるだけしていた。
「?」
普段ならことある事に物を投げつけてくる子も不服そうに私を睨むだけで何もしない。
「また、チェスしような」
オロがその子にそう笑いかけると気まずそうにでも、どこか嬉しそうに頷く。
オロは一体何をしたのだろう。物語で使われる魔法が今、目の前で起きているのだろうか。
「さあ、ついた」
男子風呂の脱衣所に促され中に足を踏み入れる。中には見たことがある上級生の男子三人がいた。一人は服をもう脱ぎ終わり、タオル一枚腰元に着けて何やら紙に書き込んでいる。勉強をしているのだろうか。後の二人は中途半端に服を脱ぎ掃除道具のブラシでチャンバラをしていた。
パスンッ、パチンッ。
軽い音を立てて夢中になっていた二人が私達が入ってきたのに気づいたのか手を止めて、パッとこちらを見た。
「えーと、ガールちゃん? 今晩は」
背の高い茶髪の少年がニカリと笑う。
「一応、知ってるかもだけど自己紹介しとこっか。俺はブラソでコッチの無口なのがナダボカで……」
「ボクは普通のペソンです!」
ブラシをブラソの前に突き出して真剣な表情で名前を教えてくれるペソン。背は私より少し高いぐらいだ。
「ぶはっ! 普通のってっ! まるで普通じゃないみたいじゃん!」
ブラソが腹を抱えて笑い出す。
「ば、ばかっ、お前がいっつも変なこと言うから……!」
「変って? 変態……」
「だああぁぁ!」
ブラシのチャンバラが始まる。ナダボカは近距離だというのに意にかえさず黙々と目の前の紙に何かを書き込み続ける。
「はい、ガール両手上げて」
オロに言われたとうり両手を上げると服をスポリッと脱がされた。下着は普段からつけていないので終了。
しん……っ。
辺りが急に静かになった。
「お、わ、大きい……」
ソロッとペソンを見ると目をまん丸に開いて、ブラシを受け止める体制で固まっている。
「白くて綺麗なんだなー…へー…」
ブラソはブラシを肩にかけ、ヒョイヒョイとこちらに近付いてきた。身体が反射的にびくつく。慌てて、オロの後ろに隠れしがみついた。
「あれ」
ブラソが首を傾げる。ガタガタ震えていると、ナダボカがノソリと立ち上がりブラシをブラソから取って呟いた。
「……ぶたないから」
ナダボカはそのままブラシを引きずりソロリと湯場の扉に向かっていく。
「ああ、なるほどーうん。ごめんごめん。とりあえず、ゆっくり浸かろうぜ」
手を合わせて軽く頭を下げるブラソ。ソッとオロの背中から顔を覗かせるとブラソは応えるようにニカリと笑う。そして残りの服をサッサッと脱ぎ捨て、ペソンをひっぱって中に入っていった。
「……」
『ぶたないから』
殴られない?
本当に?
オロ以外が優しいだなんて信じられない。
「ガール」
今だ震えていると、オロが身体を捻って頭を撫でてきた。
「プレゼントがあるんだ」
「……え?」
『プレゼント』
プレゼント?
え?
何故?
脱衣所の棚に行き、カゴに入った中身を見せてくる。
「はい、石鹸と歯磨きと服と……」
「オ、オロ?」
「ん?」
戸惑いながら、オロを見上げ。ジッと無言で見つめる。
「……あー……下着はね、まあ、たしかに男が用意するのは一般的に変に思われるかもしれないけど……買おうと思えば買えるよ」
ちょっと頬を桃色にして、そう言うオロ。
「……え、か、買っ」
「最近じゃコルセット以外にも実用的なブラジャーってのができたらしくてさ、また正確な大きさ測らせてね」
ソッと手の平で首筋から肩に流れ乳房の横を撫でられて身体がピクンッと跳ねた。
「今の背丈でこの大きさだと、やっぱりEかFぐらい? ……まだまだ成長過程ってのが……」
ゆっくりと撫でられて変に息が上がってくる。
「オロ……あの……」
オロの片手にしがみついて止めると、ピタリと動きが止まった。
「……今日はオレが洗ってあげるから」
「……え」
ぼんやりとした頭の中でオロを見上げれば嬉しそうに微笑んでいた。
***
広々とした浴場。湿気た空気が鼻腔をくすぐる。最後の為、桶や柄杓、桶椅子や手拭いが少々ゴチャゴチャと散らばっているが気にせず椅子を引き寄せガールを座らせた。
「濡らすよ」
柄杓で髪からお湯をかけ髪用の石鹸を泡立てて洗っていく。瞼をつぶり、されるがままのガールを自分の身体や髪を洗いながら眺める少年達。
「目、染みない? 痛かったら言って」
大丈夫との意思表示で、コクリと頷かれる。従順なガールを見つめたまま頭の先から爪の先まで洗っていった。
他の二人は湯船に先早に浸かり、ペソンだけは、隣に桶椅子を持ってきて、ガールの様子をマジマジと眺めている。ガールは瞼を瞑ったまま頬を染め呼吸を荒めに繰り返していて、その様子が色っぽい。赤銅色の長髪を耳にかけお湯を流しながら、ガールの耳元を撫でる。プルッと身をすくめ揺れる乳房に隣に座るペソンが喉を鳴らした。
「……ボ、ボクも……ガールを洗っちゃダメかな……?」
ペソンが身を乗り出して呟やき。ガールがパチッと瞼を開けた。お湯でペタリと肌に張り付き水滴が滴る髪の合間から覗く二つの色。それを眼前で見て、ペソンの乗り出していた動きが止まる。ガールもそれでハッとしたように目を両手で隠し、オロの胸に身を寄せ深く隠した。
「……ご、ごめん」
ペソンがシュンとして静かな浴場で謝る。ポツン、ポツンと水滴の滴る音がした。
***
教会にいて、こんなに良い気持ちで湯船に浸かれるなんて思いもしなかった。
お風呂は何時も焦って入るもの。
何年か前から神父様の慈悲で苦いモノを舐めるのと引き換えに入る回数は増えたけれど、こんな風にゆっくりと怒られずにいられるなんて良いのだろうか。
オロが血行を良くするマッサージといって身体を揉んでくる。変な感じがして、ムズムズするけど温かくなって気持ちいい。勝手に洗濯場の蛇口を捻って内緒でする水浴びじゃけして味わえない感覚だ。頭の中がポヤポヤして、オロの胸に頬を擦り寄せると、キュッと後ろから抱き締められた。
「……ガール」
耳元に声が落ちてくる。
「……今夜からさ、オレらの部屋の中で暮らせばいいよ」
「?」
「あの物置小屋よりも、オレのベットで一緒に寝よう」
「……?」
何を言われているのかよくわからなくて、オロの水色の瞳を見上げた。
パチャン。
ブラソがお湯を揺らしながら身を近付けてきて、ニカリと笑う。
「良いねー楽しそう! あ、真面目にぶつとかしないから、な?」
「あの、ボ、ボクも……」
ペソンが喉を鳴らして覗くように近付いて遠慮がちに言ってくる。先早にブラシで風呂掃除を始めていたナダボカは、こちらを振り向いて薄黒い瞳をスッと細めた。
「……ガールが良いなら」
「……」
何も言えず固まっていると、オロの抱きしめが強くなる。
「そうしよ、ね?」
「……」
頭がクラクラして立ち上る白い湯気のように頭の中が埋まって喉が鳴り。返事をしようとしたその時、浴場の扉がガラリと開いた。
***
体格の良い筋肉質な身体をした黒髪の少年が薄茶色の鋭い瞳を向けて、こちらを睨み付けてくる。
「……お前ら、いつまで入ってんだ。早く終わらせろ」
「ペサ兄なんか機嫌悪いねー」
ブラソが湯船から出て、ブラシを持つ。
「時間帯としては、まだ大丈夫なはずだけど……」
ペソンがポソリと呟く。
「女子はもうあがって掃除も終わらした。後はお前らだけだ。遊んでないでサッサッとしろ」
ジロッとペサの鋭い眼光がオロとガールに向く。
「あと、風紀をみだすな」
ガールが俯く。オロはソッとガールを後ろにして上半身を出す。
「ああ、ごめんね。ここに風紀なんてものがあるとは思わなくてさ」
「……あ?」
浴場の温度がヒヤリと下がった。
「ディリャ=ペサ、お前、筆頭でしてるらしいね」
浴場の壁に、オロの声が反響する。
「……」
「止めるべき所を止めないで率先して、その上ここにきて風紀か、はは、笑える」
「……お前」
「元から間違ってるんだ、止めに来たって響かないよ」
「……間違ってる?」
ペサが室内靴のまま浴場の床面に足裏をつける。
「年長者が規律を守ってなにが悪い」
オロが湯船から上がり、ペタリと床面に足をつく。湯気がふわりと上がった。
「だから、今更って言ってんの」
「……今更もクソもあるか。来て一ヶ月そこらのお前に何がわかんだ」
「来て一ヶ月そこらでさえ思ったわけ、可愛い女の子を何虐めちゃってんのって」
「……違う」
浴場の真ん中辺りでペサが足を止め、ジロリとガールを見る。
「化け物だ」
「はあ?」
オロも真ん中辺りで足を止め。濡れた手拭いを腰に巻きつけながらペサを睨む。
「……化け物だから暴れないように躾てるんだ」
「は、なにそれ、本気で言ってんの?」
ペサがオロを睨み返す。
「お前は知らないから……」
「知ってたら、していいの?」
「……ああ、そうだ。だからボクは、化け物を止めてるだけだ」
「ふーん」
オロは顎に手を添えて考える素振りをする。
「……ねえ、いつかバレると思わない?」
「?」
「『人徳豊かな教会が少女を化け物と呼び躾と称した虐めをしている』とかさ」
ペサが目を見開く。
「なに、いって……」
「例えば無記名で新聞社にそんな文面を送ってみたらどうだろう? 誰が困るだろうね」
「……」
「困るとか、悲しいよね」
ペサの瞳に怒りの色が沸き上がった。
「ディリャ=ペサ、お前さ」
オロがペサに近付き、ソッと耳内をする。
『シスターを困らしたいの?』
ペサはギリッと歯を軋ました。
「……お前がする事だって」
「じゃ、こうしよう、オレは卒業と同時に彼女を連れて行く」
「……え?」
「そんで、その間はオレが面倒を見る。監視もオレで済むし他は楽になって、その後はいなくなる。いい案だと思わない?」
「な、なんだそれ……」
「ん、お前がやってることを、オレが引き受けてやるって言ってんの。どの道お前、今年で卒業なんだろ? ずっと続けられるワケじゃないんだし、まあ、受けとけ」
「……お前、正義のヒーローにでもなりたいのか?」
苦々しそうに、ペサが皮肉を呟く。
「は、はは、正義? なにそれ、まさか、オレが? ありえないね……ディリャ=ペサ、オレは……」
ペサの胸ぐらを掴み引き寄せ、グッと耳に囁き放つ。
「気に入った女を今すぐ抱くために、必死なだけだ」
***
背中を向けてズコズコと出て行くペサに後ろからヒラヒラと手を振って湯冷めした身体をグイッと伸ばす。ナダボカが立てかけてあったブラシを渡してきた。
「お、ありがと」
自然な流れでシャカシャカと床面を擦り始める。
「ねえ、新聞社とかのって……」
「ああ、もちろんしないよ」
ペソンに心配そうに訊ねられて、オロはヘラリと笑った。ペソンが、ホー……と息を吐く。
「よくまあ、ペサ兄を言い負かしたなー建築業の仕事チビからしてるだけあって力強いし。怒らすとこえーから、みんな頭上がんねんだぜー」
ブラソがヒューっと口笛を吹いて、ニマニマしながら言ってくる。
「まあ彼、オレとガール以外には真面目に教会のこと見てるみたいだし」
「あ、そーいえば、オロには何か態度悪いよなー」
「あー……まあ、それは、オレが原因かな」
「え、なんかしたの?」
「んー……直接ディリャ=ペサになんかしたってワケじゃなくてさ。年長者だから神父様とシスターと一緒にオレが来る前に情報を見たと先日シスターに教えてもらったから多分それの所為」
「へ」
「オレみたいな奴がシスターに近付くのが嫌なんだろうよ」
「あ、なーる」
「え、わかるのブラソ?」
ペソンが隣で首を傾げる。
「オロは坊やではなく、熟練者だからってことだな」
「え? 熟練?」
ペソンがオロを不思議そうに見上げる。
「簡単に言うと女た……」
「オロ」
ピタリ。
ナダボカに名前を呼ばれて床を磨きながら動いていた足を止める。続いていたブラソも止まり、その後ろにいたペソンがブラソの背に顔がぶつかって止まった。
「ぐっ」
ペソンが悶える。
「おお、コレは不可抗力だ」
ペソンの頭をポンポン撫でるブラソ。
「うぅ……」
「ナダボカ、どうしたの」
石鹸で泡だらけの床をブラシごと滑りながら出入口もとに立っているナダボカに近付く。
「ガールが帰った」
「え」
オロが目を見開く。バッとガールが浸かっていたはずの浴槽を見ればいない。
「わ、気づかなかったー……」
「『ごめんなさい。嬉しかったです』だとさ」
「あー……もう1ラウンドかー……」
オロは苦笑いを浮かべ床磨きに戻る。
「……追いかけないのか?」
「まあ、あそこに居るはずだから、どうやって口説くか悩みつつ先にこっちをやり遂げますよ」
「……オロ、アンタって」
「ん?」
続くナダボカに顔を向ける。
「意外と律儀な奴なんだな」
そう言って、ナダボカが薄く笑い、オロは目を見開いて固まった。
「……なんだか、今、貴重な一瞬に出会ったようなー……」
***
缶を持って、ジッと待つ。なんとなく予想していた。
きっとそう、優しい人は来てしまう。
足音が聴こえる。
ザクリッ。
ザクリッ。
土や小石や草や枝を踏み潰す音。終わりが近づく音。
そう、そうよ。
化け物が、化け物なんかが喜ぶことがいけないの。二つの缶をギュッと、ギュッと震えながら、ギュッと。
ガタン。
扉に手がかかる音。
「ガール、開けるよ」
暗い物置小屋に月の淡い光が差し込む。月のように綺麗な彼の金髪が目に少しだけ眩しく感じた。
***
ガールが瞳を隠さず、ジッとこちらを見上げている。相も変わらず綺麗な子だ。惚れ惚れしてしまう。
色違いの潤んだ双眸。このアンバランスな感覚がまたいい。芸術的だと感じる。
オレが用意したナイトウェア(白の長いキャミソールの様な物と白いショーツ)をしっかり着て、イメージ通り。
「……可愛い」
ただ、このまま出てきたのは可憐過ぎて、ちょっと危ないかな。早く部屋に連れて行って色々していきたい。さて良い言葉が出てくるか。
「……な、なんで」
「ん?」
しゃがみ込み、ガールとの視線の高さをできるだけ合わせる。
「なんで、褒めるんですか……」
「……君は自分を過小評価しすぎだよ。いや、ごめん。この環境の所為だね……」
頭をソッと撫でると、ポロリと涙が零れた。
「……き、嫌うなら、は、早く嫌って、ください」
「え」
驚いて目を見開く。
「……オレは好意的に示していたはずだけど……あれ、伝わりにくかったかな」
首を傾げる。
――……ここは、抱きしめとくか……
小屋内に身を乗り出し膝を立ててガールとの距離を縮め。手を伸ばす。包み込もうとして銀色の光沢を放つ二つの缶が眼前を埋めた。
「……?」
一瞬浮かんだ疑問符は、フッと教会に来た時までの過去の記憶に遡る。
「あー……お菓子の……?」
ガールの手がカタカタ、カタカタ。きっと、何かをオレにうったえているのだろう。缶を手に持ってみる。ガールの体温で生暖かく少し汗で滑った。
「……」
ずっと握って?
抱きしめて震えて?
なんで、そんな風に。
いや、待てよ。
『あー……お菓子がもうないー』
『誰ー? 独り占めした奴ー』
『明日にって残してたのに……』
『まあまあ、一応もう一つずつあるから……』
空っぽの軽い缶。
ああ、そう。
なるほど。
両手に持った缶を音を立てて小屋の外に落とす。
カコン、ガラン。
静かな夜に響く音。ガールの肩が大きく震え青くなった顔の中、瞼を強く瞑り涙が滲み出ている。
淡い月光に照らされているその泣き顔をまじまじと見つめ。緩む口元を抑えた。
根づいてしまった猜疑心は早々に消えないか。
なら。
ちょうど良いじゃない。
使おうか。
「ガールは、オレから嫌われたかったのか……」
「……」
「オレの事が嫌いだからかな……」
ガールが震えながら瞼を開ける。
「ち、ちが……」
「違う? 『早く嫌って』と今言ったよね」
「わ、私、私は……」
顔を横に振るガール。泣きじゃくり朱いのに不安や後悔、焦りも混ざり青い。縋るような目線。カタカタと歯を鳴らし怯えながら何か言葉を探し上手く言えないもどかしさの中、口を閉じる。
――……はは、可愛い……
そんなにも愛されることに慣れていないか。
別にあのお菓子は、この教会の人間に好印象を抱かせるためだけの物だし君が一番多く取ったって早い者勝ちだ、かまわないさ。だって、あの時点でオレのじゃない。君の物でもあるんだから。
それに好意を抱いている子が貰って、ここまで必死になる状況のほうが美味しい。って、本音を言えば落ち着くかな。でも、言ってやらない。教えてあげない。
「嫌われたい? 嫌われたくない? どっち」
近付いて頬を撫でる。ピクッとガールの反応する肌。本当、気持ち良い肌。早く押し倒して風呂場以上に堪能してよがらしたいな。
オレの言動一つ一つに、感じさせたい。
そう。
その為には一番大切なこと。
“逃げたい気持ちを自ら無くさせる”
オレの側に居ることが最善で平和で愛おしいと、ガールに、オレの女神に思わせるんだ。
オレから逃げられない枷を。
君のなけなしの翼を。
自由の気持ちを、オレは奪うよ。
「き、嫌って……くれなきゃ……」
「嫌ったら、嬉しい?」
「……ぅ、嬉しくなんか……!」
オレの手を握りしめて息を荒くして苦しそう。はは、ちょっとだけ突っ込んでる瞬間想像しちゃった。
「嬉しくないのに、オレに嫌ってほしいの」
「ぅ、う……」
泣いて落ち込んで言葉が出せなくて、クシャクシャになって、わあ、なんかオレ立ってきた。
「ほら、ちゃんと言ってくれなきゃわからないよ」
「わ、私……」
グズグズと鼻をすすりながら涙を手の平や手首で拭う。
「な、なにも、オロに返せてない……返せてないの……」
「返す? なにを?」
「こ、こんな、ずっと……優しくなんて……良いことばかりなんて……こ、怖いの……」
「怖い?」
「ど、どうしてオロは……わ、私なんかに……私……」
ガールがオレの手から抜けて身を屈めてくる。
「し、神父様がお、教えてくれた……」
「え、神父……?」
予想外な言葉に頭の中にまた疑問符が浮かぶ。なぜ、ここで神父が出てくるんだ。アレは主導者というより一番の傍観者のような印象をうけている。
ガールの手が寝間着の股元に触れた。半立ちしたそこを布の上から撫でてくる。
「……ガール?」
ゴクリッと喉が鳴り。柔らかく吸い付くような白い肌が布の中に入り込んだ。震えながらも、どことなく慣れた手付き。
え。
うわ。
これって。
もしかして。
肉棒が布地から取り出され、膝をついたオレの股の間にガールの頭が入り込む。
チュッ。
柔らかい弾力が先っぽに触れた。
生温かい張り付く舌。程良く握られた手の圧力。上がりはじめる熱い熱。血が全身の感覚がそこに集中していく。
手が上下すると気持ちよさに喉の奥から熱い息が漏れた。埋まる小さな頭を撫でる。手に絡まる髪質一つが心地良い。ガールの耳を輪郭をそって撫で穴の中にくすぐるように指先を入れ込む。
「……んっ」
ガールが反応した。首筋を指先五本を使って撫で、やわやわと首の輪郭を触る。
ガールの息が荒い。項についた指先一本。その平でツツ…と頚椎(ケイツイ)や胸椎(キョウツイ)が入り込んだ僧坊筋(そうぼうきん)を撫でていく。
ナイトウェアに手を入れ込み盛り上がった背骨が反応を示す。尻の割れ目上の仙骨(センコツ)まで下がると尻をショーツの上から一撫でして、ぺたりと張り付けた手を上になぞり上げる。
「っ、ひゃ……!」
戸惑いが浮かぶガールの瞳。それでも舌使いも手の動きも止まらない。必死に舐めて、オレのを必死に。
ふと、初めて会った時の指を口に含み吸い付かれ欲情した瞬間を思い出す。咄嗟的な時にでも自然に出る身についていたであろう行動故。だからこそのあの舐めよう。
あの時も今の今まで気づかなかったけど追い詰められた今が正にそう。
ああ、そうか、この子。
随分前から神父に、コレを強要されているわけだ。
そうか、そうか。
傍観者な素振り装って、そうか、そうか。
はは。
上手いな舐めるの。
もうイきそうだよ。
両手で重力に下がる手の平を圧迫する乳房を揉みしだく。グッと温かい口内に肉棒を入れ込み拒絶しないガールを見下げながら腰を緩く揺らす。
喉奥に先っぽが飲まれる。舌が動きを止めず、涎を垂らしながら先走りの液体をチュルチュルと飲み込んで、オレの腰にしがみつき朱い顔に生理的な涙を流しながら乳をすする。赤ん坊の、おしゃぶりのように肉棒をすする。
ああ、凄い。
腰が跳ねる。
喉奥を刺激しているのを感じながら屈み込んで握りしめている乳房に力を入れ。形がムニュリと変わり指の間に極上の質感が埋まった。
「ぁ……は……♡」
汗が滴る。此処に来てから久々にイくもんだから感覚が止まらない。このままもう一回ガールの口内を犯してしまいたいところだ。
チュッ、コクン。
「……あ」
コクン、ゴクン。
うわ、飲んでるし。
――……こ、これは……ちょ、神父の野郎……
チュパンッ。
音を鳴らして口から肉棒が抜かれた時には元気が逆戻り。そのままガールは肉棒下に垂れた液体を舌ですくい上げ丹念に唾液だけを広げていく。布の中までグリグリ侵入してきて毛の先にある睾丸まで顔を入れ込み舌を伸ばし舐めてくる。ズボンを脱いでいたら肛門まで行きそうな勢いだ。
――……試しに脱いでみようか……?
いやいや、オレは流石にそんな趣味は。いくら風呂上がりっていっても、ガールのを弄くるのはアリだとして口付けだって今からしたいわけで。
「…………ガール!」
ビクンッとした震えが下から伝わってくる。乳房から手を離し、ソッとガールの頭を撫で上を向かす。薄茶色の瞳と紅い瞳から涙がホロホロと零れていた。
「……き、嫌いにならないで……いっぱい、これ、いっぱいするから……お願い、オロ、嫌わないで……」
「……」
「お願い、お願い……」
腰元にすがりつき朱い舌を出して、また肉棒を舐めようとするガール。
「……ガールはコレをして、何を貰っていたの?」
『返せてない』というならば受け取ってきたモノがあるだろう。
「……ご飯……おやつ……お風呂……」
ポソポソとガールが、ガチガチの肉棒に舌を這わす。
「っ……そっか」
ガールの価値観に胸の奥が締め付けられる。奥で渦巻くこれは罪悪感や哀愁、切なさ、興奮、欲情、期待。
ああ、心はなんて正直で残酷なんだろう。
「……ねえ、ガール。そんなに嫌われるのが怖いなら、その不安を取ってあげようか」
ガールの頭を撫でながらそう呟き目線がコチラを向く。
「コレと似たようなことだけどね。でも、きっと今よりずっと良くて気持ち良くて、お腹も膨れるよ」
「……?」
ガールが不思議そうな顔をして黙り込む。ガールの身を起こして額に口付けをした。
「ガールはお風呂入るの好きでしょ?」
ガールは、コクリと頷く。
「甘いものも好き」
ガールは、コクリと頷く。
「ごはんもちゃんと食べたい」
ガールは、コクリと頷く。
「厠に行くだけで怒られたくないし本当は楽しく会話がしたい?」
ガールの瞳の奥が揺らめいて、ゆっくりと深く頷く。
「そんな良いことが全部叶う方法があるんだよ、ガール」
「……良いことが……全部……?」
かすれたように震える声。ガールの緊張が伝わる。怯えと共に見える期待に満ちた瞳。
欲しいだろ。
欲しいよね。
こんな状況だもんね。
縋るものがあれば、縋っちゃうよね。
「オレのモノになればいい」
「……オロの?」
「うん、オレの見える側にずっといて、オレの言うことをきいて、そうしたら沢山良いことしてあげる」
オレは神父よりも沢山、甘く、優しくしてあげる。酷いことには変わらないけれど、それでも今よりもきっと、ガールにとって手離せない存在になるハズだ。どうしょもなく、縋って、縋って、オレだけを心の寄りどころにしな。
「……そしたら、オロは、私を嫌いにならない……?」
「うん、絶対に嫌いにならない」
目を見開き、ガールが頷く。
「……なる」
ギュッとオレの胸元の服を握りしめ興奮したように頬を染め言葉を繰り返す。
「……なる、なる、なる! わ、私、オロのモノになる!」
「はは」
思わず笑うと、ガールがポロポロ涙を流しながら微笑んだ。
「可愛いなあ」
涙を拭って唇に口付けをすると、ガールはハッとして後退り自分の口を押さえて困ったように呟く。
「に、苦いから……」
どうやら精液の味を気にしているらしい。可愛いな。
「……ふふ」
その手を退かして、オレは小さな口に舌を入れ込んだ。