※この作品はR-18です。

×◆いばしんえん◆×   作:いば神円

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「吸血鬼が苦手な君が私に頼み事をするとはね」
「正確にはフロル君にだけど。ティビダー」
「家名で呼ぶ君の、その感じも久しいねえ」
「そう」
 椅子に座る二人の先には小さな小人が空間に浮かんでいる。綺麗な鱗粉を羽から飛ばしながら寝台で眠る小さな少女の頭上を、ぱたぱた、ぱたぱた。
「……吸血鬼自体は確かに苦手だけど僕は個々は愛しいと思っている」
「……そうかね。そうだ土産があるんだ。どうぞ」
 煙草のカートンの包みを渡され受けとる。
「禁煙を……」
「お? 廃止されるまで吸うんじゃなかったのかい?」
「……離れて吸うなら」
「外にでも出て吸うのを心がけたら、どうだろうか。格好付けの延長戦だ」
「……ふ」
「ちょっと休憩っす~! もう二、三回すれば治るっすよ!」
 ティビダーがかぶる帽子の上に座り汗を拭う小さな妖精フロル。
「ありがとう、フロル君」
「んふふふふっ! フィリちゃん、いいんすっよー! 旧友、大好きっすから!」
「フロル。焼けるから、もっと抑え気味に」
「えぇ~? クレア親分っ本気っす~?」
 帽子の上で寝転がったフロルが嬉しそうに、ニコニコしながら聞く。
「本気、とても本気。私のパンプキンは愛らしいからね」
「やははーん♡」
 いちゃつきだした二人を置いて立ち上がり寝台上の少女に近付き見下げる。しゃがみ込みフロルの能力で回復し傷が薄くなった頬を撫でた。少しカサつきがある唇を親指の平で触ると、その唇は親指を軽く、ちゅうっと吸い込んだのだった。





18、ガール×6

 

 仕事の為の身仕度をササッと整えて眠ったままの下級生に声をかける。

「今日は起こしてやれないから寝坊しないようにしろよ」

 眠気眼の一人が枕から顔を上げ片手をヨロヨロと上げた。『了解』という意味合いだ。それを見て、ペサは食堂に向かう。

 食堂の開いた窓から良い匂いがした。鼻をひくつかせ見知った中に足を進ませる。建築の仕事で朝が早い時はシスターは時間に合わせて朝ごはんを用意してくれる。食堂の台所を覗くとエプロンを着けたシスターが笑顔でこちらに振り向いた。

「おはよう、シスター」

「おはよう、ペサ」

 優しげな緑の瞳を向けて微笑んでくるシスター。ペサも、ホッコリと微笑み返した。

「いつもありがとう、シスター」

「ふふ、ペサ、今日は特性の燻製豚肉が入ったのよ」

「え! 肉っやった!」

 喜ぶペサ。

「さ、ちょうど焼けたから席について」

 長机に朝食がトコトコと置かれていく。温めた豆スープとパンと厚切りの燻製豚肉と目玉焼き。それに、ミルクをたっぷり混ぜた温かい珈琲も目の前に並べられ、おぼんを持ったシスターが少し間を空けて隣に座ってくる。

「あら……? ペサ、額が朱いわ……」

 食べていると嬉しそうにこちらを眺めていたシスターが顔を近付けてきた。ペサはギクリッと、より頬を染めて慌てて喋る。

「レ、レソさん、これは朝、寝惚けて……」

 急に言い訳をしてしまい、ペサは、しまったという表情になった。

「ま、怖い夢でもみたの?」

「……」

 シスターはクスクスと笑って、ペサの額を優しく撫でたのだった。

 

 

 ***

 

 隣の部屋はアイツらの部屋だ。考えるとイライラしてくる。風呂場の言い合いに負けただけじゃない、今、多分、そう。あの化け物としている。

「……」

 同じ部屋の班の年下の二人は事が始まるとっくの昔に寝ていることだけが救いか。

 丁度、壁を挟んだボクの頭の上先側がその隣の部屋。静かになった部屋の中で、壁から薄く声が漏れてくる。若い声、女のような少女のような、声。

 毛布をかぶった。

 

 イライラ。

 

 イライラ。

 

「……ふざけてるっ」

 明日になれば仕事がある。さっさっと眠って明日に備えなければいけない。

 明日に。明日に。

 『……ぁ……あ……』

 毛布を握りしめる。両手がブルブル震えた。

 

――……化け物の声なんて……

 

 頭の中がグラグラする。気持ちが悪い。

「……くそっ」

 寝返りをうつ。ベットがギシリッと軋み音を立てた。

 『……ひ、ぁ……あ……♡』

 聴こえる。意識しだすと、その声が妙に耳についてくる。女の苦し気な甘い声。

 『……んぁ♡』

 

――……化け物なんて……ああ、きもちわるい……!

 

 両手で両耳を塞ぐ。塞ぐと声が遠退いた。聴こえるのは、ザワザワとしたノイズと自分の繰り返される息づかい。

 

――……アイツらは頭が狂ってる……あんなのに……あんなのに……

 

 身体の熱さをなぎ払うように頭の中で理解できない憎悪を罵る。

 繰り返し。繰り返し。

 身を丸くして知りたくないと瞼を強く瞑る。その罵しりに疲れた頃、深い眠気が身体にまとわりついた。耳を塞いでいた手から力が抜ける。ジットリとした暑さから毛布を身体が無意識に取り払う。頭を出して涼しげに枕に頬を沈め静かな吐息が漏れた。

 

 

************************

 

 

 そこは、どこか神聖な雰囲気の森だった。

 青々とした木々。

 澄んだ水。

 片腕程もない細い小川。

 柔らかい落ち葉の上を歩いて森の奥に入って行くと開けた場所に出た。

 その開けた広大な場所には白色、桃色、赤色の花々が敷き詰まるように咲いていて思わず目を見開いて。

 ボクは、ああ、彼女が喜びそうな場所だと思った。

 するとどうだろうか花畑の真ん中に窪みを見つけボクはそれを見て、いてもたってもいられなくなり駆け出す。

 足取りは妙に軽く息を荒げることなくその窪みに辿り着いた。

 ボクは、ああ、やっぱりと、その円形状に花が押し潰され絨毯のような複雑な模様をしたそこにしゃがみこむ。

 股がるようにしゃがんだ先、ボクの眼前。ボクの腕下。

 そこには美しい草色の長髪をした女がいた。

 両腕を花の絨毯につき、手の平でより押し潰す。瞼を瞑り眠る美しい女。

 ボクの愛しい女(ひと)。

 身をよりしゃがめ白い額に唇を押し付ける。彼女の髪から甘い花の香りがした。

 そうか、ここに広がる綺麗な花々は彼女が産み出したものだったのかと納得して彼女の柔らかい髪を撫でた。

 撫でると不思議。眠る彼女が甘く吐息を漏らす。

 ゾクリッと背中が震えた。

 気づくとボクは裸で身体の真ん中で主張しているモノに目がいく。脈打つそれは無防備に眠る彼女の清楚な服装に透明な液体をかける。朝焼けの穏やかな光がその重みをもった液体を照らし彼女がボクので汚れていると意識させた。

 ふっとボクは撫で続けていた長髪に目が向いて身をそちらにズラす。

 清潔感を感じる髪。その髪の束にボクは徐にボクのモノを差し彼女の髪に透明な液体を塗りつける。

 するとどうだろう。彼女の甘い声は喘ぎのように艶めくじゃないか。

 口元が歪む。

 ボクの透明な液体が染み込む髪をモノに巻き付けて上下にサオを擦る。彼女の喘ぎ声が耳奥に入り込み、ボクは手元の速度を早くした。

 間も無くして、ボクは彼女と共に身体を震わせた。白い液体がドロリと彼女の髪の根本から全体に広がっていく。

 甘い香りのしていた髪は今じゃ生臭い臭いと混ざって、でも不快感はなくて、これでボクの彼女だと達成感に酔いしれる。

 髪を外して彼女の柔らかい頬を白濁で汚れた手で触った。ツルリとそれは頬の上で滑って身体の芯から何かが沸き上がる。ボクはソッと片手で空いている彼女の手を掴みサオ部分を握らした。

 柔らかい。いつも手を繋いだときに感じるあの柔らかさだ。

 頬を滑らしていた手の指先を彼女の唇に当て輪郭をゆっくりとなぞると、誘うように軽く口が開いた。だからボクは彼女に跨がったまま、ボクのモノをその口に入れ込んだ。

 

 

************************

 

 朝鳥の声を耳に聴いて目を開けた。茫然と閉じてもわかるカーテンから漏れる光を見つめる。少しだけ開いている隙間からの一筋の光に目を細めた。

 

 ヒヤリ。

 

 静かにベットから身を起こす。

「…………」

 毛布をズラさなくてもわかる。いつもの事だ。

 年長組は大抵こんなものの筈だし気にすることでもない。

 のそりと起き上がって眠気眼で厠に向かう。夢の映像を鮮明に覚えている内に事を済ましてしまいたい。朝方は空気が澄んでいて寒い。軽い羽織を背にかけて、そのまま厠の中で膨らんだイチモツを取りだし握る。

「……レソさん……っ」

 

 くち、くち。にち、にちゅ。

 

 あの美しく白い肌の中で艶やかに朱い唇を開け、この欲望を入れ込んだら彼女は、どんな顔をするのだろう。あの慈悲深く優しさに溢れる彼女の表情が変わるのか。

 

──……ボクのを食べて……食べてよレソさん……っ

 

 慈悲深い表情で嬉しそうに白濁を飲み込む映像が浮かぶ。そんな表情ばかりを知っている。もっと、もっと知りたい。レソの知らない全てを自分のものにしたい。

 黒い布下に隠れた神聖な場所に身を潜り込ませ彼女の大事な部分を割り開く。赤い血が流れ涙を流す彼女に口付けをするのだ。

「……っは、はぁ、はぁ……っ」

 鳥の朝の鳴き声と共に液体の粘つくような音が響いたのだった。

 

 

 ***

 

 スダレをズラし冷たい水で手を洗い終わり、スダレを元の位置に戻す。

 

 ジャリ。

 

 部屋に戻ろうと方向を変えた時、ペタン、パタンと軽く薄いモノを何かに叩きつけるような音が聴こえた。ペサはなんとなく足を止めて眼前先を見る。

 ペタン、パタン。

 宿舎の方から少年と少女が手を繋いで歩いていた。

 足元がおぼっかない少女。その少女の手を引いて、ゆっくりと歩く少年。

「……あはは、ガールちっちゃいから」

 あきらかに大きさが合っていない靴が脱げないようにと必死なガール。

「ほら、やっぱりオレが背負おうか?」

「……だ、大丈夫です。オロにそんなこと……」

「えー?」

 楽しげなオロ。向きは完全にガールに向いていてペサの存在に気づいていない。

 普段は裸足で逃げ回っている汚ならしい化け物が何故靴を履いているのか。

 ペサはガールと呼ばれる化け物を見る。

 男物の寝間着の上服を着て羽織を背にかけているが下は何も履いていない。膝上までのその上服は薄いスカートのように揺れる。

「わ……」

 転けそうになるガール。それをオロが前に出て支えた。オロの肘元に頭の先がつくか付かない程度のガールはオロの腹に顔を埋める。

「何時も通り意地汚く素足で走り回ればいいだろう……」

 ペサが苛立たしげにそう呟くと、オロが後ろに顔を傾げ、ペサを視界に入れて、ガールを背に庇う状態にしてオロは真正面に身体を向けた。

「やあ、おはようディリャ=ペサ」

「……一々フルネームで呼ぶな」

 にこやかに微笑むオロ。

「はは、朝から眉間にシワが寄ってるね。嫌な夢でもみた?」

「……」

「もし、今夜眠れなさそうならホットミルクを眠る前に飲むといい。身体が足の先から温まって眠りやすくなるよ」

「……」

 無言でジロリと睨むペサ。

「ちなみに紅茶や珈琲、酒は寝る前に飲んじゃ駄目だよ。神経が敏感になるからね」

「……ふざけてんのか……お前は……」

「ちょっと」

「……はあ?」

 ペサのツリ目がより上がり二人に足を進ませる。

「……お前」

「これぐらいのことで、カッカすんなよ」

 オロが微笑みながら肩をすくませる。

「切れやすい男はモテないぞ?」

「お前は……っ! お前ら、本当に気にくわねえ……!」

 ペサが固く握った手を上げた。オロはスラッと目細め歯を食い縛り頭を軽く後ろに下げたかと思うと前に素早く起き上がり額が勢いよくペサの額にぶつかった。

「……ぐっ」

「いてっ!」

 振り上げかけていた手で額を庇い、ヨロつきながら後ろに一歩下がるペサ。

「オロ!」

 悲鳴に似た声を上げるガール。

「あーいてー……目が覚めたー」

 しゃがみこんで額を両手で押さえるオロの頭に手をかざして、ガールは青ざめている。

「……あー……くそ、なんなんだよ、お前、ほんと……」

 呻くペサ。

「強そうなディリャ=ペサに殴られるよりは共に頭突きで痛くなる方がましかと……いてー」

「……オロ、水で冷やそ、わ、私水もって……」

「あ、だーめっ靴を脱ごうとしちゃ」

「で、でも……」

 口ごもるガール。

「じゃあ、ちゅってして」

「え」

「おでこにちゅ♡」

 ニコニコしながら両手を外し朱く染まった額を見せてくるオロ。

「そ、それで治る……?」

「うん」

 自信ありげに微笑むオロ。

「……」

 恐る恐る額に口付けをするガール。柔らかい唇の感触にニマニマするオロ。ソレを横目に見て、イライラするペサ。

「あー……くそ、お前は、シスターの慈悲で住まわしてもらってんだっ調子のってんじゃねえよっ!」

 怒鳴り付けるペサにビクッと肩を震わすガール。

「女に怒鳴んなよー」

「ソイツは、化け物だって言ってんだろうが!」

「名前は、ガールっていいます。オレのガールにそんなふざけた呼び方はしないでくれる?」

「……んんな、犬みたいな、ふざけた名前つけてんのはお前だろ!」

「ふざけてません、オレは本気です。地位さえ手に入ったら金に物言わせて戸籍もそうするつもりです」

「……はあ? 何言ってんだ」

「オレ、ガールと結婚するんだ」

「な、なに、ば、バカなこと……」

 青い顔になるペサ。

「……結婚……パパとママがする……?」

 オロの言葉に唖然と呟くガール。

「そう、ガールができる歳頃には戸籍もできてる筈だから、しよう」

「……」

「ガールはオレのモノだよね?」

「うん、私はオロのモノ」

 頷くガール。

「じゃあ決定だ」

「……決定、うん、オロと結婚する」

 流れるまま頷くガール。

「……バカだろ、お前ら……」

 呆れたように呟くペサ。

「ガールのドレスはやっぱり白がいいなあ……」

 ニコニコしながら、ガールの腰を抱き締めるオロ。

「……お前みたいな貴族の甘ちゃんが今後、上手くいくとは思えねえけどな」

 鼻で笑い見下げるペサ。膝立ちになったオロはガールの肩に顎を置き、ペサを見上げる。

「ペサさ、オレらに突っかかるよりも……あーまあ、オレ才能あるから、大丈夫」

「……自惚れ野郎」

「そう、今まさに来た春に最高に自惚れ中ですが」

「……そのまま自滅しろっ!」

 ペサはもう興味無いとばかりに二人を通り過ぎていく。しかし、一メートルほど過ぎて振り替えるペサ。

「……化け物がいた物置は燃やす」

 ガールが静かに俯く。長い三つ編みのお下げが小さく揺れた。

「オレ漏らしそうだ。やっぱり抱えていこう」

 一瞬、静かになった空間で、オロが声を上げ、ガールを横向きに抱き上げる。靴を指先に引っ掻けて器用に歩き出すオロ。ガールの横顔が少し泣きそうだったのを見て、ペサは片眉をあげ身体の向きを変え無言で宿舎を目指した。

 

 

 ***

 

 目の前で喘ぐ女に精を放ち、モノを引き抜く。四つん這いの股の間からドロドロと白い液が溢れた。

「……ぁ、は……♡」

 女は草色の髪をシーツにばらまき気絶するように枕に頭を落とした。指を二本、無防備なソコに入れ液体をかき出すように動かすと女はまた小さく喘いだ。

「……やっぱり、種族が違うと……」

 小さく呟いて黒い布で目隠しをした女がか細く呟く。

「ロコ……?」

 ボンヤリとした女の頬にキスをして、囁く。

「今夜は疲れただろう? お休み、レソ」

 レソはその言葉を聞き口元をほころばして数秒も経つと吐息をもらす。

「はは、寝付きがいいね」

 タオルにボトルの水を染み込ませて、レソに張り付いた液体を拭き取ると立ち上がった。

「……あの時から、きっちり中に出してるっていうのに、こうも孕まないものなんだなー……」

 ズボンを履き軽い上着を羽織ると天井近くにある窓まで飛び上がり手をかける。難なく片手のみでバランスをとって窓を開け暗い夜に身を乗り出す。急斜面な屋根に立つと背筋を伸ばしロコは愉しげに笑った。

「と、なるとさ、親分ってかなりの確率で孕ましたわけだ」

 屋根を数歩歩き、トンッと飛び上がると食堂の屋根上に静かに着地する。

「まあ、たしかに……その前の雌の時はどれも孕まさなかったわけだけどさー」

 のんびりと屋根づたいを歩き宿舎の方へ向かう。

 

 ゆらり、ゆらり。

 

「けど、まさか……あの時のカップルの孫が此処にくるとはねー……」

 月の淡い光に照らされて細身の影がユラリと伸びた。

「偶然か、それとも情報がバレちゃったかなー」

 両腕を頭後ろで組み、夜空を見上げ。

「機関はまあ、まだ僕を狙ってるのは間違いないと思って灯台もと暗しで此処にしたんだけどなあ……」

 チカリッと両目の紅い瞳が光る。

「あ、でも、結構時間経ったかーバルバロとの約束も今年の誕生日まで……ふふん」

 機嫌が良いのか、ロコの足取りは軽い。そのまま宿舎の一番奥まで進み、ロコは足を止めた。

 建物の端は二組の部屋。片側は年長者だけが揃っている部屋。もう片側は、一番の年長者と少し問題を起こしやすい年少の少年が二人がいる部屋だ。真面目なペサは目の光る範囲で年下の躾を勝手にやってくれる。

 中々できた少年だ。否、使える少年だ。女に惚れた雄は雌に意識してもらう為に何時も必死。必死に、必死に、その加減が伺えて中々面白い。

 ニヤニヤしながら猫のようにしゃがみこみ下の窓に頭を下げる。端から見たら、かなり無理な体制でロコは中の様子を伺った。寝苦しそうに布団に丸まっているペサ。

「あー……そういえば卒業するペサに何をプレゼントしようか相談されたんだった……」

 ロコは首を傾げる。

「僕、ペサが欲しいものがなにかは、知ってるけどさー……」

 キョロンと瞳を動かして、身を持ち上げた。

「……種族か」

 ハタッと何か閃いたようにニマニマして、ロコはもう一度身を下に下げる。

「……はは、お盛んだねー」

 次に覗くは隣の部屋。

「にしても親分の最後の雌は、おっぱいあったけど、ここまで素直に受け継ぐとは……まあ、僕はレソのが一番だけどさー」

 独り言に浮かれたように呟き中の様子をしばし眺める。

「ナダボカ、中々素直になれない子だなあ……風呂の時もヤっちゃわなかったし……」

 喉を震わして、笑って、ナダボカの肉棒を必死に口に食わえる少女を見る。逃げ腰のナダボカを後ろから羽交い締めにして止めるブラソ。

「お、ブラソは相変わらずラフな子だなー変に勘ぐってこないところも含めて面白い子だねー」

 ペソンがその間を狙ってか、ガールの後ろにまわって股元にイチモツを当てる。そこをオロに指導されてか、ゆっくりとガールに沈ましていた。

「ペソンは淀みなくと……」

 オロは慣れてるのか、ガールの身を撫でて状況を落ち着かそうとさせている。

「坊やに似てるなー」

 ニマニマしていると、ペソンが勢いづきガールは甘く喘ぎ子猫の喧嘩のような声が響く。すぐ隣の部屋の事を頭の片隅で考えていれば、ペソンが気を放った後に涙を流すナダボカは身を震わせガールが口で受け止める。

「あのまま、ナダボカが最後までヤってたら……」

 身を起こして屋根上に立ち上がるロコ。

「僕もヤろうかなって、思ってたんだよねー……うーん」

 背筋を伸ばし来た道をゆっくりと引き返していくロコ。

「ナダボカと恋をすると思いきや、オロかあ……」

 ユラユラと影が揺れ、それを踏む。

 

「終わりまでに隙できるかなー……ふふんっ」

 

 

 ***

 

「……エムリ」

 記憶の欠片から見えた少女の顔付きに似た存在が音にした名を呟けば生気の無い瞳をしていた片目が、くるりと動いた。唖然と僕を見上げ混乱している。

「やあ。呼ばれて来たよ」

「……ぇ?」

 後ろから、ぎゅっと抱きしめていた腕を緩め水面にしゃがみ込みボロボロの少女を見上げた。ゆっくりと振り向いた少女は首を傾げ僕を見下げるので僕は麦わら帽子を脱いで、そっと彼女の頭にかぶせ。

「……此処は陽射しが強いね。怪物の住処に招待しよう。おいで、エムリ」

「……かい、ぶつさん?」

「そう。此処に入ってきた君は逃げられない。さあ行こうか」

 ふらつく少女を水の中から横抱きで抱えると来た道を戻っていく。

「どうして……」

「うん? 何が疑問かな」

「……名前」

「ああ。年期の入った怪物だからね詳しいんだ。凄いだろう?」

「…………すごい」

「エムリは甘いお菓子が好きだね」

「え……うん……すき……」

「それじゃあ今日の、お茶はチョコと紅茶を出そう。好きだろう?」

「チョコと紅茶……うん、すき……」

 僕は少女の全てを理解したわけでは無い。ただ少女の強い想い出が僕の中で流れ、それを体感しただけだ。ただ、それだけ。

 

 可哀想な少女。

 僕は少女に同情している。

 僕は可哀想な少女を、どうするべきなのか。

 自分の感情が音程の取れていない楽器音を奏でて伝えてくるのだ。

 可哀想。痛々しい。苦しい。悔しい。悲しい。慈しみたい。優しくしたい。愛おしい。愛を、どうか、この可哀想な子供に愛を、どうか、どうか。

 僕は見つけてしまった。

 僕は君を拾ってしまった。

 僕は決めてしまったんだ。

 僕は君を愛したい。

 僕は君を愛すると決めた。

 

 腕の中で揺られていた少女は僕の鼻歌を聴くと眠りについた。人魚の歌は幻想を魅せる。どうか少女にとって優しい夢が見れるよう力を込めた。

 想い出の母親らしき存在と顔が霞んでいたが優しそうな父親との空間でお茶をしている幻想だ。それが正しいのかは分からない。だが僕は知っているし知ったものに色を付けれる。

 他者によっては、これが酷く気持ちの悪い行為らしいので程々にだが偶には良いじゃないか。僕だって鼻歌で幻想を魅せたい日だってある。

 今日は、そんな気分なんだ。

「……当分、禁煙だなあ」

 

 

 

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