教会にやって来て二ヶ月ほどたったある日のこと。
「前々から、家の息子を預かって欲しいと言われていたんですよ」
そう、神父がニコリと笑って呟いた。
図書館から借りてきた、この街の歴史書を読みながら、じゃあ、あの殴りは何のキッカケだったんだと思う。あれか『日頃の鬱憤ここで晴らしとけ』的な要素か。
ふてくされながら窓の外の少女に目を向ける。はしゃぐ子供達と違い膝を抱えて周りから見えにくい、オレからだと見える木の根元で、ぼんやりとしている。それが愛らしいとも思うが。
「……ねえ、神父さま」
「はい」
「あの子の名前、なんていうの?」
「おや、きけてませんか」
「いや……まさか、神父さまも『化け物』とか、言わないよね?」
「……」
黙りこむ神父。思わず見上げると愉しそうに笑っていた。
「……あの」
不穏な気持ちになる。神父は片眉を上げて呟く。
「……私は知らないことになっているので」
「え?」
訝しむと笑われた。
「あの呼び方、口説く用途で使ったんでしょう? なら、アナタの呼び名を通したら良いじゃないですか」
星が横で、チカリと光ったように呆気にとられた。
これは、もしや見透かされてる?
「はぁ……神父がそういうこというかなー……」
不満げに呟くと、また笑われた。
*
暗い室内、電灯もつけずにスタスタと奥に入っていく。開けっぱなしのカーテンの先の夜空から僅かばかりの星の光。
バサンッ!
書斎の机の上に厚紙の束を置いた。
「決めろ決めろ、あーはいはい、素敵な方はいないかなーと」
もう、二十の後半だ。そろそろ相手を選べと親が口を酸っぱくして促してくる。
溜め息を吐き、億劫な動作で一人かけのソファーに座り。見合い写真の中身を適当に広げていく。暗くてよく見えない。見えないが見えなくたっていい。どれも、これも、興味が沸かないのだから。
これが昔の女癖の悪かった頃なら片っ端から相手をしていただろうが。親が『反省』させたあの後から色事に興味が沸かなくなってしまった。
「……生きていればな」
金髪の髪を持上げて手の平で片目を隠してみる。隠してみて、虚しく、ため息をつく。
多分、写真の相手は悪くはないが、休日を使ってまで会いたいと思わない。だが、これが、あの少女だったとしたら仕事も気にせず今すぐ飛び出し会いに行くことだろう。
そう、あの少女ならば……――
***
朝の目覚めと共に馬車に乗せられた。
カタカタ、カタタ、カタカタ、カタタ。
眠い、欠伸をしたら口の中がしみた。昨晩殴られた頬が、まだ痛い。抱いたことのあるメイドが、お情けのように渡してきた氷枕を馬車の中で横になりながら当てて溜め息。
「氷屋、まだやってたんだな……」
「坊ちゃま、あんま喋ると傷に響きますだ」
目的地まで付いてくるらしいこのメイド。名前をなんて言ったか。
「……ねえ、こんな朝早く、氷屋わざわざ叩き起こしたの?」
「……その……はい」
困ったような顔をして頷くメイド。
「ふーん……」
赤っぽい茶髪をピンで止めた短い髪。焦げ茶の瞳がこちらを心配そうに見つめている。胸はあまりないが確かこのメイド、脚が、とくに足先が綺麗だった。
長いスカートをチラリと見る。水色と白の合わせのメイド服。足、見えない。
「ねえ」
「はい、坊ちゃま」
「靴、脱いでよ」
「え」
キョトンとするメイド。まだ若いが年上。なんで、このメイドを抱いたんだっけな。
「脱いで、足見せて」
顔を朱くして、でも従順に脱ぎだすメイド。
ああ、そうだ。ソバカス面に小麦色の肌と田舎言葉が珍しくて抱いたんだった。細い身体。故郷が戦争中だそうで逃げてきたんだっけ、この子。
メイドがスカートを膝元まで、たくし上げる。
「もっと見せて」
春までまだもう少し。肌寒いだろうけど小さく強要。細い太股が見えた。小麦色の肌に反して、ショーツは白だ。よく映える。
「脚、開いて」
顔が朱いまま、おそるおそる脚が開いていく。
あ、いいな。ちょっと元気になってきた。
ジッと観察されることで濡れていく白いショーツ。前の席から隣に移動させて氷枕を持たせて自分はメイドのスカート下の膝や太股を撫でる。脂肪が、あまり無くとも女は柔らかい。そういう所が好ましい。手の平、全体で撫で温めれば反応するメイドの足先。朝日の光に照らされて細い指達が踊っていた。
一時ほど揺られ。その後、文明開化と噂される蒸気機関車に乗り換えることになった。
電気よりも、まだ燃料系が支流のこの時代。半分特殊な資源物質、半分電気が使われるこの蒸気機関車は世界の話題のまとだった。今までは石炭のみで動いていた蒸気機関車だが、世界でも力を誇る国。『世界遺産街』の土地から新たな燃料『赤い石』が発見された。赤い石が握り拳一つあれば機関車の一年分の燃料になるといわれている。それを見つけ出したのは世界遺産をまとめる当主で、彼は今、その石のおかげで、かなりの影響力を持っている。
まあ、その為所で世界遺産街から外れた近隣の国が戦争を始めたのだから皮肉なものだ。結果、一番被害をうけたのは戦争を始めた近隣の国々でも世界遺産街でもなく。その戦争の通り道の途中に住む民族達で、このメイドの故郷。
新聞とラジオ情報、後はお付き合いのある方々から聴いた話のみだが。とても、とても悲惨な状況らしい。
メイド自身は何も語らない。否、幸せな家族の昔話はするが、そうでなくなった話はしない。訊くのも野暮というものだ。
自分の一族も恵まれた土地を持っている為、宝石や金が出るかぎりは貴族のままでいれることだろう。今のところは女に渡す贈り物にも苦労しない。自分の土地で取れた物を、ただ加工して、プレゼントするだけなのだから。だからまあ自分の立場は遊び放題だった訳だが。
初体験は十二の時。
社交界デビューの記念にと成り上がり商人の娘、年上の女を抱いた。いや、あの時は抱かれたのか。半年ほど付き合って別れたが、なかなか手慣れた女だった。胸も尻もデカかく遊ぶなら良い女だった。ただ高飛車すぎたので面倒になったから捨てた。それからは基本、一夜で終わるか、数ヶ月続けるかぐらいの遊びをして、あと数ヶ月後には十七歳になるという所で親父に殴られた。
さてはて。
何が問題だったのか。精液も外に出すのを心がけてるし、後腐れないように注意していたのに何が親父の怒りを買ったのだろう?
高級娼婦のアマンナ?
女コックのジャーヌ?
家庭教師のフローラ?
新人教師のリゼッタ?
ダンサーのサメット?
あ、親戚のリゼルタ叔母さんかな。
それとも、その娘の、ナージャかな。
「ねえ、どれだと思う?」
***
馬車を降り、チップを渡し女にも手伝ってもらって機関車に荷物を運び込む。女的には己の力のみで運びたかったらしいが。若くても背のある男が弱そうな女に荷物運びをさせるなど本来ならただの恥じだ。でも手伝いたいというから衣服が詰められた鞄を一つ。地面に車輪を転がして運んでもらった。オレは二つ、新品の教科書や辞典、資料類、モロモロが入っている品の鞄を地面に車輪で転がし、自分の小物を背中の鞄に背負う。教科書などは普通に考えて、ド田舎じゃないんだし、そこで買えばいいけれど計画の為だ。オレはそういうズルさに苦労は惜しまない。
「……本来ならさ、オレ一人の予定だったから、まあ助かるよ」
オレを勘当同然で殴り捨てた親父が出した打開策は『人徳豊かといわれる教会がある。そこで一年間、成績を落とさず暮らしてみろ、そうしたらお前を迎えに行ってやる』だ、そうで。オレは、鼻で笑う。
――……誰がそんな方便信じるかっ!
『教会=捨てられた』と、そんな方程式ができていたオレは頭の中で計算し計画を立てた。先ずは勉強をしろと言うのだから、全て新品の勉強品を用意させ。女に贈るはずだったアクセサリー類を全て背中の鞄に詰める。後は着いた先で第一に本屋に行き、新品の勉強品を売る。それで当分の小銭にはなるはずだ。
今の時代、本は中古でも高級品だからな。そして親父に直ぐさま手紙を出し『いじめられて教科書が駄目になった』とでも言って新品を用意させる。後は時折、小銭が欲しい度にこの本、あの本が破られたなど言えば用意されるはずだ。ちなみに手紙は周りに目がつくように、ハガキ仕様で書く。親父としたら世間体的に教科書ぐらいは用意せざるおえない。そして、アクセサリー類は社会人としての歳に教会を出るはずだから、その時に事業を起こす為の資金として残しておく。
元から、スクール卒業後は事業を起こすつもりだったんだ。将来の計画として、そこまで狂いはない。まあ資金量やコネの圧力は減るが。今は改革の時代。上手い具合にやってやるさ。
***
汽笛が震えた。機関士が汽笛の引きレバーを動かしたのだ。
空気を震わす警鐘が鳴り、出発が知れわたる。煙突から淡いピンク色の煙が上った。一車両を占める水車の水と赤い石が混ざりあい熱を発し煙を上げているのだ。
モクモク、モクモク。
シリンダーの中で前後に動く金属のプラグ。蒸気の力は、ピストンを促し。機関車の動輪とピストンをつなぐ金属の棒、主連棒が動きだす。そうなれば、もう連鎖だ。クランクシャフトがピストンの動きを伝え、車輪を回転させる。連結棒が面白いように身を動かして車輪と車輪に同じ動きをさせた。
ガタン、ゴトン。
ガタン、ゴトン。
上級客室の窓を上に開け外の風が顔にかかる。肌寒いが眠気覚ましにはちょうどいい。ゆっくりと速度を上げていく車体。長い長い機関車は列をなし遠目に車体を繋ぐ連結器を伸ばす姿を見せる。ガチャン、と音を立てて進む様は、なんだか胸の奥をくすぐった。
――……ロマンだな……
ベットにもなるソファーに座って、メイドは床に座って、ゾクゾクとする身に唾液を飲み込む。道の先、見える大地の端の端よりも続くレール。これから何があるのか新しい土地でどう動こうか期待や好奇心はたまらないものがある。
チュ、チュル。
高鳴る鼓動、下半身に熱がたまってきた。
チュル、チュル、ジュル。
「……けっこう上手いなあ」
外の景色を眺めながら呟く。金髪の毛先が前にかかって、上にかきあげた。汗が滲む。青い瞳で、うずくまるメイドを見下げれば手と口を必死に動かしている。自分の開けた膝の間。ズボンをズラし、その中心で唾液の摩擦音が響く。
「……着くのは明日の昼頃だっけ?」
息を上げつつ訊くと、メイドは口を離し、はいと頷く。
「そう、じゃあ、ゆっくり楽しめるね」
メイドは現地に送り届けが終わり次第、帰ってしまうが、最後にヤるだけやっておこう。ゆるりと、メイドの髪をすくと頬を染められた。
「……君も物好きだよね、ヤられるとわかってて、オレと同行してるあたり……あ、単純にスケベなのかな?」
頬を撫でると困ったような顔をし、ポソリと呟いた。
「……初めて、だったんす」
――……初めて? 前に抱いた時は処女じゃなかったと思うけど……
反り立つモノに口付けをするメイド。
「……逃げる為に身体を差し出してきますだ」
メイドの焦げ茶の瞳がコチラを見上げる。
「優しぐしでぐれだのは、坊っちゃんだけです……」
「……へえ」
目を見開いて、メイドを眺める。お互い気持ちい方が好ましいし後腐れを悪くしないように女を抱いていただけだが、そう解釈する人間もいるらしい。
「……変わってんね……まあ、可愛がってあげるよ」
メイドの耳穴に指を入れ、くすぐる。メイドの息が荒くなる。欲情を秘めた焦げ茶の瞳。
「……いいね、美味しそう」
***
裸にしたメイドにエプロンだけ着けて布地の上から胸をまさぐる。
「ふっあ……」
恥ずかしそうな様子に頬が緩む。ソファーとは別にあるベットに押し倒し、額、瞼、鼻、頬、唇にキスをする。
クチュ、チュ、チュ。
メイドの目を見つめながら指を動かす。もちろん、メイドの股の間で。
「は……あ……んっ」
メイドに空いてる手を出し指平で彼女の唇を撫でる。形をなぞるように撫で、喘ぎを出す口にゆっくりと入れる。入れた人差し指を湿った熱さが包む。
体内は、上も下も温かい。舌を軽く押したり、撫でたり、頬の内側を伝ったり。それと同じように、メイドの膣内の指も動かす。メイドがすがるように指先を舐めて音を出すため指を二本に増やしてみた。
上も下も。
チュル、チュパ。
クチュ、クチュン。
指先二本で舌を挟み、少し引っ張ってみる。メイドの鼻息が荒くなった。膣内の指の動きを早くしてみる。指をくわえた口の隙間から声が聴こえた。
「……ぁ、あふっ……んっ、んっ」
チュポンッ。
メイドの口から指を引き抜く。名残惜しそうな舌先が指先を舐めてきた。
「はは、エロい」
エプロンの上からでも分かる、おわん型の胸の乳首に濡れた指を押し付ける。
「……ぼ、坊っちゃま……」
メイドが胸を膨らますように背筋を張り、何かを求めている。
「ん? なにか、してほしいの?」
ニヤリと笑って言うと、メイドはそっと布地をズラしてきた。案にそれは『直接触って』と求めている。
「ふーん」
ニマニマして人差し指を折り曲げ軽く乳首を弾く。
「あうっ」
メイドが苦しそうな息を吐いた。
「ほら、はっきり言ってごらん」
メイドが朱い顔で唇を震わす。濡れた唇は紅を塗ったように熱をともしている。小麦肌のせいか乳首も桃色よりは、朱めに見えた。
「む……胸を……」
「胸を?」
当たるか当たらないかで乳首を転がす。
「はうっ」
ぴたり。
指の動きを止める。上下どちらとも。
メイドが泣きそうな顔をした。
「ほら、わかるように、オレにわかるように、言ってごらんよ」
「あ……う……」
メイドが息を飲む。生まれる沈黙。機関車の振動が、微かにメイドの膣内の指に動きを促す。でも、ここまできたら、この状況は酷くもの足りないだろう。
「坊っちゃま……もっど……もっど……だくさん……」
キュッと、膣内の指をうねりあるものが絞めてくる。指を抜いた。
「あ……」
メイドの手があがり、引き抜かれた指を掴む。タラリと滴る水滴。よく濡れてる。
「……なにを、どう欲しいのさ」
「坊っちゃまの……」
「オレの?」
メイドの手が指先から離れ、反り立つ熱いモノに触れる。
「欲しいだ……」
スリスリと撫でられれば、胸が震えた。
「うーん、オレのが欲しくて、コッチは?」
乳首の指をまた動かす。
「もっど、もっど、さわっで……♡」
「しかたないなあ」
口端を大きくつり上げると布地の下の小さめな胸をまさぐり。乳首を指二本で挟み、擦り潰した。
「ぁ、んっ♡」
そして反って快感を露にするメイドの股の間に、ひくつくぺニスをつけ滑らせる。
「あっ♡」
「いれるよ」
プチュンッ。
液体の中に飲み込まれる音。
***
「あ、あっ」
奥まで入れて、オレは腰を動かしていく。身体を彼女と近付け乳房を口に含み甘噛みした。
「んー……んあっ♡」
彼女が頭の髪をすいてくる。汗ばむ彼女の手と、オレの髪が絡まった。
「あっ、うっ、ぼ、坊っちゃま……」
膣内にぺニスを擦り付けるように動かし彼女を煽る。
「い、あっ、んっ♡」
揺れる彼女の身体。包まれたぺニスが気持ちいい。熱い、熱いうねりの中で、オレのを飲み込もうと、飲み込もうと。
パチュン、パチュン。
入れたばかりだけど、イきそうだ。毎回この瞬間に思うんだけど中の奥の奥に出してしまいたい。
よがらして何度も何度も。出してさ。
こういうのを征服観念というのかな。
熱い唇に口付けをし舌を入れ込むと絡み返してきた。
同時に膣内が締まる。
あ、気持ちいい。
形、オレの形に合わせて、膣内が動いている気がする。
特に液体の音がそうだ。
ヂュポン、キュポンッ。
空気が出し入れする度に摩擦ならではの空気がオレを絞める。腰のスピードを早くした。彼女が、オレを抱き締めてくる。舌を絡ましあい、恋人のように熱烈に。
「……ふっ……んっ……あっ♡」
口の端から漏れる喘ぎ。
そそられる。
腰を引こうとして彼女の両足が腰に巻き付いていることに気がついた。
――……あ、ヤバい……
ガクッ、ガクンッ。
今さら止めれるわけなく中に放つ。オレのを柔らかい肉が包みながら間で液体が広がり肉同士が合わさった隙間から、たらりと白い液体が滲み出た。
口を離すと『坊っちゃま……♡』と、すがるような声と陶酔したような顔が見えた。
***
予想外というべきか。不可抗力というべきか。まあ、自己責任か。
たまにこういう失敗するんだよね。
現実逃避のように、ベットの中で横になり、彼女の髪をすきながら呟く。
『ねえ、どれだと思う』
彼女は首を傾げると真剣に悩みだす。まあさ、こういう失敗は、たまにあるわけで、しかたない。彼女にかぶさると、また口付けをした。
「とりあえず、お昼までしよっか」
できたら子孫が欲しい親が判断することだろう。
だから。
明日までの短い間。よがらせて、よがらせて、出しまくってやる。
彼女の内心は、どうなのか、わからないが。従順な姿は可愛らしいと思った。
***
目的の街に機関車が到着し馬車を走らせて真っ先に向かったのは宝石商。宝石が散りばめられたアクセサリーの一つを売り元金した。できた現金をそのまま、メイドに渡す。キョトンとした顔をされた。
「もしもの為に、とっといて」
「え、もらえないだす!」
青い顔を横に振るメイド。
「お願い」
そのまま口付けをすると、メイドは黙りこんだ。
親がメイドをクビにしないとは、かぎらないから。産まれるか産まれないかは別として、これだけあれば、まあ、メイドの将来は、ある程度安泰だろう。
「あ、屋敷に戻る前に銀行に預けるんだよ。他人に盗られるとかシャレにならないから」
頷くメイド。
手切れ金だけではなく。残りも元金して銀行に預けたい所だが。いかせんまだ未成年は預けができない。他人にそう言って自分が駄目にしたら、よりシャレにならないな。そんな事を考えながら本屋で勉強品を全部売り。身軽な状態で教会に向かう。馬車の中で最後に熱烈なキスを交わして夕方頃、教会に到着した。
大きな教会。屋根に隠れて見えるパイプは、パイプオルガンが付属されていることが伺えた。それがあるのは、それなりの教会ということだ。
出迎えてくれた神父とシスターに丁寧に挨拶を交わす。メイドが、親から預かった文書を神父に渡し深々と頭を下げた。人の良さそうな顔をした神父。シスターをチラリッと見る。
若いシスターは、かなりの美人だ。長い草色の髪を揺らめかし緑の瞳が緩む。質素なシスターの服装。黒っぽい紺色のスカートが風に吹かれていて。ニコニコと笑顔を返し握手をかわす。
ふっと、寒気がした。顔を傾けると優しげな神父と目があった。
――……なるほど……
一瞬にして、ヤりたい判断を変え握手を終わらす。最低でも一年は世話になる所だ。一々、中を悪くするつもりはない。
シスターには、手を出さないでいよう。
メイドが馬車から身を乗り出して手を振ってくる。その姿を馬車が見えなくなるまで眺め続け、空を仰いだ。
茜色の夕日が妙に綺麗だと思った。