ボイスロイド(の皮をかぶったサキュバス)との繁殖記録 作:放出系能力者
登校途中のことだった。部活の朝練のため自転車を走らせ、交差点に差しかかる。そこで信号を無視した車と衝突し、意識を失った。
* * *
目が覚めると自宅の部屋にいた。かなりのスピードで追突されたように感じたが、実際はそこまでひどくもなかったのか。体は至って正常だ。入院するほどのことでもなく、家族が自宅まで運んでくれたのだろう。
だが、窓の外はすっかり暗くなっていた。長い時間、眠っていたようだ。凝った体をほぐしつつ、ベッドから起き上がる。スマホで時間を確認しようと思ったが、探しても見つからなかった。鞄の中にも見当たらない。事故の時、落としたのだろうか。
自分の部屋から外に出て、違和感を覚える。見慣れない洒落たインテリアが置かれている。間取りはいつもの自宅と同じだが、別の家に来てしまったように感じた。それにしても唐突な模様替えだ。
2階の自室から1階へ降りる。夕飯のにおいが漂ってきたので誰かいるだろう。ダイニングキッチンに向かうと、金髪の少女が料理をしていた。
「あ、起きた? もうすぐできるから座ってて」
「はい」
食卓に着く。これは夢だろうか。交通事故に遭って目が覚めたと思ったら、自宅のキッチンで見ず知らずの美少女が夕飯を作っている。あまりにも非現実すぎて逆に冷静になってしまった。
手慣れた様子で我が家の台所を使いこなす少女の後ろ姿を観察した。とんでもなく短いスカートをはいている。少しかがめばパンツが見えそうだ。普段着、というよりは何かの衣装のようだった。その上からエプロンをかけている。
そこへ新たな登場人物が現れた。ドアを開けて一人の少女が入ってくる。もちろん、知らない子だった。俺が座っている位置とは対角の椅子に座り、手にもっていた携帯ゲーム機で遊び始めた。
その女の子のことは全く知らないが、彼女の格好には見覚えがあった。丈の短い着物風の衣装といい、頭につけた包丁のようなアクセサリといい、知る人が見れば一発で元ネタがわかるだろう。『東北きりたん』である。
「じろじろ見ないでもらえますか? 気持ち悪いです」
「はい」
なぜそんなコスプレをした幼女が我が家でくつろぎのひと時を迎えているのか、知る由もない。きりたんの格好を見て気づいたが、調理中の金髪美少女の方は『弦巻マキ』だ。
「おなかすいたー。ウチも手伝うでー」
そこへ『琴葉茜』と『結月ゆかり』がさらに投入される。全員が神がかったクオリティのコスプレイヤーであることは疑いようがなかった。まさに2.5次元の極致。というか容姿はまだしも、声までそっくりなのはさすがにおかしい。
テーブルにおいしそうな料理が並べられた。総勢4人のレイヤーと共に食卓を囲う。いつから我が家はコスプレ会場になったのだろう。和気あいあいとする美少女たちの中、俺だけが完全な異物だった。
「あの……事情とか聞かなくていいんですか?」
「あ、聞いていいんですか?」
この状況が出来上がるまでの経緯をゆかりさんが説明してくれた。俺の想像通り、これは夢らしい。だと思ったよ。
だが、ただの夢ではない。彼女たちは『夢魔』という存在らしい。人の夢に住まう悪魔だ。いきなりファンタジーになったな。
「なんでボイスロイドなんですか?」
「夢魔は宿主の願望を反映した姿になるので」
確かに俺得ではある。
夢魔は人の夢に住み着き、精気を吸って生きている。だが、憑りつかれている本人がそれに気づくことはない。夢とは無意識下における脳の活動が表層に浮かび上がったもの。例えるなら、深い湖の底から浮かんだ泡沫のようなものに過ぎない。目が覚めれば容易く忘れ去られてしまう。
「通常であればマスターがここまではっきりと夢を自覚できることはあり得ません」
「異常事態、ってことですよね……」
原因は交通事故にあるものと思われる。おそらく、現実世界の俺はまだ目覚めていない。あの時の記憶が確かなら、相当な大怪我を負ったはずだ。夢魔たちにも詳しいことはわからないようだが、事故の衝撃で脳に異常が生じているのかもしれない。
「落ち込んでも仕方ないよ。ごはん食べて、ゆっくり休めばそのうち良くなるって」
マキさんに勧められて夕飯をいただいた。みんな気を使ってくれたのか優しかった(きりたんはそっけなかったが)。夢魔としても宿主である俺が死んでしまうと困るのだろう。風呂に入り、自室に戻り、早めに眠ることにした。
窓の外は暗かった。黒い煙のような、霧のような何かが立ち込めていて先が見えない。窓や玄関は開けてはいけないと言われた。外を見ていると気分が悪くなり、カーテンを閉めた。
ベッドに入り、横になったがなかなか寝付けない。ここが現実ではないことは確かだが、どこからどこまでが真実なのかわからず混乱している。夢魔という存在も俺が作り出した都合の良い妄想なのかもしれない。
「まだ起きてますか?」
悶々としていると、ドアが軽くノックされた。ゆかりさんの声だ。心配してくれたのか、様子を見に来たようだ。ベッドに腰掛け、何も言わず手を握ってくれた。ボイスロイドの中で俺が一番好きなキャラが結月ゆかりだった。そのせいか、特別嬉しい。
声には出さないが歓声をあげていた。リアルなら絶対にありえないことだ。改めてこれが夢なのだと確信したが、それでも良かった。荒んだ心が美少女セラピーによって浄化されていく。
だが、同時に不健全な衝動も生まれ始めていた。女の子と部屋に二人きり、心臓は早鐘のように動悸する。自分の身を案じる心配よりも、不純な欲求の方が上回ろうとしていた。
「Hなこと、したいですか?」
「はっ!?」
何かの罠かと身構える。あまりにも都合が良すぎる。だが、そもそも夢なのだからそういうものなのかもしれない。
「行為をするとマスターの精気を消耗しますから、無理強いはしませんが」
精気とは生命力のようなものらしい。健康体なら多少の消耗でどうにかなるものではないが、重傷かもしれない現実の体のことを考えれば慎重にならざるを得ない。
「それって一回でも致したらアウトなんですか?」
「どうでしょう。一回くらいなら……」
セーフなのでは。下半身の硬直を見れば回答は明らかだった。ここまで来て何もしないでは収まりがつかない。ズボンを下ろし、急ぎ起き上がろうとした俺を、ゆかりさんは押し倒した。それは柔らかな動作ながら抵抗できない。
「焦らないで。私がリードしますから」
これまでの人生でここまで興奮したことがあっただろうか。小学生の頃、河川敷に捨てられていたエロ本を見つけて猿のようにシコりまくったことを思い出す。日に6回は自慰していた。
今考えても、あの頃の性欲は異常だった。四六時中エロいことばかり考えて、抜いても抜いても収まらず、危機感さえ覚えるようになっていた。それが中学生のある時を境にぱったりと止んだのだ。枯れてしまったかのように落ち着いた。
思えば、あの頃から夢というものを見ていない。子供の頃は確かに見ていた記憶がある。いつしか見なくなっていた。
ゆかりさんは一度立ち上がり、下着を脱いだ。ニーソックスを履いた脚の上を紫色のショーツが滑っていく。湿った匂いのするそれを俺の手に握らせた。
パンツに気を取られているうちにマウントを取られる。マキさんのスカートも短かったが、ゆかりさんの服はそれ以上かもしれない。タイトなので翻ることはないが、しゃがむと完全に前から中が見える。その状態で俺の上にまたがっている。
「筆下ろし、しますね」
自分以外の誰かの手が陰部に触れる初めての感覚。ゆかりさんは固くなったそれを優しく誘うように角度を調整し、自らの入口へと当てがう。
ゆっくりと見せつけるように挿入された。ずぶずぶと柔らかい襞を掻き分けながら、俺の一部が女体の中へと収められていく。それだけで達してしまいそうだった。快感を堪能する余裕などない。必死に堪える。
「んっ、大きい……奥まで届いちゃいました」
ゆかりさんは自分の下腹部を撫でながらほほ笑んだ。お世辞だとしても浮かれずにはいられない。早く腰を動かしたかったが、こすれただけで終わってしまいそうだ。
「新品の筆の使い心地はどうですか? 早く“お絵描き”したいですよね。我慢しなくてもいいですよ」
お絵描きとはどこまでのことを差しているのか。その言葉責めだけで汚い染料が漏れそうになる。中出しまでしていいのか。今更になってコンドームをつけていないことを危惧し始める。
だが、いくら初体験でもあまり情けないところは見せたくなかった。もう十分情けないとは思うが、男としてなけなしの威厳がある。ゆかりさんはこちらの苦悩を察したのか、挿入した状態から動かず待ってくれていた。
「おちんちんの先っぽが奥に当たってるの、わかりますか? ファーストキスより先にこちらのキスを済ませてしまいましたね」
ゆかりさんが覆いかぶさるように迫る。髪飾りのメタルマカロンが逃げ場を塞ぐように顔の両脇に落ちる。甘い香りが漂い、唇についばむようなキスをされる。
それが引き金となった。意識がショートする。暴発するように射精した。
「んっ、んむ……」
ガクガクと腰が震え、膣内へと精を放つ。ゆかりさんはそのリズムに合わせるように舌を滑り込ませてきた。勝手に射精したことを責めるように舌を絡ませてくる。
保健体育の授業で習ったことを思い出した。性交における避妊の重要性や、レイプによって女性が受ける精神的苦痛の話だ。男は出して気持ち良くなればそれで終わりだが、女の場合はそうもいかない。互いの同意があった上での性行為であっても、避妊だけはするように言われた。
快感の前に、その教えは全部頭から吹き飛ぶ。こみ上げる欲望を容赦なくぶちまけた。ポンプで汲み上げるように長い射精が続く。無意識に両腕が彼女の体を抱きしめていた。
「初めてだったので許しますけど、何も言わずに中に出すのはマナー違反だと思います。次からはちゃんと言ってくださいね」
つながったまま、耳元でささやかれる。精液が搾り取られると同時に強い疲労感に襲われた。これが精気を奪われる感覚だろうか。カマキリの交尾を彷彿とさせる。
ゆかりさんが少し腰を上げると、事を終えてへたったペニスが簡単に抜け出た。ゆかりさんの穴から流れ出た精液がふりかかってどろどろになっている。
「童貞卒業おめでとうございます。がんばりましたね。今、きれいにしてあげます」
そう言うとゆかりさんは躊躇なく俺の汚れた陰部を舐め始めた。これがお掃除フェラというやつか。亀頭や竿全体だけでなく皮の内側や玉に至るまで、いつくしむように優しく丁寧に、何の忌避も感じさせず処理していく。
だが、最高のシチュエーションにも関わらずもはやペニスは反応しない。疲労感のせいで寝落ちしそうになる意識を懸命にとどめていた。
そこでドアがノックされた。誰かが部屋の外に来ている。
「マスターくん、もう寝ちゃった?」
マキさんの声だ。ゆかりさんは慌てて隠れようとしたが時すでに遅し。下半身丸出し状態の俺も含め、ばっちり見られてしまった。
「なにやってんの、ゆかりん!? マスターは弱ってるから今はそういうことはしないってみんなで約束したでしょ!?」
「いや、これには深い訳が……というか、そういうマキさんも夜這いに来てるじゃないですか」
「よ、夜這いじゃないし!」
言い争う声が聞こえたが、これ以上意識を保てそうにない。フェードアウトするように視界が暗転した。