ミオ先輩にたっぷりと癒やしてもらって、自分の心に溜まっていた膿を吐き出した後のことでした。
ラミィは飛ぶように帰宅して……新聞紙に包んで、見えないところに隠していたハートの破片たちを広げます。買ってきた接着剤の封を切って、壊れた思い出を直し始めました。
こういうチマチマしたパズルなんかより、豪快に敵をぶっ飛ばせる脳筋系のゲームの方が好きです。考えるのなんてだるいし、パワーは全てを解決してくれるので、それでいいのです。
でも、人生はゲームと違います。ラミィはもくもくと作業を続けました。ゲームみたいに上手くいかなくて、もやもや、ムズムズとする時間が続きました。
イヤでも、面倒くさくても……ししろんとの思い出だけは、一度壊れた程度で諦めたくなかったのです。
これを直したところで、ししろんと仲直りできるワケではないのでしょう。それをわかっていても……いえ、わかっているからこそ、ラミィは自分を戒めるために、女々しく鼻をすすりながらお皿を修復していくのです。
「えっと、これがこっちで……あ、いたっ……! もーっ、なんなのよぉ……!」
尖った破片で指を切ってしまいました。傷口をよく洗ってから、ばんそうこうでギューっと、無理矢理に止血します。けっこう深く、ザックリと切ってしまったみたいで、なかなか血が止まってくれませんでした。
でも……この程度の痛みで、ラミィは逃げません。どうです、カッコいいでしょう?
……いやいや……本当は、破片に触れるたびにズキズキと痛む指のせいで、何度も止めたくなって、何度も諦めたくなっていました。
ぶっちゃけ、めちゃめちゃのダサダサです。やっていることも含めてダサいです。これはただ、意地になってウジウジとした作業を続けていただけです。
まあ……ね。ラミィは、カッコわるくてもいいんです。可愛くなくてもいいんです。それはどうせ、ラミィでは一番になれません。
世界で一番の魅力は、ラミィが一番近くで見てきたつもりですから……。
――――――
作業を始めて何十分……いえ、何時間かかったのでしょうか。
お昼を食べていないせいで不満げなお腹がぐうぐうと鳴っても、まぶたが重くなっても、ハートの修復作業を続けました。
その努力の甲斐もあって、全ての破片を繋ぐことに成功しました……が、これはなかなかに酷い出来です……。
無数のヒビが入ってしまって、もう二度ときれいなカタチには戻らないハート……ガタガタで、ぐずぐずで……もうお皿として、使えないかもしれません。他の人が見たら、ハートだと思ってくれないかもしれません。
それでも、ラミィは……その歪んだ皿面に、ししろんとの色褪せない思い出を確かに感じていました。
「……んーっ……はぁっ……!!」
カチカチになった身体で伸びをしながら、おうちの中に残る他の思い出を探し始めます。
クローゼットの中に残っているししろんのお洋服にも、同じコップの中に立てた二本の歯ブラシにも……この家の至るところに、ししろんとの深い愛の香りが残っていました。
空虚な気持ちでも、マイナスな気分でも、見つけられなかった温かい煌めきを……癒やして、前向きに正してもらった心で素直に感じます。
「……ししろん……ラミィも、愛してるよ……」
あのとき、眠ったフリをしたのは……まどろみを味わいたかっただけじゃなくて……この言葉を伝えるのが恥ずかしかったからでした。
ししろんは、ちょっとだけひねくれてはいましたけれども……とてもストレートに、ラミィへの愛を伝えてくれていました。
……バカですね、ホントに。あのピュアな想いを信じてあげないで、どうして恋人を名乗れましょうか。
その信頼を、ラミィはししろんにちゃんと伝えていられていなかったと思います。
……ししろんに愛してもらえるのが、本当に嬉しくて。でも、そのおっきな愛に甘えて……ラミィはずっと、欲しがってばっかりだったのです。
自分の情けない羞恥心を悔いていると、鼻の奥がツンとして……また涙がこぼれてしまいそうになりましたが……ラミィはもう、めそめそと泣きません。
ミオ先輩のお洋服をずびずびにした分、ラミィは強くなったのです。いえ、強くならなければいけないのです。
「…………今度は、ちゃんと……ラミィから伝えるから……!」
傷だらけのハートを繋ぐ作業を経て、ししろんにかけるべき言葉がようやく頭の中で固まりました。
もう二度と壊れないように、大切に。壊れたとしても、もう一度直せるように。
そういう風に心を決めて、ししろんのおうちへ向かったのでした。
――――――
電車に乗って、ナビを使って……いろいろありながらも、ししろんのマンションに着きました。その頃にはすっかり日も暮れておりまして、少し肌寒さを覚えたほどでした。
付き合い始めてから何回か遊びに来たことがあったのですが、基本的にはラミィの家でイチャイチャしてばかりだったので、ちょっと道に迷ってしまったのは内緒です。
ラミィは表札が無い部屋の番号を何度も確かめてから、深呼吸をすーはーと重ねて、震える指で呼び鈴を鳴らしました。
…………反応は……ありませんでした。
うん。予想はしてました。でも、たぶん部屋の中に居ると思います。
電気のメーターも動いているし……なんというか、部屋の中に気配を感じるのです。これぞ愛の力というヤツです。
……今日という日が、オートロックのマンションに引っ越す前でよかったと、心の底から思いました。ちょっと遅かったら、ガチのマジで詰んでいました。
「……ししろん、ラミィだよ……! ここを開けてよ、ししろん……!」
どんどん、どんどん、と。近所迷惑になるんじゃないかと心配になるほど、激しくドアを叩きます。
ドアが上げる悲鳴は――ラミィの心の動揺と衝動を、そのまま表しているようでした。反応がない時間が増えていくに連れて、鼓動が早く強まっていくのを感じて……とてもつらかったです。
……でも、諦めるわけにはいかないのです。手が痛くなっても、情けなくなって涙が滲んでも……どうしても、ししろんに会いたかったのですから……。
「ししろん……! 昨日のこと、謝るから……出てきてよ……! ししろん……!」
しばらくしても、反応はありません。ドアに倒れ掛かるように、ラミィの膝はガックリと崩れ落ちてしまいました。
数分なのか、数十分なのか……ずっと声を張りながらドアを叩いて……そのうちに、心身がすり減って……まともに立てなくなっていたのです。
「……ししろん、お願い……! ラミィは……ししろんに、もう一回会いたいよぉ……!!」
手も、喉も、心も痛くなっていました。それでも、ししろんにラミィの声は届いていないようでした。
強気を保とうとした弱い心が、その痛い実に耐えきれなくなって……ぽろりと涙の粒を落としたとき――。
――かちゃん、と。固く閉ざされた鍵が、開かれる音がしました。
「……えっ……? しし、ろん……?」
ラミィは慌てて情けない雫を拭って、ドアを開きました――が、ドアの奥にししろんは居ませんでした。
その代わりに……ころころん、と足元に何かが転がってきました。
「……あなたは……SSRBのひと……?」
ししろんが部隊を組んで一緒に暮らしている血盟の団員……SSRBのひとりが、地べたでべっちゃりと寝そべっていました。
もしかしなくても……このひとが、ラミィのために……ししろんに黙って、鍵を開けてくれたのでしょう。
「……ありがとう、SSRBさん……! 大好き……!」
手榴弾のような――というか、まんま〝それ〟なんですけども――カチぷにな手触りの肌にキスをして、頭を指でよしよししてあげて、シューズボックスの上にポンと乗せてあげました。
…………なんか今……カチン、という……良くない何かが着火したような、不穏な音が聞こえたような気がしますが……。
……まあ、気のせいやろ! SSRBはみんな、ししろんが大好きなんだから!! 大丈夫だって!!
…………ラミィはハート型のアツい視線を背中に受けながら、ゆっくりと玄関を抜けて……ししろんのお部屋に向かいました。
「……ししろん……入るね……?」
扉を開けると――真っ暗な部屋の中で、PCのモニターだけが眩しい光を放つ、陰気な空間が出来上がっていました。
長く居れば、心も身体も病んでしまいそうな……暗くて、気落ちしそうな空気が満ちています。
「………………ばか……」
煌々とした青白い光景を映すモニターを見て……また、ちょっと泣きそうになっちゃいました。
ししろん、ついさっきまで、ラミィのASMRのアーカイブを聞いてくれていたみたいでした。
それに……画面に出ている非公開のプレイリスト、全部ラミィのASMRでループするように組まれているし……ブラウザのブックマークバーには、ラミィのオリジナル曲のMVだけが保存されていました。
……どんだけ、ラミィのこと好きなのよ……って、心の底からツッコミたくなるほどに。この部屋には、優しい嘘とか気遣いの気配すらも感じさせない……大きくて、まっすぐな愛が育まれていたのです。
……まあ、ね。画面に自分が映っているのはちょっぴり恥ずかしかったので、こっそりブラウザを最小化しておきました。
「……うぇっ……!?」
その瞬間、ウィンドウがシュッと縮んで――ラミィの喉をグッと詰まらせました。
…………ディスプレイを飾る壁紙が…………ラミィのエッチなお写真でした……。
うーわぁ……ししろんのPCの中でさぁ……ラミィがおっぱい丸出しで、あー、なんとまあ、エッチな顔してるわぁ……。トロトロにされちゃった、事後っぽい感じですね……。
しかもこれ、なんとまあ、ラミィの寝室そっくりに描いてくれて…………っていうか、よく見たら実写なんだが!? このスケベライオン……こんなのいつ撮ったんだよ……!?
「うー……! それなら、こっちか……!」
ラミィは苦渋の選択を強いられて、仕方なくブラウザを最大化しました。
いや、まあ、自分のエロ写真より配信画面の方が全然マシやろ!……と思ったけれども、雪民さんがいつも見ている画面を意識するのもさぁ、なんか恥ずかしいんだが……!?
……いや、なんで彼女の部屋でヘル・オア・ヘルを味わってんだ、ラミィは……!? 天国を一個ぐらいは用意してちょうだいな!?
…………いやいや、そんな余計なことはいいんですよ、ええ。自分でも、これが現実逃避だってわかっているところですし……。
ほっぺたをぴしゃりと叩いて、気を取り直します。ししろんと……この、痛ましい現実と向き合わないといけません。
パソコンからほど近いベッドの上には、毛布に包まっているししろんが居ました。
ラミィに気付いているのか、いないのか……それはわかりませんが、半開きの目に生気が無いことだけは確かでした。
「……ししろん」
声を掛けても、反応がありません。よく見ると、チラッと覗いているライオン耳に、ワイヤレスのイヤホンが付いていました。
それをポンと抜いて、ASMRをしているときのように……ミオ先輩に癒やしてもらった、あの瞬間のように。
ラミィは、精一杯の慈愛を込めて……その名を、もう一度呼ぶのです。
「……ししろん…………ちゅっ♪」
「っ……!? ら、ラミちゃん……!?」
耳から心まで届ける、最大愛情なキス音でした。肩をビクリと震わせて、ラミィにとっての王子様兼お姫様……唯一無二の存在を覚醒させていきます。
「……ど、どうして、ここに……?」
「……えへ……♪ ししろんに会いたくて、来ちゃった……♪」
「……う……あ……? えっと、あ、あの……! き、昨日は、その……なんていうか……あの……」
……だいぶ、参っているみたいです。ししろんらしくない歯切れの悪さと狼狽え方が、精神面の乱れを教えてくれました。
ラミィは何も言わずに、首を横に振って、無理に喋らなくていいことを伝えます。頭を覆っていた毛布をそっと外して……涙のシミがたくさんついた頬を撫でました。
「……ししろん。昨日は、ごめんね……。ししろんのことが好きすぎて……もっと、近くに行きたくて……ししろんを傷つけちゃったね……」
「……あ……いや、こっちこそ、ごめん……。急に、頭の中……真っ白になっちゃってさ……もう、訳わかんなくなって……」
「……いいの。ラミィが悪いんだって、ちゃんとわかってるから……」
膝を抱えていた丸まりをほどいて、寒さに震えていたししろんをギュっと抱き締めます。
「……ひっ……!? あ、あっ……イヤっ……!!」
抱きつかれた瞬間、ししろんは身体を尋常じゃないほどに震わせて……ラミィの腕を力強く掴んで、拒絶しようとしました。
でも、ラミィは逃げませんでした。ミオ先輩に分けてもらった、本当の温もりで……毛布に隠れたししろんを、丸ごと、優しく包み込みます。
「やだ……やだ……!! もうやめてよ……やめてよぉ……!!」
ししろんの身体が、〝何か〟を振り払おうとして暴れます。
今、こうして……ししろんから逃げずに触れ合い続けて……ようやくわかりました。
「助けて……誰か、助けて……! ラミちゃん……助けてぇっ……!!」
……あのときも、今も……ししろんが怖がっていたのは……目の前に居た、ラミィ『だけ』じゃないことを。
自分の罪を認めます。自分の浅はかな愛を反省します。だから、正しく、心から謝罪します。
「ごめんね……ししろん、ごめんね……! 昨日のアレは……ししろんが、思い出したくないことだったんだよね……! 本当に、ごめんなさい……!」
『襲って怖がらせたこと』じゃなくて……『イヤなことを思い出させてしまったこと』を謝るのです。
「うわ、ああああっ……あああああああああああッ!!」
ししろんは暴れます。過去の幻影に心を蝕まれて、苦しそうに呻きます。このままでは、ラミィの声は届かないかもしれません。
だから、今は……お互いに、ごちゃまぜにしてしまった〝すれ違い〟を正さなければいけません。
「……怖がらないで……! ここに居るのは……ししろんが愛してくれてる、ラミィなんだよ……!」
必死の抵抗を押さえる抱擁……この好意が、ただの押し付けにしかならないとしても。
ラミィは、ししろんの好意と、ふたりの思い出を信じると決めていました。
「……~~~♪」
ラミィはししろんの耳元で……自分のオリジナル曲を歌いました。心を込めて、大好きな人だけに想いを届けました。
目が見えなくても。声が聞こえなくなっても。誰も信じられなくなっても。
この歌でなら、ラミィの存在を証明してくれるはずですから。
「……ぅ、あ…………ああ……ラミ、ちゃん……。ラミちゃんが、近くに居る……!」
優しい旋律が、ラミィの想いを……この小さな世界中に響かせてくれました。
ししろんは少しずつ……本当に少しずつですが、その反射的な緊張と抵抗をゆるめてくれました。
「…………ラミちゃん……ごめんな、いろいろと……」
身体から余計な力が抜けて……かすれた声が、力なく発せられます。ラミィはその一語一句を聞き逃さないように、ししろんの一番近くで耳を澄ませました。
「ふふ……さっきも言ったでしょ? 昨日のこと、ラミィが悪いってわかってるよ……ししろんは謝らなくてもいいんだってば」
「……ラミちゃんは、悪くないよ……。あたしが、ラミちゃんの気持ちを受け止められないのがいけないんだ……」
「……そ、そんなことないよ……。ししろん、ラミィのために……いろいろ、気を使ってくれてたでしょ……?」
「…………気を使うっていうか……ラミちゃんが好きだから、なんとか合わせようとしただけだよ……。それでも、あたしは……どれだけ力を付けても、過去には勝てなかったんだ……」
ししろんは気まずそうに視線を落として、ぽつぽつと、過去の話をしてくれました。それは、誰にも話したことがないもののようです。
その内容は、あんまり大きな声で人に言うようなことではありませんでした。ししろんが、誰にも言いたがらないような……痛ましい記憶のこと……。
ただひとつ、ここで言えるのは……まだ大人じゃなかったししろんが、とても怖くて、痛くて、苦しい目に遭ったということだけは、間違いないことだと思います。
「ラミちゃんが……大好きなハズの顔が……あのとき、すごく怖く感じて……昔の、イヤな記憶と重なって……それが、すごくイヤだった……」
ししろんが唇を震わせてそう言うと、目元から、ぽろりと涙がこぼれ落ちました。その小さな一滴が皮切りになって、塞ぎ込んでいた想いたちが、ぽろぽろと溢れていきます。
「あたしさ……ラミちゃんが相手なら、なんでも怖がらずにいられたのよ……。そういうヒトを好きになれて、嬉しかったのに……!」
まっすぐに表した心の言葉……それを悲しそうに語ってくれたということは、ししろんの本音だったということなのでしょう。
ラミィは下唇を噛んで、ししろんを抱き締める力を強めました。『ありがとう』って、言葉にしなくても伝えられるように。『嬉しいよ』って、全身で表せるように。
……でも……ししろんには、全部を伝えきれていなかったみたいです。
「…………別れよ、ラミちゃん……一緒に居るの、つらいよ……。もう、ラミちゃんを満たせて……幸せにできる気がしないよ……」
「っ……!!」
ししろんの小さな一言が……涙声の、諦めるような音吐が……ラミィの胸の奥まで突き刺さりました。
血が出るほどに痛くて、吐き気を催すほどに痛くて……心が折れて、目の前が真っ暗になるぐらいにショックでした。
別れることも、ある程度は覚悟をしていたのに……こんなにもつらいなんて思わなかったです。
……正直に言うと……今すぐにここを飛び出して、泣きながら夜の道を歩きたいところでした。足が勝手に逃げようとして、唇がわなわなと震えてしまっていました。
……でも、諦めません。赤く染まったばんそうこうの気持ちわるい感触は、ラミィの心をギュっと引き締めてくれています。痛くても、ししろんのことを諦めたくないのです。
おまるんに教えてもらったヒントと、ミオ先輩に貰った勇気。そのふたつを無駄にしないためにも、ししろんと、ラミィのために頑張ります。
「ししろんは、ラミィのこと……まだ、好き……?」
「……そんなの、当たり前じゃんか……! でも、あたしは……もう、ダメなんだ……! ラミちゃんの隣に、ふさわしくないから……」
「……ラミィも、ししろんのことが大好きだよ……♪ だから、『ふさわしい』とか、難しいことなんて考えないで……これからも、一緒に居てほしいな……」
マイナスな気分のときに、理論的なことを考えてもダメなのです。ラミィは、今日だけでそのことをよく理解したつもりです。
ダメダメで、ぐちゃぐちゃなときには……余計なことは考えず、素直に、欲しいものだけを欲しがるべきなのです。
……そのために。ラミィがあげられるもの、全部、ししろんにあげちゃおうと思います。
「ラミィは、別れたくないよ……ししろんと、ずっと一緒に居たいよ……」
「っ…………こんな……エッチもまともにできない、弱くて女々しい女でも……? ラミちゃんのお願いも聞いてやれない、ダメなヤツでも……?」
「……くすっ……♪ そんなの、心配いらないよ。ししろんはね、自分が思っているよりも強くて、カッコよくて……とっても、かわいいんだから……♪」
ぐすぐすと泣きじゃくる女の子を抱いたまま、ラミィはベッドに倒れ込みます。
もみくちゃになりながら、ししろんと二人で寝転がって……身体をズラして、熱いキスを捧げました。
「んっ……ちゅ、るる……ふむぅ……♪ しし、ろん……大好きっ……愛してる……!」
「……っ……らみ、ちゃん…………んっ、ぅ……」
ししろんが、ラミィとのキスを好いていることなら知っています。こうして抱き合って、体温を交換することで落ち着くことも知っています。
ししろんが、ラミィを喜ばせようとしてくれたように。ラミィも、ししろんを喜ばせて、満たしてあげたいのです。
ちゃんと言葉にして。言葉だけじゃ伝わらない想いは、スキンシップで心まで溶かし込んでいきます。
ラミィがししろんの愛を信じていることを伝えます。だから、ししろんにも……ラミィの愛を信じてもらえるように、できることをなんでもやりました。
「ししろんっ……ちゅ、ろっ……んるっ、るっ……♪ んりゅ……っ♪」
「んっ……!? ぁ、あっ……らみ、ひゃ……はぅ…………んっ……」
自分が付けてしまった傷を、文字通りに、舐めるように癒やします。痛むばかりの傷痕を、優しい愛で包んで温めます。すると、不安げに震えていたししろんの身体が……少しずつ、いつものような積極性を取り戻してくれたのです。
「……ちゅ、るっ……ぷぁっ……。はぁ……ふぅ……ラミちゃん…………もっと、キスしてもいい……?」
「はぁっ……はぁっ……! そんなこと、聞かなくても……いつも、たくさんシてくれるでしょ……?」
「…………ん……そうだね…………ちゅ、むっ……んんっ……♪」
……キスが好きなのは、ししろんだけじゃありません。ししろんも、そのことを思い出してくれたみたいです。
好きだから、『好き』って言いたいのです。愛しているから、こうして融けるようなハグをして、深いキスに没頭したいのです。
……それでいいんじゃないかな、って。ぼーっとする頭で、ししろんと共有できた気がします。
たくさんのキスを紡ぎ合って、熱く燃える想いを響かせ合いました。お互いの大きな胸が窮屈に潰れて、ときめく鼓動をトクントクンと震わせている刹那を……数えきれないぐらい重ねていきました。