雪どけを思わせる、初めてのセックスを経て……ししろんとラミィは、交際を継続することになりました。
なので……ししろんとのことは、雪民さんたち限定ですが、ちゃんと報告をすることにしました。体調不良を介抱しているうちにそういう話に、というテイストになっていますが……ほぼ事実を伝えています。
あんなにアレな夜を過ごした後の朝活で、ちょっと申し訳なかったけれども……こういうのは早い方がいいかな、と思いまして。ラミィの気持ちは、さすがに変わらないでしょうから。
ガチ恋をしてくれていた方も少なくなかったし、雪民さんたちにはいろんな想いがあったみたいだけれども……最終的には、みんな祝福してくれていたように感じます。
相手がどこの馬の骨ともわからない男性だったら、もっと荒れたと思いますが……みんなに愛されてきた名コンビがゴールインというかたちだったので、どうにか収まったのかな……?
……っていうか……交際報告中に気づいたんですけども……なんか、雪民さんの中に……もこもこを身にまとった手榴弾みたいな人が増えている気がしますが……。
…………アレよ、ししらみ推しになってくれたってことだよね! うん……目のハートマークなんて見えていないワケで……。
あのー……ラミィ、もうししろんのモノだから……! 未来の人妻だから……! なんか、ごめんだけど……頼む、許せっ……!!
心の中で精一杯の謝罪をしながら、祈るように配信を切りました。メンバーは多少減ってしまうでしょうが……その痛みも、ラミィの選択の結果として、ちゃんと心で受け止める予定です。
それから、お仕事に穴を空けてしまったことについて先方に謝罪をして……その帰りに、事務所に居たねねねとおまるんにも報告をしようとしたのですが……。
「正直、まだ不安だけど……ラミちゃんを幸せにできるように……ししろん、もっと頑張るよ。だから、ラミちゃん……あたしの彼女でいてくれないか……?」
……なんと、おまるんとねねねの前で……ししろんは公開再告白をしてきたのです。
とっても驚いたラミィでしたが……愛しさと、答えるまでもない返答を込めてキスをしたのでした。
何も知らなかったねねねの黄色い絶叫と、ニヤニヤしたおまるんの口笛とカズーイに囃されつつ……ねぽらぼ内の公認カップルが生まれたのです。その後、ねねねに根掘り葉掘り聞かれたことは言われるまでもありません。
それから……愛を語りながら、また一晩を共にして。甘い夢が何度醒めても想いが変わっていなかったハダカの朝を、ふたりで共有したのです。
「はい、ししろん。朝ごはんのパンだよ」
「ふぁあ……ありがと――って、なんじゃこりゃ!?」
朝食時にラミィが差し出した、ヒビだらけのお皿にししろんが驚いていました。もう、眠気が吹っ飛ぶぐらいのビックリ度だったようです。
乗せているのはトーストなので、破片がお料理に入り込むことはないと思います……何度も洗ったし、きっと大丈夫です。
まじまじと、何かを言いたげにこちらを見つめるししろんに……ラミィは、何も言わずに微笑みを見せました。
「…………ハハ……前より、ちょいと身近に感じるや」
「嘘ォ!? ギャングタウンってそんなに治安悪いんか!?」
「うっはっはっはっ! そうじゃなくって……このお皿……〝ラミちゃんのお気に入り〟ってカンジじゃなくなったみたいでさ。ある意味、敷居が下がってくれたかもしれん」
「……そんなことないよ。今だって、ずっと一番のお気に入りだもの」
「……物好きだよな、ホントにさ」
「ししろんにだけは言われたくない!」
ラミィに合わせるように……ししろんも、ちょっとだけ眉を困らせて……真っ白な牙を見せて笑ってくれました。
その生々しい感情的な笑顔は、カッコよさも可愛さも中途半端で……〝獅白ぼたん〟って感じではなかったのですが……ラミィが一番好きな表情だったと思います。
……たぶんですけど……。ししろんが、エッチをしているときにだけ見せてくれていた……あの情熱的な微笑は……ラミィだけのトクベツだったのだと思います。
……うん。きっと、そうなんだと思います。今ならちゃんと……そう、信じられるみたいです。
「……ラミちゃん、コーヒーおかわり」
「……うん♪」
飾り気がない、生活感だらけのモーニング。かつての凍りついた記憶が、少しだけぬるい思い出で包まれていくのを感じます。
この薄いベールをもっと、もっと重ねて……いずれ全部を笑い合えるようになれたら、どれだけ幸せなのでしょう。
我儘な臆病者と、傷痕を抱えた者。こうやって、冷たいもの同士で寄り添って……少しずつ温まっていければ――。
――雪で出来た恋色の儚い花びらも、いずれは実を結んでくれるかもしれません。
「ラミちゃん、あのさ……」
「なーにー?」
「……ふへ…………いや、やっぱナシ……」
「なによう、気になるじゃないのー。ししろんがラミィに言ってくれないコト……まだあるの?」
「そ、そんなことないけど…………これは、ちょっとアレかな……って……」
「じゃあ言って。今すぐ言って! じゃないとお夕飯のカレー、ししろんだけお肉抜きだから!」
「…………ら、ラミちゃん…………へへ……あ、愛してんで……」
「えー。もっと真剣に言ってよぉ。せっかく、ラミィが寝てないときに言ってくれてるんだから……起きてるときも、ちゃんと目を見て……ね?」
「な、なんで寝てるときのこと知ってんだ……!? ってことは、今までのも全部……………………あー、もー……!」
「ふふ……♪ ほら、ししろん……『なーにー?』ってラミィが聞いてるんだよ? それでいいの?」
「……あ、愛してる……! これでいーかい!?」
「ん! ラミィも愛してるっ!!」
その春の訪れは、まだまだ先だと思うけれども。
それまで、ずっとふたりで生きていけたらな……と、願うばかりです。
お互いのにやけたほっぺたが熱くて、ちょっと痛くて。じゃれ合うように頬をすりすりと触れ合わせて、優しくキスを重ねたら……ラミィたちに、ちょうどいいぐらいの温もりで。
……そんな、むず痒い心で愛の雪どけを感じた……ある日の朝のことでした。
おわり