ベッドヤクザな遍歴騎士と誘い受けマゾメス騎士姫のハーレム構築ちんチン珍道中 作:HK416
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濃密な夜を過ごした二人は翌朝、樵小屋の前で並び立っていた。
昨夜は舌と顎がくたくたになるまでキスし続け、そのまま抱き合って眠りについた。
日も登りきらぬ内に目を覚まし、身を清めて小屋を綺麗に片付けた上で、樵達への礼として僅かな銀貨を残しておく。
朝霧の立ち込める森は鳥の囀りさえ遠く、静寂と呼んで差し支えない。
しかし、二人の間に立ち込める雰囲気は――――もっと正確に言えば、セレスティナの醸す雰囲気がおかしい。
せわしなく視線を彷徨わせたかと思えば、ポーッと何処かに意識を飛ばした緩んだ表情になる。
そして、唐突に真っ赤な顔でニヤけさせると、両頬を抑えて首を振っていた。
「…………あの」
「……ひゃ、ひゃい!」
一人の世界に迷い込んでいたセレスティナは、タキトゥスの声で我に返る。
舌を噛んだかのような返事は、聡明な彼女には似つかわしくないものであった。
彼女にとっては、それほどまでに深い喜びであったのだから、無理もない。
対するタキトゥスは頬を掻いて、照れを隠していた。
相変わらず彼の中で、セレスティナへの思いは判然としていない。
ただ、明確な言葉にできない感情に戸惑いを覚えつつも、彼女が喜んでくれている事実には明確な喜びを覚えていた。
「……行きま、しょうか」
「……はい」
「「…………っ」」
朝の静寂の中、言葉少なに馬小屋へ向かおうとした。
その時、意図せずに手と手が触れ合った。
タキトゥスは静かに息を呑み、セレスティナは大袈裟に手を引っ込める。
触れてしまったことに驚いたのか、それとも互いの反応に驚いたのか。
暫くの間、気まずい沈黙が流れたものの、タキトゥスが動き出した。
「……あっ」
セレスティナの手を取って、軽く握る。
互いに手甲で覆われた手では、体温すらまともに伝わらない。
それでも、気持ちを伝えるには十分だったのだろう。
セレスティナは、ふにゃけた顔を耳まで真っ赤に染めて俯いてしまった。
何時もは振り回されてばかりのタキトゥスは、少しだけ気分を良くして腕を引いて歩んだ。
無言で未熟で未完成。
だが、それでも確かな愛が其処にはあった。
◆ ◆ ◆
「今日はいい天気だなぁ。雨に降られる心配もなさそうだ」
森を抜けた先には地図に記されていた通り、小さな農村があった。
特に見るべきものなどない寂れた村ながら、村人は意外なほど開放的で、厳しくも穏やかな日々を懸命に生きていた。
旅の物資が不足してきたこともあり、村に立ち寄ることに決めて今に至る。
セレスティナは市場もない村で人々に声をかけ、物々交換や物を売ってくれないかと交渉中。
タキトゥスはと言えば、人柄の良さとコミュニケーション能力こそあるものの、交渉は気前の良さが災いして押し切られがちなため馬小屋で待機中であった。
ぼんやりと空模様を眺め、今日の旅路がセレスティナの身に負担をかけないものになると確信して、ホッと安堵の息をついていた。
その時、村の馬小屋番が少しばかり興奮した様子で近づいてきていた。
「兄ちゃん、いい馬だね。こんなに見栄えもよければ顔も良い奴は見たことねぇや」
「でしょ? 顔や馬体ばかりじゃなくて賢さも相応ですよ」
「だろうなぁ、気難しそうだが指示にはちゃんと従う。こんな馬を持ってるなんて、ただの旅人や傭兵の類じゃないよな? 領主様のお抱え騎士かい?」
「いえ、王国騎士です」
「うぇえっ!?」
「ハハ、と言っても下っ端も下っ端ですけどね」
二人の馬――特にルドウィークの見栄えの良さとタキトゥスの醸す呑気な空気から始まった何気ない会話。
けれど、予想外の返答に村人は一瞬で委縮してしまった。
国が正式に採用を決定し、叙任した者を王国騎士と呼び、領主が領地を守護するために叙任した者をお抱え騎士と呼ぶ。
どちらであっても能力から性格まで玉石混交であるものの、基本的に上となるのは王国騎士の方だ。
王都からも国境からも離れ、大きい街でもない村の者であれば王国騎士と話したことなどなく、厳粛なイメージを抱いて委縮してしまうのも無理はなかった。
しかし、人の好い笑みを浮かべ、非礼を責めもしなければ威圧もしない様に困惑しながらも、男は委縮を解いていく。
タキトゥスは
態度にしても人並み以上に控えめで、これならば安い酒場で飲んだくれている荒くれの方がまだ向いている、と言われてしまうほど。今回に関しては、それがプラスに働いた。
「……い、いやぁ、そりゃ失礼を」
「お気になさらず。僕は平民上がりで爵位も貰ってませんから、立場上そう大差はありませんよ」
「そうかい? そうかぁ? そいつぁ有り難いが、何だかやり難くなっちまったなぁ」
「…………?」
タキトゥスを侮ったわけではないだろうが、ものの数秒で男の態度は元に戻っていく。
男が図太かったのか、タキトゥスが人心を解きほぐす才能の持ち主であったのかははっきりとはしないが、それでも男は困ったように頭を掻いた。
元々、何らかの目的があって話し掛けてきた。その相手が王国騎士とあっては、目的を果たさんと事を進めていいものか。
平民にしてみれば当然の悩みであり、気持ちはタキトゥスも分からないでもなく、必要以上に追及はしない。
やがて男は意を決したのか、口を開く。余程差し迫った事情があるようだった。
「いやぁ、実はな、領主様からのお触れで、今度追加の徴税があってな。何でも、領内の不穏分子を一掃する、だとか何とか……」
「それはまた。大変ですね」
「仕方ねえさ。領主様にはこっちの生活を守って貰ってんだ。納めるもんは納めねえと。だが、冬を越すにはちぃとばかり不安でな」
追加の徴税は、他の領地でも珍しいものではない。
戦時でなかったとしても、脅威はいくらでも存在する。
知恵を持たぬ飛竜や自然による災害への対応とその予防。
オークやゴブリンを筆頭とする対話も不可能な凶悪な魔物の跋扈。
あらゆる理由から犯罪に手を染める者の取り締まり。
それらに対応するため、どうしたところで金銭が必要になってくる。
通常通りの税収では対応しきれないのであれば、臨時の徴税も国に認められている正当な行為である。
とは言え、小さな村にとっては死活問題に直結する。
農民は農作物や家畜を税として納める。或いは何処ぞの商人と農作物の売買契約でも結んでいれば金銭で支払う。
いずれにせよ、税が引き上げられれば引き上げられるほどに、その日の食事が切り詰められていくようなもの。
商人や職人は手持ちの商品を安値でも売り払えば食い繋ぐことも可能であろうが、小さな村ではそうもいかない。
「で、だ。不穏分子の一掃ってんならお抱え騎士を動かすだろうし、馬も必要になるだろ? 村の馬を何頭か献上して麦だのは免除して貰おうって話になったのよ」
「それはいい。作物を持っていかれるよりは今年の冬に対して痛手も少ない。領主にしても馬も多ければ移動も速くなる。その分だけ戦いも速やかに終わって兵糧も少なくて済みますからね」
「だが、残るのが牝馬ばっかり。牡馬は年老いた奴等ばっかでなぁ……」
「……ああ、成程、つまりルドウィークの種が欲しい、と」
「勿論、
領主に軍馬として引き渡すのであれば、村の中でも特に質のいい馬を渡す。
気性が荒い分だけ恐れを知らないか、穏やかであっても人の指示を理解できる賢さを持っているか。その上で疲れを知らず、よく走る馬でなければ意味がない。
この規模の村では、そんな馬は何頭も居ない。
後に残るのは輓用馬や荷馬としても使うにも苦労する駄馬と呼ばれるような馬ばかり。
現在を乗り越えるのは結構なことだが、来年以降に問題が噴出しかねない、と悩む気持ちはタキトゥスにもよく分かった。
其処で目にしたルドウィークの姿は、ある意味で救世主に等しかった。
一目でよく走り、よく働くと分かる見栄えのいい馬体。
この馬の子供がどのように成長するか。その夢想は馬の世話をする者とって、日々の苦しさや今立っている苦境を忘れさせるほど。
色々と思惑はあるのだろうが、男の本音は其処にあったかもしれない。
「いいですよ。金も物も気持ち程度で」
「…………マジで? もっとぼられるもんと覚悟してたんだが」
「んー……確かに、彼等の種にはそれくらいの価値はあるでしょうけど、種がつくかも分からないし、生まれてくる子も才能を受け継ぐとは限らないですしね」
「そりゃそうだが…………もしかして、とんでもない荒馬なのか?」
「まさか。どちらも軍馬にしては穏やかな方ですよ。何なら乗ってみますか? 僕が言い聞かせれば、暴れやしませんよ」
「……うーん、そうか。そうかぁ」
タキトゥスの意外なほど良心的な提案に、男は話を持ち掛けた身でありながら尻込みしていた。
言っていることは尤も。
尤もではあるが、余りにも簡単に事が済み過ぎている。
男の想定では、もっと吹っかけられるところを交渉で値切っていくつもりであったのだが、これでは逆に裏があるのではと疑うのも無理はなかった。
「但し、条件が一つだけ」
「……なんだい?」
「僕の相棒にも何頭か種を付けさせてください。コイツも生き物だから子を残しておきたいでしょうから」
「…………うーん」
提示された条件は、条件でありながらも男にとっては助かるものだった。
優秀な馬は何頭いても損はない。
胎の空いている馬は何頭もおり、タキトゥスが言ったように一度で種がつくか分からない以上、多くの牝馬と交わった方が結果の出る可能性は高い。
提案から何から自身にとって有利になるもので、一度抱いた疑念の炎は更に勢いを増して燃え広がる。
タキトゥスとしては、この遍歴の旅はセレスティナとの婚姻に必要な行いという大前提はあるものの、基本的に人助けの旅という認識。
その過程で誰かが救われるならば、それでよし。旅の果てにセレスティナが飽きて捨てられるとしても、いい思い出になる程度の考えしかないのだが、何も知らない男に伝わる筈もなく。
「…………ふっ、分かった。条件を呑むから頼めるか」
「ええ、勿論」
「よーし、そうと決まれば人を集めねえとな。ついでにそいつらに乗せてくれ。どんな乗り心地なのか気になってたんだよ」
「いいですよ。どちらが?」
「どっちもだ! 良い馬だってんなら乗っておかねえと損だからよ!」
疑心暗鬼に囚われた男が決断を下した決め手は、タキトゥスとアッシュの絆、そして自らの持論だった。
騎士にとって馬は移動用の道具に過ぎず、いつ死ぬか分からぬ故に過分な愛情など注がない。
少なくとも、彼の知る領主のお抱え騎士は馬の扱いが雑で、嫌悪の対象になることもあったほどだ。
だが、タキトゥスは違っていた。
馬小屋から顔を出す愛馬を撫でる手付きは例えようもないほど優しく、多くの感謝と共に生きる喜びを伝えられているかのよう。
撫でられている愛馬も心地良さげに目を細め、言葉は通じなくとも確かな絆が其処にあるのを窺い知れる。
馬に好かれる奴に、悪い人間はいない。
余りにも偏った持論であると自認はしていたものの、信じるに値するものだと確信させる程度の威力が、一人と一頭の間にはあったのだ。
◆ ◆ ◆
「うぉぉ、すげぇ……全っ然揺れねえ……これなら長旅も疲れないだろうよ」
「ははは、それは確かですね」
タキトゥスはアッシュに、男はルドウィークに乗って村の外周をゆるゆるとした速度で周っていた。
村の若者に種付けの準備を任せ、その間に男の宣言通りに乗り心地を確かめている。
これまで乗ってきたどんな馬の背よりも静かで心地良い感触に、男は思わず感嘆の吐息が漏れてしまう。
男の下でルドウィークは当然だとばかりに鼻息を荒くし、後に続くアッシュはのんびりと欠伸をしていた。
「兄ちゃん、この後は何処に向かうんだい?」
「ええっと、このまま連れの知り合いに会うために領主の居る街へ向かうので、次はフォルスの街になるかな?」
「………………そう、か」
「……? どうかしましたか?」
「いや……悪りぃな」
タキトゥスの返答に、誰の目から見てもはしゃいでいた男の表情が一瞬で暗く沈む。
その様は慣れぬ相手を背に乗せていたルドウィークが気付き、自ら足を止めるほど。
豹変と言っても差し支えない変化に、タキトゥスは心配そうに鞍上にいる男の顔を覗き込んだ。
しかし、男は慌ててルドウィークの手綱を操り、歩かせる。
何とも妙な反応に、呑気なタキトゥスと言えども首を傾げざるを得ない。
暫くの間、沈黙が訪れて二頭の蹄の音だけが響くが、やがて男は意を決したように口を開いた。
「実はな、この村からフォルスの街まで続く街道には野盗が一人出んだよ」
「……はあ」
「それが恐ろしく強くてな。兄ちゃん達がどれくらい強いのかオレには分からねえが、気を付けた方がいいかもしれねえ」
「まあ、警戒は怠りませんが、それほど気にせずとも……」
男の話にタキトゥスは更に首を傾げた。
本質的に、男がタキトゥスの旅を心配する必要などない。
長い人生の中、一日だけ道程が交わっただけの間柄。
確かに親切に接しはしたものの、今後を気にするほどにはなっていないはず。
疑問はすぐに氷解した。男が自ら話し出したからだ。
「そいつが狙うのは金持ちの商人だの、徴税を終えて領主様のところに戻る役人ばかりでな」
「狙い目ではありますね」
「ただ、オレ達のような貧乏人には手を出さねえ。フォルスの街への行き来で助けられた奴もこの村じゃ少なくないしな。魔物や盗賊団なんかも倒してくれて、正直助かってんだ」
「…………うーん」
「其処に今度の不穏分子の一掃だろ? 奴も殺されちまうと思うとなあ。事情は何も知らねえが、ちぃとばかり忍びねえ。領主様に守ってもらってる身の上じゃおおっぴらには言えねえが、この村にゃ似たような考えの奴は多いと思うぜ」
何のことはない、男が心配していたのは野盗の方だっただけ。
そして、王国騎士を前にして言ってもいいものか、という葛藤もあった。
聞く限り、確かに単純な悪党と言うわけではないらしい。
弱者からは奪わずに強者から奪うあたり、まるで義賊のようでさえある。村人の心情が野盗に寄るのも無理はない。
基本的に野盗は略奪の成功率を引き上げるため徒党を組むものだが、それさえせずに一人きり。
何か並々ならぬ事情や考えがえるのではないか、と信じてしまいたくなったのだろう。
しかし、タキトゥスの反応は鈍く、共感していない。
確かに普通の野盗ではないと認むるところではあるが、全てが
略奪するのなら貧乏人よりも金持ちの方が効率がよく、一人でいるのは真っ当な理屈が通用しない破綻者だから、魔物や盗賊団を縄張りから追い払っただけ。
可能性はいくらでも用意でき、事実というものは結局のところ当人の主観に過ぎず、真実という客観とは全くの別物。
村人の言葉だけを、はいそうですか、と鵜呑みにすることは出来なかった。
「何とか話だけでも聞いてやりたいが、こっちの姿を見つけてもすぐに消えちまう」
「危険ですから止めた方がいい。我々の理屈が通用しない輩は往々にして存在しますから」
「……だよなぁ」
タキトゥスは無駄だと分かっていながら、忠告だけはしておく。
話を聞くにしても、何らかの説得を行うにしても、無力な村人が行っていい無理の範疇を超えていた。
このまま放っておく方が村人にとって厄介な事態に発展しかねない。
彼に騎士として施されてきた教育は民に寄ったものであり、見逃すわけにはいかなかった。
「でしたら、僕達で対処しましょうか?」
「い、いいのかい?」
「ええ。確約はできませんが、話を聞くくらいはできるでしょう。事情が事情なら、減刑を申し出てもいい」
「そうか……何だか悪いな。世話になりっぱなしだ」
「構いませんよ。これも務めですから」
大層な信念に従ったわけではなく、教えられた義務に従っただけの結果。
それでも男が多少の安堵と共に穏やかに生活をしていけるのであれば、タキトゥスにはそれで良かった。
加えて言えば、他の村人も似たような考えを持っているのなら、セレスティナの耳にも入っていると思っていいだろう。
彼女は義賊を肯定するような人柄ではないが、何某かの事情を汲み取れば頭ごなしに否定するような人間でもない。
其処に身勝手な理屈ではなく並々ならぬ事情があるのならば、加害者であっても寄り添える優しさを持っている。
無罪放免で放り出す真似はしないだろうが、村人達も納得する処断を下すだろう。
「たった一人の野盗、ね。厄介事にならなきゃいいけど……」
タキトゥスの呟きは風に流され、誰の耳にも届くことなく消え去っていった。
◆ ◆ ◆
アッシュとルドウィークによる種付けは、村人達が驚くほど簡単に終わった。
二頭が繁殖部屋に入ると牝馬達は瞳を潤ませ、気性が荒い馬ですら従順になって、すぐさま発情するほど。
人の眼から見ても均整の取れた馬体と顔立ちは、牝馬の目から見ても本能を刺激するほどの美形であったようだ。
「タキトゥス、遅いぞ」
「いやぁ、済みません。彼等にちょっと息抜きを」
「呆れたな、また種を残してきたのか。まあ、気持ちは分からなくもないが」
生活が苦にならない程度の報酬と村人からの感謝を受け取って馬小屋に戻ってみれば、既にセレスティナが戻ってきていた。
待たせたタキトゥスを咎めるような口調であったが、表情は例えようもなく柔らかい。しかし、二頭を連れて何をしてきたのか察すると、大袈裟に溜息をついた。
セレスティナとて、愛馬にどのような子供が生まれるのかは見てみたい。
だが、だからといって旅の合間に種をばら撒くこともなかろうに、と言わんばかりだ。
そして、種を付けるのならタキトゥス様が私に付けてください♥ とも言っているかのようでもあった。
「それよりも、野盗に関して聞いたか?」
「ええ。どうにも妙な野盗ではありますね」
「ああ。それに領主が不穏分子の一掃を謳っているようだが、この野盗を優先する、とも宣言もしているようだ」
「はあ? それはまた……妙、ですね」
ピンク色の表情は何処へやら、セレスティナの表情が一気に真剣味を帯びる。
彼女が村人から聞いた領主の宣言は、タキトゥスが間抜けな声を上げてしまうほど奇妙なものだった。
たった一人の野盗を討伐するだけなら何の不思議もない。しかし、最初に指定する理由が分からない。
領主としての力を誇示し、新たな犯罪を抑止する意味合いがあるのならば分からないでもないが、それならばもっと大きい脅威を選んで叩き潰した方が、領内の人心に与える影響は大きい。
寧ろ、そんな野盗を寄って集って袋叩きにするような真似をすれば、単なる弱い者苛めにしか映らず、欲望で煮立った頭しか持たない盗賊の類には弱腰にしか映るまい。
不穏分子の一掃を確実に進めていくための足掛かり、と考えられないこともないが、違和感が残るのは確か。
優先順位の狂いは、領主が抱く何らかの思惑を予感させるには十分すぎた。
「とは言え、妙なだけで不正はない。国境から離れて帝国との小競り合いもなく、大きな災害や魔物による大規模な被害もない領だ。一年前の“凶竜事変”にも備えだけで関わってもいない。単純に領主が優先順位を理解していない可能性もある」
「となると、件の野盗に接触するのが一番速そう、かな。野盗を捉えて話を聞けばいい」
「そうだな。大層な理由がなければ領主が優先順位を分かっていないだけど確定する。だが、別の思惑があるのなら……」
セレスティナの表情が硬くなっていく。
民へは優しい彼女であるが、貴族に対してはひたすらに厳しい。
裕福な生活や贅沢三昧程度であれば許すが、果たさなければならない使命を果たさず不正に手を染めようものならば、どのような地位にいる貴族であれ容赦なく糾弾、断罪する。
此度の領主の奇妙な行動に何らかの裏があれば、ただで済ませるつもりはなかろう。
(天気はいいけど、旅は荒れそうだなぁ……)
険しくなっていくセレスティナの横顔を眺めながら抱いたタキトゥスの感想は呑気そのもの。
過酷な戦場を超えてきた経験か、はたまた生まれ持った性質か。
多くの魔物や盗賊の類のみならず、商人や役人の護衛すら打ち倒してきた野盗を相手取るには聊か気概に欠けていたが、彼にとっては過不足のない心持ちだった。
数刻後、タキトゥスの予感は的中する。
しかし、今の彼には知りようがなく、大切な女性を守ることしか考えていない。
二人に待ち受けているのは一つの出会い。
狼の如き凶暴さを宿した少女との遭遇であった。
地の文に擬音はアリ? ナシ?
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全然アリ
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エロだけでならアリ
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擬音はアリだけど、今の擬音はちょっとぉ
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何が何でもナシ、陳腐すぎ
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エロだけでもナシ! 萎える!