※この作品はR-18です。

ベッドヤクザな遍歴騎士と誘い受けマゾメス騎士姫のハーレム構築ちんチン珍道中   作:HK416

11 / 50
オレっ娘獣人との出会い

 

 

 

 

 

「さて、件の野盗が出るのは距離からするとこの辺りのはずだが……」

「被害の出ている時間帯は昼夜問わずのようですが、狙うのなら夜が基本。恐らく食いついてくるでしょう」

 

 

 タキトゥスとセレスティナは農村を出ると、オルグレン領で二番目に大きいフォルスの街へと続く街道を愛馬を走らせていた。

 

 日は暮れ、天上高くに青白い満月が輝き、小さな星々が負けじと瞬く夜間。

 広く長い平原と街道を人の目でも見通せるほどに月明りが照らす光景は、いっそ神秘的でさえあった。

 しかし、夜闇の不気味さがなくなったわけではない。

 月明りの生む影が、平原の其処彼処にぽつぽつと点在する子供が隠れられるほど背が高い草むらが揺れる度に、不安を煽ってくる。

 

 その中をタキトゥスは馬上で松明を片手で掲げ、アッシュの手綱を握っていた。

 芦毛の馬体は月明りでよく目立ち、更なる光源を握っていれば襲ってくれと言っているようなもの。

 それでも、件の野盗を捕まえることが目的である以上、今回に限っては正しい行為である。

 

 松明の明かりは二人の身形も闇の中に知らしめる。

 騎士として正式な姿ではないものの、仕立ての良い服と武装は懐具合を示しているようなもの。

 タキトゥスなど騎士団から支給される服と鎧、武器をそのまま使っているため、セレスティナの見立ての入った今の方が立派に見えた。

 

 傍目から見れば、貴族の子女とその護衛にしか見えない。

 その上、夜闇に紛れもせずに移動をするなど、世間知らずと経験不足を喧伝しているも同然。

 人数少なく、金を持ち、世の道理を知らない。野盗側にしてみれば、これ以上ない鴨となる。

 

 

「む……ルドウィークの様子がおかしいな」

「気配がする。いますね」

「釣れた、か……?」

 

 

 成果の時は、思いのほか早く訪れた。

 

 セレスティナの駆るルドウィークの落ち着きがなくなっていた。

 耳を立て様々な方向へ向け、時折前ではなく左へ右へと視線を飛ばし、呼吸も荒い。

 走ることに集中できておらず、明らかに姿の見えない何者かを警戒している様子。

 

 タキトゥスとアッシュも同時に何者かの存在を捉えていた。

 まだ年若いルドウィークに比べ、戦場を超えてきたアッシュは落ち着いてこそいたが耳を絞り、目付きが鋭く尖っている。

 相棒のタキトゥスは相変わらず緊張感は希薄であったが、彼は戦場でも常にこんなものだった。

 

 

「――う、くぅっ!」

「御無事ですか!?」

 

 

 その時、ルドウィークが嘶きながら急激に脚を止め、そのまま後ろ脚のみで立ち上がった。

 馬上のセレスティナは振り落とされる寸前で手綱に掴まり、鐙にかけた爪先に力を込めて何とか堪える。

 

 その姿を見たタキトゥスはアッシュの速度を落とし、旋回させてセレスティナの下へと向かう。

 松明を投げ捨てるほど慌ててアッシュから飛び降りると、セレスティナを振り落とそうとしているルドウィークのはみを掴んで落ち着かせにかかった。

 

 

(お上手で)

(ふふっ、貴様ほどではないさ)

 

 

 無論、全ては野盗を誘う演技に過ぎなかった。

 ルドウィークが立ち上がる直前、セレスティナは手綱を思い切り引いていた。

 馬に止まるよう指示する動作であるが、ルドウィークは鞍上の意図を正しく把握し、制御を失ったように見せかけていたに過ぎない。

 事実、タキトゥスがはみを掴んだ瞬間、ルドウィークは落ち着かせるよりも早く、躍動を緩やかに収めていった。

 

 事前の打ち合わせにない芝居にタキトゥスは本気で冷や汗を掻いたが、セレスティナとルドウィークは何処吹く風であった。

 

 

(…………馬の方には気付かれてるが、あの二人にはまだ気づかれてねえな。好機だ)

 

 

 その演技に釣り出された影が一つ。

 暫く前に平原を進む光源を見つけていた影は、既に二人へすぐ傍のところまで来ていた。

 

 馬に追いつくほどの速度で音もなく、草むらを隠れ蓑に息を潜めて。

 とても人間業ではない、肉食獣の如き所業。

 惜しむらくは、これから襲い掛かろうとしている相手が、知恵で一枚上を行っていることか。

 

 影は草むらの中で得物を片手に全身を撓(たわ)ませる。

 その様は獣が獲物に襲い掛かる直前の姿に近く、力みを解き放つと大きく跳躍した。

 

 月を背に飛び上がる姿を、タキトゥスもセレスティナも捉えていない。

 狩りの成功を確信した影は、ほくそ笑みながら得物をタキトゥスに向けて振り下ろし――――

 

 

「今だ、やれアッシュ」

「…………んなぁっ?!」

 

 

 視線を向けずとも気配を捉えていたタキトゥスの指示に従ったアッシュの脚が跳ね上がる。

 突如として攻めから守りに転じねばならなくなった影は愕然の声を上げたが、驚異的な反射神経を発揮した。

 天空へと伸びたアッシュの後ろ脚に付けられた蹄鉄と影の得物が激突し、激しい火花と耳障りな鉄の旋律を奏でる。

 

 獣の如き影と言えども、場合よっては肉食獣ですら殺せる馬の蹴りを空中で喰らっては如何ともし難い。

 

 激突の瞬間、咄嗟に得物で後ろを受け止めて直撃を避けたが、強制的に進行方向を変えられ、影は背中から街道に投げ出される。

 それでも、一度、二度と地面を跳ねながら、すぐさま体勢を立て直したのは、流石と言う他ない。

 

 

「当たりだな。件の野盗のようだ」

「ですね。小さい身体に身の丈以上の大剣。聞いていた通りだ。あんな身体であんな剣振り回せるのか、凄いな」

「…………クソがッ! 狙ってたのはオレの方じゃなくてテメェらの方だったってわけかよ!」

「思ってたよりも若そうだ。にしても、口悪いなぁ……」

 

 

 影――もとい野盗はボロボロの外套を纏っており、露わになっているのは犬歯の伸びる口元だけ。

 しかし、声の高さと張りから、まだ年若いことだけは伝わってくるが、性別までは分からない。

 

 身長は立ち上がってもタキトゥスの鳩尾まで届くか程度。

 反して握った得物は幅こそ狭いが酷く長い。俗にツーハンデットソード、或いはグレートソードと呼ばれる類のものであり、柄まで含めれば大柄なタキトゥスの身長すら超えている。

 見るからに不釣り合い(アンバランス)でありながら、野盗は片手で易々肩に担いだ。見た目からは想像できないほどの膂力の持ち主であった。

 

 

「抵抗するな、大人しく縛につけば悪いようにしないと約束しよう」

「ハッ! 誰がテメェらみたいな偉そうな連中の言うことなんざ聞くもんか!」

「偉そうじゃなくて実際偉いんだよなぁ……」

「大体、そんな言葉を信じるわけねえだろうが! そんな口だけの保証に何の意味があるってんだ!」

「それはそう。間違ってない。間違ってないなぁ……」

「タキトゥス! 貴様、どちらの味方だ!」

「やる気あんのかテメェ!!」

「す、すみません……」

 

 

 セレスティナの言葉にも、野盗の言葉にも思ったことを思ったまま口にしたタキトゥスは両者から叱責を受ける。

 すぐに謝る姿は情けないの一言であったが、目的の野盗を前にしても自然体であったのは胆力があると言ってもよかった。

 

 タキトゥスはややしょぼくれながらも、オークの長から奪った大剣を背中から抜き放つ。

 例えセレスティナにどう思われようが、彼女の味方であることに代わりはない。ただ、役割を果たすのみであった。

 

 

「上等だ、戦(や)ってやるよ――――!」

 

 

 大した口上も主張もなく、構えることで自らの立場を明確にしたタキトゥスに、野盗は獰猛な笑みを浮かべる。

 

 言うが早いか、野盗は地を蹴った。

 剣を担いだままとは思えない地を這うような獣の疾駆。

 凄まじい勢いで十歩は開いていた間合いを瞬きの合間に詰めるや、大きく身体を旋回させる。

 

 迂闊にも戦いの最中、敵に背を向け、視線を外す愚行に見えたが、真実は違う。

 遠心力を利用して振り抜かれる一撃は、全身鎧(フルプレートアーマー)の上から胴を両断できるほどの速度を威力を秘めていた。

 

 

(できる……! それに下から襲いくる剣戟とは……!)

(かなり速いし、重い。我流とはいえ剣技そのものが厄介だな、これは。並の傭兵やお抱え騎士じゃ相手にならないわけだ)

 

 

 初撃を大剣で受け流したタキトゥス、馬上から見守っていたセレスティナはほぼ同時に野盗の力量を把握していた。

 

 剣技の型らしきものが見受けられず、何者かの指導の伺えない剣閃は、そのまま野盗の生まれ持った才気を示している。

 全てを総合した強さという点はまだしも、これほどの才能を有する者は精強で知られる戦兵騎士の中でもほんの一握り。

 

 受け流されれば、二撃目を更なる遠心力を乗せて放つ。

 止められれば、即座に反転して逆旋回から強襲を仕掛ける。

 

 言葉にすれば実に単純な武技。

 されど、大きすぎる剣に振り回される寸前のところで完全に制御下に置けているのは奇跡に等しい。

 常人では実現不可能の神業を呼吸と同様に成立させ続ける野盗の身体能力も技量も凄まじいの一言であり、複数の獣を相手取り、爪と牙で波状攻撃を受けているようなものだった。

 

 それら全てが、足元から跳ね上がってくる。

 剣技というものは、基本的に下方からの攻撃を想定していない。

 あくまでも二本足で立った相手との戦いを優位に進めるために生み出されたものだからだ。

 見慣れぬ我流の剣技に加えて、卓越した身体能力と技量。これに対応しきれる者はそうはいまい。

 

 

(何だ、何だコイツはっ! 意味が分からねえ! オレの見立てじゃ後ろの女の方が絶対に強い! なのに、なんで崩せねえ!!)

 

 

 しかし、野盗は一方的に攻撃しながらも、徐々に焦りを見せ始めた。

 

 焦りの原因は、言うまでもなくタキトゥスであった。

 腰を落とし、肉厚の大剣を両手で真っすぐと構えただけであったが、野盗による猛攻の悉くをいなし、弾き、受け、紙一重で躱す。

 

 野盗が戦ってきた相手に、これほどまでにもった者など皆無に等しい。

 大抵は初撃で終わり、そうでなくとも連撃を叩き込めば地に沈む。

 なのに、目の前のとぼけた表情をしたままの男を突き崩せない。これに焦らぬ者はいないだろう。

 

 

(まるで獣。でも相手にするのは慣れっ子だからな…………と言っても、このままじゃ拙い、拙いよなぁ)

(……しめた!)

 

 

 タキトゥスが対応できていた理由は様々だが、彼が人並み以上に獣と戦うことに慣れていたのは事実。

 

 若くして流浪の身になった時も。

 ある領地で平時は農作業に従事し、有事には戦う兵士であった時も。

 果ては王国騎士に叙任された後ですら。

 

 野生の獣や四足歩行の魔物とは、飽きるほど戦ってきた。

 ともすれば、戦場で同じ人間や人型の魔物以上に、命を狙われた回数は多いかもしれない。

 獣の如き剣技であれば、対処方法は全く同じでなくとも獣のそれに似る。

 

 タキトゥスと野盗と間に広がる力量差以前に、戦闘経験に差があり過ぎた。

 

 しかし、防御に専念することで戦いを優位に進めていたタキトゥスは顔を顰めた

 同時に、攻撃に専念しながらも戦いを劣勢に追い込まれた野盗は露骨に嘲笑った。

 

 両者が異なる反応を見せながらも、共に捉えたのは剣の悲鳴。鉄が軋み、刀身が限界を迎える音だった。

 

 

「ほーら、やっぱ折れたぁーーーーーーーー!!」

「ハッ! 貰ったぁ! これで仕舞いだ――!!」

 

 

 グラスにワインを注ぎ終えるよりも少ない時の間、交わした剣閃は数十を超える。

 その中、最初に限界を迎えたのはタキトゥスでも野盗でもなく、オークの長から奪った大剣。

 元々は哀れな犠牲者から奪い取ったであろう使い古しの大剣は、タキトゥスが手に取った時点で刃毀れも目立っていた。

 

 奪うことしか知らず、手入れなどという概念を持たぬオーク。

 長年の戦場経験から一つの武器に拘らず、どうせ壊れるのだから使えて殺せればそれでいいや、と結論したタキトゥス。

 遣い手として余りにも武器泣かせの間を渡り歩いた大剣が、刀身の半ばから折れてしまうのは自明の理。

 仮に大剣が名工の手によるものであったとしても、この結末を迎えていたに違いない。

 

 最大の好機を得た野盗は、一際大きく剣を振るう。

 殺すつもりだけはないのか、刃を立てておらず、剣の腹で無防備な胴を打ち抜く腹積もり。

 

 

「――――は?」

 

 

 だが、その機会は永遠に訪れなかった。

 

 タキトゥスは自らに喰らいつこうと咢(あぎと)を開いて迫る獣と同じように、振り抜かれんとした刀身を片脚で踏み付けたのである。

 

 ずん、と腹の底にまで響く重苦しい音と共に、野盗の剣が刀身の半ばまで地面に埋まる。

 実行する前から押しても引いても動かないと察せざるを得ない剣から伝わる感触に、野盗の思考は完全に停止した。

 

 剣を手放して距離を取るという至極単純な行動すら取れるまま、我を見下ろす青年の姿を反射的に見上げる。

 

 

(あ、オレ、死――――)

 

 

 相も変わらずとぼけた表情のまま折れた大剣を振り上げる男の姿を見た。

 

 戦いに対する高揚は絶無。確定にした勝ちに歓喜さえしていない。

 恐怖も、悲哀も、憎悪もなければ憤怒もない。あらゆる感情の色がないままに、ただ目的意識のみで支えられた強烈な眼光。

 その瞳に明確な死を予感した野盗は、これまで聞いたことの無い音が頭の中で響くのを耳にして意識を手放した。 

 

 

「タキトゥス、殺してはいないだろうな」

「殺してなんていませんよ。殺すのが目的じゃないですし、村人との約束もありますので」

 

 

 ルドウィークから降りたセレスティナは、余りの勢いで振り下ろされた一撃に顔を引き攣らせながら近づいてくる。 

 

 タキトゥスもまた刃を立てず、折れた刀身の腹で野盗の首を叩くに留めた。

 殺そうと思えば殺せたが、野盗から話を聞くのが目的ならばそれで十分。

 目的を忘れたわけではなく、野盗の身体能力からして、それだけの勢いがなければ意識を刈り取れないと判断しただけであった。

 

 

「しかし、驚いた。小柄な身体で、こんな剣を振るうとは」

「そうでもないですよ。どうも、人間じゃないみたいだ」

「なに……?」

「多分、亜人――――それも肉食獣の獣人だと思います」

 

 

 意識を失った野盗の傍らに片膝を付いたセレスティナは、野盗の口元へと掌を翳す。

 伝わる暖かな吐息は生きている証左であり、彼女は胸を撫で下したが、タキトゥスの言葉に振り返った。

 その先では折れた大剣を見ながら、どうしたものかと悩んでいる青年の姿があるだけ。

 目的を達成したため既に野盗から興味を失っているようで、使い物にならない大剣を捨てると、野盗の使っていた剣を地面から抜きにかかる。どうやら、次の得物は決まったらしい。

 

 セレスティナは戦いに関しては意外な乾いているタキトゥスを知っているため、驚く様子もなく視線を野盗に戻し、顔を覆う外套を捲る。 

 

 

「この耳は……狼人族か。それに少女か」

「へぇ、犬人族なら見たことありますけど、珍しいな」

 

 

 外套から露わになったのは、まだあどけなさの残る少女の顔であった。

 

 正確な年齢までは分からないが、少なく見積もれば十代の後半、多く見積もって二十代に手をかけたばかりだろう。

 雪と見紛うほど白い髪は癖のせいでウェーブがかかっていたものの、手入れはされておらずに伸びるに任せているのは一目で分かる。

 

 外套の隙間から見え隠れしている身体は、襤褸切れで胸と腰回りが隠されているだけ。

 そして、胸と尻が極端に大きい。数値だけで言えばセレスティナが上だろうが、小柄なおかげでより欲情をそそる身体つき。

 

 何よりも特徴的なのは、頭頂部から伸びる耳と腰当たりから伸びる尻尾。

 亜人の中でも獣の特徴の混じった種族を、俗に獣人と呼ぶ。

 野盗――もとい少女は、その中でも狼の特徴と能力を生まれ持つ狼人族の一人であった。

 

 

 

 

 

地の文に擬音はアリ? ナシ?

  • 全然アリ
  • エロだけでならアリ
  • 擬音はアリだけど、今の擬音はちょっとぉ
  • 何が何でもナシ、陳腐すぎ
  • エロだけでもナシ! 萎える!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。