ベッドヤクザな遍歴騎士と誘い受けマゾメス騎士姫のハーレム構築ちんチン珍道中 作:HK416
フォルスの街を訪れてから早一週間。滞在は思いのほか長引いていた。
タキトゥスにセレスティナとラインハルトが、今後についてどのようなやり取りをしたのか知る由もないが、出発の準備が整ってもなお動かない理由についてはおおよそ見当はついている。
恐らく、ラインハルトが多大な警戒心を抱いているのだろう。
ヴァンハイム王国で起きる反乱は民によるものではなく、貴族の決起によるものが大半。
その理由は先王の治世と現国王の治世との差にある。
先王は優れた者を取り立て、劣った者を僻地へと追いやる典型的な能力主義者であり、相争い勝利して己を高めることを良しとした。
結果、国土は広がり、様々な技術は発展したものの、競争を良しとした故に家臣や貴族の利己心を高め、権利を拡大させて増長を招き、多くの派閥を生み出してしまう。
度重なる戦争、貴族同士の内乱は勿論のこと、拡大した権利によって引き起こる過剰なまでの搾取は民を大きく疲弊させた。
先王が没した後、即位したマクシミリアンはヴァンハイムの立て直しを図った。
それは奴隷の解放のみならず、分裂した派閥の統一、貴族の抑えつけ、他国との協調、ギルドタリアへの牽制と多岐に渡る。
とある理由から一切の政治手腕を持たなかったマクシミリアンがこれだけの事業を成し遂げられたのは、彼を擁立した二人の家臣の存在が大きい。
現在の武官のトップにして王国騎士の頂点に立つ総騎士長ヴォルフ・マイヤー。文官のトップにして国政と法を司る宰相クロミア・ローエンタール。
当時は地位もまだまだだったにも拘わらず、国を思った粉骨砕身の働きは聞くにも語るにも涙が必要となるほどで、実質的に現在のヴァンハイムが在るのは二人のお陰でもあった。
そうした国の健全化に伴い、貴族は既得権益を次々に剥奪。
無論、貴族とて先王の時代に勝ち取った権利だとして抗ったものの、ヴォルフの武とクロミアの智の前に膝を折った。
しかし、未だに納得していない貴族は多く、反乱の火種が国の内部でチラホラと残っている状態である。
(貴族連中と帝国に手を結ばれたら厄介なんてもんじゃない。既に繋がっているにせよ、これから繋がるかもしれないにせよ、ラインハルト様としても詳らかにしておきたいんだろうな、色々と)
燻る火種同士で結託されぬように王国の各地に分散させ、なおかつ周囲に信頼のおける者を配置。
ギルドタリアとの国境付近の領地は忠誠心の厚い貴族や騎士団を置くことで、内通や買収を阻止。
少なくともマクシミリアン即位から現在までの間、内外の脅威が呼応して同時に相手取ることはなかった
そうして危うく保たれていた均衡を一気に瓦解する可能性が、此処に来て急浮上してきたのである。
ラインハルトとしても、ヴォルフの後を継いで総騎士長となると目される第二王子のベオウルフとしても、無論セレスティナとしても、何としても阻止しなければならない事案だ。
既に信頼の厚い騎士か密偵を動かし、オルグレン伯爵の周辺を探っているに違いない。
フォルス滞在が長引いているのはそうした理由ではないか、とタキトゥスは渦中に佇みながらも他人事のようにのほほんとしていた。
彼にとって目下最大の関心事と言えば――――
「はははっ! そら行けーーーー!」
「ぶもっ、ぶもも!」
――――此処一週間で随分と明るくなったカルラについてだった。
今はカルラに相棒のアッシュを預け、タキトゥスはルドウィークの背に跨って、街の外に来ていた。
見渡す限りの平原は心地良い春先の風が吹き、青草の先端を撫で回して香りを運ぶ。空は雲の合間に太陽が輝いている。馬を乗り回すには絶好の日和であった。
馬は広い草原で暮らす動物。
人の手によって交配され、家畜となってもなお血と種の縛りには抗えない。
狭い馬房の中に押し込まれていれば精神的にストレスが溜まり、心肺と筋肉は凄まじい勢いで劣化していく。
特に軍馬は馬車馬や荷馬と異なり、高い身体能力と操縦性が必須。毎日運動させてやらねば、瞬く間に駄馬の烙印を押されてしまう。
そのため、乗り役をカルラに任せたのであった。
賢い馬の知能は子供並と言われているが、アッシュもルドウィークもそれ以上。
柵のないところで離しても必ず自分の意思でタキトゥスの下に戻ってくる。
本当は乗り役など必要なく、平原の何処かに座って二頭の気が済むまで待っているだけでも構わないのだが、珍しくカルラが自ら提案してきた故に任せてみた。
「うーん、筋がいい。乗せてあげてもいいんじゃない?」
「……ふしゅー」
「まだダメかぁ」
彼女の騎乗を目にしたタキトゥスは跨るルドウィークに声を掛けたが、否定のつもりか、荒々しく鼻を鳴らす。
認めた者、気に入った者でなければ、自らの背に乗せない彼らしい反応であった。
カルラはこれまで馬に乗ったことなどなかったようだが、なかなかのものだ。
軽く指導はしたものの、アッシュに負担をかけない柔らかい乗り方は天性のバランス感覚によるものか。
身の丈を上回る大剣を身体ごと旋回させながら、制御を手放さない剣技を考えれば、この程度は当然であったかもしれない。
加えて、アッシュは気性も穏やかで、無謀な指示は信頼しているタキトゥスのものでなければ絶対に従わない知性を持つ。
軍馬としての経験もあり、素人が騎乗を学ぶには、これ以上ない馬であった。
「カルラさーん、そろそろ戻りますよぉー!」
「もうちょい! もうちょっとだけ! コイツも走りたがってっから!」
「…………ふーっ!」
「ありゃりゃ、行っちゃった。しょうがない、もうちょっと待ってようか。ほら、イライラしないでニンジン食べなぁ?」
既に調教の範囲を超えて運動を終えたルドウィークから降り、タキトゥスはカルラに声を掛けた。
しかし、カルラとアッシュは楽しくてしょうがないと聞く耳を持たない。普段のむすっとした不機嫌な態度すら見せず、白い歯を見せて笑っている。
その様子に、走ることや運動そのものを仕事と捉えている節のあるルドウィークは、前肢で地面を掻き込むような仕草を見せた。
前掻きと呼ばれる馬が何らかの欲求や不満を伝える本能的な動作。状況を踏まえるに、彼はさっさと馬房に戻りたいらしい。
そんなルドウィークに努力の報酬を与えて宥めながら、タキトゥスもまた嬉しそうに笑みを浮かべた。
この一週間、彼女が宿の部屋から出たのは食事と二頭の世話の間だけ。
アッシュには積極的に世話をし、ルドウィークの気難しさに文句を言いながらも手を動かす。
物言わぬ二頭と接する機会は傷ついた少女にはよく効いたのか、心を開き始めていた。
タキトゥスとセレスティナへの態度は相変わらず。頑なな姿勢は崩さず、何をするにしても否定から入る。
それでも二頭へ心を開き始めているのならば、一歩ずつであっても信頼を勝ち取ることで心を開いてくれると証明しているようなもの。
自分以外を信じるという行為そのものを、忘れてしまったわけではない。未だきっかけは掴めていないが焦る必要はないだろう。
奴隷売買には協力的。
根底にあるのが自らを奴隷に貶めた者への怒りか、弱者を弄ぶ者への嫌悪か、奴隷という響きそのものに対する反発なのかは定かではないが、聞けばすんなりと答えてくれる。
尤も、カルラもまだまだ自らの置かれた状況を飲み込めたわけではないために何から話したものか分からず、二人の側から聞き出さねばなかったが。
この分なら、想像していたよりも早く――――
「……妙に冷たくて湿った風だなぁ」
「ぶるる……」
「雲も厚くなってきたし、今日の夜は降りそうだ。そう不機嫌になるなよ。ちゃんと馬衣を着せて、暖かくしてやるから」
其処まで考えたタキトゥスは、草原を吹き抜けた風の一波に思考を中断する。
春先に身震いしたくなるほどの肌を刺す冷気と肌に張り付くような湿り気を帯びた風。
気候に関する知識が乏しいタキトゥスには“どうしてそうなるのか”は与り知らぬところであったが、そうした風が吹いた後は必ず雨が降ることを経験上は知っていた。
ルドウィークと共に見上げた空は、まだ白く薄い雲が点在するのみだが、風の吹いてきた西の空には厚い雲が浮かんでいる。
時期に、あの雲は白から灰へと厚みと色を変え、立派な雨雲となるだろう。
雨に晒されることになるかもしれず、身体を濡らしたくないルドウィークは途端に機嫌を悪くしたが、その首筋を撫でて落ち着かせる。
降るのは宿に戻り、夕食を終えた頃。何も心配することなどあろうはずもないが、タキトゥスは言葉にできない何か不安のようなものを覚えたことだけは確かだった。
◆ ◆ ◆
「………………はあ」
夜、フォルスで一番高価な宿屋の一室でカルラはインナー姿のままベッドに身体を投げ出した。
暖かな湯に浸かり、一日の疲れを洗い流したはずの彼女の心境は、“慣れない”の一言に尽きる。
肉体的には十分に満たされていた。
嗅いだことのない匂いと刺激的な味の食事は、表現こそできないものの美味いことだけは確か。
野生の獣や危険な魔物、悪意ある人間を警戒する必要はなく、深く眠ることもできる。
野盗をしていた頃は食うにも困り果てる有り様で、肉体が此処まで活力に溢れているのは久方振りだった。
反面、精神的には充実と摩耗が半々といったところ。
安全な宿では夜闇に潜む外敵を心配することはないが、用途は分からないが豪華な調度品に囲まれては壊さぬように気を遣う。
魔法のお陰で外気の熱さにも汗を流し、寒さに震える必要もないが、服も毛布も触り心地が良過ぎて逆に落ち着かない。
アッシュの穏やかさとルドウィークの生意気さには思わず笑みを浮かべてしまうが、人の多い環境は不快感が募る。
何よりも――――
「カルラ、また髪も乾かさずに。全く、こっちに来なさい」
「……いいだろ、別に。オレの髪なんだ。お前には関係ねえだろ」
「そういうものではありません。ほら、早く。はーやーくー」
「…………チッ、何なんだよ」
――――相部屋となったセレスティナのギャップと強引さには辟易とする。
先に湯浴みをしたセレスティナは白いナイトガウンを纏って、鏡付きのドレッサーの前に座って髪を梳かしていた。
浴室から戻ってくるなり、髪の手入れもせずにベッドに倒れ込む様は、彼女にしてみれば見過ごせない愚行であったらしい。
不機嫌な表情を崩さずに動かずいたカルラであったが、いつまで経っても手招きは止まらず、やがて根負けしてベッドから立ち上がる。
昼に見せるお高く止まった騎士としての顔、そして周囲に人がいない時にしか見せない姫として女としての顔。
初めて見た時には余りの落差に別の人間かと思ったほどで、未だに疑っているほどだ。
更に言えば、こんな親しげに接してくる女がヴァンハイムの第三王女など、駄法螺と言われた方がまだ現実味がある。
それにも関わらず、強引さは据え置き。カルラでなくとも辟易としよう。
「おらよ、これでいいか。もう好きにしろよ」
「では、お言葉に甘えて。うふふふっ♪」
初日からずっとこの調子だ。
抵抗しようにも、何時の間にやら言い包められるか、酷い時には縛り上げられて好き放題にされてしまう。
ならば、いっそのこと好きにやらせた方が疲れずに済むと諦めていた。
手招きに誘われるまま、カルラはセレスティナとドレッサーの間に改めて置かれた円筒型の椅子に腰を下ろす。
より優れた者、強き者に従うのは狼人族の本能にして掟。
少なくとも強さならばまだしも、群れを率いる者としてセレスティナは能力的にも性格的にも自身以上に長けているのは短い付き合いからも明らか。カルラとしても認めざるを得ない事実だ。
過去の経験から地位の高い者には従いたくはなかったが、女として扱われることには違和感が凄まじい。
男勝りな性格は元々で、生まれ育った村でも狩りや剣の腕を買われ、大人の男に混じって働いた。過去と現在の差異はチグハグで、気疲れしてしまう。
「…………なんで」
「……? どうかしましたか?」
美しい白い濡れ髪をタオルで優しく拭いて乾かした後に、ヘアブラシで梳かしていく。
絡んだ髪を解し、毛先を整えるだけでなく、艶も出る。健やかで綺麗な髪を保つには丁寧なケアが必要だ。
その中で、カルラはポツリと呟いていた。
蚊が鳴くような声をセレスティナは聞き漏らさずに首を傾げる。
なんでも何もない。
協力者や虐げられた民草である以前に、セレスティナの基準ではカルラの髪は美しい。
やや硬く癖のある髪だが、老人のような草臥れて燃え尽きてしまったかのような白ではなく、降り積もったばかりの新雪を連想させる若々しく透き通った白さは、目にする機会自体が少ない。
これが痛み、荒れていくのは同じ女として忍びなく、もったいない気がしてならないだけだ。
「別に、こんなことする……必要ないだろ。オレは単なる協力者。奴隷の取引を潰すのに必要な情報さえ貰えりゃ構わねえはずだ。なんで、世話焼くんだよ」
「……そうね」
理解できない。
ただそれだけで、心を持つ生き物は疑念を募らせ、存在しない裏側を勝手に想像する。
セレスティナにせよ、タキトゥスにせよ、カルラにとっては正にそれだ。
騎士が民草の守り手としてそういう在るものなのかもしれないが、帝国育ちのカルラには全く理解の外。
帝国の支配者と軍人は常に横柄で横暴。奴隷は勿論のこと、民草ですら道具か何かと考えているかのようで、思いを汲むなど決してしない。
税の徴収も、相手の生活など考えず力尽く。反抗の言葉を吐こうものなら、村全体に
しかし、不審の言葉は全て裏返し。
心に浮かび始めた感情を否定し、これ以上自らが傷つけずに済むような防衛本能であった。
カルラの心境をほぼ正確に見抜いたセレスティナは慎重に言葉を選びながらも、心からの本音を口にすると決心する。
どのような結果になるにせよ、彼女との関係性は此処が分水嶺だと悟ったからだった。
「最初に言った通り、私は貴女を気に入っています。どのような状況に陥っても、弱者を慮る姿勢を決して忘れなかった強い心を」
「……クズどもと一緒になりたくなかっただけだ。守ってたわけでも、考えてたわけでもねえよ」
「自分のためと? それでも構わないませんよ。自尊心はどんな時でも必要です。そして、結果として誰かが救われているのなら尚のこと」
「………………」
「カルラ、心を持つ者は弱く醜い。それは否定できません。けれど、汚泥の中でも失われないものもあります。それが利他利己を問わず、私には等しく光に映る。幻のように取るに足らない小さな光でも、きっと救える何かがあると信じています」
口にした言葉はセレスティナにとって、現時点での結論であった。
彼女とて、騎士としても王女としても、様々なものを見てきた。
本来の役割を忘れ、欲望を満たすだけの貴族。他者の尊重を忘れ、暴走する民草。生の苦しさ故に自ら罪を犯す者。種族の違いで優劣を決める者。名前のない誰かによる、心無い誹謗と中傷。
全ては心の弱さ故。
それでもなお、美醜に関わらず全ての行為は心を持たねば生まれず、弱さも醜さも心あるが故。差異や好みはあったとしても、全て尊きものと断じている。
どのような聖人とて、不意に罪を犯すこともある。逆にどのような悪人とて、不意に善行を為すこともあるのはそのため。
ならば、心を持つ者は生きてさえいれば、救える何かがあるだろう、と何時ものように微笑んだ。
セレスティナの思いがカルラにどれほど伝わったのか。
俯いた顔からは何一つ伺い知れないが、普段のように噛みついてくることもなく、無言のまま聞き入っていた。
「それから、こんなことを言ってもいいか分かりませんが……」
「何だよ……?」
「私は家族の中で末娘でしたから。カルラは何だか、妹でもいたらこんなものなのか、と思ってしまって」
其処まで言って、はにかみながらセレスティナは微笑んだ。
妹が欲しかった、という訳でもない。
両親から無謬の愛情を注がれ、兄二人からは常に尊重され、姉二人からは常に理解を得られていた。
家族の仲は良好で、愛情を疑ったことなど一度もなく、不足などあるはずもない。ただ、それでも考えてしまっただけだ。
小生意気なカルラの態度は勿論のこと、やや強引かつ理詰めで責めれば素直でないながらも従う姿は、過去の自分を連想させた。
兄や姉はこんな風に自分を見ていたのか、と思うと、自らの受けてきたものを注いでやりたくなってしまう。
カルラが望んでいるわけでもない勝手な心の動きは、迷惑でさえあったかもしれない。
決して悪意があるわけではなかったが――――
「…………う」
「……カルラ?」
「違う……違う違う違う違う! オレはお前の家族でも、妹でもねえ!!!」
――――こと、カルラにとっては踏み込んではならぬ領域であった。
椅子を跳ね飛ばして立ち上がり、感情の赴くままに激するカルラ。
セレスティナは突然の変化に、目を白黒させてはいたが落ち着いていた。
「オレの家族は、お父さんとお母さんだけだ! じっちゃんもばっちゃんも! 村の皆だって、家族なんかじゃなかった!!」
「カルラ、そのようなことを言うものでは……」
「触るなッ!!」
「……っ!」
「――あっ」
まるで子供が駄々を捏ねるような姿は、カルラの悲鳴そのものだった。
彼女にとって触れてはならないものに触れてしまった、と悟ったセレスティナは僅かでも落ち着かせようと肩に手をかけ、鋭い痛みが奔った。
ナイトガウンの裾が切り裂かれ、真っ赤な血が布地を染め上げるだけで飽き足らず、床にまで滴っている。
反射的に肩へと置かれた腕を振り払った爪が、前腕を深く切り裂いてしまったと悟ったのは二人同時。
セレスティナは切り裂かれた腕の脇に、逆の手を差し込んで締め付け、咄嗟に止血していた。
痛みに顔を顰めることさえしなかったのは、これ以上カルラを追い詰める真似をしたくなかったからだ。
カルラはぐちゃぐちゃになった心境が、泣きそうな表情として顔に現れていた。
「……~~~~~~~~~~~~~っ!!」
「待って! 待ちなさい、カルラッ!!」
言葉にならない心の悲鳴を挙げながら、カルラは逃げ出していた。
愛用してきた大剣を掴み、そのまま窓を破って雨の降りしきるフォルスの闇へと消えていく。
借りた部屋は二階の角部屋であったが、狼人族の身体能力であれば怪我さえしまい。
それは即ち、追い掛けねば貴重な情報源を逃すことであると同時に、傷ついた少女を放置することを意味していた。
「失礼! 物音が――――セレスティナ様!」
「タキトゥス様……」
窓の割れる音を聞いたのだろう。
隣の部屋を借りていたタキトゥスは剣を片手に扉を蹴破る勢いで入ってきた。
部屋の中で血を流したまま立っているセレスティナの姿を目にすると、戦時でさえとぼけた表情を変化させない彼が蒼褪めて駆け寄った。
「一体、何が……!」
「カルラが、外に。私は大事ありません。店主には私から説明しますから、タキトゥス様は彼女を」
「いや、しかし……」
「いいから、早く!」
「…………承知しました。外套をお借りしますね。必ず連れ戻しますので、御安心を」
セレスティナの切なる願いを前にしても、タキトゥスは渋った。
彼の中で優先順位はカルラではなく、セレスティナの御身に他ならない。
しかし、叱責にも似た叫びに、決断は早かった。
コートハンガーに掛けられていた純白の外套を手にすると、そのまま破れた窓から身を躍らせる。
その背中を信頼と共に見送り、セレスティナは祈りを捧げた。
「タキトゥス様、どうかカルラを……」
地の文に擬音はアリ? ナシ?
-
全然アリ
-
エロだけでならアリ
-
擬音はアリだけど、今の擬音はちょっとぉ
-
何が何でもナシ、陳腐すぎ
-
エロだけでもナシ! 萎える!