ベッドヤクザな遍歴騎士と誘い受けマゾメス騎士姫のハーレム構築ちんチン珍道中 作:HK416
「………………」
宿屋から飛び出したカルラは、馬小屋に居た。
明確な目的のある撤退ではなく、ただ感情に任せた敗残兵のような逃避の末に辿り着いた場所に、彼女は自嘲する。
アッシュとルドウィークの馬房のすぐ外。
通路と馬房を隔てる壁に背中を預け、膝を抱えて座り込む。
月明りもなく、己の手さえよく見通せない闇の中、馬の息遣いと雨が屋根を叩く音のみが響く。
夜の雨は冷たく、インナーだけでは震えが止まらなくなる。
インナーも雨を吸い、肌に張り付いて身体の熱を余計に奪っているようだ。
雨足は強くはならないが、弱くもならない。この分では、朝方まで止むことはないだろう。
「…………やめろ、やめろって」
何をやっているのか。
自らの愚行、そしてさっさと街を離れてしまえばいいだろうに、縋り付くように馬小屋に逃げ込んだカルラは自らに問う。
しかし、そう問うたのは彼女だけではない。
雨の夜に馬小屋に入り込んできた客人の気配を察したアッシュとルドウィークが顔を出していた。
馬は人の行動や表情から感情を読み取れる生き物。
何か尋常ではない様子に、カルラを気に入っているアッシュばかりでなく、まだ認めていないルドウィークでさえ彼女の頭に鼻先を寄せて覗き込んでいた。
心配されているのは分かったが、今はその気遣いさえ鬱陶しい。近づいてきた鼻先を手で払い除ける。
どうかそっとしておいて欲しい。どうか放って置いて欲しい。どうか居ないものとして扱って欲しい――――
「ふっ……はは……」
其処まで考えて、再び自嘲が零れでた。
笑わせる。一人になりたいのならこんなところに来なければいいだけ。それこそ街の外に出るだけで済む。なのに、どうして此処に来たのか。
決まっている。どう言葉にして、どう思い込もうとしたところで、本音は一人になるのが嫌で嫌で仕方がないだけ。
野盗であった頃は良かった。
常に腹を空かせ、自分以外は全てが敵だと考えていれば、本音はどうあれ否応なく一人でいなければならなかった。
けれど、空きっ腹を満たし、一度でも心を開いてしまえば、蓋をしてあった本音はどうしようもなく溢れ出す。
未だに一人は寂しいと感じてしまう自分自身の救いようのなさが、どうしようもなく愚かで笑えてくる。
その哀れで傷ついた姿に、二頭の馬は顔を見合わせた。
言葉を持たぬ彼等がどの程度の知性を持ち、どのように意思疎通をしているのかは判然としない。
しかし、不思議なことに二頭による次の行動は、奇しくも同じものだった。
「わっぷ……! な、なんだぁ……!?」
どさ、と音を立てて、カルラの頭に何かが落ちてきた。
闇の中で視界が更に闇に染まり、ただでさえ獣の匂いで満ちていた鼻腔が更に濃密な匂いで満たされる。
突然の出来事に、落ち沈んでいた気分すら驚愕で塗り潰される。
カルラは闇を深くし、濃く匂うそれを頭から剥ぎ取って目を凝らすと、思わず息を呑んでいた。
「……お、お前ら」
それは二着の馬衣であった。
無論、カルラも見覚えがある。今日の夕方、彼女が手ずからアッシュへと着せたものであり、タキトゥスがルドウィークに着せていたもの。
顔を上げて振り返った先ではアッシュは心配そうに顔を寄せ、ルドウィークはふんと一際大きく鼻を鳴らしていた。
それをどう受け取ったものか――いや、受け取りようなど一つしかない。少女を気遣う優しさ以外の何がある。
言葉を持たぬ彼等の行動に、カルラの目から一筋の涙が零れた。
一度溢れれば止めようがない。その顔を誰にも見せまいと馬衣を抱き締めてその場に蹲り、唇を噛み締めて声もなく啜り泣く。
一体、自分は何をやっているのだろう。
セレスティナの言葉に嘘などなく、二頭と同じく裏表のない真心から出た優しさであったのに。
後悔、無念、自責、悲観、悲痛、心配、不安、恐怖。ありとあらゆる不安が綯い交ぜになって、それを妙な冷静さで俯瞰している自分もいた。
それからどれだけの時間が経ったか。
許しを乞うように蹲ったまま動かず、声もなく泣き腫らす少女にアッシュもルドウィークもいよいよ打つ手がなくなり、人を呼ぼうかと暴れ出す直前――――
「ああ、いたいた。やっぱり此処でしたか」
「…………っ」
――――セレスティナの願いに従ったタキトゥスが、ようやく追いついた。
慌てて涙を拭って顔を上げたカルラであったが、覇気はまるでない。
持ち出した愛用の大剣を握るどころか、普段のように睨みつけることさえ叶わない。
もうなんだか全てに疲れ果ててしまった。
自らの命を繋げるために戦うことも、頑なに他者を遠ざけようとする憎まれ口や態度も何もかも。
いっそ、もう終わりにして欲しい。そう望むほど、カルラは追い詰められていた。
しかし、そんな少女を前にしてもタキトゥスは相変わらず恍けた表情を刻んだまま。
「アッシュもルドウィークも、馬衣を脱いじゃダメだって。全く、折角着せたのに。カルラさんはこっちをどうぞ。馬衣よりも高いので暖かいですよ」
「…………あっ」
片膝を付くと二頭の馬衣を手に取り、そのまま白い外套をカルラの肩にかけた。
もう嗅ぎ慣れてしまった匂いはセレスティナのもので、彼女の優しさに包まれたようでカルラの瞳からは再び涙が零れそうになる。
それを見ようとはせず、タキトゥスは馬房の中へと入っていく。
溢れた感情をまじまじと眺めるべきではないという気遣いであり、二頭の体調を維持管理するのは己の仕事と自覚していたからだ。
「カルラさん、逃げちゃいましょうか」
「…………?」
暫くの間、無言で仕事を熟していたタキトゥスであったが、世間話でもするような気軽さで切り出した。
先に気難しいルドウィークに馬衣を着せ、次にアッシュの番と馬房に入った頃に告げられた言葉を、カルラは一瞬理解できなかった。
「な、なんで……オレを殺しにでも来たんじゃねえのかよ」
「セレスティナ様には、カルラさんの後を追うように言われただけでして。殺すとかそんな物騒なことはちょっとぉ……追い付いた後のことは特に言われてないですし」
「そ、それでいいのかよ……?」
「んー……この場合、具体的な命令をくれなかったセレスティナ様が悪いのでは?」
「んなわけあるか、馬鹿かよ」
場を和ませるつもりなのか、本心から言っているのかはカルラには判然としなかったが、余りにも呑気で他人任せな物言いに思わず呆れてしまう。
因みにであるが、タキトゥスは本心から言っている。
この男の悪癖。言われたことしかやらない、できない、が出ているだけであった。
カルラとてセレスティナが何を言い、何を考えているかまでは分からずとも、逃げた者を見逃せ、と考えていないであろうことは分かる。
わざわざ後を追わせた以上、連れ戻す意図があるのは明らか。だと言うのに、この男と来たらまるで分っていない。
「大体、奴隷の売り買いはこの国じゃ禁止されてるって言ってただろうが。オレ抜きでどうすんだよ」
「それはそうなのですが……カルラさんは被害者ですけど、ヴァンハイムや僕達の事情には関係ありませんよね?」
「……まあ、そうか? そう、かも?」
「復讐心なのか、義侠心なのかは別にして、カルラさんが何が何でも奴隷商を捕えたい、潰したい、報酬が欲しいのなら分かりますけどね……」
「だけどよ、オレがいた方が――――いや、アンタ、剣はどうした?」
「あっ、馬房の中に置き忘れた。えへへ」
馬房に現れた時には持っていた剣が無くなっていることに目敏く気付いたカルラが指摘すると、隣に腰を降ろそうとしていたタキトゥスは馬房へと入っていく。
どうやら、馬衣を着せる時に邪魔だからと置いてそのままにしていたようだ。そして、いやぁ、お恥ずかしいとばかりに照れ笑いを浮かべながら戻ってくる。
その手にはしっかりと剣が握られていたものの、今度こそ隣に座ると壁に立て掛けた。
これでは咄嗟に剣を抜き放てない。握らないまでも、壁に立て掛けるのではなく地面に置くべきだ。
戦いの生死は一手一瞬の差で決まる。それが分かっているだろうに、この有り様。まるで襲われることはないと信じているような行為に、カルラでさえ口をあんぐりと開ける他なかった。
呆れた顔を気にせず、タキトゥスは人が一人分座れる距離を空けて、ようやく隣に腰を降ろす。
必要以上に近寄らなかったのは、カルラが人に距離を詰められることを嫌うからだった。
「で、話の続きですけど」
「お、おう? その……あ、あぁ、いや、とにかくオレが居た方が早く済むだろうが! 連れ帰るべきだろ!」
「そうは確かですね。でもラインハルト様の耳に入っているから、もう動いているでしょう。協力を得られないなら別の手段もあります」
「……なんで、そんな」
「いやだって、カルラさんが辛いでしょ?」
国の大事、引いては民草の安寧が脅かされるかもしれないというのに呆気らかんとした態度を崩さぬタキトゥスに、カルラは茫然とするしかなかった。
ただ、それは大局的な物の見方が出来ないわけではなく、単に彼の優しさであった。
国の大事は国の内部で片付けるべき問題であり、本質的にはカルラにとっては全く関係のない問題。
あるとするならば、奴隷商と繋がりを持つ者が再びカルラを捕らえようとすることくらいのもの。
それも野盗の行動から労わりを感じ、身を案じた村にでも逃げ込めば匿って貰える。あとは馴染めさえすれば、第二の人生は産声を上げる。
どうしても人と関わりたくないというのなら、獣しかいない森で暮らせばいい。彼女の腕があれば、楽ではないが生きていく分には問題あるまい。
誰かと関わるのが辛いのなら、復讐を望むでも責任があるわけでもないのだから、無理をしてまで関わる必要はない。
此方の用意できる報酬だって、極端な話ではあるが、なくとも生きていくだけなら無用でさえある。
王国騎士としてあるまじき国や民草に寄り添った視点ではなく、ひたすらカルラに寄り添った視点からタキトゥスは結論していた。
「カルラさんが無理する必要はありません。戦いだって、逃げるのも一つの戦術です。生きていく上でならなおのこと」
「…………オレが、また野盗をしたら、どうすんだよ」
「あ、それは僕が見逃した責任なので、きっちり捕らえるか、殺すかしますから。気にしないでいいですよ?」
「お前、変。マジで変。それで気にすんなは無理筋だろ、普通」
「え? そうですか?」
それはそれ、これはこれの精神とでも言えばいいのか。
個人としてはカルラを慮れるほどの情は持っているにも関わらず、必要とあらばそれさえ切り捨てて自らの職務と使命を全うすると宣う。
何か言葉に出来ない異質な精神性。
暖かみと冷たさを同時に感じさせるタキトゥスは、カルラには今まで出会ったことのない生き物のようにさえ感じられた。
ただ、今の彼女にとっては、ひたすらに暖かなものに触れるよりも、異質なものに触れる方が救いであったのは間違いない。
罪悪感や不甲斐なさで潰されそうになるよりも、困惑していた方が余程マシだった。
「……セレス、ティナは」
「心配してましたよ。僕が追わなければ、自分で追っていたでしょうね」
「そうじゃなくてよ、怪我の、方は……」
「初めは驚きましたが、よくよく考えればセレスティナ様は治癒の『秘蹟』も『魔法』も使えるので、明日には痕も残らずに治っていますよ」
「そ……っか。そっか」
タキトゥスの太鼓判に、カルラは心底からほっと息をつく。
自らの口から漏れた吐息に、彼女は驚いたように目を丸め、彼は聞き漏らすことなく笑みを浮かべた。
もう二度と逃げるかと問い掛けはせず、別の問いを口にする。
「戻りますか?」
「…………うん」
「では、そのように」
「あっ、でも……」
答えは既に決まっていた。カルラも心の何処かでそれを望んでいたのだから。
絆された、と嗤う者もいるだろうが、恥じる必要など何処にもない。
心とは他者がいて初めて意味を為すもの。一人であれば、持つ必要など何処にもない。心とは胸の内にも頭の中にもなく、人と人の間にこそ存在するのだから。
「悪い、まだセレスティナと顔を会わせる度胸がない。アンタの部屋、行ってもいい?」
「それは……」
「アンタに……いや、タキトゥスに聞いて貰いたい話がある。オレのこと、なんだけど……」
「…………分かりました。そうしましょう」
立ち上がったタキトゥスの袖を控えめに掴むカルラの瞳は、懸命に不安と戦っている。
これを捨て置くことは、若き遍歴騎士には不可能であった。
深い関係にない若い男女が夜間に同じ部屋で過ごすなど避けるべきではあるが、事情が事情。
他者に胸の内や事情を打ち明けることで気が楽になる部分は確かに存在する。その上で、的確な言葉を与えてやれば、心に溜まった澱を取り除くことも。
セレスティナへと先にカルラの無事と事の顛末、そして事情を説明すれば納得してくれるはず。
そう判断したタキトゥスは優しく手を掴み、立ち上がらせる。
カルラは一方の手でセレスティナの外套を握り締め、もう一方の手でタキトゥスの手を握ると、宿屋へと戻るまで決して離そうとはしなかった。
地の文に擬音はアリ? ナシ?
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全然アリ
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エロだけでならアリ
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擬音はアリだけど、今の擬音はちょっとぉ
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何が何でもナシ、陳腐すぎ
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エロだけでもナシ! 萎える!