ベッドヤクザな遍歴騎士と誘い受けマゾメス騎士姫のハーレム構築ちんチン珍道中 作:HK416
トモエが馬術を学び始めてから三日。
全くの素人であることを考えればかなりの上達速度である。ただ、トモエの才能の多寡、タキトゥスの指導の良し悪し以上に、賢く穏やかで反応もよいアッシュだからこその成果であることは否めなかった。
とは言え、トモエの熱意も吸収力も並々ならぬものがある。
敬意を払うに不足も不満もない相手からの的確な指導。未知の分野を開拓していく新鮮な愉悦。徐々に薄れてきた馬に対する無意識の怖気。強烈な目的意識。
要因は様々あったが、人並みに馬を操れるようになるのは、そう遠い日ではないだろう。
その日も時間をかけて訓練し、空いた腹に料理を入れて欲求を満たし、風呂に浸かって疲れを癒した時間帯。
今日はセレスティナとトモエが同室。両者の生まれを考えれば、さぞや優雅で煌びやかな一時を過ごしているものと思われたが――
「ぅ、う゛~~~~~~、脚がぁ、お尻がぁ……」
「ふふ、誰もが通る道ですわ。その痛みは努力の証です」
そんなことはなく、トモエはだらしのない姿を晒している。
襦袢姿でベッドに倒れ込み、枕に顔を埋めて下半身から上ってくる筋肉の悲鳴に身悶えていた。
とても元公家の娘であったとは思えぬ姿であったが、ネグリジェを着たセレスティナは責める真似はせず、隣のベッドの縁に腰を下ろして微笑んでいた。
かつて自身も同じような体験をした。瞳に浮かぶ光は過去の自分を見るような懐かしさを帯びている。
「そう、でしょうか。きっと、これまでの鍛え方が甘かったのです。此方と来たら何と未熟な……!」
「未熟以前に、乗馬で使う筋肉と武芸で使う筋肉は違います。自己を顧みる必要はありますが、悪戯に自分を責めるべきではありませんよ、トモエ」
馬に乗る際に使用する筋肉を鍛えるのが難しい。
武芸に精通していようとも、意識して鍛えねば育たない部分だ。
乗馬に関する知識を持たぬ故に、トモエは自らを未熟と断じて歯噛みしている。
真面目かつ自罰的。穏やかでありながら、一度火が点くと烈火の如き怒りを見せる。
セレスティナの抱くアズマ人に対する印象はそんなものであったが、トモエはそれ以上だった。
「しかし、カルラはこのようなことはなかったそうですし……」
「カルラは狼人族ですからね。我々とは筋肉の質が違います。さて、秘蹟を使います。身体を楽にして」
「うぅ、お願いしますぅ……」
枕に埋めていた顔を向け、何処か拗ねたように呟きにセレスティナは苦笑を漏らしながら隣のベッドへと移動した。
トモエは何かとカルラと張り合おうとする。
年も上で、同じ異邦人。更には経緯は違えども、同じく孤独に彷徨った身の上であるからだろう。
元々負けん気の強い性格も相俟って、自然と対抗心を抱いてしまうらしい。
だが、仲が悪いわけではない。
根底にあるのは健全な競争精神であり、カルラもまたそれを楽しんでいる。
礼儀を重んじるトモエが何時の間にやらカルラだけは敬称なく呼び捨てにしているのが、良い証拠であった。
「大地におわす豊穣の太母ハルマよ、この者に癒しの力を与え給え」
「ふわぁ~~~~~~~~、暖かい……」
セレスティナが秘蹟を起動し、ハルマの魔法陣と共にトモエの身体が淡い光に包まれる。
筋肉が訴える痛みそのものを
今日、トモエと同室になったのはセレスティナが申し出たからに他ならない。
自身の経験を踏まえた上で、乗馬の訓練によって溜まった疲労がそろそろピークに達すると見越していたからだ。
出会ったばかりとは言え、トモエも今や立派な旅の仲間。互いの利益を前提とした協力関係であろうとも、彼女の慈しみの対象となる。
そんな中、トモエは秘蹟の維持に集中したセレスティナの慈愛と真剣味の同居した横顔を、チラリと覗き見た。
(セレスティナ殿は何と慈悲深く優しい御方なのでしょう…………し、しかし、あのような……!)
「…………?」
脳裏に浮かんだ記憶に、トモエは顔を真っ赤にさせながら再び枕へと顔を埋めた。
奇妙な反応にセレスティナは首を傾げたが、言葉にはせず秘蹟の維持に集中する。
トモエが思い出していたのは宿場町に訪れた翌日の出来事。
なかなか部屋から出てこないタキトゥスとセレスティナに、朝食の時間をカルラと共に伝えに向かった時。
『お~い、二人とも朝飯の時間だぞぉ~』
『お疲れとは思いますが、そろそろ起きた方が――――』
『お゛ぉっ♥ あっあっあっ♥ タキトゥスさまぁ、タキトゥスさまぁっ♥ もうやらぁ、イキたくないっ♥ ゆ、ゆるし、ぉっ♥ またでっ♥ おぉぉ゛っ♥ イッぐぅっ♥』
『ふっ、ふっ……! う゛ぅっ、セレス、ティナ……!』
『射精長いっ♥ ザーメン、子宮重いのぉっ♥ ん゛おぉっ♥ またイくっ♥ あ゛ぁっ♥ 射精終わるまでアクメキメるっ♥ 死ぬっ、死んじゃうぅっ♥ あ゛ァぁ~~~~~~~~~~~~~~♥♥♥』
『――――――…………』
『…………うん、邪魔しちゃ悪いな。そっとしとくか。ほら、トモエ行くぞ』
『…………………………ハッ!? い、今のは……?!』
『いやまあ、セレスティナもオレも、主様に抱かれる時はいつも、大体あんな感じだ』
(いつも!? 大体?! 毎回死を覚悟するほどに?!)
カルラが無遠慮に開け放った扉の向こうから、五感を通して伝わってくる情報の数々にトモエは掛け値なしに凍り付いた。
獣のような嬌声、噎せ返るような精臭、絡み合う二人の身体。
すぐに扉を閉められたものの、一瞬であれトモエの脳に焼きつくには十分。
カルラはあっけらかんとしていたが、知識としてしか性に関する情報を持たないトモエには刺激的に過ぎた。
お陰様で、日常の中でふとした拍子に、二人の前でどぎまぎとぎこちのなさが出てしまう。
下世話と思いながらも、二人の仲を応援した方が良いのか。
かと言って、カルラとてタキトゥスの妻。両者の間から遠ざけるのもどうなのか。
少なからず、正妻であるセレスティナは納得しているようであり、妾に当たるであろうカルラも不満は見せず、どうすればよいのやら。
生憎と、鳴神家を筆頭に天子に仕える家は妾を囲っておく余裕などなく、正妻と妾の関係や扱いが、どのような形が正解であるのかさえ分からない。
明確な答えも出せず、行動にも移れない。
そんな状況は、トモエを悶々とした気持ちにさせるには十分であった。
(し、しかし……セレスティナ殿もそうですが、カルラも……! 何とか御恩を返さなくては……!)
ただ、一つだけトモエも成長した部分もある。
タキトゥスとセレスティナの情交を一瞬とは言え覗き見たからなのか、何となしにまぐわった男と女の気配と表情を察せるようになったことだ。
やたらと照れくさそうな、申し訳なさそうな顔をしているタキトゥスと、途方もなく幸福そうな顔をしたセレスティナやカルラの顔を見れば嫌でも分かるかもしれないが。
だが、二人の顔には疲労の色が濃く、タキトゥスがそれだけ精力旺盛なのだ、とトモエでも分かる。
決して悪いことではない。これから領主――――一角の貴族となるのなら、領地の支配を盤石とするために跡継ぎの存在は必要不可欠なのだから。
ただ、セレスティナとカルラの疲労は目に余った。
どうにかして負担を軽くしてやりたいが、それもなかなか難しい話。
(で、ですが、男女として自然な営みでありますし、互いの了承しているわけですし……あぁ、もう……!)
そもそもからして旅の仲間ではあるが、男女の関係であれば完全に部外者。
口を挟むのおかしな話で、決して彼等彼女等の関係性を破壊したい訳でもない。
でも、しかし、だけど、どうすれば。
男性経験など皆無なトモエの思考は、明確な答えを導き出せず、ぐるぐると同じところを回り続ける。
やがて、彼女は一つの結論に辿り着くことになるのだが、それは少し先の話。
ただ一つ言えるのは、箱入り娘のお嬢様であると同時に、失うものが何もなくなった捨て鉢染みた斜め上の結論になることだけであった
―――――
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―――
――
―
「トモエも随分と様になってきたものだな!」
「うっ、お゛ぅぅ……いえ、まだまだしがみついているのが精一杯で……うぇっ……!」
「はははっ! それでも上等上等! このスピードで走ることなんか旅の中じゃ殆どねえしな!」
風を斬りながら三つの馬体が今日もや宿場町近くの草原を駆ける。
全力には程遠いが、駆ける姿は力強く、馬という生き物の本質と生き様を示しているかのようだ。
そして、背中に乗せるのはタイプの違う美女。
トモエは相変わらずアッシュの、セレスティナとカルラは愛馬の背に跨って、併走していた。
しがみついているので精一杯と本人は言ったが、ここ数日のトモエの成長ぶりは目覚ましい。
これも武を修めてきた影響か、彼女と同じ期間で同じ域にまで到達できる騎士がどれだけいることか。
トモエは揺れに苦しげな声を上げていたが、セレスティナは感心した素振りを見せ、カルラは親指を立てて褒め称える。
やがて、ゆるゆると速度を落とし始めると、一部始終を見守っていたタキトゥスの前で脚を止めた。
「上達しましたね、トモエさん」
「え、えへへ…………お、おほん、此方などまだまだ! アッシュのお陰です!」
「う~ん、アッシュが乗り易いのは否定はしませんが……」
戻ってきた一同を迎え、鼻先を寄せてくるアッシュの顔を撫でながらタキトゥスは素直な感想を口にした。
すると、トモエは紫紺の髪を掻きながらほんの少しだけ誇らしげに笑ったが、すぐさま白磁のような頬を朱に染めて咳払いをする。
慢心せぬように自らを戒めたのだろうが、行き過ぎの気もしないでもない。
確かに、アッシュは鞍上の意図を即座に理解してそのまま行動に移せるほど、反応もよく賢い馬である。
愛馬をよくよく理解したタキトゥスも認めるところではあるが、謙遜が過ぎたのもまた事実。
今のトモエなら気性の荒い馬でもなければ、何とか付き合っていけるはず。
少なくとも、タキトゥスの眼にはそのように映っていた。
「となると、トモエの馬もそろそろ用意せねばなるまいな」
「つってもよぉ。こんな小さい町じゃ、馬を買うのも一苦労じゃねえか?」
「そうですね。フォルスの街は交易が盛んでしたし、セリ市もありましたから」
その中、タキトゥスの思考を先回りしたセレスティナはもう一つの問題を提起する。
どれだけトモエの腕前が上達しようとも、肝心の馬がいなければ意味がない。
無論、タキトゥスも手を拱いていたばかりでない。時間の隙間に宿場町を見て回り、良い馬がいないか探していた。
しかし、商人の連れている馬は荷車を引くのに適した形で成長しており、傭兵や旅人が連れた馬は気性が荒い。
タキトゥスの考える旅に適した馬は、速く走れる以上に、賢く従順で無駄な行動など殆どしないために、彼の眼鏡に適う馬は一頭もいなかった。
ファウストという前例もいるが、フォルスの街と宿場町では規模が違う。
人の数が増えれば、馬の数も増える。馬の数が増えれば、優れた馬が混ざる確率も増えていくものだ。
いっそのこと妥協して安馬の一頭でも買えばいいが、簡単に潰れられて困るのはトモエだけでなく、仲間全員。
更に言えば、インサニア、アッシュという名馬に乗り、荷馬をしていたファウストの才気を見抜いたタキトゥスの肥えた相馬眼が安易な妥協を許さないのであった。
何にせよ、馬選びが難航していることは事実。
タキトゥスは宿場町周りの農村を見て回ってみるのも手か、と考え、馬に関して妥協を知らない男に女性陣が呆れを見せようとした時――――
「…………ぶも?」
「――――おや?」
足元の青草を食み始めていたアッシュとタキトゥスが同時に顔を上げる。
続き、ルドウィークとファウストが、最後に三人が馬達の視線を追う。
視線の先には宿場町が広がっており、その直ぐ外側にポツンと影が一つ。
一頭の馬が、その場を動かずにボーッと立っていた。もしかしたら、今し方まで走っていた三頭と三人を眺めていたのかもしれない。
不思議なことにその馬は頭絡と手綱こそ着けていたが、鞍を背負っておらず乗り手の姿もない。
「町から逃げてきたのでしょうか……?」
「それにしては落ち着いた様子だが……」
「そうですね。馬は逃げると興奮して走りっぱなしになるものですが……」
「どーする? 関係ねーから放っておいてもいいと思うけど……」
「うーん、取り敢えず捕まえておきましょうか。飼い主の方も困っているでしょうし」
各々の感想を抱きつつ、セレスティナ達は鞍に乗ったまま、タキトゥスが先頭を歩いて近づいていく。
生来、馬は臆病な生き物である。
危険な肉食獣と戦うのではなく、より早く、より長く走ることで逃げ、生き延びてきた。
よって、未知の脅威や見ず知らずの馬や人を寄せ付けぬものであるが、名も知れぬ一頭は一同が近づいてきても逃げる素振りすら見せない。
タキトゥスが怯えさせぬように近づいても、茫洋な顔で眺めるばかりで簡単に手綱を掴ませる。
その一頭は、余り特徴のない馬だった。
年はファウストと同程度。だが、落ち着きようときたら年老いた馬のようで、見知らぬ人間と馬に囲まれても興奮していない。
栗毛の馬体は決して見栄えするわけではなく、ルドウィークのように鍛え上げられた印象もなかった。
唯一目を引くのは額の流星か。先端の先細って反り返った形は、何処となくトモエの持つ刀に似ているような気がする。
それ以外は、兎に角地味の一言。
セレスティナとカルラは怪訝な表情をしていたが、タキトゥスは目を細め、トモエなど魅入られているかのように瞳を輝かせている。
ルドウィークは何時ものように見慣れぬ馬に威嚇し、すっかり弟分になったファウストもそれに倣っていた。
しかし、その一頭は我関せず。アッシュが足元の草を食べ始めると、そちらに興味を惹かれたのか同じように食べ始めてすらいるほどだ。
「なんだ、コイツ。前に砂漠の方から村に来た商人が連れてたコブのあるアレ、なんだっけ……それみてえな顔してんぞ……」
「ラクダ、か?」
「そう、それだ! だいぶラクダだぞコイツ!」
「ふふ、でも可愛らしいですよ。随分と大人しいですし」
「……ばふー」
困惑しつつも馬から降りると、カルラはそんなことを宣った。
気が抜けているからなのか、のほほんとして垂れ下がった瞼のせいか、確かにラクダに見えなくもない。
何か惹かれるものを感じたトモエはアッシュから降りると、一頭に近づいて顔を撫でる。
すると、一頭は心地良さげに目を細めたため、余計にラクダのような顔になってしまった。
「うぉおおおおおおおおお――――!!!」
暫くの間、どうしたものかと一同が悩んでいると、宿場町から咆哮と必死の形相と共に一人の青年が走ってくる。
要望からして二十に手を掛けていまい。
出で立ちは農民よりかは身形が良く、恐らくは商人見習い、或いは商人の下で働く使用人と言った風情。
どうやら逃げ出した名も知れぬ一頭を追ってきたようだ。
「はっ……はひっ……ひへぇ……そ、それ……う、ウチの馬ですぅ……」
「ああ、安心しろ。馬泥棒ではないぞ。逃げる様子がなく、珍しいので捕まえておいただけだ」
「はっ……んぐっ……はあっ……き、騎士様……た、助かります」
息も絶え絶えな様子で辿り着いた青年は、膝に手を付いた呼吸を整えながらも馬の所有権を主張する。
見たところ嘘をついている様子もなく、馬の方も青年に知っているような反応を見せたために、セレスティナは簡潔に状況を説明した。
青年は何とか息を整えたが、必死の形相から今度は逆に恐縮した表情となる。
平民である彼にしてみれば、王国騎士であれ、貴族のお抱え騎士で、普段は然程接する機会の少ない相手。
況して、迷惑をかけたとなれば、委縮してしまうのも無理はなかった。
「御迷惑をおかけして申し訳ありませんでした! 旦那をつれてきて……」
「ああ、いえ、そこまでして頂かなくとも結構ですよ。それに、貴方も怒られてしまうでしょう?」
「それはそうなんですが……」
「ところで、どうして脱走を……? 馬房栓でも締め忘れましたか?」
「い、いえ、きちんと確認したどころか、ご覧の通り脱走癖があるので、手綱もきちんと縛っておいたはずなのですが……」
「へえ、それはまた……」
深々と頭を下げ、雇い主である商人まで連れて共に謝ってもらおうとする青年に、タキトゥスは手綱を渡して微笑んだ。
生真面目な青年が商人にどやされるのが気の毒であったのは確かだが、別段迷惑を被ったわけでもない。
何とか事を荒立てぬ方向に収めようとしたタキトゥスは、青年の委縮を解きほぐすべく世間話のつもりで話題を振ったのだが、返ってきた答えに目を丸くする。
青年の言葉が勘違いではなく、全て真実なのだとしたら。
この地味な馬は馬房栓の原理を完全でなくともある程度は理解し、自ら縛られた手綱を解いたことになる。
相当に賢く、同時に好奇心が旺盛なのだろう。それはタキトゥスの気を引くには十分で、一つの考えに至る。
「…………あ、あら? どうしたのかしら?」
「あ、あぁ! や、やめないか、服が汚れるだろう……?!」
まだ名前のない一頭は、トモエの纏うアズマの装束特有の長い袖を加え、くいくいと引っ張っていた。
一体何を考えているのか分からない青年は、これ以上の粗相はやめてくれとばかりに涙目になりながら手綱を引っ張りやめさせる。
まるで馬が語りかけてくるかのようなその仕草が、もう一つの決め手であった。
「失礼ですが、この馬はどうする予定で? やはりセリに?」
「は、はい。フォルスの街で何頭かセリに出す予定です」
「ふむ……血統書はありますか?」
「い、いえ、ありません。旦那もたまたま知り合いの農夫から物々交換で手に入れただけなので」
「ということは、優等セリではなく一般セリに出すわけですか」
基本的に、ヴァンハイムの馬のセリには二種類ある。
貴族の乗馬用、或いは軍馬とすべく高額で競い合う優等セリと商人や傭兵が荷車や旅用とするために比較的に安値で買い叩かれる一般セリだ。
二つの競売の違いは馬の能力ではなく、血統書の有無によって決まる。
人も馬も親の能力を全て引き継いで生まれてくるとは限らないが、優秀な親であればあるほどに期待値は高まっていくのは同じ。
よって血統のはっきりとした馬の方が高く売られるのは道理であり、また貴族としても所有する馬が優秀で高くあればあるほど、対外的に自らの優位性を示せ、また競売を行う側もスムーズに済むが故に分けているのだ。
「よし、決めました。この馬を買いたいので、商人殿に取り次いで貰ってもよろしいですか?」
「うぇぇ?! そ、それは構いませんが、ご覧の通り脱走癖がありますよ、コイツは……?」
「それでも構いません。街外れの馬小屋に預けていますよね? では、そちらの落ち合いましょう。馬の方が僕達が連れて行きます。ああ、商人殿には必要最低限お伝えくだされば結構ですので」
「は、はあ…………わ、分かりました。では、すぐに伝えてまいりますので、お手数ですがコイツはお願いします」
唐突に見えた提案に青年は困惑しきりであったが、タキトゥスの気を遣いながらも熱意のある姿勢に負け、手綱を渡す。
それでいて、彼の瞳には計算高い光が宿り始めており、まだまだ一端の商人とは言い難いものの、金の匂いを嗅ぎつける才はあるらしい。
来た時と同じに一目散に街へと向かっていく背中を見送り、振り返ったタキトゥスが見たものは、青年と同じく困惑したトモエと怪訝な表情をしたカルラだ。
「……よ、よろしかったのでしょうか。決して安い買い物にはなりませんのに」
「そりゃあいいんじゃねーの? 元々馬は買う予定だったしよ」
「ああ、構わんぞ。トモエもそう気にするな。貴様の目的はヴァンハイムの利となり、我々も責務にもなるのだからな」
「…………ありがとうございます。この御恩は、必ずや使命と共に返させて頂きます」
「言ってる傍から気にしてんじゃねえか。それよか、オレはこんな地味な奴がまともに走るかの方が気になるけどな~」
「ばも……ばも……」
「そんなことはありません! 此方には、まるで光り輝いて見えるかのような……」
これから相棒となる馬を前にして、トモエの目は子供のように輝いていた。
揶揄い言葉と視線を向けていたカルラも、力強く否定されては肩を竦めるしかない。
ただ、気持ちはよくよく理解できた。
初めて手にする自分だけの馬。向ける期待は言葉にできるものはなく、将来への不安など在ろう筈もない。
ファウストと出会った時も、口では文句を言いながらも、どんな駄馬でも最後まで共にしようと思ってはいた。
これ以上邪魔をするのは無粋と閉口したカルラは、自らの肩口に顔を寄せて甘えてくるファウストの顔を静かに抱いた。
「名前は、どうしましょうか?」
「そうですね。では、雷電と。あら? ふふ、気に入りましたか?」
自らに与えられた加護に因み、
そう願いを込めた名を告げた瞬間、栗毛の馬――――ライデンは空に向かって嘶いた。
それは、トモエの期待に応えるという誓いであったのか。
高い嘶きは、するすると伸びていく。天に向かって、何処までも。
まるで一生に何度とない、本当の出会いを言祝ぐように。何処までも、何処までも。
ライデン テイエムオペラオー+スーパークリーク
主人公一向の馬は基本的に人に対して従順であったり、気性が穏やかなモチーフになっています。
海外馬もモチーフにしたかったけど、海外馬の気性穏やかエピソードってあんまり聞かないんだよなぁ。何かいい資料はないもんかなぁ。
地の分のエロ表現はどっちがいい?
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官能小説的に頼むぞ!(肉棒、淫裂等)
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